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PHASE3ー遠すぎる憧れー
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しおりを挟む「はっきり言うぞ!!今関係者と話をして明日以降の公演を中止にしようか検討しているところだ!!」
「ッ!?」
「えっ…な、なんでですか…」
「決まっているだろ!!あんなど下手くそな演技でお客さんから金取るつもりか!?
お前は気づいていないだろうが…他の連中の方がまだマシな演技をしてるぞ!!
なのに主役があんな演技じゃ全部ぶち壊しだ!!!」
「ご、ごめんな…さい…でも、僕も初めての舞台なので最後まで全力で頑張ります!!至らなかった点も時間がある限り改善します!!なので…」
「至らぬ点も何もそもそも演技のレベルが低すぎるんだから話にならんわ!!!
ああ…もう勘違いしないために正直に話すとな、今回の舞台の配役を決めることになった際に、お前の事務所がどこからかそれを嗅ぎつけてゴリ押しでお前を推薦したんだよ」
「うちの事務所が…ですか?」
「おう…だが最初は断ったんだ
仮にも自分のネームバリューや過去の作品に対する実績を世間がどう見ているのかくらいは容易に想像できる、だからゴリ押ししたところでソイツの能力がなければ良い作品にはならないからな」
「でも結果的に僕はこうして舞台の主役としてここにいます…それは一体…」
「勿論お前の事務所の人間もその一回だけで挫けることはなくて何度もアポを取ってきたよ…本当にしつこさだけは天下を取れるんじゃないかってくらいの勢いでな
ただその熱意を無下にするのも人でなしと思ったから、俺はそのゴリ押しを受け入れる条件を一つ付けた」
「じ、条件ですか…それは一体どんな…」
「業界内で俺の稽古の厳しさは良い意味でも悪い意味でも浸透している、当然俺の監督する舞台だから新人君にも手を抜かずにやるということだ
それで仮に新人君が潰れてしまっても責任は負えないということが俺から唯一提示した条件だ
その熱量であてがってくるのなら当然相応のリスクを背負うことになるのはどの業界も変わらない
そう、お前は数百人のオーディションを飛び越えてしかも主役の座についたのだからな」
事務所からの推薦は珍しいことではない
俗に言う「期待の新人」や「超演技派新人」等と言ってパイプの繋がっているドラマや舞台の監督やディレクター等に出演の交渉にあたる
そのジャンルは多岐に渡り、それこそ売れるかどうかは事務所力の大きさで左右されると言っても過言ではない
「大河が新人で何故主役なんだと始めは思ったけど、あのビーエアー所属と聞いて俺含めて誰もがすぐに納得したからな
父さんも行っていたけど、名もない小さな養成所の監督には大手からの営業すらもないから芸能事務所と一緒で埋もれてしまいがちだが、茂森監督という男だからこそ大手からの営業がくるというのはさすがだ…」
「だから大河、事務所から言われているだろうから…わかっているだろう?」
「は、はい…茂森監督は業界屈指のスパルタだからどれだけ厳しくて過酷なことがあっても逆らってはいけない、それはこの業界を生き残る為に絶対に通る門なのだからと…言われました」
「そうだ、だから…」
そう呟くと茂森監督は手に持っていた鞭を横に投げ捨てて大河の正面に仁王立ちをした
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