【完結】朱雀と白虎は黒を狩る

ルコ

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真相??

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 トウマが警察に連行された。

弥人を匿った件と、コバルトもどきをばら撒いた件でどれだけの罪に問えるかは分からない。あっ、青ホグを喰おうとした件は殺人未遂にならないのかな?
どっちにしても、父親が資産家としてそれなりに有名人なので、マスコミが騒ぎそうだ。

それを見送る為にコズミックエリアの外に出ると、完全に日が昇っていた。

もう、青と黒の闇色の世界じゃない。

さまざまな色が溢れる日常の朝。

う~ん、日差しが眩しい・・・

これで、コバルトもどきによる黒ホグ騒ぎは終わりなのかな?そう思ってたんだけど・・・

「さて、そろそろ出て来たら?黒幕・・・って言っていいのかしらね?
雪村くん?」

へっ??木村博士?何で?!サクヤ先生っ??!

「ははっ、そりゃバレますよね?まぁ、木村博士に僕の存在を隠し通せるとは思っていませんでした。
けど、僕は今回何もしていませんよ?」

「・・・そうだな。『今回も』お前は何もしていないんだろう。」

ケイがスッと前に出て、サクヤ先生と対峙する。

「・・・何が言いたいんです?朱雀先生。」

「お前は、そうやって他人の不幸を眺めるのが好きな変態なんだろ?」

「おや、心外だなぁ。僕はそんな見境なしじゃありませんよ?
僕はね、悩める若者が好きなんです。特に十代の。だから教師なんかやってるんです。
それに、特に不幸が好きなわけじゃありません。ありとあらゆる思春期特有の悩みが好きなんです。まぁ、不幸な話の方が多いのは確かですけどね。」

「充分変態じゃないか。」

「まぁ、そうかもしれません。けど、誰に迷惑をかけているわけでもない。
僕は若者の悩みを聞いているだけですから。」

「・・・優人が言っていたツカサってヤツもお前の獲物なのか?」

「須藤 司ですね。獲物なんて言われ方はどうかと思いますが・・・彼は僕の従兄弟でした。当時はよく話をしましたね。
ツカサは・・・思春期の美の一つの到達点ですよ。魂の汚れがないまま自己完結した、非常に美しい至高の存在なんです。優人くんがツカサに囚われたままになった気持ちもよく分かる・・・そして、そんな優人くんもまた大変興味深かった。
弥人くんも呼人くんも良かったですよ?いやぁ、寒川兄弟には楽しませていただきました。
けど、彼らも二十歳を超えましたしね。こんな形になりましたが、彼らなりに決着がついて良かったんじゃないですか?」

「・・・そ、そんなのって・・・・」

思わず声に出てしまった。これは誰だ?本当にあの優しかったサクヤ先生なの??・・・そうか・・・ケイが言ってた「救わなかった」ってのはこういう事だったのか・・・

「あぁ、白崎くん、君にも充分楽しませていただいたよ。ありがとう。けどもう最近は悩みもないようだし、君も大人になったからね。そんなに会う意味もなくなっちゃったなぁ。
逆に黒野くんは、まだまだ観察しがいがあったねぇ。君への思いの拗らせ方には感動すらしたよ。あそこまで歪むのも珍しい。
それに、コバルトって薬が出て来てさらに面白くなったんだ。
弥人くんの才能も開花したしね。二十歳を超えてかなり経つけど、あの子はいつまでも子どもみたいだったし、気長に見ていたかいがあったなぁ・・・
ねぇ、すごく見応えがある結末だったと思わない??」

そう言ってクスクス笑うサクヤ先生の顔は、今までに見た事がないほど醜悪だった。

「お前、今、コバルトもどきを食ってるんだろ?」

ケイがサクヤ先生に問う。

「?あぁ。弥人くんにもらったから興味半分で食ってみましたけど、黒ホグなんて出ませんでしたよ?だって、僕には憎悪なんてありませんから。
そして、そこまで自分に幸せを感じる事もないので普通のホグも出ない。確かに高揚感は凄かったですが、それだけでしたよ?おかげで寒川兄弟や黒野くんのショーをより楽しめましたが。」

「いいや、お前の中身は真っ黒だ。充分黒ホグを出せる。オレが引きずり出してやるよ。」

セキが今まで見た事もないくらいの威圧を放つ。ちょっと待って?セキもそんな事出来たの?!

「そうねぇ。雪村くん、あなたはちょっとやり過ぎたわね。いえ、何もしなさ過ぎた、かしら??流石に見逃せないから、あたしもケイに協力するわ。
だってコバルトを利用されてムカついてるし?」

セキの威圧にコウの威圧が加わった。

サクヤ先生の顔が強張る。

「えっ?!ちょっと、何ですか??何してるんです??!ぐっ・・・あぁっっっ・・・・や、やめ・・ろ・・・・」

サクヤ先生の体の中から、黒々とした闇そのもののような黒モヤが引きずり出され、それが徐々に形を成す・・・鳥??・・・・真っ黒な鳥はゆっくりと首を上げ、羽根を伸ばしていく・・・

白鳥?・・じゃなくて黒鳥??!!!

トウマの黒狼よりもさらに大きい、立派な漆黒の黒鳥がそこにいた。

黒鳥は、負けじとセキとコウを睨み返す。生まれたばかりとは思えない。そして、サクヤ先生から独立した存在に見える。

普通、ホグは出す人間と繋がっている。人間の意志でホグは存在出来るんだ。
けど、この黒鳥は・・・セキとコウが二匹がかりでサクヤ先生の中から引きずり出した、無意識の憎悪のすべて??

そんな気がする。

「ははっ、何だよこれ??!僕の中にこんなものが・・・・・・ちょっと待って??これを狩るつもり??!!!やめて!やめて!!よく分からないけど、これを消さないでっ!!!木村博士っ!!朱雀先生っ!!!やめろやめろやめろ僕を消すな殺すなこの人殺しっ・・・だって僕は別に何もしてな、い・・・やだやだ僕が僕でなくなる・・・・・・・」

セキとコウの威圧で、黒鳥は呆気なく木っ端微塵に粉砕され、黒い霧となって空中に溶け込んでしまう・・・・・

後に残ったのは、さっきのトウマと同じく放心状態のサクヤ先生。

「お前の中の歪んだ変態要素は消してやったよ。コバルトでのPTSD治療と同じだ。多少荒療治だったが、ただで治療出来たんだ。ありがたく思え。」

「雪村くん!立派な黒ホグが出せたわねぇ!!すごい、すごいっ!!
ホグで黒ホグを無理矢理引きずり出すなんて初めてだわっ!これって凶悪犯の更生に使えないかしら?
素晴らしい実験が出来て大満足よぉ~あぁ、帰って論文書かないと!!」

えっと、何か木村博士の一人勝ち?みたな・・・??あっ、製薬会社の連絡要員さんも興奮して目をキラキラさせてるから二人勝ち??


 こうして野外フェスの終演とともに、一連のコバルトもどきによる騒動は幕を閉じたんだ。

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