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ユイ 出会い

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 前作「腹黒王子ちゃんのカタルシス」の主人公違いの番外編的な物語です。

この物語単品でも読めるようにはしているつもりですが、前作を読んでからの方が分かりやすいかとは思います。

ーーーーーーーー

「あなたがキョウ様の弟様ですね。」

「はぁ?お前誰だよ?」

「これは失礼致しました。私は夏秋 紫暮(なつあき しぐれ)と申します。あなたのお兄様、キョウ様親衛隊の三代目隊長を務めさせて頂いております。
どうぞシグとお呼びくださいませ。」

 何だこいつ??すごい美形なのに目が怖いんだけど??!





 俺の名前は夏海 唯仁(なつみ ゆいと)。この春から高校生になった。
 
自宅から電車で小一時間かかるこの学校に進学したわけは・・・半分(母親が同じなんだ)血が繋がった会った事のない兄、秋月 暁弥(あきづき きょうや)の母校なので。って、正直その頃は兄の事はどうでもよかった。その兄の父親、MAGってバンドのボーカルのジュン様になんとか会えないかな?って思ったからだ。

 俺は昔のパンクが好きだ。
最初は単純に音を聞いてカッコいいと思い、少し調べてみて、社会に対する反骨精神と、
Anyone Can Do It(誰だってやれる)
Do It Yourself(自分達でやる)
というD.I.Y精神に感銘を受けた。
今時流行らないのは重々承知だが、スマホがあれば最早時代なんて関係なく、ありとあらゆる物事を知る事が出来る。その中で俺が引かれたのがパンクだっただけだ。

 それ以降動画アプリで色んなパンクバンドのライブ動画を見まくったんだが、その中で一番好みなのがMAGだったんだ。

全然メジャーじゃないバンドなんだが、何と言うか、爆音ギターとボーカルのジュン様の凄まじい色気と存在感。
他のバンドにはない「何か」が俺を奮い立たせたんだ。「何か」がなんなのかよく分からないけど、とにかく他とは違って見えたんだよ。

ある日、俺がMAGの動画を見ていたら、ウチのビッチな姉、夏海 香久夜(なつみ かぐや)が「親父じゃん。」とか言いやがった!!
なんと、ジュン様はオレの母さんの元ダンナでカグヤの父親だったらしい!

マ・ジ・か・よ??!!!!!!

青天の霹靂ってヤツだよ!!!

母さんが再婚なのは知ってたけど、マジでジュン様とも昔結婚してたの?!!!
カグヤが連れ子なのも知ってたけど、ジュン様の娘って嘘だろ???!!!!
俺はあの冴えない父さんの息子なのに?

 父さんはいたって普通のサラリーマンのおっさんだ。
母さんはそこそこ美人だが、まあ普通の主婦。そう思ってたのに・・・
カグヤが言うには、昔は凄い格好をしてライブハウスに通ってたらしい。
ジュン様と結婚していた当時は、モテすぎるジュン様の横にいるのが辛く、怒ってばっかりだったみたいだ。
その反動でモテそうにない父さんと再婚したんだな、きっと。

俺はウザがるカグヤを宥めすかし、全力で機嫌を取って(ケーキやらアイスやらを買いにパシらされ)、ジュン様の事を聞きまくった。

絶対に母さんにバレないようにって約束して教えてもらった情報によると、ジュン様はここから電車で小一時間の所にカグヤの一つ上の兄と住んでいる。
それって・・俺にとっても兄って事だよな?半分血が繋がってるし。

兄はジュン様に顔はそっくりだが、基本無表情。逆にジュン様はいつも笑顔で人を魅了しまくっていたらしい。

母さんとジュン様が別れて以来、カグヤは一度もジュン様とも兄とも会っていないとのこと。母さんが禁止したんだって。今後一切会わないってジュン様に約束させたらしい。
しかし、会ってはいないが、兄とはSNSで生存確認程度のやり取りはあるみたいだ。

それで俺は、ジュン様が住んでいる場所から徒歩十分の距離にある、兄が通っていた高校を知る事が出来たんだ。

そこは多少遠いが通学範囲内にあるそれなりの進学校で、俺の偏差値的にもそこに通うのは不自然じゃない高校だった。なので母さんも特に不審がらずにいるようだ。

 高校に通うようになって約一ヶ月、卒業して二年も経つのに、未だに親衛隊が活動している程の兄のカリスマ性を知り、段々と兄にも興味を持った。
完璧王子とか小っ恥ずかしい通り名が付いている事や、なんと、三年生に兄の恋人の男子生徒?!!がいる事も知った。

そして今日、その三年生、冬崎 明日楽(とうざき あすら)先輩に声をかけてみようと試みて・・・

冒頭に戻る。


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