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第四部~赤壁大戦~
『青春アタック』脚本㊼一心同体
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咲「娘さんなの・・・!?」
幹「しっ・・・!声が大きい!!」
咲「・・・え?なんで?母子の感動の再会じゃない。
もう3年は家族と会えてないって言ってたし・・・」
幹「芝さんが今すぐ娘さんを抱きしめられるのなら、試合が始まる前にやってるわよ・・・
素性を隠さなきゃいけない事情があるんだって・・・」
咲「どうであれ、お母さんに会えるのは嬉しいと思うけどなあ・・・
うちらの母さんはずっと前に飛行機事故で死んじゃったし・・・」
幹「そのとおりよ・・・
どんなに私たちを甘えさせてくれても・・・
芝さんは私たちのお母さんじゃないのよ・・・」
咲「・・・どういうこと?」
幹「・・・私たちは芝さんのことをどれほど知ってるっていうの?」
ちおり「これに勝てば借金ゼロだね!」
花原「お・・・おうよ・・・」
芝「あなた・・・借金をしてるの・・・?」
花原「私のじゃないわよ・・・親の借金。
10億円もあったけど・・・この試合で勝って賞金の1億円をもらえば・・・全額返済できるの・・・」
芝「・・・どうやって、ほかの借金は返したの・・・?」
花原「・・・なんで、見ず知らずのババアに、んなことまで話さなきゃいけないのよ・・・」
ちおり「話してあげなよ。」
花原「・・・オートファジーという細胞内分解現象の研究と、カーボンナノチューブという炭素同素体構造の発見は、結局金にはならなかったんだけど・・・
ルーズソックスをとめるソックタッチっていうノリと、プリント倶楽部に内蔵されているCCDカメラの特許が大当たりでね。これで、9億円は返済したのよ・・・」
芝「す・・・すごい・・・」
花原「・・・天才ですから。」
芝「・・・あなたは、借金を残していなくなった親を憎んではいないの・・・?」
花原「・・・ぜんぜん・・・世界中で私を愛してくれたのは・・・お母さんだけだったから・・・
でも・・・今会ったら伝えたいな・・・わたしには・・・こんなにも友だちが増えたんだよって。」
そう言うと、白亜高校やライバル校のメンバーを振り返る花原。
芝「・・・・・・。」
花原「な・・・なんで、このババアは泣いてるのよ・・・
ちょっと、いい加減コートから出て行ってくれない?
借金完済がかかってるんだって・・・」
芝「うん・・・ごめんね・・・」
コートから出ていく芝。
ちおり「・・・知り合い?」
花原「・・・ぜんぜん・・・」
スクールファイター「それではバトルを再開する!サーブ権は鮎原姉妹!!」
サービスエリアに向かう咲。
花原の方を見る。
咲「あの芝さんの娘さん・・・しかも超高校級のアタッカーだと聞く・・・」
幹「恩人の子だからって情けは無用よ。デスピサロだと思って全力で戦いなさい。」
テレビゲームをしない咲「デス・・・なんだって??」
前方にいるちおりが、後方の花原にサインを出す。
花原(ストレート方向を頼む・・・か。OK・・・)
咲が花原に手加減なしのジャンプサーブを放つ。
そのサーブを執念でレシーブする花原「うらああ!」
海野「すごい!返した!!」
山村「金への執念だ!!」
ちおりが美しいトスを上げる。
ちおり「はい!」
スパイクを打つ花原「もらった~~!!」
しかし、花原のスパイクを盾のように防いでしまう幹のブロック。
幹「打点が高い・・・!咲ちゃんお願い!」
咲がフォローに入る。
咲「オッケー!間に合う!!」
咲が姉にボールを上げる。
幹が飛び上がる。
幹「必殺!名古屋打ち!!」
そう言うと、花原を超える打点で渾身のアタックを打つ。
