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安陪友理奈、妖怪の話を聞く
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日も暮れ始めたころ、俺たちは家に着くとリビングへと移動し、俺の隣に安陪さん、正面に玉藻、スウさん、さっちゃんがそれぞれソファに座って対面する。
安陪さんと話をする前に、スウさんたちには事前に事の次第を話していた。皆は任せておけと言わんばかりの様子だったが、正直それでも不安だ。だがこうなってしまった以上、もう腹を括るしかない。そう思っていると、スウさんが話を切り出した。
「さて、陰陽師の。我らの話を聞きに来た・・・とのことだが、何から聞きたい」
「・・・100年前、なぜあなた達が封印されたのか。本当に悪いことをしていないのか。それを聞かせて頂戴」
「よかろう」
そう言ってスウさんは話し始める。内容は俺が以前聞いたことと同じものだった。
安陪さんは途中で口を挟むこともなく、ただ静かに聞いていた。正直それはそれで怖いんだが・・・・。
そうしてスウさんの話が終わるのだが、変わらず安陪さんは黙ったままでいた。
「・・・これがすべてだ。何か聞きたいことはあるか?」
「・・・・・・・・・。」
安陪さんはまだ黙ったまま。たがスウさんもみんなも、安陪さんが口を開くまでじっと待っている。
するとやがて安陪さんが口を開く。
「話は分かったわ。・・・信じるかどうかは、まだ迷うところだけど」
「ふむ」
「ただ・・・薄々気づいてはいたのよね。過去の陰陽師が、善行だけをしていたわけじゃないってこと」
「え、そうなの?」
「ええ。うちにある古い文献なんかを読み漁ったことがあるのだけれど、どうも妖怪どころか、人間さえも悪に仕立て上げたり、今崇徳天皇が言ったように、何もしていない妖怪のせいにして、好き勝手にやりたい放題。本当にこれが陰陽師なのかと疑うことは、確かにあった」
「で、あろうな。まあ確かに、悪さをする妖怪も居なかったわけではない。ただそれでも、やつらの蛮行は目に余るものがあった」
そこまで言うと、スウさんはずずっとお茶を飲む。安陪さんは一度目を瞑り、深く考え込む。そして目を開けて話を続ける。
「・・・・あなたたちは今、木霊君の家に住んでるのよね」
「そうだな」
「・・・ここに来てから、悪さをしたことは?」
「誓って無いと言おう」
「・・・そう。・・・・わかったわ」
そして安陪さんは俺たちを見渡した後、改めて言った。
「ひとまず、あなた達の話は信じるわ。今すぐに封印なんてこともしないと誓う」
「安陪さん!」
「・・・よいのか?」
「私は、悪さをしてない妖怪をわざわざ退治するほど、人でなしのつもりは無いわよ」
安陪さんは一度お茶を飲み、言葉を続ける。
「それに、今のあなた達みたいに、人と妖怪が共存できるというのなら、私としても嬉しいことだわ」
「じゃあ!」
「ただし、今後あなた達が少しでも人に仇をなすようなら、私はためらわずに封印する。それを見極めるために、私もこの家に住むわ。これが条件よ」
「・・・・・・・・・え?」
「うむ!よかろう!歓迎するぞ、陰陽師の」
「ちょっと?」
「私のことは友理奈でいいわ」
「では我のことはスウと呼ぶがいい」
「私は玉藻とお呼びください」
「ウチはさっちゃんって呼ばれてるわぁ」
「ええ、よろしくね」
おかしいな、今両親がいない以上、家主は一応俺なんだけど。なんか勝手に決まっていくよ?
「という訳だから、木霊君もよろしくね」
「ああ、よろしく・・・・・じゃなくて!! 何勝手に決めてんの!?」
「何か問題でも?」
「大ありだろ!年頃の男女が同じ家に住むなんて・・・・!」
「あら、私襲われるのかしら」
「襲わねぇよ!」
「じゃあ問題ないじゃない。大丈夫よ、生活費とかもろもろはきちんと払うから」
「そういう問題じゃ・・・」
「ていうか坊やぁ、それは今更じゃなぁい?」
「そうさな、すでに我らという超美少女が一緒に住んでおるのだからな」
確かにそうだけど。そうだけども!
