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海が綺麗ですね。
78 那ノ原 一正Side
しおりを挟む「はあ…はぁ…。」
蛇島を追いかけて走ったが、結局何処に居るのか分からなくなってしまった。
(ああ…本当に……。)
自分が情けなくて仕方がない。
(好きな相手一人を守る事も出来ない…守らせてもらえない……。)
あまつさえ、あんな辛そうな顔をさせるなど……俺は一体何がしたいんだ…。
そんな自己嫌悪に陥ってたら
「触んな!!」
「!、蛇島…!」
上の階から、蛇島の声が聞こえた。
さっきまで上の階から3階に下に居たから気付かなかった。
俺は疲れも忘れて走った。
「蛇島!」
「!」
此方を振り向いた蛇島の顔に、先程までなかった傷が出来ていた。
「蛇島?、その顔どうし…あっ、待て!」
振り向いたと思ったら、また走って行ってしまった。
「蛇島!逃げないでくれ!」
蛇島を再び追いかけるが、距離はグングン離されていく。
脚も疲労が溜まり痛くなるばかりだ
けれど
(諦める訳にはいかない…!)
蛇島は下の階へと降りていった、ならば…
窓に足をかけると、そのまま飛び降りた。
ダンッ!
4階から降りるのは少々不安だったが、身体能力には自信があった。
(下から上っていけば、蛇島と鉢合わせる筈だ!)
見つかってまた逃げられるのを避けるため、足音を立てずに、静かに階段を上った。
タタタタタッ
少しずつ、足音の音が大きくなってくる
そして
「!!、お前、どうやって…」
やっと、蛇島を捕まえることが出来た。
「蛇島、捕まえたぞ…。」
「っ!、離せ…!」
俺は蛇島の腕をガッチリ掴み離さない、蛇島も振り払う事が出来ない様子だ。
「離さない、お願いだから逃げないでくれ。」
「……話すことなんて…ない。」
「蛇島にはなくとも俺にはある、山程あるんだ。」
切実に、そう願う。
「そんなの…俺には関係ない。」
そう言いながら、苦しそうに、何かを耐える瞳をしている。
「あるよ、お前の話だから。」
「俺の話なら、お前には関係ないだろ。」
「だからだろ、蛇島の事だから、俺とお前は他人じゃない、俺の一方的な感情だとしても好きなんだ…。」
「!、やめろ…そんな事聞きたくねぇ。」
顔を背ける蛇島、俺の顔を見ようとはしない
「俺を見ろ、蛇島。」
腕を掴んだまま、蛇島の顔を覗き込む。
離してしまうと、何処かへ消えてしまいそうで。
「他でもないお前が、好きなんだよ
。誰がなんと言おうが俺はお前を愛してる。だから知りたい触れたい求めてしまうし求められたい、この感情を受け入れろとは言わない。けれど、知ってほしいんだ。お前の事をこんなにも愛してる奴が居るんだと。」
「…………。」
蛇島は恐る恐るという風に目を合わせる。
しかし、その目にはまだ疑念や怯えが垣間見える。
「大丈夫、俺はお前を見放さない。俺は蛇島を、神楽を諦めない」
「!」
バッと顔を上げる、その目に先程の暗さはなく、どちらかと言えば戸惑いが見られた。
「愛してるよ、自分がこんなに人を愛する事が出来るんだと初めて知った。
そう思ったら、もう止まらなかったし止められなかった。
初めてなんだ。神楽は俺に色々な初めてをくれた
誰かを愛おしいと思えば止まらなくなる事、四六時中頭から離れなくなる事、嫉妬して苦しくなる事、独占したいと心から思う事、自分も愛されたいと思う事……
もう一度言わせてくれ
愛してる、世界の何よりも誰よりも、
愛してる。」
“俺と、付き合ってくれませんか?”
笑って、そう伝えた
神楽は、静かに泣きながら、頷いた。
その後は、ただただ抱き締めた。
もう腕を掴んでおく必要なんてなかった。
自分の腕の中に居るのは、頼り方を知らない、それなのに頑張って強くなろうとしていた子供だった。
海が綺麗ですね
=貴方に溺れています
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