13 / 25
前世のショウとルイ
ショウ3
しおりを挟むライブが始まった。
ナオさんのドラムスティックでのカウントの後、親父の爆音ギターが鳴り響き、照明がステージをカッと明るく照らす。
ジュンさんがマイクスタンドを握り、歌い始める。
何だよこれ??!!!これが五十過ぎたおっさんたちの音なのかよっ?!
音もヤバいが、ジュンさんの歌声もヤバい。自分のじいさんの声に色気を感じるってどうなんだよっ??!普段でも普通の人とは違うオーラがあるが、ステージ上ではレベルが違う。
これはある種の暴力だ。
ガキの頃には分からなかった世界が目の前に広がっている。
音の暴力。
オレの浅はかな虚飾や誤魔化し続けているルイへの想いが音によって剥がされていく。
マジで何なんだよこれ・・・
ユイさんが「堪らない!」って感じで人をかき分けて前に進んで行く。オレも何だかいてもたっても居られなくなって、ユイさんの後に続いた。
最前列で見るジュンさんは圧巻の一言。
これはもう人じゃないだろ?魔王じゃね??あんなに人を魅了出来る人間がいる???しかもそれがオレと血の繋がったじいさんなんだぜ??!
もう、オレはどうしていいか分からなくなって、ユイさんとともにひたすら踊り続けた。そして踊っていると、親父のギターがヤバすぎる事にも気付く。
こんな爆音が気持ちいいなんてありえなくね??
何て言うか・・体が音に持って行かれる。あぁ、いいなぁ・・・オレもこんな音を出してみたい。
そして、再度気付く。丸裸になったオレの心にはルイしか存在していなかった。
そんな風に音に身を委ねてると、ユイさんがオレを引き寄せて耳元で言う。
「ショウくん、今感じてる事がすべてだよ。最高の音の前では自分の感情が丸裸になるでしょ?その気持ちが真実だから。迷ったら今の気持ちを素直に思い出して?」
いつもだったら「うるさいな!何言ってんの?」くらいな大人の意見も、今なら素直に受け入れられた。
親父もジュンさんもすごい。オレの身近すぎる家族はこんなにすごい存在だったんだな・・・
その後もオレは踊り続け・・MAGの年に一度のライブが終わった。
フロアの最前列のスピーカーの前で放心状態のオレ。
ポンと肩を叩かれ、振り向くと母さんが居た。
「ユイから聞いたわよ?いい感じに一皮剥けたみたいね。あんたは拗らせすぎなのよ。まったく!ここまで意固地に引っ張り続けるとは思わなかったわ。けどもうタイムリミットだからね?多分ここであんたが素直にならなかったら、ルイは誰か別の子に取られるわよ??」
「それとね、カグラがルイに本気で惚れなかった事に感謝なさい。これは本当に奇跡なのよ?何であんたが惚れてるのにカグラが惚れないって安心してるのかが分からないわ。普通惚れるかも?って危機感を持たない??」
そ、そうか・・カグラがルイに惚れなかったのは奇跡なんだ・・・更に母さんはオレに追い討ちをかける。
「まっ、これが最後のチャンスだと思いなさい。あんたはルイしか愛せないかも知れないけど、ルイは多分カグラとでも幸せになれるわよ?」
何かすげぇショックだった。半身だと思っているのはオレだけで・・・ルイはカグラでもいいんだ・・って、よくよく考えてみたら、オレはルイをいじめてて・・・カグラはそれを慰めて・・しかも女だから子どもも生める。ルイが男の、しかもいじめっ子だったオレを普通なら選ぶわけがないんだ。
そう気付くとすっげぇ焦った。辺りを見回してもルイはいない。オレの行動を見た母さんが言う。
「ルイならカグラと一緒に楽屋に行ったわよ?」
その言葉を聞いてすぐさま楽屋に走る。
楽屋のドアは開いていて、ジュンさんと喋るルイが見えた。気付けばオレは叫んでいた・・・
「ルイ!!今までごめん。オレ、お前の事が好きだ!!!」
一瞬にして静まり返る楽屋の空気。目を見開き、驚愕の表情のルイ・・あっ、やっちまった・・・
けど、ルイは真っ赤になりながらニコッて微笑んで・・・
「・・ぼ、僕もショウが好きだよ?」
そう言ってくれたんだ。
その後の楽屋はお祭り騒ぎになった。みんなに拍手され、親父にはバシバシ背中を叩かれた・・ウザい。
カグラには呆れ顔で、
「ここまで引っ張ったんだから、せめてもうちょっとちゃんと告白出来なかったの?何もこんな公衆の面前で言わなくても良くない?まぁ、今の勢い任せじゃないと言えなかったんでしょうけど。」
って言われた。ぐう、正論。
確かに、こんな公衆の面前で告白してしまって、ルイには申し訳ない気持ちでいっぱいだ。けど・・・ルイもオレが好きだって言ってくれた!!
夢じゃなくて??!
幸せすぎてどうにかなりそうだ。
これからは、今までいじめてしまった分を取り返せるくらい、ルイを甘やかして愛そうと心に決めた。
0
お気に入りに追加
51
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
絶対にお嫁さんにするから覚悟してろよ!!!
toki
BL
「ていうかちゃんと寝てなさい」
「すいません……」
ゆるふわ距離感バグ幼馴染の読み切りBLです♪
一応、有馬くんが攻めのつもりで書きましたが、お好きなように解釈していただいて大丈夫です。
作中の表現ではわかりづらいですが、有馬くんはけっこう見目が良いです。でもガチで桜田くんしか眼中にないので自分が目立っている自覚はまったくありません。
もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿
感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_
Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109
素敵な表紙お借りしました!(https://www.pixiv.net/artworks/110931919)

僕の番
結城れい
BL
白石湊(しらいし みなと)は、大学生のΩだ。αの番がいて同棲までしている。最近湊は、番である森颯真(もり そうま)の衣服を集めることがやめられない。気づかれないように少しずつ集めていくが――
※他サイトにも掲載



【完結】I adore you
ひつじのめい
BL
幼馴染みの蒼はルックスはモテる要素しかないのに、性格まで良くて羨ましく思いながらも夏樹は蒼の事を1番の友達だと思っていた。
そんな時、夏樹に彼女が出来た事が引き金となり2人の関係に変化が訪れる。
※小説家になろうさんでも公開しているものを修正しています。

そんなの真実じゃない
イヌノカニ
BL
引きこもって四年、生きていてもしょうがないと感じた主人公は身の周りの整理し始める。自分の部屋に溢れる幼馴染との思い出を見て、どんなパソコンやスマホよりも自分の事を知っているのは幼馴染だと気付く。どうにかして彼から自分に関する記憶を消したいと思った主人公は偶然見た広告の人を意のままに操れるというお香を手に幼馴染に会いに行くが———?
彼は本当に俺の知っている彼なのだろうか。
==============
人の証言と記憶の曖昧さをテーマに書いたので、ハッキリとせずに終わります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる