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湖畔の城

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「大丈夫だよ。」

そんな僕の不安をかき消すようにコウジンが言う。

「リンはね、コウの事を充分好きでいてくれてるよ?ワンコみたいだって思ってるでしょ?コウはリンに懐いてるから、リンのワンコでいられたらものすごく幸せなんだよ。リンは『コウほどの愛情を返せない』って罪悪感を持ってるみたいだけど、コウはリンが好きすぎて愛が常に暴走してるから。」

僕は黙ってコウジンを見つめる。

「今オレはコウジンだからコウの時より冷静だと思う。そのオレの意見を言わせて?
まず、コウはリンに執着しすぎなんだよ。それを受け止めて許してくれる今のリンは充分コウを好きなんだって。
だって普通気持ち悪いでしょ?最初はリンもそう思ってたはずだよ?それが『ワンコみたいで可愛い』になっただけでもすごくない??
コウはね、今、本当に幸せなんだ。リンに自分と同じくらいの愛情なんて求めてない。自分を拒否しないで受け入れてくれるだけで心底幸せなんだから。」

うん、痛いほどコウの気持ちは分かった。けど、それとリンの気持ちの葛藤は別問題だよ。

「リンは多分コウが好きだよ?自信はないけど、キスとかそれ以上を他の相手としたいとは思わない。て言うか出来ないと思う。けど、酔っ払って初めてコウと色々した時も嫌悪感は全くなかったんだ。それが答えだと思ってる。
だから出来ればリンも少しは、あ、愛情を返したいと思って・・・」

「リンネル・・好き、大好き、愛してる。けど今なら言葉にしなくても分かるでしょ?それと一緒でリンネルの素直な気持ちもオレの中に入って来てるよ。本当に充分なんだ。リンも充分コウを思ってくれてるよ。」

また深い深いキスをした。精神的な愛撫が続く。コウジンの愛に溺れそうだ。ネルがふにゃふにゃになるわけだよ。あまりの気持ち良さに全てを受け入れてしまいたくなる。けど・・・僕はそっと完全憑依を解いた。

「何で?精神的に繋がるの嫌だった??」

コウも完全憑依を解いて、焦った口調で聞いてくる。

「うううん?気持ち良すぎて何かコウジンの愛情に溺れて流されそうだったから・・」

「・・ダメなの?」

「僕、最初は自分の意思でコウを求めたいから。」

「リンっ?!」

ネルとジンが僕らの体から飛び出した。

「もどかしくてやってらんねぇわ。」

「全くだよ。僕らは僕らで勝手にやらせてもらうから二人で好きにしなよ。先に城の裏の森に行ってるから、お昼になったら呼んで?」

翼をはためかせて湖の上を飛びながらそう言って、二匹は森へと飛んで行った。

「・・とりあえず城に行こうか。」

「うん・・ねぇ、リン?さっきのってオレとその・・・」

「ま、まぁそれなりに覚悟は出来てるよ?僕も好きだって自覚もしたし。だから初めてはリンとしてコウを受け入れたいっていうか・・・」

「本当?!オレ嬉しすぎて死にそうなんだけどっ?!」

今にも襲いかかって来そうなコウを宥めて言う。

「けどまだ朝だし、流石に外ではちょっと・・・精霊もいないしボートから落ちたら今は飛べないよ?」

「そ、そうだよね?!ごめん。オレ完全に舞い上がってた。うん、今日はリンが見たがってた城に来たんだし、ちゃんと観光しよう!リンの気持ちが分かっただけで大満足だよ。」

そう言ってコウはすごい勢いでボートを漕ぎ、城がある孤島に到着した。

 長い階段を登って崖の上にある城に辿り着く。近くで見たら圧巻の迫力だ。
塔と居館、のこぎり型狭間のある回廊、それを囲む城壁、と、すべてが素晴らしいバランスで成り立っている。

孤島の高い崖の上にある要塞か、本当に素晴らしいな。しばらく見惚れていた間に、コウが城門にいる門番の魔族に話しかけていた。

「リン!今、案内の魔族を呼んでくれるって!」

案内の方(コイルさんという年配の男性魔族だ)に連れられて城の中を見てまわる。この城は前魔王様の所有物だけど、周りのロケーションも含めあまりにも美しいため、魔族の国の観光スポットになっているんだ。年に数組だけ結婚式も受け付けていて、すごい倍率なんだって!その結婚式の後にだけホテルとしても機能しているとのこと。

城の中も美しいだけじゃなく、かなり住みやすいように工夫されていて感動したし、すごく勉強になった。
僕がロム先生の所で勉強をしていると言うと、一般の観光客は入れない場所にまで案内をしてくださったんだ。

そこで現場の声と言うか、使い勝手が悪い箇所などの話も聞いて、ロム先生に伝える約束もした。一つ急ぎの案件があるみたいなので、ネルが帰って来てからクー経由でレンさんにロム先生に伝言を頼もう。

ちょうどお昼になったので、コイルさんにはまた午後からお願いする事にして、コウと二人で城の裏手に広がる森にやって来た。お弁当を広げて食べる準備をしていると、ネルとジンがじゃれあいながら駆けて来る。

「森とか久しぶりで嬉しくて走り回ったよ。」

「良かったね。母さん特製のマカロンがあるよ?」

「わぁ!食べる食べる!」

ネルが二匹分持ってジンのところへ行き、仲良く分けて食べている。

ん?あ~んとかしてる??!

僕にも増してクールだったネルがっ?!

コウも期待を込めた目で見ないで!!うっ?!!悲しそうな目もやめて??!・・・結局コウの目に負けて、から揚げを刺したフォークを無言で口元に突き出す。

何の躊躇もなくパクッと食いつくコウ。憑依してないのに、ブンブン振りまくっている尻尾が見えるようだ。マジでワンコだな。お手って言ったらしそうだしw

「ランさんのから揚げ、いつも美味しいけど、今日は最高に美味しいよ!
リンは何から食べる?」

「いや、僕は自分で食べ・・」

「何から食べる??」

「・・卵焼き。」

ヤバい、膝に乗せられそうな勢いだ。距離が近い!!卵焼きが口元に運ばれて来たのでおずおずと口を開いて食べた。

満面の笑みのコウ。

だから甘い、甘すぎるって!!!

その後は無視して自分で食べた。だって全部食べさせ合うとか無理でしょ?!

そんな感じで何とかお弁当を食べ切り、さっきのロム先生への伝言の件をネルに頼んだ。







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