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現在の山狼族
ケンショー
しおりを挟む考え込んでしまったアスミを眺めながら、オレもちょっと勘案してみる。
少し脅すように言ってしまったが、本当に山狼族は閉鎖的な部族だ。特にこの集落に残っているのは筋金入りのヤツばかり。
猫科動物の猛獣より狼の方が強い、つまり山狼族こそ魔族の頂点と言い切る長老のタイショー(契約精霊はコヨーテのグン)、長(つまりオレ)至上主義の従姉妹シーナ(ゴールデンレトリバーのナン)、見かけはぽわっとしているが実は腹黒い従姉妹シーア(ラブラドールレトリバーのアン)、シーナに惚れていて、同じく長至上主義のトシ(ジャッカルのヤック)、山への信仰が誰よりも厚いヨシ(リカオンのミック)、そしてその契約精霊は五匹ともリューを崇拝している。
そんなヤツらに、魔族で黒猫のアスミとミイが受け入れられると思うか?
うーん、タイショー、シーナ、トシは絶対に反対するだろう。
シーアは、話の持っていきようによっては何とかなるか?と希望は持てる。オレが男と絡むと喜ぶしな・・・
ヨシも、アスミが何年も山に入って山狼族を探していたと言えば認めてくれる可能性はある。
だが、最終的に全員が折れたとしても、渋々だろう。そんな環境でアスミが楽しく暮らせるとは思えない。アスミには嫌な思いをさせたくないからな。ならやはり、集落には入れずにオレが瞬間移動で街から山に通う、というのが現実的だ。
まっ、それにアスミが簡単に番になるなんて言うわけがない。いずれそうなると自分で分かっていても、最初は抵抗するだろうこのツンデレ黒猫は。
そう結論付けた。
が・・・
「う~ん、とりあえず今日すぐには無理。けど、山狼族の集落には絶対行きたいし、まぁ、あれだ・・・あんたと番になるのもやぶさかではない・・・」
マジかっ?!
いきなりデレるのかよっ??!
口を開けて固まるオレに向かって、アスミは話し続ける。
「俺さ、これでも本気で山狼族を探してたんだ。論文的なのも書いて発表してるしな。でさ、会ったばかりだけど、あんた・・・いや、ケンショーさんとは、そ、その・・・運命・・・だと思う。番とかはよく分からないけど・・・だから、いずれは山狼族の集落に連れて行ってよ。で、俺をケンショーさんの番だって紹介して欲しい」
オレの目をまっすぐに見てそう言い切ったアスミ。逆に動揺してしまったオレは、しどろもどろになりながら何とか答える。
「ま、マジかよ・・・本気で言ってる・・・んだよな?すまん、ツンデレ黒猫を見くびってたわ。つか、今日一日でそこまでオレを思ってくれるとは・・・」
番の概念がない魔族だから、すぐに愛してもらえるとは思っていなかった。
我慢出来なくていきなり抱いてしまったし、強引すぎて引かれたかも?と、実は少し不安だったんだ。
なのに・・・
「・・・うはは!最高じゃねぇかオレの番はっ!!アスミちゃん、もう、どれだけオレを惚れさせるんだ?
あぁ、分かった。オレも全力であいつらを説得する。で、アスミちゃんの心が決まり次第集落へ連れて行って紹介しよう。さっきはああ言ったが、別に山狼族として山で暮らさなくてもいい。それだけの覚悟があるってだけで充分だ。
軽い気持ちであいつらに会ったら、絶対に泣きをみると思ってな。だが、何があってもオレがアスミを守るから安心しろ」
嬉しさのあまりアスミに抱きつき、そのまま押し倒してしまう。
「うっわっ?!やめろよおっさん!もう今日はヤダからな。いろんなとこが痛いっつーのっ!!」
すかさず回復魔法をかけるオレ。
「これで大丈夫だろ?なぁ・・・アスミ・・・」
「んっ、んんん・・・や、やめっ、あぁぁん・・・」
再度ガッツリとアスミを貪ってしまったが、仕方がないと思う。
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