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第二章 ホグハンター
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しおりを挟む俺が初めてハクを出してから四年が経った。俺は大学に通いながら朱雀メンタルクリニックでホグハンターとして働いている。まぁ、学生だからバイト扱いなんだが。
あれから別の高校に転入し、無事卒業した。その高校では何事もなく、至って普通の高校生活を送る事が出来たんだ。トラウマもあれ以来消えたし、本当に院長先生とケイ、セキには感謝しかない。
あの後、俺はケイの下でホグハンターとしての修行をする事になった。
現在でもコバルトは向精神薬として認められているが、気軽には処方出来ない状況だ。
なぜならPTSDを悪化させてしまう患者が、立て続けに数人出てしまったから。けどそれは、優秀なホグハンターが側に居れば防げたんじゃないかと思う。少なくとも、朱雀メンタルクリニックでそんな例はない。
実際、きっちりとホグを狩ればトラウマは高確率で消えるんだよ。
それくらいホグハンターの存在は重要だ。だが、優秀なホグハンターは驚くほどに少ない。だから俺は立派なホグハンターになってPTSD患者を助けたいと思ったんだ。自分がケイにしてもらったように。
それに、コバルトは決して悪い薬じゃない。どんな薬でもそうだが、一、二度の摂取で耐性が付くものではない。まして、禁断症状なんてすごい量を服用しないと出ない。きちんと病院で処方された容量を守って治療を受ければPTSDが消えるんだ。コバルトでの治療はれっきとした医療行為なんだから。
コバルトを悪者にしないためにも、俺はホグハンターとして働く決心をしたんだ。
さて、そんな中俺は、臨床研修医期間を終え精神科専攻医となったケイの横で、ホグハンターとして居るのが当たり前の生活を送っている。
俺の恋心はどうなったかって?
うん。もちろん継続中。
だって、ケイは知れば知るほどいい男なんだよ。ちょっと偉そうで腹黒俺様なとこもあるけど、本当は慈愛に満ち溢れた崇高な魂の持ち主だと俺は知っている。
相変わらず超絶イケメンだしな!
きっかけはコバルトだったとしても、それに流された一時的な感情ではない事は、四年の年月が証明しているんじゃないかな?
だが俺はそれを伝える気はないし、ケイも気付いてはいるが普通に接してくれている。それでいい。まぁ、無茶苦茶モテるヤツだから、こういう状態に慣れているんだろう。それにケイは特定の彼女は作らない主義みたいなので、俺も嫉妬に苦しむ事もなく助かっている。
あれから俺は、コバルトを摂取しなくてもハクを出せるように訓練した。どうやら俺には才能があったようで、すぐに素面でもセキが見えるようになり、ハクを出す事も出来た。
その方法?
何て言うかな・・・ホグは自分の意識そのもので・・・だから見えない時でも意識の中にはハクが居るんだよ。まずはそれを自覚する。
そして、ケイの中にもセキが居る。ケイがセキを実体化させるのは、寝ているセキを起こすような感覚だって教えてくれた。
そして、コバルトを摂取した時の高揚感を思い出し、自分の中から出て来てくれるよう促すんだが・・・俺はケイとのハグを思い出す。幸せだったなぁ・・・ペタペタと引っ付いているだけでとてつもなく幸せだった。そして、ハクがセキに翼で包み込まれた時の何とも言えない多幸感・・・本当に幸せだった・・・ハクは俺だからもちろんセキが大好きだ。
「ハク、出て来たらセキに会えるよ」最初はこれで成功した。
実際ホグを出している人物が側に居ると、それに同調して出しやすくなるようだ。相手のホグに自分のホグを引っ張っり出してもらう感じ。
その後もハクはセキが居るとすぐに出て来るようになった。最初の難関はセキのおかげでいとも簡単にクリア出来てしまった。
呼び出せたら実体を保てるようハクのイメージを強固にする。最初に青い煙のようなモヤの中から飛び出したハクを再現するんだ。少しでも違う所があろうものなら、機嫌をそこねて言う事を聞いてくれないので苦労したな。
まぁ、何度も繰り返すうちに嫌でも相棒の姿形は完璧に覚えたけれど。
素面では視界が青みがかるわけではないので、慣れて来るとある程度の色味の調節も出来る。だからセキは真紅の炎を吐けるってわけだ。
実際、セキは赤紫に近く、ハクはかなり青白い。
そんな感じで俺はハクを自由に呼び出せるようになった。そしてハクを操り、トラウマの象徴として出たホグや、暴走したホグを狩るんだ。
これは、比較的簡単に出来た。ハクが虎だったから攻撃のイメージがしやすかったんだ。だって、例えばハクが兎だったらどう攻撃したらいいか悩むよね?
まぁ、あの時はトウマ猿を消滅させる為に、猿より強そうな虎をイメージしたんだけど。それでも・・・最初に虎としてハクを出した俺を褒めてあげたい。無意識だったとしても先見の明があるね!って。
ケイは滅多に褒めてくれないから自分で自分を褒めてみる。
あいつ、褒めて伸ばすって事を知らないのかな?弟子には飴は少なく鞭が多いタイプなんだよな・・・
治療の時にはあんなに優しかったのに。
そう、ケイはなかなかスパルタで、俺とハクはすぐに実戦の場に連れて行かれ場数をこなした。もちろん患者のトラウマをなくす事が最優先で、悪化させないよう、少しでも危うい場面があればセキがすぐに狩ってくれたんだが。
まぁ、そのおかげで俺とハクは早々に狩りが出来るようになったんだ。
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