【完結】山狼族の長はツンデレ黒猫を掌中に収める

ルコ

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出会い

アスミ1

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「なぁ、ミイ。俺、山狼族がいる場所が分かったかも・・・」

「はぁっ?!どういう事??!」

俺はミイに前世の記憶が蘇った話をした。

「・・・ふ~ん、ここはアスミが前世で書いてた小説の世界と同じだって言うの?」

「信じてもらえないとは思うけど、事実なんだ。」

「ここが小説の世界って言われても意味分かんないけど、前世の記憶は信じるよ。アスミが僕に嘘をつくはずがないし。だって、完全憑依したら全部分かるもん。
それにリンク(トワの契約精霊)からトワに前世の記憶があるって聞いてたしね。」

・・・ちょっと待って??!

「本当にっ?!トワにも前世の記憶があるの?!!」

「うん。魔族学校に留学してすぐに記憶が戻ったらしいよ?ちょっと待ってね。リンクと繋がって聞いてみるから・・・」

精霊は、一度精神を繋げた相手と意識の共有が出来る。今自分が見ている出来事を、相手の精霊も見れるように意識を繋いだり出来るんだ。
そしてもっと簡単に、念話のように連絡を取り合ったりも出来る。今、ミイがリンクとしているのはこの念話バージョン。

ついでに言っておくと、精霊同士のSEXは精神的な繋がりがメインになる。完全憑依してSEXをすると、心も体も相手と混じり合い、とてつもなく気持ちいいらしい・・・って、俺はまだした事ないけどなっ!

「・・・えっとね、トワにある前世の記憶は十七歳までなんだって。で、ルイ様にも十五歳までの記憶があるらしい。へ~!王妃のアスラ様にも十七歳までの記憶があるんだ?」

えっ?!どう考えてもあの小説を書いてたメンバーだよね??

「だから、トワは前世でのアスミを知らないみたい。けど信じるって。話を聞きたいから家に戻ったら連絡して欲しいってさ!」

そうか、前世の俺がトワと出会ったのは大学の入学式で十八歳。十七歳までの記憶しかないなら、当然俺の事は知らないよな。ていうか、やっぱりその歳までの記憶しかなくても、死んだわけじゃないんだ。良かった!

「ん、分かった。トワには山を下りてから連絡するって言っといて。」

「は~い!」

 さて、すぐにでもトワと前世の話をしたいところだけど・・・実はこの山、当たりなんだよね。前世の俺が山狼族の住処として書いたのは、この山と隣の山の山峡だから。

「よし!ミイ、完全憑依して飛んで行くぞ!」

もしも魔鳥に遭遇したなら、アスミイになっていた方が対処しやすい。アスミイにも戦闘能力は然程ないけど、アスミのままよりはマシだし、スリープなどの補助系魔法は使える。それに探索魔法もあるから敵を察知するのは素早いし、逃げ足もかなり速いんだ。

「りょ~か~い。」

力が抜けるような返事とともに、ミイが俺に向かって飛び込んで来る。体にぶつかった瞬間その姿が消え、俺の体内に吸収されたミイの気配と力が満ちて行く・・・

体中の血が沸き立つような感覚とともに、髪の間から真っ黒な猫耳が生える。それと同時にこれまた真っ黒の尻尾も生え、猫耳と一緒に伸ばしきる。
体中をグルグルと駆け巡った熱が背中の肩甲骨の辺りに集中し、その熱が肉を突き破って解放された。俺は漆黒の翼をゆっくりと伸ばしていく・・・

 俺はアスミイ。上位魔族のアスミと、精霊の黒猫ミイが完全に混ざり合った存在。

まずは空高く舞い上がり、現在地を確認する。

「さて、隣の山は・・・ん、こっちの方向だな。」

今いる山は結構標高が高い。俺は生い茂る木々のてっぺんに沿って、隣の山の方向に下降して行く。
幸い魔鳥に出会すこともなく、すんなりと山峡にある川の上空に着いた。

俺が書いた小説ではこの辺り、川から少し離れた場所を拠点として山狼族は暮らしているんだけど・・・

 まずは川岸に降りてみる。

「え~っと、多分こっち側の山に集落があるはずだよな・・・」

さっき居た山の隣の山に足を踏み入れ、探索魔法で辺りを探りながら登って行く。

すると、何の気配もなかったのに突然膨大な魔力の塊が目の前に現れ、俺に向かって言ったんだ。

「おっ?黒猫のかわい子ちゃんじゃん?うはは!オレの好みどストライクだわ~」

「はぁっ?えぇぇっっ??!」

そこには前世と同じ・・・いや、前世より更にワイルドになったケンショーさんと、大きな銀狼の契約精霊がいた。
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