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エピローグ
2 ケイ視点
しおりを挟むケイ視点です。
ーーーーーーーーー
オレは今、一人で木村博士の研究室を訪れている。
マコはリュカとランチをすると言っていた。正直、そっちに混ざりたかったな。
だが、これはどうしても済ませておかなければならない案件だ。
気はまったく進まないが。
「・・・で?どこまでがあなたの思惑通りだったんですか?」
「あらぁ?人聞きの悪い事。まるであたしがラスボスみたいじゃない?」
「みたいじゃなくて、立派なラスボスでしょうが・・・
この騒動が起こった時の一番最初の質問に戻ります。コバルトもどきのレシピを捨てたのは故意ですか?」
「ん~、正直、寒川くんの能力を侮ってたのよねぇ。あんなにちゃんとしたコバルトもどきを合成するとは思ってなかったの。
寒川くん以外の研究室の子が拾う可能性だってあったしね?」
「きちんと質問に答えてください。捨てたのは故意ですか?」
「もうっ!分かったわよ!はいはい、故意ですよ~誰かが合成して、失敗してもそれはそれで面白い作用が出るかもだし?ってね。」
「ですが、弥人の目に憎悪増幅のコバルトもどきレシピが入るように仕向けたんでしょう?」
「ん~まぁ、寒川兄弟の闇が深そうなのは知ってたし、寒川くんの手に渡るなら憎悪増幅かな?とは思ったかしらね。
同じく性に奔放な子には媚薬効果のありそうなコバルトもどきレシピを。とも思ったわよ?けどその程度ね。
で、実際に憎悪増幅レシピを見つけて手に入れ、あたしが思ってたより完璧に作ったのが寒川くんだった。って感じ?」
「・・・黒野斗真と雪村朔夜が関わって来るのも把握済みだったのか?」
「ヤダ、ケイ怒ってるぅ?あのままだったら黒野くんはいつかマコちゃんに危害を及ぼす可能性があったわよ?
あたしはマコちゃんの過去を聞いてから、ある程度黒野くんを排除するお膳立てをしてあげただけなのにぃ~感謝して欲しいくらいよぉ。」
「・・・結局、何がしたかったんだよあんたは?」
「ふふっ、ケイがゲンみたいになってる~それだけマコちゃんが大事なのねぇ。
結局、て言うか、あたしも雪村くんと同じで大した事はしてないし、したかったわけでもない。
だって元々、寒川くんと雪村くんくらいしか知らなかったもの。雪村くんの事を知ってる子に色々聞いて、ある程度彼の性癖を把握した。学生の頃からそんな感じだったから納得したってだけね。
で、寒川(弥人)くんとの関係も理解。寒川くんの話から、弟たちとの状況と関係も理解。そして黒ホグ事件が起こった。
マコちゃんに会って過去の話も聞いて・・・あたしの中でこの事件の流れが、マコちゃんの過去の元凶な黒野くんに繋がったのよ。で、ちょっと調べてみたら、まだマコちゃんに未練?タラタラ。」
木村博士の話は続く。
「だからね、黒野くんの耳にマコちゃんがコバルトに救われたって話や、今現在元気にホグハンターとして活躍してるって話を入るようにしてあげたの。大体は分かってたみたいだけど、詳細までは知らなかったっぽいから。詳しく教えてあげただけ。
それに、弥人くんがコバルトもどきの合成に成功したって話は優人くんから聞いてたみたいだし?
ほら、あたしはそんなに大した事してないでしょ?」
「・・・マコを餌にしてまで黒野を引きずり出す必要があったのか?」
「けど、放っておいていつか勝手に爆発されても大変じゃない?なら、早めに潰しておいた方がいいでしょ?
逆にケイがよく放置してたな、って思ったけど?人間の執着心を侮らない方がいいわよ~
それに黒野くんの屈折具合は相当だったから、寒川くんたちとはまた違った黒ホグが出そうだったしぃ~」
「後のが本音か・・・やっぱりそれだけなのかあんたは・・・」
「ちゃんと責任を取ろうと思って、あたしが担当するコズミックエリアに黒野くんが来るよう仕向けたんだから、良しとしてくれないかなぁ?」
「・・・まぁいい。あんたが動いたから、黒野斗真が優人と弥人のスポンサー的存在になったってわけか。」
「みたいね?それ以降はあたし、本当に何もしていないのよ。
黒野くんが勝手に寒川くんを匿ってコバルトもどきを大量に作らせた。
さらに雪村くんまでもが、寒川くんを利用してコバルトもどきを大量生産させようとした・・・これは多分、コバルトもどきのせいで傷付く若者を増やしたかっただけね。その若者の苦悩を見たいがために。
そんな理由でコバルトを利用する雪村くんが許せなかったから、最後はあんなふうにケイと一緒にハジケちゃったw
ふふ、おかげで最高に面白い結末になったわ!ホグで負の感情を黒ホグとして引きずり出せるなんて?!これは画期的な大発見なのよっっ??!!!」
木村博士が熱弁を奮っている間にスマホが震える。マコからのメッセージだ。
「・・・はぁっっ??!」
「えっ?何?どうしたの??」
「ジュンさんがコバルト経験なしのまま、素面でホグを出したらしい・・・しかも、青じゃない普通の色のライオンだと??!」
「えっ?!えぇぇぇっっっ??!!!!
どこ、マコちゃんたちどこにいるのっ?!」
「ウチの近所のカフェマデリカだな。」
「ケイ!今すぐそこに行きましょう!!ほら早く!!マコちゃんにジュンさんを引き止めてもらっててっ!!!」
「・・・まぁ、とりあえず帰るか。しょうがないから連れて行ってあげますよ。
ジュンさんがまだ居るかどうかは分かりませんが。」
帰り支度をしながら木村博士の熱弁を反芻する。
マコを餌にした事は許しがたいが、そのおかげで過去にマコを傷付けた黒野、優人、そして雪村まで排除出来たのは正直ありがたい。
特に黒野は危険だった。
マコが転校して以来接触はなかったし、そこまでマコに執着しているとは思わなかったんだ。
それを見抜けず、雪村ばかり警戒していた自分が情けない。
「慧」の名が泣くな。全然見る目がないじゃないか。
研究室を飛び出し、バタバタとオレの車に向かって走り出した木村博士の後ろ姿をみながら、やっと今回の騒動が終わったと・・・オレは心の底から安堵した。
コバルトなしでホグを出せるのなら、それは確かにコバルトの根本を揺るがす大発見になるが、それでマコが傷付く事はないだろう。
木村博士がそっちに夢中になってくれるといい。
頼むから思い付きだけで、オレたちを巻き込むのはやめてくれ。
車に乗り込みシートベルトを締め、マデリカに向かって車を走らせる。
途中、木村博士が前を向いたまま言った。
「そんなに大事なんだったら、いい加減あの子の気持ちを受け入れてあげなさいよ。」
「・・・余計なお世話だ。だが・・・考えてはいる。」
そう、遠くない未来に・・・
「朱雀と白虎は黒を狩る」 完
ーーーーーーーーー
最後までお読みいただきありがとうございました。
ミステリーを書くのはやはり難しく…
自分の実力不足を痛感しております。
ですが、何とか最後まで書き切る事が出来ました。エタらない事が目標なのでやりきった感w
一人でも読んでくださる方がいらっしゃると思うとがんばれました。
本当にありがとうございました!
ルコ
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