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PHASE3ー遠すぎる憧れー

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「それで?そろそろ収穫の時期がきたのかしら?」


「ククッ、そうしたいのは山々ですがね…まだまだ彼には足りない物がありますので暫くはお預けですね」


「あら、相変わらず悪趣味な人!あまり目立つようなことはしない方が…ってそれは愚問でしたわね」


「オーナーはよくご存知ですからね、恐縮です」


「その子のことを気にかけることは結構だけれども…私のところの子のこともしっかりとよろしくお願いしますわね、何せこれからの時代を風靡して最前線で活躍してもらう大事な子なのですから」


「勿論です、大事な大事な子と聞いていますからね
表舞台では主役で脚光を浴びてもらいながら、こっちはこっちでしっかりと教え込んでいますのでご安心ください!」


「フフッ、期待していますわ…」







こうして始まった舞台公演
2日目以降、心の中では大河のことを気に掛けつつも表情には出さずに舞台に立った

だがこのモヤモヤを抱えたまま舞台に集中できるはずはないと思ったので、本番が始まる直前には舞台役者へとスイッチを切り替えた

一方大河は日を追うごとに明らかな演技力の変化、いわば磨きがかかっていた
より熱く、より悲しみを乗せて役に徹するその姿はまるであの時の光景がフラッシュバックしてしまうかのような気迫さが垣間見えた

初日は約半数が関係者や知り合いで埋まっていた座席も日が経つにつれて一般客の割合が増えていき、最終日には無事ソールドアウトとなり舞台は幕を閉じた


「皆、お疲れ様!!今日までよくこんなジジイのスパルタ練習に耐えてくれた!!
俺のネームバリューが一人歩きしているから過度な期待が込められていただろうが関係者の方々は、新人が大多数を占めているとは思えないくらいに非常に見応えのある舞台だとお褒めいただいたから確実な手応えがあったはずだ」


最終日を終えて打ち上げ会場で響く監督の言葉
緊張の糸が解けたのかその時の辛さを口に出したり達成感のあまり涙するメンバーもいた


「今日はこのチームで集まる最後の日だ、思う存分飲んで食べて楽しんで語り合っていい思い出を作ってくれ!それじゃ、乾杯!!」


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