聖女は断罪する

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22. 供給過多

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 ヴィヴィアンヌは黙って考えている。校舎の中にはそこここに小さな時限型の魔法陣が あり、女子寮、ルシアのいる場所辺りはいくつもの魔法陣がしかけてあった。が……お かしい。魔法陣から魔力が抜け落ちている。
 ルシアの移動ルートか、と思い当たる。入寮したルシアには魔力吸収の魔石をいくつか髪飾りやペンダントとして持たしているし、ルシア自身の魔法防御力として周りの魔力 を吸収し無効化するという特製を持っている。ただ、まだ魔力を輩出してコントロール をするのが上手ではないので周りから必要以上の魔力を吸収しないように、ルシアの魔力が貯まりすぎて苦しくならないようにと魔石のアクセサリーを持たせたのだ。
 ヴィヴィアンヌは隠ぺい魔法を使い、そのまま寮の内部に入る。そこここに魔物呼び出しの魔法陣は描かれているが全て無効化されている。それを追っていくとやはりルシアの部屋の前に着いた。ルシアの部屋は二階の最奥で上下の階の魔法陣も無効化されている。

「ルシア、大丈夫?」

ルシアは荒い息で横たわっている。熱も出始めていた。

「急に……いつもの発作がでちゃって」

ルシア付きのメイドは今、まさにヴィヴィアンヌを呼ぼうとしていたところだった。

「魔力の過剰供給だね、理由はもうわかってるから。楽になるから待ってなさい」

水の力を纏った魔力を掌に吸い取りつつ、火の魔力で刻していく。相殺する魔力量をコントロールしながらヴィヴィアンヌは方策を建てる。

「ルシア、アナ、すぐに戻ってくるからこのまま静かにね」

ヴィヴィアンヌはリリスの魔法の痕跡を保存した。明日、校長たちに見せる予定だ。そして扉を出る瞬間に転移魔法を使って再従妹だった数代前の聖女の墓の前に立った。

「メロディ、貴方が守ってくれてた魔石、使うわね」

墓石からぼんやりと何かが浮かんできて、ヴィヴィアンヌの手の上でこぶし大の石の結晶になる。ここはヴィヴィアンヌの特別な魔石や魔道具を保管してある場所だった。幼いころからの親友で魔法の腕を切磋琢磨してきた大事な人の墓だった。

「また来るわ」

ヴィヴィアンヌは人がいないはずの女子寮のアナの部屋に転移した。アナはヴィヴィアンヌの弟子の一人で幼いころからルシアのサポート役を兼ねたメイドであった。

 続き扉からルシアの部屋に入る。

「おかえりなさいませ」

アナは全く動じずにヴィヴィアンヌを迎えた。ルシアのあえかなふくらみを見せ始めた胸の真ん中にその結晶を置く。今までのアクセサリーに使っていた石とはレベルとパワーが違った。

「アナ、これの扱いはね」

と説明する。要は魔力遮断の障壁を手に施したうえで毎日帰宅後と寝る前にルシアの胸の上に置くこと、と。楽そうになったら石を外して、用意してある魔布に包んでアナの部屋に保管してくれ、と。

「万が一もありますし、空間魔法で石用の部屋を作って保管します。この魔力遮断の布で持てば障壁もいらないのでは?」

アナに言われてヴィヴィアンヌは驚いている。

「それもそうね」

「先生みたいに息するより魔法が楽な人と私は違いますから」

アナは笑っている。ヴィヴィアンヌはなんでも魔法でかたづけるきらいがあるのは弟子として少女の頃一緒に生活していて気が付いた。アナは平民の普通の家の出で就職先を探しててヴィヴィアンヌと出会った。
 ヴィヴィアンヌの弟子の面接の日にメイドの斡旋をされて斡旋業者からの手紙を持って行ったのだがヴィヴィアンヌはアナが弟子候補として来たと思い違いしていたのとタイミングで弟子兼メイドとしてヴィヴィアンヌに師事し仕えることになったのだ。
 ヴィヴィアンヌ側はアナを見た時にうっすらと予感が降りてきた。この子に魔法を教えろ、と。それは自分の為になる、と。
 本来の面接に来たのは少年で、この子供は通いで「弟子」ではなく生徒として預かる事になった。これが今現在王子達に着いている執事であった。
 ヴィヴィアンヌはこの執事の縁と陛下から直々に頼まれて4人の王子に魔術の基礎を教えた。その中で第一王子は凡庸、第二王子と庶子は魔力量は普通だが頭の回転が良いので魔法を上手に使えるし応用も早い、第三王子は魔力量は豊富だが暴走気味、ど見ている。
 あの空き教室で見た王妃のチョーカーの件も早く片付けなければ、とヴィヴィアンヌは深呼吸をしつつ考えていた。

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