「それとも何か?友理奈に好意でも抱いているのか?それなら確かに問題だなぁ」
「んな!違うっての!そういう事じゃなくてだなぁ!」
「・・・・祐介さん、本当ですか?」
「何がだよ!」
「本当に、友理奈さんに好意をも抱いてるわけじゃないんですね?」
「だからそう言ってるだろう」
「あら冷たいのね、さっきはあんなに激しく求めてくれたのに・・・・」
「っておい!?誤解されるようなこと言うな!!なにも無かっただろう!!」
「・・・・・・・・ゆ・う・す・け・さ・ん?」
「ひぃ!?お、落ち着け!何も!本当に何も無かったから!!」
「はっはっは!これから騒がしくなりそうだなぁ!」
「そうねぇ」
「お前ら助けろよーーー~~~!!!」
「ふふっ」
どうにか安陪さんに納得してもらうことができたのはいいものの、これからの生活がまた騒がしくなっていくと思うと、やはり俺の心は落ち着かないのだった。
翌日の日曜日、安陪さんは家に荷物を全部運んできた。荷物と言ってもそれほど多くなかったみたいで、半日で荷ほどき等の作業は終了した。・・・ほんとにうちに住むんだよな。なんかまだ非現実的な感覚なんだが。
「よし、これでOKね。ありがとね、手伝ってくれて」
「いや、全然いいよ。けど意外と少なかったね」
「まあ元々仕事をさっさと済ませて、実家に帰る予定だったからね。そんなに荷物もいらなかったってわけ」
「なるほどね。けどもう長引くことは分かってるし、色々買い揃えた方が良さそうじゃない?」
「そうね・・・・木霊君、今日この後空いてるかしら」
「ああ、早速行くか?」
「ええ、そうしましょう」
そう決めるとお互い準備し、一度リビングへ向かう。
「玉藻、ちょっと安陪さんと出かけてくるよ」
「え・・・・・・・デート、ですか?」
「いやそうじゃないけど、安陪さんの生活用品とか、色々買い揃えておかないとって話になってさ」
「あ、ああ、そういうことですか・・・・・。あの、私も行ってもいいですか?」
「うん?まあ構わないけど、夕飯の準備は大丈夫なの?」
「はい、下準備は済ませてありますので、問題ありません」
「そっか、じゃあ玉藻も準備してきて、玄関で待ってるから」
「はい、すぐに」
そう言って玉藻は部屋に向かい準備をする。
玄関で待っていると先に安陪さんがやって来た。
「あ、安陪さん、玉藻も行くことになったから・・・・よかったよね?」
「ええ、むしろ多い方が助かるし、楽しいものね。構わないわ」
「ならよかった」
「それにしても、あなた達は本当に仲がいいわよね」
「そうかな」
「ええ、それこそ、本当の家族みたいに」
「・・・・・そう、か」
本当の家族。そう言われると嬉しい気持ちもあるが、やはり両親のことを思い出す。
以前にも言ったことだが、両親は海外に転勤している。それも俺が小学生の頃から。こんなちっさい子供残して行っちまうのかよ、と思ったこともある。ただ捨てられたのとは違って、ちゃんと生活費を送ってくれるし、定期的に連絡もしてくる。まあだからと言って、俺があの二人を許すつもりもないけど。
小学生の頃は本当に辛かった。家事全般は誰に教わるでもなく一から覚えなきゃいけないかったし、友達と遊びたくても買い物をしなきゃいけなかったし。一番きつかったのは授業参観だったか。みんな親が来てくれている中、俺だけ毎年来なくて、先生に「大丈夫?ご両親に連絡しようか?」って言われたときは、惨めだと思った。
なんで俺はこんな親を持ったんだろうと、何度も思ったっけ。高校に入学してからはそんなこと思わなくなったけど。
そこまで思い返したところで、玉藻が準備を終えて玄関にやって来た。
「お待たせしました」
「ああ、大丈夫。それじゃあ行こうか」
「ええ」
今となってはみんながいてくれるし、新しく安陪さんも住むことになった。騒がしくなるのは目に見えているが、まあ少なくとも寂しいと感じることはないだろう。
そう思いながら、俺たちは買い物へ行くのだった。
その日の夜、私は自室となった部屋のベットに寝転がって、考え事をしていた。
(以前、あの三人の妖力が全く感じられなかった。それは今も変わらない・・・・・ただ)