大此木「来たぞ!」
野球部「速い・・・!」
サッカー部「最悪蹴るんだ・・・!!」
小早川「花原先輩・・・!」
山村「いけ、長身の乙女よ!」
乙奈「あなたならできるわ・・・!」
ブーちゃん「・・・!」
海野「花原さん・・・!」
狩野「お願い・・・!」
華白崎「花原さん・・・!」
さくら「頼んだ!」
剛速球を冷静に見つめる花原「・・・!」
そして――
咲のアタックを思い切り顔面で受ける花原。
鼻血が吹き出る。
花原「はやすぎるううううううう!!!」
ブッ倒れて、砂だらけになるセーラー服。
一同「・・・・・・!!!!」
スクールファイター「ドクタースト~~~ップ!!」
花原「ちおり、てめえ!クロスはお前が受けるんじゃねえのか~~!!」
ちおり「え?」
花原「さっきチョキを出してただろ!!」
ちおり「ちがうよ。あれはジャカジャカじゃんけん。」
そういうと、腕をぐるぐるするちおり。
花原「紛らわしいわ!!もう許さん!ぶち殺してやる!」
逃げ出すちおり「にゃ~~!」
追いかけっこをする花原とちおり。
狩野「・・・・・・。」
海野「あはは・・・どこに行っても、あの二人は変わらないや・・・」
楽しそうに砂浜を駆け回るちおり
「はっはっは~!そんな動きにくい格好じゃわたしに追いつかないよ~ん!」
挑発されて怒る花原「ああああ・・・!なんなのよこのセーラー服!」
そう言うと、セーラー服を脱いでスポーツブラとスパッツ姿になる花原。
花原「こんなもん脱いでやる!!」
乙奈「なんの恥じらいもなく脱ぎましたわ・・・!」
花原「待て~!」
ちおり「おにさんこちら~!」
山村「不覚・・・ちょっとドキっとしてしまった・・・」
大此木「お・・・俺もだ・・・」
山村「お互い修行が足りませんな。」
小早川「・・・いいなあ・・・巨乳・・・」
華白崎「バカバカしい・・・」
・
アライ「おい・・・あのサーブ・・・金のためとは言えレシーブできるか・・・?」
イノセ「・・・背中のオペレーター次第だな。」
イノセに乗っかっているリスのシマダ「あの速度では落下地点の予測はかなり難しいかと・・・」
オジカ「ふ・・・やっこさん・・・さらなる進化を遂げたようだ。」
クマガイ「にんげんっていいな~」
有葉「いけ~白亜高校!!」
葛城(だからなんで動物たちが人語を・・・??)
・
一進一退の攻防を続ける、鮎原姉妹と、生原・花原ペア。
ちおりの身長の低さを花原がカバーし、花原の苦手なトスをちおりが上げる。
スコアボードは「聖ペンシルヴァニア15―白亜13」
ちおりをおいかける花原「だからジャカジャカじゃんけんはやめろ!」
ちおり「にゃ~!」
スクールファイター「白亜高校!真剣にやらんと、このイエローカードをフォーユーするぞ!」
ちおり「どうせなら、あたしその赤いのがいい!」
スクールファイター「・・・ほしいか?」
ちおり「いいの?やったー!」
花原「負けちまうだろ!」
咲「・・・ねえ・・・どうする・・・?」
幹「ええ・・・ふざけているのはブラフ・・・あの二人・・・普通にうまいわ・・・
それに・・・私たちは第一セットで疲労困憊だけど・・・あの二人は元気もりもり・・・
追いかけっこする余裕もある・・・」
咲「芝さんに策を・・・」
幹「それはダメよ。もう大人に甘えないって言ったのは咲ちゃんでしょう?
ゲームは始まってしまった・・・今さらオプション画面には戻れない。
私たちだけでやるの。・・・私たち二人で。」
咲「幹姉・・・」
幹「ねえ、咲ちゃん・・・
誰が私たちのことを“ランスとシールド”って言ったんだろうね・・・」
咲「分からないけど・・・言い得て妙だよね。
私は乾坤一擲のオフェンシブなプレーをするし、幹姉は堅実なディフェンシブなプレーを好んだ・・・」
幹「・・・本当にそうかしら?私たちは、そんなに対極的な姉妹だった?
