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ツリーハウスで
ケンショー2
しおりを挟むリューに便乗して「ヤリながら行こう」などと思わず言ってしまい、すかさずアスミに叩かれたが、あながち間違いとは言えない。
それだけ山狼族にとって『繋がる』という行為は、性的であろうがなかろうが神聖なものなんだ。
「・・・じゃあさ、完全憑依じゃなくて、普通の憑依で繋がった状態で行くってのは?」
せっかくのアスミからの提案だが、それでは意味がない。
「普通の憑依で繋がってお互いの目を通してものを見ても、同じ場所に居たら意味ねぇだろ」
そう、普通の憑依だと繋がるといっても、普段精霊同士でしている意識の共有が出来るだけだ。
今自分の目が見ている状況を、相手の目でも見れるように意識を繋ぐ・・・遠く離れた場所に居ても同じ体験が出来るという素晴らしい能力だが、同じ場所に居るのなら意味がない。
つまり、憑依して山狼族の集落に行っても何もメリットはないし、オレとアスミの仲のアピールにもならない。
「せめて完全憑依で繋がらねぇとな」
完全憑依して繋がる行為はお互いの感情や心情が全て共有される為、愛し合っている者同士以外は基本的にしない。簡単な念話程度は普通に出来るが。
「けど流石に初対面で公開SEXは・・・」
そう言って拒否するアスミ。
「いや、完全憑依で繋がる=精神的なSEXってわけでもねぇぞ。簡単な話、体液摂取や粘膜接触をしなければいい。なら、お互いの心情が分かる同調は出来るが、相手と一つになって心が同化するまではいかない。自我を保ったまま相手の心を知れるって感じで、精神的なSEXとまでにはならねぇよ」
「ホント?それなら大丈夫かも・・・?」
少し乗り気になって来たか?まぁ、オレがどれだけアスミの事を愛しているかが分かって、それでも我慢出来るかは保証しないがな。
オレの心と同調した時点で、精神的にも肉体的にも完全に繋がりたいという欲求も共有されるんだから。
おそらく完全憑依したオレは、アスミを、いやアスミイを今以上に喰らい尽くしたくて堪らなくなるだろう。リューの意識も融合するのだから仕方がない。
そしてアスミイはその身を捧げたいと思うはず。お互いの気持ちが共有された後、自然に唇を合わせ貪り合いたくなるのは当然だ。更に、体液を交換し完全に同化したなら、もっともっと一つになりたいと、肉体的にも繋がりたいと思うはず。
その過程を集落のヤツらに見せつけ、オレとアスミの番としての絆を分からせようと思ったんだが・・・そんなアスミイの蕩けた顔をヤツらに見せたくねぇな・・・
オレが新たな問題に悩んでいると、またアスミの漢っぷりが発揮された。
「よし分かった。完全憑依して繋がって行こう」
えっ?いいの??
だから、その思いきりの良さは何なんだよっ?!
「リュー、一度ミイを解放して?アスミイになって繋がるから。けどいきなり精神的な愛撫はなしな。俺、公開SEXはイヤだし。そういうのは・・・あ~山狼族のみんなに会って話をして、ここに帰って来てからだ」
おっ?!ここに帰って来てからならいいんだな?なら、もちろん精神的にヤリながら肉体的にもヤルよな?完全憑依をしての繋がりながらのSEXは、もう少しお預けかと思っていたから嬉しい誤算だ。
なら、集落では極力精神的な愛撫は抑えて、純粋なアスミイへの気持ちだけを伝えよう。もちろんそれだって本心だ。で、ここに帰って来たら・・・
別に集落のヤツらへの紹介は急がなくても良かったんだが、こうなるとオレも俄然やる気になってきた。
別に反対されてもいい。アイツらが認めなくても、アスミがオレの番である事実は揺るがねぇしな。いずれ認めさせるとしても、今日は顔見せだけでも充分だ。さっさと行って帰って来てアスミイを堪能しよう。
「よし、リュー。いったんミイから離れろ。完全憑依するぞ」
リューも「そういう事なら」とミイを解放し、オレに向かって飛び込んで来た。
ぶつかる瞬間にリューの体が消え、オレの中に吸収される。体中の血が沸騰したかのように滾り、体の隅々までリューの気配が行き渡れば、オレの中に狼がじわじわと浸透していく・・・背中に集中する持て余した熱を解放し、皮膚を破って出た白銀の翼をゆっくりと伸ばせば、同じ色の耳と尻尾もピクピクパタパタと動きながら出現した。
オレはショーリュー。
この世に存在する唯一の銀狼の精霊であり・・・山狼族の長だ。
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