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オレの番
リュウセイ2
しおりを挟む結局オレは、魔王様の妹君で魔族最強の存在、カグヤ様の所でお世話になる事になった。カグヤ様の契約精霊は白虎のココ様。
ドラゴン王族でも勝てるかどうか分からないほどの力を持つお方だ。ドラゴン族の王妃、ローゼ様とも仲が良い。
流石にそんな凄い魔族の元にオレだけというわけにもいかず、サラ様も一緒にお世話になる事になってしまった。申し訳なくてサラ様に謝り倒したのだが、
「いいわよ~わたし、カグヤ様に憧れてるのよね~だから逆にラッキーって感じ?」
と、にこやかに言われホッとした。
ジャック様はそのまま魔王城に滞在。
すぐにマーカス様という魔族の番を見つけ、その日の内に落としたらしい・・うん、流石に手が早い。ドラゴン族一のモテ雄は違うな・・・
サラ様はカグヤ様にすっかり懐き、時々帰って来るカグラ様とも仲良くやっている。そして明日から魔族学校に通うという夜に話があると言われた。
談話室でお茶を飲みながらサラ様が言う。
「リュウセイ、はっきりさせておきましょう。わたしはあなたの事は好きだけど、愛しているわけではない。あなたもわたしの配偶者候補であり、王族としてのわたしに忠誠を誓っているけど、別にわたしを愛してるわけではないわよね?」
それは幼い頃からお互いに理解している事実。二人とも相手を好ましくは思っているが、それは主従愛であり、幼馴染としての家族愛に近い感情なんだ。
だから他に相手がいないなら、結婚するのは嫌ではない。寧ろ他のドラゴンをあてがわれるのなら、サラ様はオレを選ぶだろう。
だが番ではない。
「わたしはアプスを探したいの。ドラゴン族の中にいなくても、魔族の中にいるかもしれないんだもの。ティムがエナちゃんを見つけたようにね。」
王族のティム様の契約精霊はテュポンのノン様で、その配偶神はエキドナ。番なんてドラゴン族でも今では御伽話の類いだったんだが、ティム様は昔から番を信じている珍しいドラゴンだった。
ノン様が今世でもエキドナを求めている事に影響されたようだ。精霊同士も恋をするからね。
ドラゴンの精霊にいないのなら、魔族の猫科動物の精霊にいるかもしれないと、魔族の国への留学を一番先に願ったのがティム様だ。そしてエナ様を見つけた。エナ様の契約精霊は白猫のドナ様。まさにエキドナだ。
その出来事から番を求めるドラゴンが増えた。契約精霊を持つ独身の王族は、番を求め魔族の国への留学をこぞって希望したんだ。
サラ様の契約精霊はティアマトのライア様。ティアマトには配偶神アプスがいる。サラ様がアプスを求めるのは当然だろう。
「分かってます。アプスが見つかるといいですね。」
オレは心の底からそう言った。
「だからリュウセイも番を見つけたら遠慮なく言いなさい。もしわたしにアプスが見つからなくても、あなたに番が出来たなら配偶者候補からは外してあげる。」
これがサラ様の本心だという事は分かる。だからオレは素直に頷いた。
「リュウセイは王妃のアスラ様のような、気が強いけど守りがいがある可愛い子がタイプなんでしょ?そんな子、ドラゴンには居ないもんね。大概は物理的にも強いし。アスラ様に見惚れてしまった気持ちは分かるわ。」
サラ様がクスクス笑いながら言う。
「・・本当にすみませんでした。」
「あれは魔王様の心が狭いと思うなぁ。だってリュウセイも本気で惚れたわけじゃなく、初めて見た好みのタイプに目を奪われただけでしょ?それくらい許してくれてもいいと思うわ。だってわたしたち、まだ数えるほどしか魔族に会った事がないんだから。
まっ、それだけ溺愛されてるんでしょう。羨ましいわね。あ~わたしも早くアプスに会いたいわ。」
サラ様は、強くなくてもいいから話していて楽しい男がいいらしい。出来ればマッチョより細身。ドラゴン族にはマッチョ系が多いから、魔族の男の方が見た目も好みなんだろう。
「リュウセイも見た目は好みよ?そこまでムキムキじゃない細マッチョだし。顔も美形。けど、アプスじゃないのよ。こればかりは本能だから仕方ないわ。
だから、リュウセイがわたしに本気で惚れてなくて良かったと思ってる。」
何となく、複雑な気持ちもなきにしもあらずだが、オレもそう思っていたので頷いておいた。
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