聖女は断罪する

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 「これは貴方達が選んできた道の結果ですわ」

レイラは両親と妹を見る。両親と言っても母親は父親の愛人だ。レイラの家、ドゥエスタン伯爵家の人間ではない。もっと言えば父親もドゥエスタン伯爵ではなく伯爵代行だ。
 17になる時をレイラは心待ちにしていた。この国は女性でも家督が継げる。17でレイラは正式にドゥエスタン伯爵を継いだのだ。ラピスラズリを思い起こさせるドゥエスタン家の青の瞳、飴色の金の髪、幼げなけれど美しい顔立ちに信じられないような砂時計型の体型、豊かな胸と腰。美の女神に愛されていた亡母そっくりであった。

「お母様を裏切り続けた貴方」

レイラはそう言って父親を見る。

「私が生まれるより前にいた愛人との子供を妹だと偽る。そもそも母との結婚が嫌なら断ればよかったのです。分家と言えど、拒否権はあったはず。お祖父様の遺言?母は貴方が拒否してもなにも言わなかったと思います」

レイラは父の愛人とその娘、年上の『妹』を徹底的に存在しない藻として扱う。

「貴方と血がつながってると思うとぞっとします。本家の財産を良いようにするために母と結婚したんですよね」

「……ご本家様に逆らえるか」

父親の小さな呟きにレイラは冷たい目を向ける。

「では本家の指示に従ってくださいませ。領地の北の端に貴方の家を建てております。そちらに今日中にお移り下さい。その荷物二つも持って行ってくださいね。貴方と付属物は以降北の端の家から出ることはできません」

「お前にそんな権利はない」

「あら、娘の誕生日をお忘れですか?私、昨日成人しましたの。この家の印璽は昨日以降私が王家に登録したものに変わっておりますわ。つまり貴方の印璽では我が家は動かないという事です」

父親は無言になった、途端義母が叫びだした。

「貴女の妹よ、今現在王太子妃はいなくなったわ。高位貴族の娘で年齢が釣り合う子はいない。今こそ伯爵家から選ばれるのよ。メイこそその地位にふさわしいと思わない?愛らしい顔立ち、ピンクブロンドの髪」

「髪は染めてるでしょ?それに平民は王太子妃にはなれません。ましてや簒奪者の娘など……」

「簒奪者?」

「父上、貴女の付属物には私の母親の毒殺の疑いがかかっております。毒物の特定はできたのでまずはこの人の荷物を」

その途端、愛人は走りだそうとしたが扉から王国の騎士団が入ってきて愛人を捕縛した。

「貴方には毒殺幇助の疑いが掛かっています。一度お話を伺いたいのですが」

第三騎士団、王子付きの騎士団の団長がレイラの父親の腕を取った。ここで場違いな声が上がる。

「あー、騎士団長のメルヴィンさまだぁ。お姉様この方と知り合い?」

「私は二つも上の妹を持った記憶はございません」

「やっだぁ。あたしぃ15才よ?」

下品なまでに開いた胸元をぎゅと腕で押し上げるが、つつましい胸では谷間もできない。レイラは背が高く細身であまり凸凹の無い体つきのメイが似合うドレスを着せないメイの母親のセンスを疑った。

「ずいぶんとうの経った15歳だな。……とりあえず邪魔だ。ハナ、室内で見張れ」

「らじゃ、メルヴィン」

男か女かわからない隊員はメイよりももっと背が高く、力が強かった。他国の出身らしく言葉が少しなまっている。

「おジョウさん、失礼」

メイを小脇に抱えるとすたすたと歩き去って行った。

 元家族が居なくなって、レイラはやっと息を吐いた。

「長かったわ」

呟きは誰にも聞かれず流れて行った。
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