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山狼族
サン 終
しおりを挟む目が覚めると、僕を抱きしめながら愛おしそうに見つめるラウの顔が目の前にあった。
「おはよう、サン」
どうやら洗浄魔法をかけてくれたらしく、ドロドロだった体は綺麗になっている。僕は意識が飛ぶ前の痴態を思い出し、おもわず顔を背けてしまった。
「サン、可愛い顔をちゃんと見せて?」
僕の頭を優しく撫でながらラウが言う。
「・・・ねぇ、サン。君は山でみんなの神だけど、オレのサンでもあるんだ。だから、これからもオレと体を繋げる時には、山である事を忘れてオレだけのサンになって?
オレはそう胸を張って言えるよう、今日まで頑張って来たんだ。それまでサンを抱かないって誓いを立てて。
大丈夫。サンがオレの事しか考えられない時には、オレが山を意識する。サンとシンクロしている間はオレにもサンと同じ事が出来るから。その力を使いこなす自信もある。
だからサンは安心してオレに溺れてくれたらいい」
・・・えっ?!山である事を忘れる??・・・あっ、うん・・・そう言えば僕、本当にラウに溺れて山から自分を切り離してた・・・あぁ、そうか。あの時ラウと完全に同化してたから、ラウにも分かったんだ・・・そっか、僕はラウだけのサンになってもいいんだ。
だって、ラウが居るから。
ラウと僕が完全に繋がれば意識が同化し、お互いの力を使えるようになる。
ラウも山の力を使えるんだ。
そして、その時に僕が山を忘れてもラウは忘れないでいてくれる。
そう有ろうと、そういう存在として僕の横に立とうと、ラウは努力してくれた。
「・・・ラウ、ありがとう。本当にありがとう。うん、僕はラウに抱かれてる時、ただのサンだった。
山からサンの意識を切り離してた。
それに気付いて僕が悩む前に教えてくれたんだね?
あの時僕は無意識だったけど・・・ラウが山を意識してくれてるのが分かったから、自分から山を切り離したんだ。
そしてラウだけに溺れた。
正直戸惑いはあるけど・・・なんていうか・・・」
ラウは黙って僕の話を聞いてくれている。
「そう、嬉しかったんだ。ありがとうラウ。
ラウは僕にサンって名前を付けてくれて、それで僕は山だけどサンっていう存在になれて・・・今度は本当に『サン』ってだけの一個人にまでしてくれた。
僕は山である事に不満はないけど、それでもラウの前ではただのサンになりたい気持ちもあったから・・・
だから、ありがとう」
そう言う僕をラウは優しく抱きしめてくれた。
あぁ、幸せだなぁ。
「サン、オレを認めてくれてありがとう。改めて言うよ。
オレはサンが好きだ。愛してる。オレたちが魂の番なのは周知の事実だけど、ちゃんと形にしてみんなに知らしめたい。
だから・・・結婚してください」
・・・っえっ?!!!
「けっ、結婚??!」
「そう、結婚。裸でプロポーズなんてカッコ悪いけど、一秒でも早く言いたくて。ごめんね?
本当は体を繋げる前に言ってから初夜が良かったんだろうけど、サンは自分が山から一時的にでも独立出来る、って分かってからじゃないと応えてくれないって思ったから」
うっ、確かに。
サンを個人とは言い切れないから・・・山が個人として結婚なんて出来るはずがないと思っていたから・・・
・・・けど・・・いいのかな?
「サン、信じて認めてくれたから、あの瞬間オレに山を任せてくれたんでしょ?
魂だけじゃなく、今世のオレを名実ともに番にしてよ・・・ね?」
ラウが僕を見つめている。僕がまだサンじゃなかった頃に憧れた、雄狼が番を見つめる目と同じ熱のこもった眼差しで・・・
大好きな相手にここまで言われたら拒む事なんか出来ないよ。
「・・・うん。結婚しよ」
狼の求愛は山に届いた。
山はそれに応えたんだ。
狼と山はこれからもずっと・・・
お互いを愛し愛されながら生きていく。
「狼の求愛は山に届く」 完
ーーーーーーーーー
お読みいただき本当にありがとうございました!
完結いたしましたが、後数話、番外編がございます。
タイトルは「ラウとサンの子作り?」
男性妊娠ものを許せる方のみどうぞ・・・
ルコ
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