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番外編 ラウとサンの子作り
ユラ エピローグ
しおりを挟むサンの結腸の奥にある子宮に初めて精を注いだ日から、毎晩しっかり種付けに励んだ結果、サンはすぐに妊娠した。
山狼族のみんながこぞってサンの懐妊を願ったのも大きかったんだろう。
それからサンは、魔族の女性と同じ期間、お腹の中で子どもを育てた末に立派な双子を産み落とした。女性でも考えられないくらいの安産だったのも、山狼族の祈りが関係しているんだと思う。
正直、男性の体で産む事が出来るのかものすごく不安だったけど、サンが大丈夫だと信じている限りは大丈夫なんだよな。
それを見事に証明してみせた結果が、サユラとウランと名付けられた男女の双子。無事に生まれて来た二人は山狼族の王子と王女のような存在で、サンのお腹の中に居る時からみんなに愛されている。
もうね、むちゃくちゃ可愛い。
サンによく似た男の子サユラと、オレとサンを上手く混ぜ合わせたような女の子のウラン。性格もサユラはサンと同じく素直で可愛く、ウランは・・・なんと言うか天才肌の女王様気質?
どちらも大切なオレたちの子どもだ。
ちなみに双子からの呼び名は、ラウは父さん、サンは母さん、オレはユラパパ、ウルはウルパパって事で落ち着いた。
一般的とは言えない家族構成だけど、オレたちはみんな仲良く暮らしている。
サユラとウランが三歳になった頃、二人は揃って狼の精霊と契約した。
サユラは白狼、ウランは黒狼と。
オレがラウと契約して以来初めての狼の精霊。犬科動物の精霊は少数ながらも定期的にやって来て、子どもたちと契約をしていたが、狼はいなかったんだ。
ウルが言うには、狼の精霊はプライドが高いので、本気で仕えるに値しない魔族とは絶対に契約しない、との事。だが契約したからにはとことん仕えるので、サユラもウランも安心していい。だって!
それからもオレたちは幸せに暮らした。
サンはオレと一緒に歳を重ねるようになり、肉体的にも普通の魔族に近づいていった。つまり、老いる事を選んだんだ。そして、だんだんと「サン」という一個人として山から独立していった。
なんて言うかね、山として山狼族を初めとする生き物すべてに崇拝されるより、オレたち家族にだけ必要とされる方が良いんだって。
サンは神としての部分を山に任せられるようになった。山も山で、サンとは別の意思がきちんと育っているから問題はない。
オレたちは緩やかに歳を重ねて行く。
ウランがテンと結婚して長を引き継ぎ五人もの子を成した事もあり、山狼族は安泰。しかも、サユラが今の世代の魔王様(男)と結ばれたので、街の魔族との衝突もない。
さて、もうすぐオレの命が尽きる。
同時にウルの命も尽きる。
完全憑依する度に、精霊と契約者は同化していく。つまり、精霊は契約者の寿命を伸ばす代わりに自分の寿命を縮めているんだ。
そうしてともに生を終える。
その時にはサンも一緒に逝くと決めた。
サンという一個人は生を終え、山は山として存続していく。
あぁ、魔族としても最長と言える三百年を生きたオレは幸せだったよ。ラウとなって最愛のサンと結婚し、可愛い子どもと孫まで出来た。その子らも自分の幸せを掴み巣立って行った。
ありがとう、サン。
愛しているよ。
オレもウルもラウも、みんなサンを愛してる。
「・・・ウル、完全憑依」
「うん」
オレは最後の力を振り絞ってラウとなる。
ラウの姿で・・・サンとともに・・・オレの人生を終えるんだ。
・・・サン、サン、好き、好き、大好き、愛してる・・・
・・・ラウ、ラウ、ラウ・・・僕を、サンを存在させてくれてありがとう・・・ユラもウルも・・・好き、好き、好き、大好きだよ・・・愛してる・・・僕は幸せだった・・・山なのに恋をして・・・少し時間はかかったけどラウを取り戻して・・・愛し愛され子どもまで成して・・・そしてラウと一緒に生涯を終える事が出来るんだ・・・ラウ、ラウ、本当にありがとう・・・愛してるよ・・・ほら、もう眠ろう?・・・僕と一緒に・・・・・・
・・・・・・ありがとう・・・サン・・・ラウも・・・ユラもウルも・・君を・・・ずっと・・・愛し・・・て・・・る・・・・・・・・・
・・・・・・うん・・・・・・
番外編「ラウとサンの子作り」
「狼の求愛は山に届く」 ともに完
ーーーーーーーーーー
これで完結とさせていただきます。
最後までお読みいただき本当にありがとうございました。
ルコ的に、初めてのちょっとシリアスな物語で結構大変でしたが、なんとか最後まで辿り着けました。
個人的にもなかなか思い入れのある作品となったので、このあとがきまで読んでくださった方には感謝しかありません!
蛇足ですが、裏設定として、ウランとテンの子孫が「山狼族の長はツンデレ黒猫を掌中に収める」の攻め、ケンショーとなります。つまりはラウとサンの子孫ですね。
本当にありがとうございました!!
ルコ
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