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第二章 ホグハンター
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しおりを挟むそんな話をしていたら、看護師さんが桜井さんが目を覚ましたと報告に来たので、ケイと二人で様子を見に行く。
「あっ!先生っ!!私、何か濃い青のモヤが見えて・・・」
「桜井さん、落ち着いて。私もこの白崎もホグハンターだ。白崎が出すホグで黒蝙蝠を狩ったのを見ただろう?
もし、あなたが濃紺や黒のホグを出しても私たちが狩る。むしろ出して狩った方がその恐怖は消えるから。
怖がらずに出しなさい。」
ケイがそう言うと、桜井さんは恐る恐るホグを出す為に集中し始めた。
俺もハクを出してスタンバイする。
あぁ、かなり小さいけど本当に青黒っぽいモヤが見えるな。
そのモヤの中から濃紺の小さな蝙蝠のような物体が現れた。コバルト、いや、コバルトもどきを食ってから時間が経過しているからか、完全に実体化出来ないようだが明らかにあの黒蝙蝠だろう。
ケイの左肩に止まっていたセキが軽く飛び、その小さな黒蝙蝠もどきをクチバシで突く。
一瞬で黒蝙蝠もどきは濃紺の粒子が弾けるように消散した。
「あぁ・・・ふぅ・・・・・何か本当に恐怖感が消えました。ありがとうございます。」
「薬が完全に抜けるまで同じような状態が続くかも知れない。
最初に恐怖の素の黒蝙蝠を狩る瞬間を見た事で、トラウマになるほどの恐怖感はないものの、コバルトが残っている間は小さな恐怖が濃紺ホグとして出て来るのかもな。」
ケイはしばらく考え、俺と桜井さんに指示を出す。
桜井さんがコバルトじゃない物を食ったと知れば、余計に不安になるだろうからコバルトで通すようだ。
「マコ、このまま桜井さんを見てろ。もちろん濃紺ホグや黒ホグが出たらすぐに狩る。
桜井さんは、モヤが見えたら怖がらすに実体化してください。この白崎と相棒のホグのハクがさっきみたいにすぐに狩るので安心していい。
マコ、オレはゲンと・・・夜が明けたら木村博士に電話をするから桜井さんを頼む。」
「了解。桜井さん、リラックスして?
コバルトが効いてて気持ち良かったらそれに身を任せてください。で、もし恐怖感が蘇りそうなら遠慮なくホグを出してくださいね。
濃紺でも黒でも俺が絶対に狩りますから。」
「・・・ありがとうございます。」
それから半日ほど俺は桜井さんとともに病室で過ごした。
その間、ホグが出たのは三回。どんどん小さくなり、色も濃紺から藍色に変わっていった。三回目のホグは藍色の小さい羽虫みたいな蝙蝠もどきだった。
それを出してハクが狩ったのを見た後、桜井さんは安心した顔で眠りについた。
その報告を看護師さんから受けたケイが俺を呼びに来る。
「お疲れ様。もう大丈夫だろう。後は看護師に任せて飯でも食おう。」
休憩室には、俺の好きな店からのデリバリーが並んでいた。
ローストビーフ丼にタコライス、山盛りのポテトとスパイシーなから揚げ。カルパッチョが乗ったサラダもある。
豪華だなっ!頑張ったご褒美かな?
朝、看護師さんが近所のパン屋で買って来てくれた、サンドイッチを食べただけだったから腹が減ってたんだ。
「うわっ!ローストビーフ丼もタコライスも食べたいから半分こしようぜ!!」
「半分こって・・・子どもかよ・・・」
そういいながらも皿に取り分けてくれるケイ。こういう時には優しいんだよな。
ちょっとキュンとする。
オレは皿に分けられたローストビーフ丼に真っ先に手を付ける。一口目からうっま~醤油ベースのタレとわさびが最高!
咀嚼して飲み込んでからケイに聞いた。
「で、どうなったの?」
「あぁ、まず黒蝙蝠の男、寒川 呼人だが・・・あの後も黒蝙蝠を出してホグを喰おうとしているようだ。で、リュカがそれを狩り続けてるらしい。」
「はぁっ??!あれからずっと??黒ホグってそんなに連続して出せるもんなの???」
「確かな事は分からん。あの男の執念なのか、コバルトもどきの作用なのか・・・」
どっちにしても大変だよ。リュカくん大丈夫かな?
ゲン先生の弟子のリュカくんもホグハンター。俺と似たような経歴の持ち主だ。相棒は青龍のセイ。
歳も俺の一つ上と近くて境遇も似ており、気も良く合う。仲良くしてもらってるんだ。
ここだけの話、俺にとってリュカくんは、ケイの事を相談出来る唯一の相手でもある。ゲン先生とリュカくんもいい感じだと思うんだけど、リュカくん的には「それはない」らしい。
「その兄の弥人にも、事情聴取が必要だと警察が行方を追っているが、消息不明でまだ見つかってないらしい。」
「木村博士の件は?」
俺はローストビーフ丼を食べ終え、ポテトとチキンに手を伸ばしながら再度聞く。
「あ~、明後日の夕方五時にK大の研究室に行く事になった。ゲンとリュカも呼ばれている。マコ、お前もだ。」
「はぁっ??!俺も??」
「その時間だと講義も終わってるだろ?木村博士のご指名だ。オレもゲンも相方のホグハンターを連れて来いってさ。」
「いやいや、俺にも予定ってもんが・・・」
「バイト代にプラスして特別手当と豪華な晩飯付きだが?」
「・・・行かせていただきます。」
満足気に微笑むケイ。しゃーねぇな。付き合ってやるか。
木村博士もちょっと見てみたいし・・・なんて思った俺は、気軽に考え過ぎていたんだと思う。
そこからさらなる事件が起きるなんて思ってもみなかったんだ。
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