【完結】朱雀と白虎は黒を狩る

ルコ

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真相??

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 何となく空を見上げると、月明かりに照らされ少し明るい夜空。まるでコバルトを摂取した際に見える視界のような、深い青。黒い闇のシルエットの木々の隙間から見え隠れする青白い光を放つ月は、青いモヤから生まれる瞬間のホグのようで・・・

大人になっても綺麗なものは綺麗だ。

景色を見てそう思う心は変わらないし、ケイのように魂そのものが綺麗なままの大人だって存在する。

確かに思春期の頃の思いは特別だけど、それだけで完結してしまえるほど、この世の中は狭くない。もっともっと綺麗なものだって有るんだから。

・・・寒川、もっと視野を広げて世間を見た方がいいよ?

 
 その後もフェスは続き、濃紺ホグもチラホラ出たが俺たちはそれをすべて狩る。

黒ホグも寒川以外にも一体出現したが、一度狩ると濃紺ホグを狩った時と同じように出した本人は脱力して大人しくなった。トラウマが消えた際の通常の反応だ。

あんな昔のシューティングゲームのように次から次へと黒ホグを出すのは、寒川兄弟だけだったようだ。

ケイが言うには、憎悪が尽きていないんじゃないか?だって。PTSD治療でいうと、トラウマを狩り尽くせていない状態。薬が切れると黒ホグは出なくなるが、根本的な治療は出来ていない。って事らしい。

何なのかな、あの執念・・・

ソーラーエリアでも弥人が捕まったと連絡が入る。
リュカくんと電話で話したところによると、弥人は自分が作ったドラッグの効き目を見たかっただけらしい。
そしていっぱい作ったのは、頑張ると優人もサクヤ先生も褒めてくれるから・・だって。

子どもかよっ?!

いや、あの兄弟は実際、精神的に歪んだ子どものままだったんだろう。


 月明かりの無くなった黒に近い闇色の東の空が、だんだんと薄まっていく・・・白み始めた夜明けの瞬間に思わず見惚れてしまった・・・青ホグが空の色に同化しそうだな・・・・

そろそろ日が昇る。

コバルトによってホグが出せる時間は三時間~五時間くらい。フロアで見える青ホグもかなり減って来ている。
これで黒ホグや濃紺ホグが出るのも終わりかな?って思っていたところに、コズミックエリアの木村博士から連絡が入った。

『ケイとマコちゃんこっちに来れる?』

これで最後とDJも上げて来ておりフロアは大盛り上がり。青ホグを出している人たちもみんなすごく楽しそうなので大丈夫だろう。

連絡要員さんを残して、俺とケイはコズミックエリアに移動した。
 

 う~ん、ここは別空間だな。

アンビエントが流れるゆったりとした空間に漂う青ホグは、二十体くらいいるかもしれない。出した本人はベンチで寝転んでいるケースも多く、ソーラーエリアやルナエリアで遊び疲れた人たちが集まって来ているようだった。

人も多いがぎっしり詰まって踊っているわけではなく、適度な空間でゆったりと体を動かしている人が百人くらい?といった感じ。

そんなコズミックエリアを見渡せる一番後ろの席に木村博士はいた。

それともう一人・・・えっ?えっ??えぇっっ???!!!!

トウマ???!!

その頭上には・・・ホグにしては巨大な黒犬・・・いや、黒狼のホグっ??!

そして木村博士の頭上には、麒麟のコウがいる。す、すげぇ・・・本当にあの聖獣と言われる麒麟の姿をした青、いや、ちょっと黄色がかった青緑ホグ・・・細かい鬚や体のつくりも完全に再現している。

そしてその威圧感!!!

一瞬、ハクが怯んだくらい。すぐに敵ではないと判断して持ち直したが、自分より格上の存在だと理解しているようだ。

・・・なのにそれと対峙しているトウマの黒狼って・・・その大きさがトウマの憎悪の深さなのか??

俺たちに気付いた木村博士が声をかけて来た。

「来てくれてありがとう。ケイ、マコちゃん。寒川くんたちは警察に引き渡したんだってね?
けど、もう一匹釣れちゃった。」

トウマの視線が俺に向く・・・そこには憎悪に満ちた、ある意味懐かしい瞳があった。

「・・・マコ・・・・・」

一瞬、体がすくみそうになるも、ケイが背後から支えてくれて持ち直す。

うん、大丈夫。

俺はもうS校時代の俺じゃない。

俺はホグハンターで相棒のハクがいる。しかも相方はケイでセキだっているんだ。

俺は、俺を救ってくれたみんながここにいる事に感謝しながら、トウマに向き合った。

「・・・久しぶりだね、トウマ。で、何なの?」

「はっ?!『何なの』だと?ムカつくんだよ・・・お前はずっとオレにおびえてりゃいいのに・・・トラウマの克服だとか腹が立って仕方がない。
コバルトのおかげなんだってな?
だからオレは弥人を支援して黒ホグを出すとかいうコバルトもどきを大量生産させたんだ。憎悪を増幅させて出現した黒ホグが青ホグを喰えば死人が出るんだろ?
優人に聞いて面白いと思ったよ。お前が救われたとか言うコバルトを貶めて、今後医療用に使えないようにしてやろうってな。」

トウマは俺に、いや、ハクに黒狼をけしかけようとしたみたいだが、コウの威圧で動けないようだった。

「クソッ!!このババア・・・」

「あらぁ?口が悪いわね?この、マコちゃんにかまってもらいたくて仕方がないお子ちゃまは。」

「はぁっ??!何言ってんだババア?!!」

「だってそうでしょ?マコちゃんに自分の事を忘れられたのが悔しいから、コバルトを悪者にしたかっただけでしょ?
まったく、困ったかまってちゃんだわねぇ・・・」

・・・何それ・・・?

正直キモいんだけど・・・
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