【完結】朱雀と白虎は黒を狩る

ルコ

文字の大きさ
上 下
17 / 28
第五章 野外フェス

1

しおりを挟む
 
 前日ギリギリに頼んだというのに、木村博士は六人もの連絡要員を連れて来てくださった。
単位をちらつかせたら、研究室から希望者が殺到したらしい。その中から「素面でホグを見る事が出来て比較的信用出来そうな学生三人」と、製薬会社の方からも戦力になりそうな三人を確保したようだ。

製薬会社の人たちの方も、木村博士と同じく「黒ホグを見てみたい!」とこれまた希望者が殺到したらしい・・・

まぁけど、結果的にちゃんとホグが見える人材を六人も集めてくれたんだ。流石としか言いようがない。

そしてそんなお願いを自然な流れでやってのけたリュカくんがすごい。

木村博士とコズミックエリアを担当するのが一人、ソーラーエリアのヘルプが二人、そして俺たちが担当のルナエリアにも一人貸してくれるとの事。後の二人はフードエリアとキャンプエリア担当。全員、濃紺ホグや黒ホグを見つけ次第スマホで連絡してくれる事になっている。

メッセージアプリでグループを作り、みんなで情報を共有出来るようにした。

正直助かるなぁ。

狩るのは俺たちだけでも何とかなるが、広いエリアを隈なくパトロールするのは無理があるからな。

普通にフェスのスタッフさんにも巡回してもらう予定だったけど、「見える」人が濃紺ホグや黒ホグを見つけてくれるのなら、本当にありがたい。

 
 フェスの開場は午後三時からだが、俺たちは正午には着いて会場の下見中。晴れて良かった。野外フェスは雨だとキツいよな。

ここは公園といっても大型遊具や乗り物もあるテーマパークだ。小規模な遊園地プラス体験施設もあり、自然も満喫出来る場所となっている。
実はここ、俺の地元から近かったりするんだよなぁ。俺の好きなアスレチックがあったから、子どもの頃によく連れて来てもらったんだ。そう言えば遠足でも来たな。

まず、入口の正面ゲートから入って右側にあるのは、変わり自転車に乗れる広場。通常は何百台もの自転車があり、一定時間内は自由に乗れるんだが、今日はそれらの自転車は片付けられている。

つまり、ただの広場。

ここがメインステージのソーラーエリアになる。

広さも小学校の運動場くらいあり、その周りにはスタジアムのように観覧席まである。かなりの人数が収容出来そうだ。

普段は存在しないステージは、観覧席の真ん中に隣接して作られていた。

今は海外バンドのリハーサルが行われている。すでにしっかりと音が出てるなぁ。普段はそんなに聞かないバンドだけど人気があるだけあってカッコいい。

このフェスはロックフェスと言うより、テクノ、エレクトロよりのフェスだ。バンドでも踊れる音が多いので俺的にも嬉しい・・・って、仕事だからガチでは踊らないけどなっ!!

「う~ん、これは・・・観覧席で黒ホグや濃紺ホグが出たら駆け付けるのに時間がかかりそうだな。」

ゲン先生が辺りを見渡しながら言う。

「観覧席は連絡要員さん二人に巡回してもらって、俺たちは基本フロアの端で待機かな?で、比較的空いている外側を通って現場近くに到着するのがベストじゃない?長丁場になるし、トイレにもさっと行ける場所で待機がいいと思う。」

リュカくんの言葉にゲン先生も頷く。

「そうだな。ある程度まで近寄ればホグを飛ばせる。」

そう、ゲン先生の言う通り、俺たちならある程度の距離が空いていてもホグを飛ばして狩れる。この広場から観客席に向かってでもギリギリ何とか狩れるだろう。


 ソーラーエリアの下見が終わり、俺とケイが担当するルナエリアに来た。

正面入口の左側にあるイベントステージ。休日にはヒーローショーなどが行われている所だ。
前方にこじんまりとしたステージがあり、その前には固定された椅子が数列並んでいる。後は芝生があるだけの場所。
普段はレジャーシートを敷いた家族連れが、お弁当を食べたりする休憩スペースでもある。

だが今日は、そのステージ横に巨大なスピーカーが設置されている。ソーラーエリアもそうだったけど、やっぱり音にはかなりこだわっているようだ。運営するスタッフさんたちの意気込みがうかがえるなぁ。

ルナエリアでは、主に日本のアンダーグラウンドシーンで活躍するDJや、ソロアーティストがプレイする事になっている。

今はのリハは・・・JUNじゃん!!

JUNはメジャーではないが、地元を中心に活動している俺が大好きなアーティストだ。ジュンさんはもうかなりのおじさんなのに、強烈な色気があるイケオジの極みな超絶美形。元々はMAGってバンドのボーカルなんだけど、最近はソロ活動の方が多い。

ソロの時には、テクノだったり、ノイズだったり、アンビエントだったり、その日によって色々だ。俺的には踊れるテクノセットの時が一番好き。今日はどうやらそんなテクノセットっぽいから嬉しいな。

そしてJUNと言えば・・・あっ!やっぱりいた!!PAブースにレンさん発見!

そう、あのカフェマデリカの麗しの店長さんだ。レンさんは、MAGとJUNの専属PA(音響オペレーター)をしてるんだ。昔、ライブハウスでバイトをしていた頃にPAをしていたらしく、辞めてからもMAGとJUNだけはずっとPAを続けてるんだって。もうメンバーみたいな存在らしい。

クラブでレンさんがPAをしている所を初めて見た時はびっくりしたなぁ。レンさんも照れくさそうに説明してくれたっけ。

あぁ、ちょうどJUNのリハが終わったようなので、レンさんにあいさつをしに行こう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

豁サ逕コ縲(死町)season3・4・5

霜月麗華
ミステリー
高校1年生の主人公松原鉄次は竹尾遥、弘田早苗、そして凛と共に金沢へ、そして金沢ではとある事件が起きていた。更に、鉄次達が居ないクラスでも呪いの事件は起きていた。そして、、、過去のトラウマ、、、 3つのストーリーで構成される『死町』、彼らは立ち向かう。 全てに

マクデブルクの半球

ナコイトオル
ミステリー
ある夜、電話がかかってきた。ただそれだけの、はずだった。 高校時代、自分と折り合いの付かなかった優等生からの唐突な電話。それが全てのはじまりだった。 電話をかけたのとほぼ同時刻、何者かに突き落とされ意識不明となった青年コウと、そんな彼と昔折り合いを付けることが出来なかった、容疑者となった女、ユキ。どうしてこうなったのかを調べていく内に、コウを突き落とした容疑者はどんどんと増えてきてしまう─── 「犯人を探そう。出来れば、彼が目を覚ますまでに」 自他共に認める在宅ストーカーを相棒に、誰かのために進む、犯人探し。

輪廻

壺の蓋政五郎
ミステリー
小学校の卒業記念に記した将来の夢。卒業後修行を重ね夢が叶った金原武。その力は転生を手助けする。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

✖✖✖Sケープゴート ☆奨励賞

itti(イッチ)
ミステリー
病気を患っていた母が亡くなり、初めて出会った母の弟から手紙を見せられた祐二。 亡くなる前に弟に向けて書かれた手紙には、意味不明な言葉が。祐二の知らない母の秘密とは。 過去の出来事がひとつづつ解き明かされ、祐二は母の生まれた場所に引き寄せられる。 母の過去と、お地蔵さまにまつわる謎を祐二は解き明かせるのでしょうか。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

君たちの騙し方

サクラメント
ミステリー
人を騙すことが趣味でサイコパスの小鳥遊(たかなし)。小鳥遊は女子中学生の保土ヶ谷に、部屋に住ませて貰っているが、突然保土ヶ谷がデスゲームに巻き込まれてしまう。小鳥遊は助け出そうとするが・・・

処理中です...