周囲のイメージに私たちが合わせてしまったってことはない・・・?」
咲「でも、趣味も違うじゃん。私は外で遊ぶのが好きで、幹姉は家の中で遊ぶのが好きだし・・・」
微笑む幹「覚えてないのね・・・咲ちゃんもお人形遊びやおままごとが好きだったし、私だって外でよくどろんこになって帰ってきてお母さんに怒られてたんだから。」
咲「・・・それ、いつの話?」
幹「3才くらいかな。お母さんが生きてた頃だから。」
咲「じゃあ覚えてないよ・・・」
幹「思い出して。私たち姉妹は・・・本当は全部おんなじなの。
咲ちゃんは自分が思っている以上に冷静で守備もうまいし・・・
わたしは咲ちゃんが思っている以上に情熱的で・・・攻撃的なのよ。」
咲「何が言いたいの?」
幹「・・・私たちはどんなに頑張っても、あの二人のような互いの欠点を補い合う凸凹コンビはなれない・・・でも、自分の思い込みを捨てさえすれば・・・矛も盾も・・・2倍になる・・・」
・
芝「・・・ねえさくら・・・どうやってあの子をあそこまでの選手にしたの・・・?」
さくら「・・・さあてね・・・」
芝「はぐらかさないでよ・・・あの子は体を動かすことに全く興味を示さなかった・・・」
さくら「・・・それ、いつの話・・・?
この仕事の一番のやりがいってさ・・・子どもの成長を感じられることだと思わない?
大人の思い込みを超え・・・些細なきっかけで子どもは変わる・・・
だから・・・私は生徒を自由にした。
あの子達にどんな可能性があるかは、誰にも分からないから・・・
まあ・・・端的に言うとね・・・バレーなんてなんも教えてないのよ。」
芝「・・・うそでしょ?」
さくら「言ってやりなさい部長。」
海野「た・・・確かに監督にバレーを教えてもらった記憶が・・・ない・・・?
か・・・華白崎さんはあった?」
華白崎「・・・いえ・・・練習メニューは全て私が決めていたので。」
首を振る小早川。
乙奈「ただ・・・私は一つだけ吹雪先生に大切なことを教わりましたわ・・・
バレーボールで最も大切なことは・・・どんなことがあってもコートに立ち続けることだと。」
芝「さくら・・・」
さくら「さあ、見届けようじゃない。
あなたと私・・・どちらの教え子が最後までコートに立ち続けられるかを・・・」
・
コート内
花原「ちおり・・・私にはわかるわよ・・・」
ちおり「にゃ?」
花原「私が緊張しないように、わざとふざけてるんでしょう・・・?」
ちおり「え?」
花原「・・・だいじょうぶ。
決勝の大舞台・・・怖くて怖くて仕方がなかったけど・・・
もう震えはすっかり収まったわ・・・
思えば、いつもあんたはそうやって周囲を勇気づけてくれたよね・・・
ここだけの話だけど・・・海野さん・・・あんたとあの時出会ってなかったら・・・
首吊って死んでたんだってさ・・・当然よね・・・
震災で家族を失って・・・バレー部の仲間には犯罪者扱いされたんだ・・・
でも、あなたの笑顔を見て・・・もう少し生きてみようと思ったんだって。
そのもう少しの結果が・・・今なの。
いいえ・・・海野さんだけじゃない。
過去のトラウマに一人で苦しんでいた乙奈さん・・・
みんなのためにあえて嫌われ役をしていた華白崎さん・・・
そして・・・このあたしも・・・
みんな、あなたに勇気をもらったんだ。
あなたには大きな借りがある・・・その借りを返す時がとうとう来たのよ。」
ちおり「花原さん・・・」
花原「あなたに山菜をもらった時に言ったでしょう?
