8 / 21
メイ Ⅱ
2
しおりを挟む「やっほ~メイメイ。バイトもうすぐ終わりでしょ?一緒に帰んない?」
俺は週に二日、駅前のファーストフード店でバイトをしている。家から最寄りの駅近くは、学校の先生たちも来たりして色々鬱陶しいので、一駅離れた場所にあるこの店を選んだんだ。
で、ここはあーちゃん(と俺は呼んでいる)の通学時の乗り換え駅なんだよな。この駅からだと一本で大学まで行けるので、ここまで自転車で来る事も多いらしく、そんな時はよくこの店に立ち寄るんだ。
あーちゃんこと瀬名 梓は、俺たちより三歳上の十九歳で大学生。見た目は小柄で可愛らしい雰囲気だが、イツキの姉だけあって、なかなかの腹黒ちゃん。そして当然、そこらの大人数のアイドルユニットなんか目じゃないほど、容姿は整っている。
天然を装って男を落とすのは大得意。それでいて女友達も多いのは、決して男第一ではなく自分をしっかりと持っているからだろう。なんせ恐ろしく頭がいいからな。バカっぽく見えるのも全て計算だ。
「おう!じゃあもうちょっと待ってて」
時刻は夜の九時。俺は午後五時から九時までの四時間バイトだから、ちょうどあがる時間。次の時間帯のスタッフに引き続きをし、俺は勤怠を押して着替え外に出た。
「も~だから待ち合わせしてるんだってば。また今度ね~あっ、メイメイ!」
早速男三人に囲まれているあーちゃん。だが、助けに行くまでもなくこっちに向かって走って来た。まぁ、いつもの事だからな。
「お待たせ。あれ、大丈夫かよ?」
名残惜しそうにこっちを見ている男たち。
「あぁ、あの程度であたしに声をかけるなんて良い度胸してるわよね。さっ、帰ろ。メイメイも自転車でしょ?あたしもあそこの駐輪場に置いてるから」
そう言って歩き出すあーちゃんを追いかけて、俺も駐輪場に向かった。
自転車に乗り、二人で家の方向に向かってペダルを漕ぐ。
「ねぇ、ちょっと公園寄ってこうよ。久々にメイメイと話したいな~」
絶対にイツキとの事だよな。まぁ、俺もあーちゃんと話したかったからちょうどいい。だって学校にはイツキ信者ばっかりで、相談出来るヤツが居ないんだよ。みんな「イツ×メイを応援してます」みたいな感じだからさ。
そう、イツキと付き合い出してから初めて気付いたんだけど、俺ってイツキ以外に親しい友だちって居ねぇの。いや、普通に話すヤツらはいっぱい居るよ?けど、イツキ込みなんだよな。いつも横に居るから、イツキの事を相談したくても出来ないっつーか。
まっ、仮に相談出来てもイツキを崇拝しているようなヤツばかりだから、ろくな返事が返って来ないと思う。
その点、あーちゃんは立場的にもイツキと対等、もしくは若干上だ。しかもイツキに負けないほど頭も良い。昔から俺をイツキのオマケではなく、ちゃんとメイとして見てくれるし、相談するにはもってこいの人物。
俺はもちろん快諾し、二人で家の近所にある公園に自転車を停めた。ミニアスレチックのような遊具がある公園と、野球が出来るグラウンドが隣り合ったなかなか大きな公園。ガキの頃は毎日ここで遊んでたんだよな。
夜の公園は静かだ。犬の散歩をしている人か、マラソンをしている人が時々通るくらい。俺たちは野球のグラウンドの外にあるベンチに座った。遊具がある方よりこっち側の方が人通りが少ないからね。
近くにある自販機であーちゃんが飲み物を買ってくれた。俺は炭酸が入ったジュース、あーちゃんはミルクティーだ。
「で?マジでイツキでいいの?だってメイメイは女の子の方が好きでしょ?」
いきなり来たな!
「そ、そうなんだけどさ・・・」
「そんなに気持ちよかったの?」
ブハッ!!俺は飲んでいたジュースをおもいっきり吹き出してしまう。
「ゲホッ、ゲホッ、ちょ、ちょっとあーちゃん、流石にストレートすぎっ!」
「だってどうせイツキが、がっつきながらも器用にメイメイをイカせまくったんじゃないの?あいつ、従兄弟のリョウくんにめちゃくちゃ詳しく教えてもらってたみたいだから。ほんと、我が弟ながら何でも完璧にこなすのムカつくわよね~」
いや、そんな見て来たように言われても・・・大体あってるだけにコメントし辛いわっ!
2
お気に入りに追加
498
あなたにおすすめの小説

