【完結】山狼族の長はツンデレ黒猫を掌中に収める

ルコ

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前世の記憶

アスミ3

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 その頃の前世の俺には気になる人がいた。
 
ショウはカグラと二人でバンドというかユニットを組んでいて、定期的にライブもやっている。ユニット名は「神生類」。「しんしょうるい」と読む。何それ、中二病?って感じだが、カグラ(神楽)の「神」に、ショウの漢字違いで「生」、ルイの漢字違いで「類」らしい。

ルイはメンバーではないが、作詞をしている曲があるからと、ユニット名に無理矢理入れられたらしい。まぁ、ショウはルイを溺愛しているし、カグラもルイが大好き(恋愛感情はない)みたいだからいいんだろう。ルイは困ってるようだったが。

その神生類が定期的にライブをやっているハコの店長、天見 憲章(あまみ けんしょう)という人が、やたらと俺に絡んで来るんだ。

 俺が初めてそのライブハウス、レヴェルリーに行った時、バーカウンターから声をかけられた。

「おっ!オレ好みの美少年発見。君、名前は?成人してる?あっ、オレはこの店の店長をしているケンショーだ。っつっても、店長になったばっかりの若造だけどなっ!歳は二十八歳」

「・・・二十八歳って、充分おっさんじゃねーか。俺はアスミ。二十歳だよ」

「うはは!言うねぇ。そういう気の強い子、好みだわ~アスミね。成人してて良かった。酒は飲める?おっさんが一杯奢ってやるよ」

ケンショーさんは、何というかノリが軽い派手なイケメンだった。

身長は170代後半くらい?170の俺より5センチ以上は確実に高く、細身で引き締まった体をしている。アッシュグレーの長髪を高めの位置で一つに結んでいて、昔の野武士?みたい。顔はあっさりとした綺麗めで整っているのに、雰囲気がワイルドで目つきが鋭くリアクションも大きい。

そして誰に対してもフレンドリーで、さっぱりとした男前な性格・・・当然モテる。

その日、俺は奢ってもらったハイボールを飲みながら、そのままカウンターでケンショーさんと話をしたんだ。

「へー、ショウとカグラの友だちか。あいつらはサラブレッドだからな~正直色々羨ましいわ」

ケンショーさんはMAGというバンドについて語り始めた。

「MAGっていうのはかなり年季の入ったおっさんバンドなんだが、今でも一部の層に熱狂的なファンがいる。決してメジャーな音ではないが、パンクやらエレクトロやらをごちゃ混ぜにしたオルタナティブな音楽スタイルは、海外でも評価されてるんだよ。
なんせ、あの独特のサウンドは真似出来ねぇし、ライブを一回見たら忘れられないくらいインパクトがあるからな。
んでMAGと言えば、ボーカルのジュンさんの人外じみた完璧な美貌と圧倒的な存在感。もう五十を遠に超えたおっさんなのに、滲み出る色気は年々増してる。
イケオジの極みじゃねぇかな?
で、ショウとカグラはこのジュンさんの孫なんだ。更に、MAGのもう一つの看板、爆音ギターのカイさんの子どもでもある。ジュンさんの娘のカグヤさんとカイさんの子どもってわけだ」

俺はメジャーなJ-POPやK-POPよりも、ちょっと激しめなバンドが好きだったので、MAGに興味を持った。
神生類のショウのギターが好きと言うと、ケンショーさんは

「あの手の爆音ギターの元祖はMAGのカイさんだぜ?」

と、言い、更にレヴェルリーに出演しているおススメバンドをいくつか紹介してくれたんだ。

 それから俺はそれらのバンドにもどっぷりハマり、いつの間にかレヴェルリーでバイトをするようになった。

ケンショーさんはその後もやたらと俺に絡んで来る。

「おっ!アスミは今日も可愛いなぁ。よし、店長命令だ。本日の業務はオレに愛でられること。一緒にバーカンに入ろうぜ」

「・・・セクハラかよ?このエロオヤジ!!真面目に仕事しろよ、店長だろ?!」

「うはは!怒ったアスミちゃんも可愛いな~心配するな。仕事はちゃんとやる。アスミを愛でながらなっ!」

ケンショーさんはノリが軽い。いわゆるバイらしく、ものすごくフレンドリー。俺の顔を見る度に「可愛い」だの「付き合え」だのと言うが、こうして一緒にバーカンに入っていると、オレ以外の男にも女にも「可愛い」って言ってる姿を何度も見る。

そりゃモテるよなっ!!

・・・何か面白くない。ムカつくんだよっ!このエロオヤジ!!

悔しいけど、そんなケンショーさんが気になるのも確かで・・・俺はみんなから引き継いだ小説に、ケンショーさんを登場させたんだ。


山狼族の長として。
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