私は恩を忘れない人間なの。」
目を潤ませるちおり「・・・・・・。」
花原「さあ、前を向いて・・・鮎原姉妹は手強いわよ。
でも、今の私たちなら絶対に負けない・・・!
希望を捨てなければ・・・」
ちおり「絶対に勝てる!!」
幹「しっ・・・!声が大きい!!」
咲「・・・え?なんで?母子の感動の再会じゃない。
もう3年は家族と会えてないって言ってたし・・・」
幹「芝さんが今すぐ娘さんを抱きしめられるのなら、試合が始まる前にやってるわよ・・・
素性を隠さなきゃいけない事情があるんだって・・・」
咲「どうであれ、お母さんに会えるのは嬉しいと思うけどなあ・・・
うちらの母さんはずっと前に飛行機事故で死んじゃったし・・・」
幹「そのとおりよ・・・
どんなに私たちを甘えさせてくれても・・・
芝さんは私たちのお母さんじゃないのよ・・・」
咲「・・・どういうこと?」
幹「・・・私たちは芝さんのことをどれほど知ってるっていうの?」
ちおり「これに勝てば借金ゼロだね!」
花原「お・・・おうよ・・・」
芝「あなた・・・借金をしてるの・・・?」
花原「私のじゃないわよ・・・親の借金。
10億円もあったけど・・・この試合で勝って賞金の1億円をもらえば・・・全額返済できるの・・・」
芝「・・・どうやって、ほかの借金は返したの・・・?」
花原「・・・なんで、見ず知らずのババアに、んなことまで話さなきゃいけないのよ・・・」
ちおり「話してあげなよ。」
花原「・・・オートファジーという細胞内分解現象の研究と、カーボンナノチューブという炭素同素体構造の発見は、結局金にはならなかったんだけど・・・
ルーズソックスをとめるソックタッチっていうノリと、プリント倶楽部に内蔵されているCCDカメラの特許が大当たりでね。これで、9億円は返済したのよ・・・」
芝「す・・・すごい・・・」
花原「・・・天才ですから。」
芝「・・・あなたは、借金を残していなくなった親を憎んではいないの・・・?」
花原「・・・ぜんぜん・・・世界中で私を愛してくれたのは・・・お母さんだけだったから・・・
でも・・・今会ったら伝えたいな・・・わたしには・・・こんなにも友だちが増えたんだよって。」
そう言うと、白亜高校やライバル校のメンバーを振り返る花原。
芝「・・・・・・。」
花原「な・・・なんで、このババアは泣いてるのよ・・・
ちょっと、いい加減コートから出て行ってくれない?
借金完済がかかってるんだって・・・」
芝「うん・・・ごめんね・・・」
コートから出ていく芝。
ちおり「・・・知り合い?」
花原「・・・ぜんぜん・・・」
スクールファイター「それではバトルを再開する!サーブ権は鮎原姉妹!!」
サービスエリアに向かう咲。
花原の方を見る。
咲「あの芝さんの娘さん・・・しかも超高校級のアタッカーだと聞く・・・」
幹「恩人の子だからって情けは無用よ。デスピサロだと思って全力で戦いなさい。」
テレビゲームをしない咲「デス・・・なんだって??」
前方にいるちおりが、後方の花原にサインを出す。
花原(ストレート方向を頼む・・・か。OK・・・)
咲が花原に手加減なしのジャンプサーブを放つ。
そのサーブを執念でレシーブする花原「うらああ!」
海野「すごい!返した!!」
山村「金への執念だ!!」
ちおりが美しいトスを上げる。
ちおり「はい!」
スパイクを打つ花原「もらった~~!!」
しかし、花原のスパイクを盾のように防いでしまう幹のブロック。
幹「打点が高い・・・!咲ちゃんお願い!」