こっそりバウムクーヘンエンド小説を投稿したら相手に見つかって押し倒されてた件
神崎 ルナ
BL
バウムクーヘンエンド――片想いの相手の結婚式に招待されて引き出物のバウムクーヘンを手に失恋に浸るという、所謂アンハッピーエンド。
僕の幼なじみは天然が入ったぽんやりしたタイプでずっと目が離せなかった。
だけどその笑顔を見ていると自然と僕も口角が上がり。
子供の頃に勢いに任せて『光くん、好きっ!!』と言ってしまったのは黒歴史だが、そのすぐ後に白詰草の指輪を持って来て『うん、およめさんになってね』と来たのは反則だろう。
ぽやぽやした光のことだから、きっとよく意味が分かってなかったに違いない。
指輪も、僕の左手の中指に収めていたし。
あれから10年近く。
ずっと仲が良い幼なじみの範疇に留まる僕たちの関係は決して崩してはならない。
だけど想いを隠すのは苦しくて――。
こっそりとある小説サイトに想いを吐露してそれで何とか未練を断ち切ろうと思った。
なのにどうして――。
『ねぇ、この小説って海斗が書いたんだよね?』
えっ!?どうしてバレたっ!?というより何故この僕が押し倒されてるんだっ!?(※注 サブ垢にて公開済みの『バウムクーヘンエンド』をご覧になるとより一層楽しめるかもしれません)


兄に魔界から追い出されたら祓魔師に食われた
紫鶴
BL
俺は悪魔!優秀な兄2人に寄生していたニート悪魔さ!
この度さすがに本業をサボりすぎた俺に1番目の兄が強制的に人間界に俺を送り込んで人間と契約を結べと無茶振りをかましてきた。
まあ、人間界にいれば召喚されるでしょうとたかをくくっていたら天敵の祓魔師が俺の職場の常連になって俺を監視するようになったよ。しかもその祓魔師、国屈指の最強祓魔師なんだって。悪魔だってバレたら確実に殺される。
なんで、なんでこんなことに。早くおうち帰りたいと嘆いていたらある日、とうとう俺の目の前に召喚陣が現れた!!
こんな場所早くおさらばしたい俺は転移先をろくに確認もせずに飛び込んでしまった!
そして、目の前には、例の祓魔師が。
おれ、死にました。
魔界にいるお兄様。
俺の蘇りの儀式を早めに行ってください。あと蘇ったら最後、二度と人間界に行かないと固く誓います。
怖い祓魔師にはもうコリゴリです。
ーーーー
ざまぁではないです。基本ギャグです(笑)
こちら、Twitterでの「#召喚される受けBL」の企画作品です。
楽しく参加させて頂きました!ありがとうございます!
ムーンライトノベルズにも載せてますが、多少加筆修正しました。

ハッピーエンドのために妹に代わって惚れ薬を飲んだ悪役兄の101回目
カギカッコ「」
BL
ヤられて不幸になる妹のハッピーエンドのため、リバース転生し続けている兄は我が身を犠牲にする。妹が飲むはずだった惚れ薬を代わりに飲んで。
後輩に嫌われたと思った先輩と その先輩から突然ブロックされた後輩との、その後の話し…
まゆゆ
BL
澄 真広 (スミ マヒロ) は、高校三年の卒業式の日から。
5年に渡って拗らせた恋を抱えていた。
相手は、後輩の久元 朱 (クモト シュウ) 5年前の卒業式の日、想いを告げるか迷いながら待って居たが、シュウは現れず。振られたと思い込む。
一方で、シュウは、澄が急に自分をブロックしてきた事にショックを受ける。
唯一自分を、励ましてくれた先輩からのブロックを時折思い出しては、辛くなっていた。
それは、澄も同じであの日、来てくれたら今とは違っていたはずで仮に振られたとしても、ここまで拗らせることもなかったと考えていた。
そんな5年後の今、シュウは住み込み先で失敗して追い出された途方に暮れていた。
そこへ社会人となっていた澄と再会する。
果たして5年越しの恋は、動き出すのか?
表紙のイラストは、Daysさんで作らせていただきました。

美形×平凡の子供の話
めちゅう
BL
美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか?
──────────────────
お読みくださりありがとうございます。
お楽しみいただけましたら幸いです。


ゲーム世界の貴族A(=俺)
猫宮乾
BL
妹に頼み込まれてBLゲームの戦闘部分を手伝っていた主人公。完璧に内容が頭に入った状態で、気がつけばそのゲームの世界にトリップしていた。脇役の貴族Aに成り代わっていたが、魔法が使えて楽しすぎた! が、BLゲームの世界だって事を忘れていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる