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誰かこの状況を説明してくれ…

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 「えっと……俺達は初対面だよね?」
 「はい!!」
 (何故そんなに自信満々で答えるか…。)
 「なら、付き合ってください……とは?
 もしかして場所とかの事かな?だとしたら俺が勘違いを……。」
 「そのままの意味で受け取ってもらって結構です!」

 食い気味で返された。

 「ああ……尚更なおさら意味を説明して欲しいんだけど……俺達はさっきも言った通り初対面で、告白をされても無理かな。」

 俺はなるべく丁寧に答える。
 争い事は好きではないし、性格も温厚な方だと思う。

 (時々怖い事を言う、とはよく言われるけど。)
 「あ、それもそうですね、すみません。俺、念願の昴さんに会えると思うと舞い上がっちゃって…。」

 焦りより照れが強いように見える。

 (念願って、どういう事だ?)
 「まず、俺の上から退いてくれないかな?」
 「嫌です。」
 「は?」

 ついつい怖い声を出してしまった。

 「いやでも、俺もいつまでも誰かに押し倒されてるのは、決していい気分ではないんだけど?」
 「すみません、でも多分もう少しで退けるのでもうちょっと我慢してください。」

 いい笑顔でそう言われてしまった。

 (もう少しで退けるってなんだよ…さっさと退いてくれ。)

 「俺、ずっと昴さんのファンで大学生の頃も昴さんが出てる作品は全部聞いてて、昴さんに憧れて声優目指したんです!だから、会えたのが嬉しくて。」
 「………ありがとう、そこまで言ってくれて、嬉しいよ。」  

 嬉しいのは本当だ。
 まぁ、だからといって、付き合うのとは別の話だ。

 「本当に嬉しいよ、けど、君と付き合う事は出来ないかな。」
 「……俺の事、よく知らないからですか。」
 「そっちもあるけど、君も俺の事よく知らないでしょ?
 知ってると思うけど、俺はほとんど自分の事公表してないから。だから、ごめんね。」
 「……………なら、これから知っていってください。」
 「えっ?」
 「ニ週間、俺とお試しで恋人になってください。」

 そんな事できる訳ない、そう言おうと思ったのに、彼の顔はあまりにも真剣で、言う事ができなかった。

 (なんで…そこまで……。)
 「………………分かった……お試しなら。」
 「!!、ありがとうございます!!!」

 顔を輝かせて、抱きつこうとしてくる。

 「ただし!」
 
 彼の口の前に人差し指たてる。

 「お試し期間はニ週間じゃなくて一週間、これはゆずれないよ。」

 ニ週間後は家族が家に来る予定だからだ。

 「…………分かりました。」

 ものすごく不満そうな顔をしながらも、俺の意志が揺らがない事に気付いたのか、渋々承諾しょうだくした。

 「あの、俺達は今恋人ってことですよね?」
 「まぁ……そうなるね。」

 何故だろうか、心なしか顔が近づいて来てるような…?

 「なら、キスだけ、していいですか?」
 「はぁ?」
 「安心してください!お試し期間はキス以上の事はしません!」
 (どこをどう安心すればいいんだ?)

 そう思いながらも、彼はやめようとする様子はなく、どちらかと言うとより近くなって……

 「あ、ちょっ!」

 そのままキスされてしまった……。

 触れるだけのキスだったが、それでも許可なくするのはどうなんだ……?

 「ありがとうございました、よろしくお願いします。 」

 そろそろ仕事ですよね?俺練習してくるんで部屋居て大丈夫ですよ!

 それだけ言い残し、俺を自分の部屋に置いて行ってしまった。

 「これからもって……付き合う気満々かよ……。」

 それに、俺を押し倒してたのは多分コレが目的だよな?
 つまり、最初からお試し期間をもうけるつもりで、俺がそれを承諾するのも予想してたってことだよな?

 (ああ…結構、マズイ奴に。)
 「捕まったかもしれない……。」






















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