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第三章 マッドサイエンティスト??
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しおりを挟む「ホグを出す作用があるコバルトに、憎悪を増幅させる何かを混ぜて違う薬にしたって事ですか?何の為に?」
「別にあたしが何かを混ぜたわけじゃないわよ?あたしはコバルトとはほんの少し違う化学構造式とレシピを書いただけ。憎悪が増幅するであろう成分が入ったレシピ。
何の為にですって?何の為でもないわ。ただ単に人の憎悪がコバルトによって実体化したらどうなるかなぁ?って思っただけよ。
普通のホグより明確な意思を持ったホグが実体化されそうじゃない?
そう思って書いた事は認めるわ。けど、あたしは実際に合成する気なんかなかった。流石に興味だけで人にトラウマを背負わせる可能性がある薬を作ったりしない。
走り書きした紙を捨てたけど、それを拾って合成する子がいたなんてびっくりだわよ。
まさか寒川くんが偶然拾って実際に合成するとはねぇ・・・」
う~ん、偶然?だけなのか??て言うか、そんな紙気軽に捨てていいの??
「ちょっと待て?!そんな気軽に捨てていい物なのかよっ??!」
ゲン先生もそう思ったようだ。ツッコんでくださってありがとうございます。
「だって走り書きだし?完成されたレシピじゃないのよ?あれだけでちゃんと作り上げるなんて寒川くん、やるわねっ!!」
「・・・寒川弥人は、コバルトだと思って合成したんですか?それとも、憎悪が増幅される別物だって知った上で?」
「そんなの知らな~い!憎悪増幅とかわざわざ書いてないし。
それにね、確かに思いの強さは憎悪が一番でそういうホグが出やすいかも?とは思ったけど、他にも媚薬成分が強いエロ特化なのとか、ひたすら冷静になって自分を客観視出来るのとか・・それは逆に考えれば解離性障害の治療に使えないかな?とか、いろんなバージョンのレシピを書いたわよ?
だって、人間の感情すべてがホグとして出せたら楽しいじゃない?!
それらの走り書きもあったはずだし、どうして憎悪増幅を選んだのかなんて分かんない。」
た、楽しいって・・・そんな理由??!
解離性障害の治療になるかも?ってのは素晴らしいと思うけど、それとエロ特化が同レベルなんだ・・・研究者ってこんな感じなのかな?もちろん、崇高な目的を持って薬を開発してる人もいるんだろうけど・・・木村博士みたいに研究すること自体が楽しいって人種も多いのかも知れないな。
うん、こういう人をマッドサイエンティストって言うんだね。
突然、スマホのバイブ音が聞こえる。ゲン先生のスマホのようだ。
「ちょっと失礼・・・はい。え?えっ?はぁっ??!何で・・・マジかよ・・・あぁ、分かった。すぐに帰る。」
電話を切ったゲン先生の顔色が悪い。どうやら悪い知らせのようだ。
「・・・寒川呼人が死んだ。」
「「「「はぁっ??!!!」」」」
みんなの声が揃う。
「ちょっと待て。呼人はまだお前の所に入院中だよな?自殺なんか出来ないよう監視してるだろ?!しかも警察の監視もあったんじゃないのか??」
と、ケイ。
「自殺というか・・・ショック死らしい。」
何それ??!
そんな事ってあるの???
「・・・黒ホグが本体の精神を喰ったのかも・・・??そのせいでなら、ショック死もありえる。あれは意思を持っているから・・・憎悪が自分自身、つまり本体に向けばそうなる可能性はあるんじゃないかしら?」
木村博士の言葉に全員が固まる。
「い、いや、けど流石にコバルトもどきも抜けてんだろっ?あれから丸二日は経ってるんだぜ?!」
ゲン先生に木村博士が答えた。
「・・・思いが強すぎた?フラッシュバックしたのかしら??監視の目を盗んでまたコバルトもどきを摂取するっていうのは、無理があるけど・・・ショック死が本当なら摂取した可能性の方が高いわね。」
「当然所持品検査もしている。服装はTシャツにパーカー、カーゴタイプのサルエルパンツ、足元はスニーカー。
ショルダーバッグに入っていたのはスマホと財布、ハンドタオル、ティッシュ、清涼剤のタブレットくらいだ。タブレットの中に混ぜられていたコバルトもどきの錠剤は押収済み。財布もきっちり調べたはずだが・・・とにかく、ウチの病院へ戻るぞ。寒川の死因が気になる。」
他にコバルトもどきを隠せるような物はないようだ。どこに隠し持っていたんだろう?それとも本当にフラッシュバック??けど、ショック死するほどのフラッシュバックなんて本当に起こるのかな??
俺たち一行はゲン先生の病院、「かめなし心と体のクリニック」へと向かった。
あ~今日は豪華な晩飯どころじゃなさそう。後日必ずご馳走してもらわなきゃ!!
そして・・・木村博士は俺たちの車に乗るんだね・・・・
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