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21. リリスの後ろ盾
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「誰だっ」
教室のあるはずの空間の前にヴィヴィアンヌが余人が立ち入れないような結界を施した後に誰何の声が飛ぶ。レイラは聞いた声だと思った。
「フィールズの坊主かい。よくも私にそういう問いかけが出来るね」
ヴィヴィアンヌが大人げない態度でペールの声に応える。レイラは聞いたことあるはずだよ、と納得する。そこにはペール・フィールズとリリスがいた。
「この教室に何の用があるんですか?」
ヴィヴィアンヌの事を知らないリリスが小ばかにした態度でヴィヴィアンヌに訊ねる。
「教会の小娘か。……教師の権限でおかしな場所があったから封鎖しただけだよ。床に魔物召喚の魔法陣が『水属性』で書かれてたからね」
ヴィヴィアンヌはリリスをじっと見る。
「あんたも水属性だね。……ペールもね。ペール、後で家に行くから覚悟しなさい。それと、教会の小娘よ、教会にも話は通しておくのであんたも覚悟するようにね」
ヴィヴィアンヌは声に相手を委縮させる魔法を織り込み発した。レイラはこれは個人を指定することでその個人に対しての縛りを与えているのだな、と分析している。そしてこれ自身は凄く細やかにコントロールしないと危険なのだな、と考えていた。
「さて、と。学年主任は巻き込むのは危険だからまずは校長かな。その前に。レイラ、玄関まで送っていくからサムに連れ帰ってもらって、シルヴィの館で上空まで結界を張っておいて。結界の外にはクロを置いておくから。それと私が迎えにいくまで外に出ないでね」
ヴィヴィアンヌの言葉にレイラは素直に頷いた。レイラはヴィヴィアンヌの横に立ちその場所を立ち去った。玄関までがやけに長い。というかそれこそ目くらましか空間をいじっているのか、とレイラが思った瞬間ヴィヴィアンヌがその魔法を『割った』
「うざい。なんの小細工をしてる、あの小娘」
ヴィヴィアンヌが呟いた。
「こうやってかけてある魔術を元の術者の元に届けることで、実行者がわかるし他の人を巻き込む事は減るからね。これも繊細なコントロールが必要になるよ」
多分、それができるのは宮廷魔術騎士団の団長クラス以上だけどね、とヴィヴィアンヌは付け加える。
「レイラはまだできない。けど、術式ややり方はおいおい教えていくからね。……私が学生の頃、親友と術をかけあっておいて、夜中にその術に乗せてメッセージを送りあったりしていたよ。そういう遊びも出来るからね」
緊迫した状況だったはずだがなぜかのほほんとした話題になる。レイラはルシアとそれができるといいな、と思いながらヴィヴィアンヌの言葉に頷いた。
「空き教室の扉にかけてあった術を返さなかったのは何故ですか?」
ヴィヴィアンヌはふーと息をはいた。
「クリストフ殿下がいたのと、現場を他の魔術師、レイラの担任とか校長にね、見てもらっておいた方がいいからね。……魔物を呼び出す陣は動かなかっただろうけどね」
ヴィヴィアンヌがくすくす笑いながらレイラに教えてくれる。
「火の精、サラマンダーを呼び出す陣を水の力で掻いても動くわけがない」
心の中でヴィヴィアンヌは付け加える。ただ、あのチョーカーの石の力を借りるなら、何が起こっても不思議ではないけども、と。フィールズの小僧はそれを知っていたのか、と考えるがヴィヴィアンヌの知るペールはそういうことをするような子供ではなかった。もし王家の宝玉があそこにあるのを知ったら学年主任の相談するし、学年主任は嫌味で小物だがあの宝玉の意味を理解しているので『魔術師』として動くであろうことはわかっている。
あの力を分かった上で利用しようとするのは副教皇派の可能性が高い。そして聖女候補の後ろ盾は副教皇本人だった。
教室のあるはずの空間の前にヴィヴィアンヌが余人が立ち入れないような結界を施した後に誰何の声が飛ぶ。レイラは聞いた声だと思った。
「フィールズの坊主かい。よくも私にそういう問いかけが出来るね」
ヴィヴィアンヌが大人げない態度でペールの声に応える。レイラは聞いたことあるはずだよ、と納得する。そこにはペール・フィールズとリリスがいた。
「この教室に何の用があるんですか?」
ヴィヴィアンヌの事を知らないリリスが小ばかにした態度でヴィヴィアンヌに訊ねる。
「教会の小娘か。……教師の権限でおかしな場所があったから封鎖しただけだよ。床に魔物召喚の魔法陣が『水属性』で書かれてたからね」
ヴィヴィアンヌはリリスをじっと見る。
「あんたも水属性だね。……ペールもね。ペール、後で家に行くから覚悟しなさい。それと、教会の小娘よ、教会にも話は通しておくのであんたも覚悟するようにね」
ヴィヴィアンヌは声に相手を委縮させる魔法を織り込み発した。レイラはこれは個人を指定することでその個人に対しての縛りを与えているのだな、と分析している。そしてこれ自身は凄く細やかにコントロールしないと危険なのだな、と考えていた。
「さて、と。学年主任は巻き込むのは危険だからまずは校長かな。その前に。レイラ、玄関まで送っていくからサムに連れ帰ってもらって、シルヴィの館で上空まで結界を張っておいて。結界の外にはクロを置いておくから。それと私が迎えにいくまで外に出ないでね」
ヴィヴィアンヌの言葉にレイラは素直に頷いた。レイラはヴィヴィアンヌの横に立ちその場所を立ち去った。玄関までがやけに長い。というかそれこそ目くらましか空間をいじっているのか、とレイラが思った瞬間ヴィヴィアンヌがその魔法を『割った』
「うざい。なんの小細工をしてる、あの小娘」
ヴィヴィアンヌが呟いた。
「こうやってかけてある魔術を元の術者の元に届けることで、実行者がわかるし他の人を巻き込む事は減るからね。これも繊細なコントロールが必要になるよ」
多分、それができるのは宮廷魔術騎士団の団長クラス以上だけどね、とヴィヴィアンヌは付け加える。
「レイラはまだできない。けど、術式ややり方はおいおい教えていくからね。……私が学生の頃、親友と術をかけあっておいて、夜中にその術に乗せてメッセージを送りあったりしていたよ。そういう遊びも出来るからね」
緊迫した状況だったはずだがなぜかのほほんとした話題になる。レイラはルシアとそれができるといいな、と思いながらヴィヴィアンヌの言葉に頷いた。
「空き教室の扉にかけてあった術を返さなかったのは何故ですか?」
ヴィヴィアンヌはふーと息をはいた。
「クリストフ殿下がいたのと、現場を他の魔術師、レイラの担任とか校長にね、見てもらっておいた方がいいからね。……魔物を呼び出す陣は動かなかっただろうけどね」
ヴィヴィアンヌがくすくす笑いながらレイラに教えてくれる。
「火の精、サラマンダーを呼び出す陣を水の力で掻いても動くわけがない」
心の中でヴィヴィアンヌは付け加える。ただ、あのチョーカーの石の力を借りるなら、何が起こっても不思議ではないけども、と。フィールズの小僧はそれを知っていたのか、と考えるがヴィヴィアンヌの知るペールはそういうことをするような子供ではなかった。もし王家の宝玉があそこにあるのを知ったら学年主任の相談するし、学年主任は嫌味で小物だがあの宝玉の意味を理解しているので『魔術師』として動くであろうことはわかっている。
あの力を分かった上で利用しようとするのは副教皇派の可能性が高い。そして聖女候補の後ろ盾は副教皇本人だった。
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