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第五章 野外フェス
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しおりを挟む最後のキャンプエリアはコズミックエリアの裏側にあり、そこのさらに裏側はアスレチックがある山になっている。
元々この公園にキャンプ場としてあるエリアだ。
右寄りのソーラーエリアの裏側に数件あるコテージは出演者用で、その周りもスタッフしか入れない。
一般のキャンプエリアは左寄りのルナエリアの裏側になる。
かなりの広さはあるが、コバルト摂取者がホグを出している間はどこかのフロアで踊っている確率が高いだろうし、コテージやテントの中まで見張る事は不可能なので、スタッフエリアと一般エリアの真ん中に一人連絡要員さんを配置する事で良しとする。
見晴らしもいいし、後でフェス側のスタッフさんも借りる事になっているから何とかなるだろう。
ひと通り下見を済ませた俺たち一向は、スタッフルームとなっている正面ゲート近くの喫茶店で待機中だ。
時刻は午後三時前。そろそろ開場の時間とあって、フェススタッフさんたちは忙しそう。
そんな中、俺たちは最終打ち合わせに入る。
「もうすぐ開場だが、フェスが始まるのは夕方の五時からだ。早い時間はおそらく大丈夫だろうが・・・日が落ちたら警戒態勢に入るぞ。各自それまでに腹ごしらえをしておけ。もちろん日がある間もホグを見たら即警戒。いつ濃紺ホグや黒ホグが出るか分からんからな。」
ケイの言葉にゲン先生が続く。
「一応、ホグを見たらメッセージで共有する事にしようぜ。五時以降は各エリアに何体くらいホグがいるか把握しておきてぇ。どのくらいホグを出すヤツがいるか見当もつかねぇが・・・」
「そうだな。五時以降は一時間ごとに、そのエリアに大体何体くらいのホグが居るのかメッセージで報告するようにするか。」
その場でみんな了承する。
「前売りと昨年の来場者数から考えて、おそらく二万近くは入るだろう。その中でコバルトやコバルトもどきを食ってるのはどれくらいいるんだろうな?」
「ん~1%でも二百人か。5%だと一千人だわよ??はぁ・・・そのうちバッドに入る子は何%なのかしらねぇ?」
ケイの疑問の後の木村博士の言葉にみんな頭を抱えそうになる。どうか負の感情を持った人がコバルトもどきを食いませんように・・・
そしてここには連絡要員さんたちの他にも、元々フェス側から借りる予定だった十名のスタッフさんがいる。ホグを出した事がある人と、気配に敏感で何となくホグを感じる事が出来る人を選んでくれたようだ。
この人たちも連絡要員さんの下について巡回をしてくれる事になっている。特にキャンプエリアは広いので、スタッフエリアと一般エリアに一人ずつ配置。
何か異変があればすぐに連絡をしてくれるよう指示する。もちろんみんなメッセージアプリのグループに登録済み。
三時になり、開場したようだ。
スタッフルームの喫茶店から外を眺めていると、テントを持った人々がキャンプエリアへと向かって行くのが見える。
明るい時間にテントを立てておかないと大変だもんね。
そしてしばらくするとテントを立て終わったのか、フードエリアに人が集まり出す。
俺たちもそろそろ出動だ。
今はまだそれとなく巡回する程度。フェス飯を食べておこう。そして五時からは自分が担当するエリアで待機しつつ、警戒態勢に入る。
朝まで十二時間以上ずっと警戒態勢ってのは大変だけど、若さで何とか乗り切ろう!って思ったけど・・・木村博士は大丈夫かな・・・地ビールで酔っ払って寝なきゃいいけど・・・
とりあえず俺はタイラーメンとケイジャンチキンを食べた。野外フェスって何故かエスニック料理が美味く感じるんだよな~俺だけかな?
食べ終わった後、他の屋台も見て、立ったまま手軽に素早く食べられそうなものを物色しておく。長丁場になるから、途中でスタッフさんに買って来てもらったりするだろうからね。タコスやミンチカツはいいかもしれない。
一応、ゼリー飲料とかの携帯食は持っているけど、出来る事ならフェス飯を堪能したいよね。もし黒ホグが出たらそんな事言ってる場合じゃないのは分かってるけど・・・多少は楽しみも欲しい。
そろそろ開演時間の五時だ。他のみんなもそれまでに各々好きなフェス飯で腹を満たしたよう。
最後にケイがみんなに気を引き締めるよう声をかける。
「よし、各自担当のエリアに行くぞ。長丁場になるが気を引き締めていこう。日が変わってからが本番だが、早い時間も気を抜くな。目標はコバルトとコバルトもどきによるPTSD患者を出さない事。
黒ホグは絶対に狩る。濃紺ホグも見逃すな。それと・・・寒川弥人と優人を見つけたら、黒ホグが出ていなくても即連絡してくれ。すぐに警察に引き渡す。」
そう。正面ゲートには警察が居て、入場者の中に弥人がいないかチェックしているんだ。コバルトもどきの密造で逮捕状が出てるから。そして優人の方も密売疑惑があるので重要参考人として引っ張りたい模様。
・・・今日、このフェスに寒川たちは来るんだろうか・・・?
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