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真相??

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 トウマは顔を真っ赤にして怒り狂っている。

憎悪の感情が振り切れたのか黒狼が威圧から逃れ、コウに向かって襲いかかるも一瞬にして黒霧状に粉砕された。

しかしトウマはまた黒狼を出す。

こいつもかよっ?!

また古いシューティングゲームが始まるのか?・・・正直ウザいんだけど。

「う~ん、黒ホグは見せてもらったし、もういいや。本当は青ホグを喰ってるところも見たかったけど、またゲンに怒られちゃうからねぇ?
はい、かまってちゃんのお子ちゃまはそろそろ大人しくしましょうね~」

そう言って木村博士はコウを黒狼に向かわせる。コウが近づくたびに後ろに下がる黒狼。コウはそれをまた威圧で動けなくしたようだ。

徐々に顔色を悪くし、ガタガタと震え出すトウマ。

コウはトウマにも精神攻撃をしてるの?てか、ホグでそんな事が出来るの??化け物かよ木村博士・・・

「そんなんじゃホグハンターに敵うわけないでしょ?
あなたのマコちゃんへのひねくれた思いのせいで、黒ホグに喰われた子の気持ちを・・・味わわせてあ・げ・る!」

コウがカッと目を見開き、空気が震えるほどの威圧が辺りを覆う。

その瞬間、黒狼は黒い霧となって即消滅。トウマの中に残っていた黒狼の元な憎悪だけでなく、今のトウマを支えていた精神の核のようなものも破壊され、放心状態になっているようだ。

つまり、黒ホグに喰われた青ホグを出した子の状態・・・これ、大丈夫なの?自我が崩壊したりしないのかな?

「さて、仕方ないから話を聞いてあげましょう。大丈夫。自我が崩壊しないようにコウがあなたを支えてくれるわ。言い換えると気絶も出来ないから話すしかないわよ?
どうしてそこまでマコちゃんをそこまで憎むの?」

うん、その状態ならどうやっても逃げられないね。

トウマは、ポツリポツリと語り始めた。それを要約すると・・・

 
 オレの両親は政略結婚でお互いに愛情はなく、それぞれ別の相手がいる。しかも、父親の相手は男らしい。
母親からはそれなりに愛情を感じて育ったが、父親から愛されていると感じた事はない。

それは父親がゲイで、跡取りを産ませるために嫌々こなした母親との性行為の結果なオレを見るのが嫌だったんだろう・・・と、オレは思っている。

だから、ゲイを憎んでいる。

なのに何故かマコが気になって仕方なかった。

マコにキスをされ、ちょっと嬉しかった自分が許せなかった。

だからそれを上書きするようにマコを憎んだ。オレが嫌いなゲイであるマコを。そうしないとマコに惹かれてしまう。あれだけ憎んだ父親と同じになってしまう・・・

そう思って、寒川の手も借り徹底的にマコをいじめた。オレを恐れ、憎むマコを見るのは気分が良かった。

化学教師で副担任だった雪村がマコにかまっているようだったので、父親の名前と寄付金をチラつかせて校長と担任に「教師を辞めさせられるぞ」と、脅しをかけさせる。雪村は簡単に手を引き、今度はオレにやたらと話しかけてくるようになった。
辞めさせられないよう、媚を売ってやがるのか?と思ったが、マコから離れるのならどうでもいい。オレは適当に相手をしてやった。

誰にも相手にされず、一人でいるマコを見て安心感を抱く。誰とも関わらず、オレだけを憎めばいい・・・

学校を辞め姿を見せなくなってからも、家に引きこもっていると聞けば、オレが傷付けたマコが存在すると認識出来て安堵した。

なのに・・・半年もしないうちに、マコはコバルトという薬でPTSDを克服し、別の学校に転校したという。

腹が立った。

オレの事を忘れて笑っているマコが憎かった。そしてマコを助けたコバルトとかいう薬も。

あれから四年が経ったが、オレはまだマコとコバルトが憎いままだ。

そんなある日、優人の兄の弥人がコバルトのレシピを手に入れ、合成しているという話を聞いた。しかも、よくよく調べてみると、それはコバルトではなくコバルトに似た薬で、憎悪を増幅させる作用があるらしい。

コバルトの特徴であるホグが暴走した際には濃紺になるが、どうやらそのコバルトもどきを食えば、憎悪の塊の黒ホグが出せるようだ。
そして優人の弟の呼人で実験してみた結果、なんとその黒ホグは他人のホグを喰った。しかも喰われたホグを出した人間は自我が崩壊して自殺・・・これはコバルトを貶めるチャンスかもしれない。

そう思って弥人をオレが持っている別荘に匿い、そのコバルトもどきを大量に作らせ優人とともにばら撒いた。

大きな野外フェスがこの公園であると知り、自分たちも参加して黒ホグを出し、青ホグを喰い散らかしてやるつもりだった。
幸い父親がこの公園の株主でコテージの使用権を持っていたので、前日からの潜入が可能だったんだ。警察がいる正面ゲートなんて通る必要はなかった。

このフェスで黒ホグが青ホグを喰いまくれば・・・さらに人が死ねば・・・

コバルトの使用が国に禁止されるかもしれない。そうなればいい。

マコを救った薬なんて無くなってしまえばいい。

そして・・・そのフェスに行けば、ホグハンターになったというマコに会えるかもしれな・・・・・い・・・と・・・・・・



 そこまで語ったトウマは、もう何も言う事はない、とアピールするかのように無言になって項垂れた。

コウが視線を上げると、トウマの顔も上がる・・・ホグで他人を操ってるの??もう何でもありだな木村博士は。

「もうこれ以上は何も出なさそうね?黒ホグを出す気力もないでしょう。自分を喰わせる事も出来ないわよ?あなたは正気のまま、警察に引き渡します。
でもその前に・・・マコちゃん、何か言いたい事はある?」
 
あっ、俺に振るんだ。

うん、言いたい事はあるよ?一言で済む。



「トウマ・・・お前、気持ち悪い。」
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