気のせいかもしれない。本当に微々たるものだったから。けど・・・・。
「三人の妖力、少しだけ強まってないかしら・・・・・もしこの感覚が当たっていて、それが今後も続けば、この生活も案外、長くは無いのかもしれないわね」
もう少し調べる必要がある。そのためにはやはり、これから見極めていかなければ。
私はそう決心して、眠りにつくのだった。
安陪さんと話をする前に、スウさんたちには事前に事の次第を話していた。皆は任せておけと言わんばかりの様子だったが、正直それでも不安だ。だがこうなってしまった以上、もう腹を括るしかない。そう思っていると、スウさんが話を切り出した。
「さて、陰陽師の。我らの話を聞きに来た・・・とのことだが、何から聞きたい」
「・・・100年前、なぜあなた達が封印されたのか。本当に悪いことをしていないのか。それを聞かせて頂戴」
「よかろう」
そう言ってスウさんは話し始める。内容は俺が以前聞いたことと同じものだった。
安陪さんは途中で口を挟むこともなく、ただ静かに聞いていた。正直それはそれで怖いんだが・・・・。
そうしてスウさんの話が終わるのだが、変わらず安陪さんは黙ったままでいた。
「・・・これがすべてだ。何か聞きたいことはあるか?」
「・・・・・・・・・。」
安陪さんはまだ黙ったまま。たがスウさんもみんなも、安陪さんが口を開くまでじっと待っている。
するとやがて安陪さんが口を開く。
「話は分かったわ。・・・信じるかどうかは、まだ迷うところだけど」
「ふむ」
「ただ・・・薄々気づいてはいたのよね。過去の陰陽師が、善行だけをしていたわけじゃないってこと」
「え、そうなの?」
「ええ。うちにある古い文献なんかを読み漁ったことがあるのだけれど、どうも妖怪どころか、人間さえも悪に仕立て上げたり、今崇徳天皇が言ったように、何もしていない妖怪のせいにして、好き勝手にやりたい放題。本当にこれが陰陽師なのかと疑うことは、確かにあった」
「で、あろうな。まあ確かに、悪さをする妖怪も居なかったわけではない。ただそれでも、やつらの蛮行は目に余るものがあった」
そこまで言うと、スウさんはずずっとお茶を飲む。安陪さんは一度目を瞑り、深く考え込む。そして目を開けて話を続ける。
「・・・・あなたたちは今、木霊君の家に住んでるのよね」
「そうだな」
「・・・ここに来てから、悪さをしたことは?」
「誓って無いと言おう」
「・・・そう。・・・・わかったわ」
そして安陪さんは俺たちを見渡した後、改めて言った。
「ひとまず、あなた達の話は信じるわ。今すぐに封印なんてこともしないと誓う」
「安陪さん!」
「・・・よいのか?」
「私は、悪さをしてない妖怪をわざわざ退治するほど、人でなしのつもりは無いわよ」
安陪さんは一度お茶を飲み、言葉を続ける。
「それに、今のあなた達みたいに、人と妖怪が共存できるというのなら、私としても嬉しいことだわ」
「じゃあ!」
「ただし、今後あなた達が少しでも人に仇をなすようなら、私はためらわずに封印する。それを見極めるために、私もこの家に住むわ。これが条件よ」
「・・・・・・・・・え?」
「うむ!よかろう!歓迎するぞ、陰陽師の」
「ちょっと?」
「私のことは友理奈でいいわ」
「では我のことはスウと呼ぶがいい」
「私は玉藻とお呼びください」
「ウチはさっちゃんって呼ばれてるわぁ」
「ええ、よろしくね」
おかしいな、今両親がいない以上、家主は一応俺なんだけど。なんか勝手に決まっていくよ?
「という訳だから、木霊君もよろしくね」
「ああ、よろしく・・・・・じゃなくて!! 何勝手に決めてんの!?」
「何か問題でも?」
「大ありだろ!年頃の男女が同じ家に住むなんて・・・・!」
「あら、私襲われるのかしら」
「襲わねぇよ!」
「じゃあ問題ないじゃない。大丈夫よ、生活費とかもろもろはきちんと払うから」
「そういう問題じゃ・・・」
「ていうか坊やぁ、それは今更じゃなぁい?」
「そうさな、すでに我らという超美少女が一緒に住んでおるのだからな」
確かにそうだけど。そうだけども!
