【完結】腹黒王子ちゃんは異世界でも完璧魔王に溺愛される

ルコ

文字の大きさ
上 下
3 / 25
始まりの森

3

しおりを挟む

 「と、まぁ、こんな感じなんだけど・・・」

「・・・くぅっ!!魔王様×勇者アスラだけでもかなり尊いのに、脇カプが更に二組・・・せ、先代魔王様ってあの超絶美形でしょ??!現魔王様も同じ顔って・・・」

「母さん、信じてくれるの?」

「信じるわよぉ!アスラがそんな嘘つくはずないし。いや、嘘でも素敵な妄想ネタをありがとうって感謝だわっ!」

母さん・・やっぱりこの世界でもブレないね。鼻血出てないか??

「う~ん、僕にはよく分からないけど、とにかく王都に行ってから魔王に会いに行くんだな?面白そうじゃん!!」

うん、リイはそういう子だよね。深く物事を考え込まないタイプ。けど俺はそんなリイにかなり助けられてるよ!

「うん、だからとりあえず王都に行って王様に会おうと思う。」

「そうね、薬やお弁当を用意するからアスラも旅が出来るように荷物をまとめなさい。」

「ありがとう母さん!」

マジックバッグに色々放り込む。収納スペースは畳3畳分くらい。やっぱり異世界っていったらマジックバッグだよな。アイテムボックスやインベントリ的な無限収納は、俺の能力的に身分不相当かな?と思って使える設定にしなかった。

俺、勇者って言ってもチートな能力は憑依くらい。猫獣人になってもそこまで強くはない。Aランクの魔物を倒せる程度だ。
魔法も使えるけど、身体強化と基本的な生活魔法だけだしな。リイが回復系の魔法を使えるから助かってる。

まぁ、魔王討伐に行くわけじゃないんだから!話し合いだ、話し合い。


 そして次の日、俺とリイは王都に向けて出発した。母さんが見送ってくれる。

「くれぐれも無理はしないでね?ダメならいつ帰って来てもいいんだから!で・・もし上手くいったら魔王様をあたしに紹介してね?!出来たら脇カプも・・・」

「はいはい、上手くいったら魔王城に母さんを招待するよ。じゃ、行って来ま~す!!」

「行ってらっしゃい!!」

手を振る母さんの前で、俺はリイに向かって言う。

「リイ、憑依!」

「り」

気の抜けた一文字の緩い返事とともに、俺に向かって飛んで来るリイ。
俺の胸の辺りに頭がぶつかると、スッとその姿が消え、俺の体に吸収される。一瞬で体中に満ちるリイの気配と力。俺の血液が沸騰し、体の隅々まで駆け巡る。その熱が背中に集中し、両方の肩甲骨の辺りから俺の体を突き破って解放されて行く。
同時に頭の上には髪の毛の中から黒い猫耳が生え、尻には黒い尻尾が伸びる。

背中からは白い翼が皮膚を突き破り、徐々に広がって行く。完全に伸びきってから翼を広げてバッサバッサと羽ばたくと、俺の体が空中に浮かんだ。

「ふう、何度見ても憑依する瞬間は緊張するわぁ~翼が生えてくるのとか痛そうだし。」

「大丈夫だよ。痛いって言うよりすげぇ解放感だから。寧ろ気持ちいいくらい。じゃあ、今度こそ本当に行って来ます!」

母さんに手を振り、俺は空に向かって羽ばたいた。

王都まで普通に行くと、乗り合い馬車で三日ほどかかるが、空を飛んで行くと一日で着く。

空には魔物も少ないし、快適な空の旅だ。

『アスラ、一キロ程先にコカトリス発見!』

頭の中にリイの声が響く。憑依してもリイの人格は俺の中に存在しているんだ。普通に空を飛んでいるだけだとこの状態。頭の中で会話も出来る。
そしてお互いに意識を完全に同調させる事も、切り離してシャットアウトさせる事も可能だ。

一番戦闘能力が高いのは完全同調している時で、二人が混じった猫獣人アスリイとなる。いつもより好戦的な性格だ。

逆に憑依していても、プライベートを守りたい時にはお互いの意識を切り離す。トイレに行く時とかね。

「コカトリスか~グギャーの正体だな!どうする?負けはしないと思うけど、石化が厄介だからアスリイモードでいくか?」

『だね!』

俺とリイの意識の境目がなくなっていく。さっきよりも更に血が滾り、早く戦いたくて仕方がない。アスリイになると、常に軽い興奮状態となるんだ。
瞳孔を縦長にして、コカトリスまでの距離を測る。よし、後五百メートル。

俺は気配を消し、速度を上げてコカトリスの背後に突っ込んで行く。先手必勝。気付かれないうちに首筋目掛けて上段回し蹴り。殺す必要はないので、首の骨が折れないように加減する。

