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番外編 ジュン×レンの過去と日常
レン 1
しおりを挟む俺の名前はレン。先代魔王の王妃だ。白銀の翼と毛並みを持つ猫の精霊、クーと契約している。
先代魔王の名はジュンさん。
何と言うか、魔王様なのに気さく。いくつになっても天真爛漫で自由奔放。なのに存在するだけで壮絶な色気を振りまく厄介な魔族。それでいて魔力も力も魔族最強レベルで、契約精霊はこれまた巨大な力を持つライオンのキル。
しかも城のデザインをしたり、気分がのれば歌って魔族配信をしたりまでするんだ。
モテないはずがない。
魔族、人族、性別を問わず大概の者がジュンさんに惚れる。
若い頃は、寄って来る者の中に好みのタイプがいたら一度は抱いていたらしい。そこから本気になったのは元嫁のカコさんのみ。
けど、カコさんと結婚してからも昔の癖は抜けず、好みのタイプが言い寄って来たら普通に抱いていたようだ。
それでも一度しか抱かないし、愛はなかったので浮気だと思っていなかったらしい。始末が悪いよね。
カコさんは、キョウくんとカグヤちゃんを産んだ後、そんなジュンさんに耐えきれなくなって人族の国に帰ってしまった。
そこで初めて、一度だけでも愛がなくても、浮気は浮気だって気付いたんだって!馬鹿だよね?
カコさんの事は本気で好きだったようなのに、きちんと話し合いもせず自由奔放に生きすぎた自分を猛省したジュンさんは、それ以降、好みのタイプが寄って来ても気軽には抱かなくなった。
オレが出会ったのはそんな頃のジュンさんだったんだ。
当時オレは、魔族配信の鏡の調節をする仕事をしていた。まだまだ下っ端のオレが、魔王様(当時は現役)の鏡の調節なんて大役を仰せつかったのはいくつかの偶然が重なった結果だ。
そこでオレは鏡の調節の、主に音の伝わり具合を気に入られ、魔王様に指名されるようになった。
オレも密かに魔王様に憧れてはいたが、それは単なる憧れであって恋愛対象ではなかった。畏れ多かったし、男と付き合うなんて考えられなかったんだ。当時は彼女もいたしね。
けど、やたらと魔王様がオレにちょっかいをかけてくる。
からかわれる度にムキになって言い返していたのが悪かったのかもしれない。だって魔王様のくせに気さくすぎるし。オレもついつい相手をしてしまっていた。
そんなある日、いつものように魔王様のもとで鏡の調節をしていると、何やらクーとキルの様子がおかしい。クーがふにゃふにゃになってキルの上に乗っている。
それを見た魔王様が焦ったように言う。
「うっわっ!おいこらキルっ!お前何してくれてんだよっ?」
「ふん、おれはジュンみたいに一度失敗したくらいで臆病になる腑抜けとは違うからな。欲しいものは自分で手に入れる。いくら契約しているからと言って精霊の恋愛に口出しするな。」
れ、恋愛??!!
「あー、レン、すまない。キルがクーに手を出した。これはすでに繋がってるな。」
「い、いつの間に・・?」
「精霊ってのは契約者の感情に引きずられやすいからなぁ。おれがレンを気に入ってるのが影響したか?」
「影響を受けるのは確かだが、それでも嫌な相手もいるし、それ以上に好きになる相手もいる。おれはジュンがレンを思う以上にクーの事が好きだっただけだ。」
へっ?魔王様がオレを思う?!からかってるだけじゃなくて?
「くっ!精霊に先を越されるとか・・カッコ悪ぃなおれ。あ゛~レン、すまない。ちょっと顔貸せ。」
そう言った魔王様に手を握られ、瞬間移動をさせられた。
「えっ?!ここって・・・?」
「あぁ、おれの寝室。」
ええぇぇぇぇ??!!!
「なぁ、レン。率直に言うぞ。おれはお前を気に入っている。多分好きなんだろう。
おれはな、実は魔族も人族も口説いた事がないんだ。いつも向こうから寄って来て、相手を口説く必要なんてなかったからな。だが、お前は何も言ってこねぇし、正直口説き方が分からずに戸惑っていたんだ。そしたらキルに先を越される始末だカッコ悪ぃ。」
「えっ?えっ?ちょっと待ってくださいよ!魔王様がオレを??!」
「あぁ、レンには彼女がいたな?その女を愛しているのか?」
「い、いえ、この前別れましたけど・・オレ、例え魔王様でも男と付き合うとか考えられなくて・・・」
「ほう?別れたのか。なら話は早い。」
・・そう言った魔王様にいきなりキスをされた・・・
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