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山狼族の集落
アスミイ1
しおりを挟む初めて見たショーリューに思わず見惚れてしまった。迎えに来てくれた時はフード付きのマントを着ていたし、このツリーハウスに瞬間移動してからはすぐに憑依を解いたからな。
憑依した姿をちゃんと見ていなかったんだ。
それに普通の憑依と完全憑依ではオーラが違う。
何と言うか、全体が銀色がかった白で輝いて見える。
ポニーテールにした白銀の髪は更に長く、その頭上でピクピク動く狼耳も同じ色。猫科動物とは違うフサフサの尻尾の毛並みは美しく、顔を埋めてモフりたくなる。顔は同じはずなのにいつもより凛々しいし、体つきもケンショーさんよりたくましくないか?
そして極め付けは美しい翼。純白に近い白銀はただひたすら美麗で、ピンと伸ばせばかなり大きい・・・
これは王だ。
小さな部族の長というには神々しすぎる・・・
「どうした?早くオレの番に合わせろよ」
いつものおちゃらけた雰囲気もなく穏やかで威厳のある声が、俺の脳を痺れさせる。
「・・・ミイ、完全憑依」
「ふにゃ~い」
ミイがフラフラとしながらも俺に向かって飛び込んで来た。
俺の中にミイが混じり合った瞬間から、リューへの思いが体中を駆け巡る・・・いつもよりミイの気配が強いな・・・そう思いながらもお互いが融合する感覚に身を任せ、血が沸き立つような熱を逃すべく翼を開放し、耳と尻尾も出現させる・・・
俺はアスミイ。
目の前に居る神々しい男の番だ。
「ショーリューとしては初めてお前に会うが・・・予想以上だな・・・番というのはここまで愛おしく感じるものなのか」
ショーリューがそっと俺の頬を撫でる。
その瞬間、ブワッと俺への愛がなだれ込んで来た・・・愛おしい・・・愛おしくて可愛くて・・・アスミイ、お前が好きだ・・・愛してる・・・オレの唯一・・・・・・
何だこれ・・・繋がろうとしなくても、勝手に感情がショーリューに寄り添っていく・・・あぁ、好き・・・好きだ・・・俺はこの美しい狼の王を愛している・・・そして・・・
当たり前だろ?オレたちは番で・・・お互いの唯一・・・この絆は絶対だ・・・誰にも邪魔はさせない・・・
気がつくと深い山の奥に居た。山中に切り開かれたキャンプ場のような平地に、張られた天幕が四つ。一つ一つがかなりの大きさで、小さな小屋程度はありそうだ。
天幕はある程度距離を取って張られており、それらの中心辺りには竈門が設置されている。屋根も付いており、なかなか使い勝手が良さそうだ。その横には太い丸太を半分に切って作られたテーブルとイス・・・そこには五人の山狼族が座り、周りには犬科の契約精霊が浮かんでいた。
いつの間に瞬間移動したんだよっ?!とツッコむ間もなく、ショーリューは俺の腰を抱き寄せながら山狼族のみんなに向き合い、言った。
「オレの番、アスミイだ」
有無を言わせない宣言。
威圧を放ちながらも、俺に対する優しく包み込むような気づかいが心強い。
「初めまして。アスミイです」
それ以上は言わない方がいい気がした。
ショーリューもそれでいいと思っているのが分かる。
ただひたすら二人で繋がりながらお互いを愛でていく・・・だって、こんなにも愛おしい存在は他にはいないから・・・そしてそんなショーリューが率いる部族、山狼族だって愛おしい・・・・・・
「なっ、何よっ?!いきなり完全憑依で繋がってくるなんて・・・恥ずかしくないのっ??!」
女性の悲鳴にも似た声が聞こえる。これはシーナさんかな?
「番と繋がる事の何が恥ずかしいんだ?精神的なSEXをしているわけでもない。オレたちはただ心を共有し、お互いの気持ちを確認しているだけだ。まぁ、お前たちの言葉にアスミイが惑わされないように、という意味もあるが」
「・・・惑わすって何よ・・・あたしは、あたしは・・・あたしだってショーリューが、ケンショーが好きなのにっ!それにその猫は男でしょ?どうして?!山狼族はどうなるのよっ?惑わされてるのはショーリューの方じゃないのっ?!」
「シーナ、何度も言っているがお前は妹のようなもんだ。恋愛感情は持てない。
そしてアスミはケンショーの、ミイはリューの番だぞ?男か女かなんて些細な事はどうでもいい。狼は生涯一人の番しか愛さないのを知っているだろう?」
ーーーーーーーーー
完全憑依をしてショーリューとアスミイになっている為、これからしばらく、本人がケンショーやアスミを他人のように話す場合があります。口調も少し変わっています。
ややこしかったらすみません。
ルコ
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