「グ、グギャ・・・」

コカトリスが落ちて行くので、地上に降りて受け止めてやる。そのうちに目が覚めるだろう。それまでに他の魔物に襲われたら運がなかったって事で。

じゃあ、別に戦わなくても良かったんじゃないかって?甘いね。知能が低い魔物は人を見ると襲いかかって来るんだよ。だから先手必勝。かと言って、縄張りに侵入したのはこっちなのに、片っ端から殺戮するのもどうかと思うので、余裕がある場合は今の様に気絶させるようにしている。
もちろん余裕がない時には殺す事を前提に戦うよ。じゃないとこっちが殺される。後、人族が住む場所に魔物が侵入して来た場合もね。

そんな感じで空の旅を続け、夜中には王都に着いた。今日はもう遅いから、宿に泊まって明日に備えよう。

お休み~



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

美形×平凡の子供の話

めちゅう
BL
 美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか? ────────────────── お読みくださりありがとうございます。 お楽しみいただけましたら幸いです。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

某国の皇子、冒険者となる

くー
BL
俺が転生したのは、とある帝国という国の皇子だった。 転生してから10年、19歳になった俺は、兄の反対を無視して従者とともに城を抜け出すことにした。 俺の本当の望み、冒険者になる夢を叶えるために…… 異世界転生主人公がみんなから愛され、冒険を繰り広げ、成長していく物語です。 主人公は魔法使いとして、仲間と力をあわせて魔物や敵と戦います。 ※ BL要素は控えめです。 2020年1月30日(木)完結しました。

Switch!〜僕とイケメンな地獄の裁判官様の溺愛異世界冒険記〜

天咲 琴葉
BL
幼い頃から精霊や神々の姿が見えていた悠理。 彼は美しい神社で、家族や仲間達に愛され、幸せに暮らしていた。 しかし、ある日、『燃える様な真紅の瞳』をした男と出逢ったことで、彼の運命は大きく変化していく。 幾重にも襲い掛かる運命の荒波の果て、悠理は一度解けてしまった絆を結び直せるのか――。 運命に翻弄されても尚、出逢い続ける――宿命と絆の和風ファンタジー。

【完結】相談する相手を、間違えました

ryon*
BL
長い間片想いしていた幼なじみの結婚を知らされ、30歳の誕生日前日に失恋した大晴。 自棄になり訪れた結婚相談所で、高校時代の同級生にして学内のカースト最上位に君臨していた男、早乙女 遼河と再会して・・・ *** 執着系美形攻めに、あっさりカラダから堕とされる自称平凡地味陰キャ受けを書きたかった。 ただ、それだけです。 *** 他サイトにも、掲載しています。 てんぱる1様の、フリー素材を表紙にお借りしています。 *** エブリスタで2022/5/6~5/11、BLトレンドランキング1位を獲得しました。 ありがとうございました。 *** 閲覧への感謝の気持ちをこめて、5/8 遼河視点のSSを追加しました。 ちょっと闇深い感じですが、楽しんで頂けたら幸いです(*´ω`*) *** 2022/5/14 エブリスタで保存したデータが飛ぶという不具合が出ているみたいで、ちょっとこわいのであちらに置いていたSSを念のためこちらにも転載しておきます。

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

転生貧乏貴族は王子様のお気に入り!実はフリだったってわかったのでもう放してください!

音無野ウサギ
BL
ある日僕は前世を思い出した。下級貴族とはいえ王子様のお気に入りとして毎日楽しく過ごしてたのに。前世の記憶が僕のことを駄目だしする。わがまま駄目貴族だなんて気づきたくなかった。王子様が優しくしてくれてたのも実は裏があったなんて気づきたくなかった。品行方正になるぞって思ったのに! え?王子様なんでそんなに優しくしてくるんですか?ちょっとパーソナルスペース!! 調子に乗ってた貧乏貴族の主人公が慎ましくても確実な幸せを手に入れようとジタバタするお話です。

虐げられている魔術師少年、悪魔召喚に成功したところ国家転覆にも成功する

あかのゆりこ
BL
主人公のグレン・クランストンは天才魔術師だ。ある日、失われた魔術の復活に成功し、悪魔を召喚する。その悪魔は愛と性の悪魔「ドーヴィ」と名乗り、グレンに契約の代償としてまさかの「口づけ」を提示してきた。 領民を守るため、王家に囚われた姉を救うため、グレンは致し方なく自分の唇(もちろん未使用)を差し出すことになる。 *** 王家に虐げられて不遇な立場のトラウマ持ち不幸属性主人公がスパダリ系悪魔に溺愛されて幸せになるコメディの皮を被ったそこそこシリアスなお話です。 ・ハピエン ・CP左右固定(リバありません) ・三角関係及び当て馬キャラなし(相手違いありません) です。 べろちゅーすらないキスだけの健全ピュアピュアなお付き合いをお楽しみください。 *** 2024.10.18 第二章開幕にあたり、第一章の2話~3話の間に加筆を行いました。小数点付きの話が追加分ですが、別に読まなくても問題はありません。

処理中です...