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メイ Ⅱ

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 「やっほ~メイメイ。バイトもうすぐ終わりでしょ?一緒に帰んない?」

俺は週に二日、駅前のファーストフード店でバイトをしている。家から最寄りの駅近くは、学校の先生たちも来たりして色々鬱陶しいので、一駅離れた場所にあるこの店を選んだんだ。
で、ここはあーちゃん(と俺は呼んでいる)の通学時の乗り換え駅なんだよな。この駅からだと一本で大学まで行けるので、ここまで自転車で来る事も多いらしく、そんな時はよくこの店に立ち寄るんだ。

あーちゃんこと瀬名 梓は、俺たちより三歳上の十九歳で大学生。見た目は小柄で可愛らしい雰囲気だが、イツキの姉だけあって、なかなかの腹黒ちゃん。そして当然、そこらの大人数のアイドルユニットなんか目じゃないほど、容姿は整っている。

天然を装って男を落とすのは大得意。それでいて女友達も多いのは、決して男第一ではなく自分をしっかりと持っているからだろう。なんせ恐ろしく頭がいいからな。バカっぽく見えるのも全て計算だ。

「おう!じゃあもうちょっと待ってて」

時刻は夜の九時。俺は午後五時から九時までの四時間バイトだから、ちょうどあがる時間。次の時間帯のスタッフに引き続きをし、俺は勤怠を押して着替え外に出た。

「も~だから待ち合わせしてるんだってば。また今度ね~あっ、メイメイ!」

早速男三人に囲まれているあーちゃん。だが、助けに行くまでもなくこっちに向かって走って来た。まぁ、いつもの事だからな。

「お待たせ。あれ、大丈夫かよ?」

名残惜しそうにこっちを見ている男たち。

「あぁ、あの程度であたしに声をかけるなんて良い度胸してるわよね。さっ、帰ろ。メイメイも自転車でしょ?あたしもあそこの駐輪場に置いてるから」

そう言って歩き出すあーちゃんを追いかけて、俺も駐輪場に向かった。

 自転車に乗り、二人で家の方向に向かってペダルを漕ぐ。

「ねぇ、ちょっと公園寄ってこうよ。久々にメイメイと話したいな~」

絶対にイツキとの事だよな。まぁ、俺もあーちゃんと話したかったからちょうどいい。だって学校にはイツキ信者ばっかりで、相談出来るヤツが居ないんだよ。みんな「イツ×メイを応援してます」みたいな感じだからさ。

そう、イツキと付き合い出してから初めて気付いたんだけど、俺ってイツキ以外に親しい友だちって居ねぇの。いや、普通に話すヤツらはいっぱい居るよ?けど、イツキ込みなんだよな。いつも横に居るから、イツキの事を相談したくても出来ないっつーか。
まっ、仮に相談出来てもイツキを崇拝しているようなヤツばかりだから、ろくな返事が返って来ないと思う。

その点、あーちゃんは立場的にもイツキと対等、もしくは若干上だ。しかもイツキに負けないほど頭も良い。昔から俺をイツキのオマケではなく、ちゃんとメイとして見てくれるし、相談するにはもってこいの人物。

 俺はもちろん快諾し、二人で家の近所にある公園に自転車を停めた。ミニアスレチックのような遊具がある公園と、野球が出来るグラウンドが隣り合ったなかなか大きな公園。ガキの頃は毎日ここで遊んでたんだよな。

夜の公園は静かだ。犬の散歩をしている人か、マラソンをしている人が時々通るくらい。俺たちは野球のグラウンドの外にあるベンチに座った。遊具がある方よりこっち側の方が人通りが少ないからね。 

近くにある自販機であーちゃんが飲み物を買ってくれた。俺は炭酸が入ったジュース、あーちゃんはミルクティーだ。

「で?マジでイツキでいいの?だってメイメイは女の子の方が好きでしょ?」

いきなり来たな!

「そ、そうなんだけどさ・・・」

「そんなに気持ちよかったの?」

ブハッ!!俺は飲んでいたジュースをおもいっきり吹き出してしまう。

「ゲホッ、ゲホッ、ちょ、ちょっとあーちゃん、流石にストレートすぎっ!」

「だってどうせイツキが、がっつきながらも器用にメイメイをイカせまくったんじゃないの?あいつ、従兄弟のリョウくんにめちゃくちゃ詳しく教えてもらってたみたいだから。ほんと、我が弟ながら何でも完璧にこなすのムカつくわよね~」

いや、そんな見て来たように言われても・・・大体あってるだけにコメントし辛いわっ!
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