交錯する群像劇

妖狐🦊🐯

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PHASE1ーそれぞれの日々ー

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3ヶ月前



「ありがとうございました!引き続きよろしくお願いします!」


取引先を後にした青年、ビシッと決めたスーツに明るくハキハキと良いテンポで話をするその姿に取引先の間でも上場の評判だ


プルルルル


「はい!アドバンスの林です!この前の件ですね…
あ、ありがとうございます!直近でいつ頃お時間いただけますか?はい、わかりました!
今夜契約書を持って伺います!!」


ピッ


っと…今夜も遅くなるな…でもせっかく新しい契約が取れるんだから先方の気が変わる前に行動しなきゃな
周りからいい噂も流れてきているし、今が頑張りどきだ…!!

忙しなく仕事に打ち込んでいる彼は「林 雄大(35)」

有名企業のアドバンスに入社してから5年、持ち前の明るさとテキパキとした行動力で未経験での中途採用にも関わらず営業成績をグングン伸ばしている
その甲斐あってか最近は昇進の話も出てきているようで順調ではあるが、その分プライベートではあまり時間を割けていない日々が続いていた



21:00



さて、そろそろ風雲商事へ伺う時間だ…

書類を確認して向かう雄大、エレベーターを待っていると後ろから声をかけられた


「よっ、雄大くんお疲れ!今日初めて顔見たよ」

「清川部長!お疲れ様です!」

「ハハ、そんなにかしこまらなくていいよ!
周りに誰もいないんだし!」

「そ、そうっすね!信也さん!」


声をかけてきたのは「清川 信也(38)」
趣味のサッカーを通じて出会い意気投合、年もさほど離れておらず家も同じ地区ということで仲の良い友人である


「その書類…もしかしてこれから取引先にいくのか?
もう21時過ぎだぞ?」

「まあ…そんなところです!でも風雲商事なので打ち合わせが終わったらそのまま直帰します!」

「風雲か、確かに会社戻るより直帰した方が近いな!
あんま無理すんなよ!雄大のいい話はよく耳にするけど、逆に頑張りすぎてないか心配だな」

「心配かけちゃってすんません、でもここが頑張りどきだと思ってるんで!!
体調だけは崩さないように気をつけてます!」

「そっか、まあ何かあればすぐに頼れよな!
それにタイムカードはしっかり把握してるから、限度を超えそうなら強制的に止めるからな!」

「管理職っすもんね!信也さんには誤魔化し効かないっす」


信也さんは友人でもあるがあの年齢で部長にまで昇進するほどの仕事ぶりや周りからの人望が厚いので尊敬と憧れの存在でもある
プライベートで会っている時とは違う魅力が溢れていて、エレベーターを降りて外に出るまでの数分間でさえ心拍数が上がってしまう


「それじゃお先に、たまには息子くんにも時間割いてやれよ!」

「ウ、ウッス!!」


ああ…ドキドキした…サッカーしたり一緒に飲んでいる時にはこんな気持ちなかったのに、間近で信也さんの仕事ぶりを見ていたらどんどん惹かれていって…ホント魔性の人だよな

高揚する気持ちを抑えながら取引先へ向かいひと通りの打ち合わせを終えて帰路に着く


「疲れた…今日も日付が変わるギリギリだ…」

ここ最近は日付を跨ぐことも度々ある
定時で帰ることもこの一年ほぼないからワークバランスはすこぶる悪い
そのせいか息子とのコミュニケーションもあまり取れていないから問題である

こんな時間に帰ってきても息子が起きているはずもないとシャワーを浴びて眠りにつく





「親父…」


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