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前世のショウとルイ
ルイ
しおりを挟む今日は年に一度のMAGのライブの日。MAGはショウとカグラの親父さんのカイさんと、何とお祖父さんのジュンさんがやっているバンドだ。
お祖父さんといっても全然若くて超絶美形なジュンさんには、僕も昔から可愛がってもらっている。もちろんカイさんにも。
毎年カグラと一緒に見に行くんだけど、今年はショウも行くらしい。う~ん、普通に喋れるかなぁ?カグラがいるから大丈夫だと思うけど・・・
家から最寄りの駅に行くと、すでにショウとカグラが待っていた。
「ごめん、待たせちゃった?」
「大丈夫、ショウがそわそわして早く行きたがったからね。」
「な、何言ってんだよっ!!」
久しぶりだな、こんなやり取りをするのも。ちょっと嬉しい。
三人で電車を乗り継ぎ、ライブハウス、レヴェルリーに向かう。
電車の中でも喋るのはほぼカグラで、僕はあいづちを打つだけ。ショウは仏頂面で窓の外を見ている。
そうこうしているうちに駅に着き、飲み屋街を歩いてレヴェルリーに到着。
入口の扉には今日のフライヤーが貼られている。これもユイさんが作ったはずだ。昔の近未来SFのような、機械と人が合わさったサイボーグ?と宇宙?のコラージュ。カッコいいよなぁ・・僕もこういう才能が欲しかったな。
その扉を開けて中に入り、カグラがカイさんの名前を言ってスタッフパスを三枚もらう。毎年ゲストで入れてもらってるんだ。ありがとうございます。
中に入るとすでにすごい人が入っていた。元々狭いライブハウスだから満員状態だ。毎年思うけど、年に一度のライブを楽しみにしているファンが多いんだなぁ。
けど分かる。ジュンさんの何とも言えない色気と歌声、そしてリズム隊ともう一人のギターのアキさんがきっちりと音楽を奏で、カイさんの爆音ギターが鳴り響く。決してメジャーな音ではないけど、すごく心に刻み込まれる音楽だと思う。
「おっ?今年はショウくんも来たんだな。」
入口近くに居たアスラ先生が声をかけてくれた。横にはもちろんキョウさんが居る。ユイさんとシグさんも一緒だ。
「「「こんばんは。」」」
みなさんにあいさつをする。
アスラ先生が僕にこっそり耳打ちして来た。
「ルイくん、小説進んでる?」
「はい・・何か僕の願望を満たす為に書いてる感じですけど。」
「それでいいんだよ。書き手ってそういうもんだから。」
そう、僕は今、アスラ先生が高校生の時に書いてたっていう、身近な人が揃って異世界にいたら?って設定の小説の続きを書いているんだ。
少し前に未公開のこの小説をアスラ先生に読ませてもらって、すごく面白かったから続きを書いて欲しいってお願いした。そしたら、「ルイくんが書いてみなよ。」って言われて・・その気になった僕。実在の人物ばかり登場するので、僕も未公開を条件に執筆させてもらっている。
その世界で僕たちはまだ五歳。次代の魔王候補として、三人仲良く切磋琢磨して暮らしている。異世界のショウは僕にすごく優しい設定。願望が滲み出すぎてて恥ずかしい・・・
「そろそろ始まるよ。」
ユイさんがそわそわして声をかけて来た。大ファンだもんね。
すでに舞台の上には音のチューニングをしているMAGのメンバーが居る。
毎年ユイさんが最前列で踊りまくってるのを見るのも楽しみの一つだ。今日も途中で堪らなくなって人をかき分けて前まで行くんだろうなぁ。
さぁ、いよいよMAGの一年振りのライブが始まる。
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