「それとも何か?友理奈に好意でも抱いているのか?それなら確かに問題だなぁ」
「んな!違うっての!そういう事じゃなくてだなぁ!」
「・・・・祐介さん、本当ですか?」
「何がだよ!」
「本当に、友理奈さんに好意をも抱いてるわけじゃないんですね?」
「だからそう言ってるだろう」
「あら冷たいのね、さっきはあんなに激しく求めてくれたのに・・・・」
「っておい!?誤解されるようなこと言うな!!なにも無かっただろう!!」
「・・・・・・・・ゆ・う・す・け・さ・ん?」
「ひぃ!?お、落ち着け!何も!本当に何も無かったから!!」
「はっはっは!これから騒がしくなりそうだなぁ!」
「そうねぇ」
「お前ら助けろよーーー~~~!!!」
「ふふっ」
どうにか安陪さんに納得してもらうことができたのはいいものの、これからの生活がまた騒がしくなっていくと思うと、やはり俺の心は落ち着かないのだった。
翌日の日曜日、安陪さんは家に荷物を全部運んできた。荷物と言ってもそれほど多くなかったみたいで、半日で荷ほどき等の作業は終了した。・・・ほんとにうちに住むんだよな。なんかまだ非現実的な感覚なんだが。
「よし、これでOKね。ありがとね、手伝ってくれて」
「いや、全然いいよ。けど意外と少なかったね」
「まあ元々仕事をさっさと済ませて、実家に帰る予定だったからね。そんなに荷物もいらなかったってわけ」
「なるほどね。けどもう長引くことは分かってるし、色々買い揃えた方が良さそうじゃない?」
「そうね・・・・木霊君、今日この後空いてるかしら」
「ああ、早速行くか?」
「ええ、そうしましょう」
そう決めるとお互い準備し、一度リビングへ向かう。
「玉藻、ちょっと安陪さんと出かけてくるよ」
「え・・・・・・・デート、ですか?」
「いやそうじゃないけど、安陪さんの生活用品とか、色々買い揃えておかないとって話になってさ」
「あ、ああ、そういうことですか・・・・・。あの、私も行ってもいいですか?」
「うん?まあ構わないけど、夕飯の準備は大丈夫なの?」
「はい、下準備は済ませてありますので、問題ありません」
「そっか、じゃあ玉藻も準備してきて、玄関で待ってるから」
「はい、すぐに」
そう言って玉藻は部屋に向かい準備をする。
玄関で待っていると先に安陪さんがやって来た。
「あ、安陪さん、玉藻も行くことになったから・・・・よかったよね?」
「ええ、むしろ多い方が助かるし、楽しいものね。構わないわ」
「ならよかった」
「それにしても、あなた達は本当に仲がいいわよね」
「そうかな」
「ええ、それこそ、本当の家族みたいに」
「・・・・・そう、か」
本当の家族。そう言われると嬉しい気持ちもあるが、やはり両親のことを思い出す。
以前にも言ったことだが、両親は海外に転勤している。それも俺が小学生の頃から。こんなちっさい子供残して行っちまうのかよ、と思ったこともある。ただ捨てられたのとは違って、ちゃんと生活費を送ってくれるし、定期的に連絡もしてくる。まあだからと言って、俺があの二人を許すつもりもないけど。
小学生の頃は本当に辛かった。家事全般は誰に教わるでもなく一から覚えなきゃいけないかったし、友達と遊びたくても買い物をしなきゃいけなかったし。一番きつかったのは授業参観だったか。みんな親が来てくれている中、俺だけ毎年来なくて、先生に「大丈夫?ご両親に連絡しようか?」って言われたときは、惨めだと思った。
なんで俺はこんな親を持ったんだろうと、何度も思ったっけ。高校に入学してからはそんなこと思わなくなったけど。
そこまで思い返したところで、玉藻が準備を終えて玄関にやって来た。
「お待たせしました」
「ああ、大丈夫。それじゃあ行こうか」
「ええ」
今となってはみんながいてくれるし、新しく安陪さんも住むことになった。騒がしくなるのは目に見えているが、まあ少なくとも寂しいと感じることはないだろう。
そう思いながら、俺たちは買い物へ行くのだった。
その日の夜、私は自室となった部屋のベットに寝転がって、考え事をしていた。
(以前、あの三人の妖力が全く感じられなかった。それは今も変わらない・・・・・ただ)
気のせいかもしれない。本当に微々たるものだったから。けど・・・・。
「三人の妖力、少しだけ強まってないかしら・・・・・もしこの感覚が当たっていて、それが今後も続けば、この生活も案外、長くは無いのかもしれないわね」
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※同作は 小説家になろう にて重複投稿しています。
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