交錯する群像劇

妖狐🦊🐯

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PHASE1ーそれぞれの日々ー

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…ぁさん…母さん!!
やだよ…一人で行かないで!!僕も連れて行ってよ!!

必死に母の腕を掴み引き止めようとする子供


「ダメ、あなたはここに残りなさい…私はもう限界なの
今はわからないだろうけど…いつか、将来わかる時がくるから」


まだ小学校に入って間もない我が子を優しく諭すように話す母親


「わかんないよ…お母さんがいないと僕ひとりぼっちだよ…お父さんいつも遅いもん…」

「ごめんね、ごめんね…」







「…ぁさん」


…夢から意識が戻ってきた
入院して5日、始めは朝日の差し込みもあって眩しかったこの真っ白な天井にも段々と慣れてきたその目には自然と涙が流れていた


「あの時の記憶…久しぶりに母さんの顔を見たな…」


朝食をとり採血をしていつものようにベッドの上で安静にして傷の治りをただひたすら待つ
話によるともうすぐ退院できるそうだ

ヤマト達がお見舞いに来てくれた時は嬉しかったな…
正直傷の舐め合いのような関係かと思っていたけど、そう思っていたのは俺だけだったみたいだ

アイツ…父さんも今日からまた仕事って言ってたけど、ずっと看病してくれたなあ…
最初はギクシャクしてて悪態ばっかりついてたけど少しずつ話していくうちに父さんの想いも聞くことができて、二人とも気持ちの伝え方が下手くそなのがやっぱり親子なんだなと笑い合った


こうして数日後、退院の予定日を迎えた慶太
平日の昼間ということでいつものメンバーからは病院に行って見送りに行けないことを事前に聞いていた
最後の検査でも問題がなかったので無事に退院を迎えた

父さんが病院に着くまでの間、一週間ぶりの外を感じながら待っていると信也さんが姿を現した


「おっ慶太くん、間に合った!退院おめでとう」

「信也さん、ありがとうございます!それと…この前はご迷惑をおかけしました」

「いいよいいよ、一時はどうなるかと思ったけど怪我の治りもお父さんとの関係も順調そうだから安心したよ」

「信也さんのおかげです!あの日信也さんがいなかったら、今の俺はいなかったですし…」

「大したことはしていないよ、でもそれがきっかけになったなら良かった
また悩むことがあれば相談においでよ
少なくとも君のお父さんが同じことを繰り返すようなら部長権限で強制的に帰らせるから」

「し、信也さん!もうそんなことしないですって!
ですが二度もしてしまった以上、監視はお願いします…」


いつの間にか車を横につけていた雄大が慌てて会話に割り込む


「おお雄大いつの間に!まあ任せておけ!
それと慶太くん、退院早々すまないが2時間ほどお父さんを借りるよ」

「ん?」

「ちょっと溜まってた仕事でな、パッと終わらせて帰るから晩飯どこに行きたいか決めておいてくれな!」

「相変わらず仕事人間だな…まあ信也さんがいるから安心できていいけど…今晩は焼肉だからな!!」


自宅に着き慶太を降ろした後、雄大は信也の車に乗って会社へ…
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