交錯する群像劇

妖狐🦊🐯

文字の大きさ
上 下
58 / 185
PHASE3ー遠すぎる憧れー

51

しおりを挟む



「はっきり言うぞ!!今関係者と話をして明日以降の公演を中止にしようか検討しているところだ!!」


「ッ!?」


「えっ…な、なんでですか…」


「決まっているだろ!!あんなど下手くそな演技でお客さんから金取るつもりか!?
お前は気づいていないだろうが…他の連中の方がまだマシな演技をしてるぞ!!
なのに主役があんな演技じゃ全部ぶち壊しだ!!!」


「ご、ごめんな…さい…でも、僕も初めての舞台なので最後まで全力で頑張ります!!至らなかった点も時間がある限り改善します!!なので…」


「至らぬ点も何もそもそも演技のレベルが低すぎるんだから話にならんわ!!!
ああ…もう勘違いしないために正直に話すとな、今回の舞台の配役を決めることになった際に、お前の事務所がどこからかそれを嗅ぎつけてゴリ押しでお前を推薦したんだよ」


「うちの事務所が…ですか?」


「おう…だが最初は断ったんだ
仮にも自分のネームバリューや過去の作品に対する実績を世間がどう見ているのかくらいは容易に想像できる、だからゴリ押ししたところでソイツの能力がなければ良い作品にはならないからな」


「でも結果的に僕はこうして舞台の主役としてここにいます…それは一体…」


「勿論お前の事務所の人間もその一回だけで挫けることはなくて何度もアポを取ってきたよ…本当にしつこさだけは天下を取れるんじゃないかってくらいの勢いでな

ただその熱意を無下にするのも人でなしと思ったから、俺はそのゴリ押しを受け入れる条件を一つ付けた」


「じ、条件ですか…それは一体どんな…」


「業界内で俺の稽古の厳しさは良い意味でも悪い意味でも浸透している、当然俺の監督する舞台だから新人君にも手を抜かずにやるということだ
それで仮に新人君が潰れてしまっても責任は負えないということが俺から唯一提示した条件だ

その熱量であてがってくるのなら当然相応のリスクを背負うことになるのはどの業界も変わらない
そう、お前は数百人のオーディションを飛び越えてしかも主役の座についたのだからな」


事務所からの推薦は珍しいことではない
俗に言う「期待の新人」や「超演技派新人」等と言ってパイプの繋がっているドラマや舞台の監督やディレクター等に出演の交渉にあたる
そのジャンルは多岐に渡り、それこそ売れるかどうかは事務所力の大きさで左右されると言っても過言ではない


「大河が新人で何故主役なんだと始めは思ったけど、あのビーエアー所属と聞いて俺含めて誰もがすぐに納得したからな
父さんも行っていたけど、名もない小さな養成所の監督には大手からの営業すらもないから芸能事務所と一緒で埋もれてしまいがちだが、茂森監督という男だからこそ大手からの営業がくるというのはさすがだ…」


「だから大河、事務所から言われているだろうから…わかっているだろう?」


「は、はい…茂森監督は業界屈指のスパルタだからどれだけ厳しくて過酷なことがあっても逆らってはいけない、それはこの業界を生き残る為に絶対に通る門なのだからと…言われました」


「そうだ、だから…」


そう呟くと茂森監督は手に持っていた鞭を横に投げ捨てて大河の正面に仁王立ちをした


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます

夏ノ宮萄玄
BL
 オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。  ――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。  懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。  義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。

サンタからの贈り物

未瑠
BL
ずっと片思いをしていた冴木光流(さえきひかる)に想いを告げた橘唯人(たちばなゆいと)。でも、彼は出来るビジネスエリートで仕事第一。なかなか会うこともできない日々に、唯人は不安が募る。付き合って初めてのクリスマスも冴木は出張でいない。一人寂しくイブを過ごしていると、玄関チャイムが鳴る。 ※別小説のセルフリメイクです。

美人に告白されたがまたいつもの嫌がらせかと思ったので適当にOKした

亜桜黄身
BL
俺の学校では俺に付き合ってほしいと言う罰ゲームが流行ってる。 カースト底辺の卑屈くんがカースト頂点の強気ド美人敬語攻めと付き合う話。 (悪役モブ♀が出てきます) (他サイトに2021年〜掲載済)

告白ゲームの攻略対象にされたので面倒くさい奴になって嫌われることにした

雨宮里玖
BL
《あらすじ》 昼休みに乃木は、イケメン三人の話に聞き耳を立てていた。そこで「それぞれが最初にぶつかった奴を口説いて告白する。それで一番早く告白オッケーもらえた奴が勝ち」という告白ゲームをする話を聞いた。 その直後、乃木は三人のうちで一番のモテ男・早坂とぶつかってしまった。 その日の放課後から早坂は乃木にぐいぐい近づいてきて——。 早坂(18)モッテモテのイケメン帰国子女。勉強運動なんでもできる。物静か。 乃木(18)普通の高校三年生。 波田野(17)早坂の友人。 蓑島(17)早坂の友人。 石井(18)乃木の友人。

こっそりバウムクーヘンエンド小説を投稿したら相手に見つかって押し倒されてた件

神崎 ルナ
BL
バウムクーヘンエンド――片想いの相手の結婚式に招待されて引き出物のバウムクーヘンを手に失恋に浸るという、所謂アンハッピーエンド。 僕の幼なじみは天然が入ったぽんやりしたタイプでずっと目が離せなかった。 だけどその笑顔を見ていると自然と僕も口角が上がり。 子供の頃に勢いに任せて『光くん、好きっ!!』と言ってしまったのは黒歴史だが、そのすぐ後に白詰草の指輪を持って来て『うん、およめさんになってね』と来たのは反則だろう。   ぽやぽやした光のことだから、きっとよく意味が分かってなかったに違いない。 指輪も、僕の左手の中指に収めていたし。 あれから10年近く。 ずっと仲が良い幼なじみの範疇に留まる僕たちの関係は決して崩してはならない。 だけど想いを隠すのは苦しくて――。 こっそりとある小説サイトに想いを吐露してそれで何とか未練を断ち切ろうと思った。 なのにどうして――。 『ねぇ、この小説って海斗が書いたんだよね?』 えっ!?どうしてバレたっ!?というより何故この僕が押し倒されてるんだっ!?(※注 サブ垢にて公開済みの『バウムクーヘンエンド』をご覧になるとより一層楽しめるかもしれません)

逃げるが勝ち

うりぼう
BL
美形強面×眼鏡地味 ひょんなことがきっかけで知り合った二人。 全力で追いかける強面春日と全力で逃げる地味眼鏡秋吉の攻防。

【幼馴染DK】至って、普通。

りつ
BL
天才型×平凡くん。「別れよっか、僕達」――才能溢れる幼馴染みに、平凡な自分では釣り合わない。そう思って別れを切り出したのだけれど……?ハッピーバカップルラブコメ短編です。

熱中症

こじらせた処女
BL
会社で熱中症になってしまった木野瀬 遼(きのせ りょう)(26)は、同居人で恋人でもある八瀬希一(やせ きいち)(29)に迎えに来てもらおうと電話するが…?

処理中です...