【完結】山狼族の長はツンデレ黒猫を掌中に収める

ルコ

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城下町

アスミ5

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 あの後、ケンショーさん以外の山狼族と会った際には、ミイからベルとリンクに連絡すると約束して、トワの家から自分の家に帰った。

その時にフニャフニャ状態のミイを正気に戻し、今後連絡を取る為にベルと一度繋がってもらったんだが、ミイが普通に戻るまでかなり時間がかかったんだよな。けど、ベルもリンクもよくある事だと生暖かい目で見ながら待ってくれた。

よくある事なんだ・・・

 ルイがここまで親身になってくれるのは、前世の友だちだってのももちろんあるけど、次代魔王候補として山狼族の動向を把握しておきたいからだ、と言っていた。

当然だと思う。いくら脅威ではないといっても、魔王様レベルの魔力を持つ長が存在するんだ。そんな部族が山とはいえ魔族の国に住んでいるんだから、出来れば友好条約的なものを結んでおきたいんだろう。

前世で山狼族を創った責任を取って俺も極力その橋渡しをすると、ルイに約束したんだ。

 そして次の日、母さんに山狼族を見つけた事を報告し、当然質問攻めにあう。今にもその山に飛んで行きそうな母さんを宥め、長のケンショーさんをそのうちに紹介すると約束をした。

「あたしも近々旅に出ようと思ってたけど、アスミに譲る。店番はあたしがするから、しばらく山狼族に専念するといいわ。会いに行くなり、論文を書くなり好きにしなさい」

「えっ?いいの?母さん、定期的にフィールドワークに行かなきゃ死んじゃう人じゃん?」

「あたしだって、自称だけど民俗学者の端くれだからね。そんな大発見したらじっとしていられないの分かるもの。しかも長さんは協力的なんでしょ?気が済むまで行って来ていいわよ。けど、定期的に報告に帰って来なさいね」

母さんにも父さんにも契約精霊はいない。念話で繋がる事は出来ないから仕方がないか。俺は了承し、母さんにお礼を言った。

父さんにもその事を伝えたが快く了承してくれた。
父さんは、俺か母さんのどちらかが店番をしていれば文句は言わない。家族の趣味を認めてくれる広い心の持ち主なんだ。

もちろん前世と同じ両親だけど、こっちの二人の方が頭が柔らかく話が通りやすい。前世の日本は色々縛りがキツかったもんな。世間体とか同調圧力があって。

この世界の方がみんな自分らしく生きているような気がする。だからその人の本質に近くなるのかな?

 そんな事を考えながら、しばらく家を出る用意をする。マジックバックにポイポイと必要な物を入れていると、ミイが叫び出した。

「うにゃ~ん!!もうリューしつこい!僕、今からおやつ食べて寝るからねっ!邪魔しないで!!
あ゛?ケンショーがアスミは次いつ来るか聞いてるって?もうっ!今日は無理。明日だ明日!明日聞いて。今日はもう繋がらないから。じゃあっ!」

そう言ってすごい勢いでお菓子をムシャムシャ食べた後、ふて寝したミイ・・・精霊は何も食べなくても生きていけるけど、甘いお菓子は嗜好品として好む。睡眠も絶対に必要なわけじゃないんだけど・・・うん、よっぽど疲れたんだね。精神的なSEXは終わりがなさそうだもんね。しつこすぎると、いいかげんイヤになるのは分かる。

 用意したらすぐに出ようと思っていた予定を変更。今日は山狼族について分かった事をまとめたレポートを書こう。
ケンショーさんに、場所の特定をしなければ、山狼族が数人現存している事を論文などで公表してもいい、と、許可はもらっている。ただ、契約精霊について書くのは狼のリューの事のみと約束した。

本当は、犬科動物の契約精霊について詳しく調べて書きたいところだけど、そこは我慢。

信用出来る親しい人には、話してもいいって言ってくれたしね。

あっ、シーナさんたちの攻略法も考えなきゃ。

で、明日はケンショーさんに会いに行くんだ。そして、他の山狼族に番として紹介してもらおう・・・ベッドで眠るミイを撫でながら俺はそう決意したんだ。
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