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メイドに連れられて何が得意なのかと道中で聞かれる。
「台所の下働きしてました。お芋剥いたり……」
「ちょうどいいかも。あとであのおっさん、あんたの叔父さんには話とくから台所の下働き頼める?この家のバーさんが時間にうるさくてね。手伝いが増えるのはいいことだ」
そのメイドは一人勝手に話を決めてしまった。実際叔父のような人は誰がどこで働いてるかなんて把握しないだろうなとアイリスは思っている。
「じゃ、今日からここが君の職場だ」
メイドはちょっとおどけて言うと台所に連れていかれた。コックらしき男が一人いる。
「ああ、芋の皮でもニンジンの皮でもなんでもいいけど、この子できるの?」
「母が死んでから二年、近所の商店なんかの台所の下働きをしてました」
アイリスは過不足なく現状を伝える。
「……多少は出来そうだな俺はジャン。ここの調理場を一人で回してる。どうにも人がいつかなくてね」
「よろしくお願いします」
十歳のアイリスは雨に濡れない寝場所と日々の糧を手に入れた。今までは一日にもらう賃金は銅貨5枚。一日分の黒パンを買うとあとは家賃用に残しておかないといけない。朝は前日の黒パンを食べて頼まれた場所に向かう。曜日毎に向かう家や店は決まっている。週に三回のマダムの店ではお給料をもらえない。理由はマダムの持ち部屋に住まわせてもらっているからだった。アイリスがこの屋敷に来るときに
「困ったことがあったら戻っておいで。あの部屋はそのままにしておくよ。ルシアの荷物もあるしね」
と言った。アイリスは今一つ理解できていなかった。
その日の夜、メイドに言われた様に二階の一番いい部屋に薬をもって向かう。これは叔父に渡された薬で煎じたものをティーカップに入れてある。叔父夫婦の使ってる薄い磁器よりももっと繊細で美しいカップだ。
これは食堂の特別な場所に隠していたのを叔父が見つけて使おうとしたのだが1人分しかセットがないので(残りは屋根裏の保管庫にあるのだが、屋根裏にそういうものがあるのをキースは把握していなかった。保管庫は一見埃臭く探し物をするにもものが大量で面倒そうだったのでキースはそこの探索を放棄しのだ。それに異母姉ルシアの部屋からルシアに譲られた、この家の家宝言えそうな大粒の宝石達は自分のものにし、金に換えたからだ。妻を娶るときに渡したブローチもそういう宝飾品の中から適当に選んで渡した、ものである)
キースは何を思ったか毎日の寝る前のお茶をある薬草を自ら煎じていれ、メイドにもっていかせるようになった。キースはこの血のつながらない曾祖母に蛇蝎のごとく嫌われている。
曾祖母は祖母が恋愛で選んだ夫を気に入らなかった。元は隣国の侯爵の子息で貧しすぎて没落した家の息子であるという触れ込みであった。曾祖母が問い合わせると確かにその男はその貴族の息子であり、庶子であった。そして貧乏の理由も先代当主の放蕩が理由でありアイリスの祖母の夫は放蕩の犠牲者、と言えなくはなかった。
曾祖母マリアベルが賛成と言いかねているうちにアイリスの祖母はルシアを身ごもった。一応の体裁を整えて式を挙げ、ルシアが生まれる。アイリスの祖母は体が弱かったのだが、体が戻らないうちから祖母の夫は祖母に無理をさせる。そんなこんなでルシアが1歳半の頃、アイリスの祖母は儚くなってしまった。
そして祖母の夫は使用人の女性とねんごろになっており、アイリスの祖母がなくなって半年、たつかどうかのころに叔父キースが生まれたのだ。
アイリスはまったくそういうことを知らなかった。
「台所の下働きしてました。お芋剥いたり……」
「ちょうどいいかも。あとであのおっさん、あんたの叔父さんには話とくから台所の下働き頼める?この家のバーさんが時間にうるさくてね。手伝いが増えるのはいいことだ」
そのメイドは一人勝手に話を決めてしまった。実際叔父のような人は誰がどこで働いてるかなんて把握しないだろうなとアイリスは思っている。
「じゃ、今日からここが君の職場だ」
メイドはちょっとおどけて言うと台所に連れていかれた。コックらしき男が一人いる。
「ああ、芋の皮でもニンジンの皮でもなんでもいいけど、この子できるの?」
「母が死んでから二年、近所の商店なんかの台所の下働きをしてました」
アイリスは過不足なく現状を伝える。
「……多少は出来そうだな俺はジャン。ここの調理場を一人で回してる。どうにも人がいつかなくてね」
「よろしくお願いします」
十歳のアイリスは雨に濡れない寝場所と日々の糧を手に入れた。今までは一日にもらう賃金は銅貨5枚。一日分の黒パンを買うとあとは家賃用に残しておかないといけない。朝は前日の黒パンを食べて頼まれた場所に向かう。曜日毎に向かう家や店は決まっている。週に三回のマダムの店ではお給料をもらえない。理由はマダムの持ち部屋に住まわせてもらっているからだった。アイリスがこの屋敷に来るときに
「困ったことがあったら戻っておいで。あの部屋はそのままにしておくよ。ルシアの荷物もあるしね」
と言った。アイリスは今一つ理解できていなかった。
その日の夜、メイドに言われた様に二階の一番いい部屋に薬をもって向かう。これは叔父に渡された薬で煎じたものをティーカップに入れてある。叔父夫婦の使ってる薄い磁器よりももっと繊細で美しいカップだ。
これは食堂の特別な場所に隠していたのを叔父が見つけて使おうとしたのだが1人分しかセットがないので(残りは屋根裏の保管庫にあるのだが、屋根裏にそういうものがあるのをキースは把握していなかった。保管庫は一見埃臭く探し物をするにもものが大量で面倒そうだったのでキースはそこの探索を放棄しのだ。それに異母姉ルシアの部屋からルシアに譲られた、この家の家宝言えそうな大粒の宝石達は自分のものにし、金に換えたからだ。妻を娶るときに渡したブローチもそういう宝飾品の中から適当に選んで渡した、ものである)
キースは何を思ったか毎日の寝る前のお茶をある薬草を自ら煎じていれ、メイドにもっていかせるようになった。キースはこの血のつながらない曾祖母に蛇蝎のごとく嫌われている。
曾祖母は祖母が恋愛で選んだ夫を気に入らなかった。元は隣国の侯爵の子息で貧しすぎて没落した家の息子であるという触れ込みであった。曾祖母が問い合わせると確かにその男はその貴族の息子であり、庶子であった。そして貧乏の理由も先代当主の放蕩が理由でありアイリスの祖母の夫は放蕩の犠牲者、と言えなくはなかった。
曾祖母マリアベルが賛成と言いかねているうちにアイリスの祖母はルシアを身ごもった。一応の体裁を整えて式を挙げ、ルシアが生まれる。アイリスの祖母は体が弱かったのだが、体が戻らないうちから祖母の夫は祖母に無理をさせる。そんなこんなでルシアが1歳半の頃、アイリスの祖母は儚くなってしまった。
そして祖母の夫は使用人の女性とねんごろになっており、アイリスの祖母がなくなって半年、たつかどうかのころに叔父キースが生まれたのだ。
アイリスはまったくそういうことを知らなかった。
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