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誰かこの状況を説明してくれ…
4 東雲 昴Side
しおりを挟む「はぁ~、とにかく、俺も練習行くか。」
少しの間動けずにいた俺は、ジッとしていても仕方がないと、練習しに行くことにした。
(そういえば、俺彼の名前すら知らない。)
台本は毎回ザッと目を通すくらいなので、名前は把握していなかった。
「え~っと、攻め役の名前は………崎守正人か…。」
声優名は草野 結豊と言うらしい。
(草野結豊…聞いた事ないな、まだ新人かな?)
恐らくそうだろう、俺はある程度の声優は確認しているが、彼の名前は聞いた事がなかった。
「さてと、他の人は集まってんのかな。」
ボイストレーニングの部屋に入ると、あまり人が集まってる様子はなかった。
(本番のまだ2時間前だからな。)
居るのは大体主要人物を担当する声優さん達だ。
確か、俺がする受け役の丸茂 庵が攻め役である高原 七星に叶わないと思ってる恋をする物語である。
しかし、本当は高原の方も丸茂を愛しており、高原は自分に依存させるために普段はとても優しく接するのに、時折素っ気ない態度をとる。それを繰り返すという、高原Sideを聞いて初めて“切ないラブストーリーがハッピーエンドになる物語”ではなく、“最初から最後まで攻めの計画通りに進んでいるヤンデレストーリー”である事に気付く。
(当て馬役とかも居たよな、名前は……。)
「よぁ~、昴ちゃん久しぶり~。」
間延びした声で後ろから抱きついてきたのは
「!、おい何してんだ、離せ。」
「え~、いいじゃんこれくらい。」
こいつは野乃斗 絆、高校の同級生だ。
声優になってから再開した。
「はぁ~。」
「ため息は何気に傷付くな~。」
(傷付いてる奴の顔じゃないだろ。)
「それより、お前は何役なんだ?」
「所謂当て馬かな。」
(お前かよ。)
「じゃ、俺はあっちで練習するから、初受け役頑張れよ。」
「はいはい、どうもありがとう。」
野乃斗は俺とは反対側の場所に行った。
今回は、男前受け特集というものに向けた作品らしい。
(それなら俺が受け役なのも頷けるな。)
「あっ!、昴さん!さっきぶりですね!」
「えっ?、ああ、そうだね。」
横に居たのは崎守君だった。
「崎守君、まだ2年目だよね?仕事はどんなのが多いの?」
「…………。」
質問したが返ってくる気配がない……。
「えっと…崎守君?」
「それ」
「え?」
顔を見てなかったので気が付かなかったが、崎守君は凄く不満そうな顔をしていた。
「あー、それって?」
「崎守君って、イヤです。」
「………それだけ?」
「はい。」
(子供かよ……。)
「じゃあなんて呼べば?」
「好きに呼んでください!」
途端に顔をキラキラ輝かせてそう言った。
(好きにって言われてもなぁ~)
「ん~、そのままでもいいかな?正人君って。」
「君付けはちょっと不満ですけど…それで大丈夫です。」
確かに不満そうな顔をしているが、名前呼びが嬉しかったのか、どことなく顔が明るい。
(なんだか、主人に尻尾を振ってる犬みたいだな。)
彼も結構背が高いが、俺は180cmを若干超えるくらいあるので、わんことまではいかないが、大型犬を見ている気分になる。
「何笑ってるんですか?」
どうやら気付かぬ内に笑っていたらしい。
「ああごめんね、なんだか、大型犬を見ているみたいで可愛くて。」
そう言うと、ジッとこっちを見たまま黙ってしまった。
(怒ったかな?)
「怒った?ごめんね。」
「いえ、怒ったんじゃないんです。」
「?、ならなんでいきなり黙って……。」
言い終わらぬ内に、彼の口が俺の耳に寄せられた。
「ただ、貴方の方が可愛いと思っただけです」
「!」
「じゃあ、俺もう一回練習してきますね!」
「え、ああ…」
手を振ると、彼は行ってしまった。
(………中々、やってくれるね……。)
俺の周りにはあまり人が居なかった。
(良かった、人が少なくて)
でないと、真っ赤になってしまった顔を大勢に見られてしまう。
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