咲がフォローに入る。
咲「オッケー!間に合う!!」
咲が姉にボールを上げる。
幹が飛び上がる。
幹「必殺!名古屋打ち!!」
そう言うと、花原を超える打点で渾身のアタックを打つ。
大此木「来たぞ!」
野球部「速い・・・!」
サッカー部「最悪蹴るんだ・・・!!」
小早川「花原先輩・・・!」
山村「いけ、長身の乙女よ!」
乙奈「あなたならできるわ・・・!」
ブーちゃん「・・・!」
海野「花原さん・・・!」
狩野「お願い・・・!」
華白崎「花原さん・・・!」
さくら「頼んだ!」
剛速球を冷静に見つめる花原「・・・!」
そして――
咲のアタックを思い切り顔面で受ける花原。
鼻血が吹き出る。
花原「はやすぎるううううううう!!!」
ブッ倒れて、砂だらけになるセーラー服。
一同「・・・・・・!!!!」
スクールファイター「ドクタースト~~~ップ!!」
花原「ちおり、てめえ!クロスはお前が受けるんじゃねえのか~~!!」
ちおり「え?」
花原「さっきチョキを出してただろ!!」
ちおり「ちがうよ。あれはジャカジャカじゃんけん。」
そういうと、腕をぐるぐるするちおり。
花原「紛らわしいわ!!もう許さん!ぶち殺してやる!」
逃げ出すちおり「にゃ~~!」
追いかけっこをする花原とちおり。
狩野「・・・・・・。」
海野「あはは・・・どこに行っても、あの二人は変わらないや・・・」
楽しそうに砂浜を駆け回るちおり
「はっはっは~!そんな動きにくい格好じゃわたしに追いつかないよ~ん!」
挑発されて怒る花原「ああああ・・・!なんなのよこのセーラー服!」
そう言うと、セーラー服を脱いでスポーツブラとスパッツ姿になる花原。
花原「こんなもん脱いでやる!!」
乙奈「なんの恥じらいもなく脱ぎましたわ・・・!」
花原「待て~!」
ちおり「おにさんこちら~!」
山村「不覚・・・ちょっとドキっとしてしまった・・・」
大此木「お・・・俺もだ・・・」
山村「お互い修行が足りませんな。」
小早川「・・・いいなあ・・・巨乳・・・」
華白崎「バカバカしい・・・」
・
アライ「おい・・・あのサーブ・・・金のためとは言えレシーブできるか・・・?」
イノセ「・・・背中のオペレーター次第だな。」
イノセに乗っかっているリスのシマダ「あの速度では落下地点の予測はかなり難しいかと・・・」
オジカ「ふ・・・やっこさん・・・さらなる進化を遂げたようだ。」
クマガイ「にんげんっていいな~」
有葉「いけ~白亜高校!!」
葛城(だからなんで動物たちが人語を・・・??)
・
一進一退の攻防を続ける、鮎原姉妹と、生原・花原ペア。
ちおりの身長の低さを花原がカバーし、花原の苦手なトスをちおりが上げる。
スコアボードは「聖ペンシルヴァニア15―白亜13」
ちおりをおいかける花原「だからジャカジャカじゃんけんはやめろ!」
ちおり「にゃ~!」
スクールファイター「白亜高校!真剣にやらんと、このイエローカードをフォーユーするぞ!」
ちおり「どうせなら、あたしその赤いのがいい!」
スクールファイター「・・・ほしいか?」
ちおり「いいの?やったー!」
花原「負けちまうだろ!」
咲「・・・ねえ・・・どうする・・・?」
幹「ええ・・・ふざけているのはブラフ・・・あの二人・・・普通にうまいわ・・・
それに・・・私たちは第一セットで疲労困憊だけど・・・あの二人は元気もりもり・・・
追いかけっこする余裕もある・・・」
咲「芝さんに策を・・・」
幹「それはダメよ。もう大人に甘えないって言ったのは咲ちゃんでしょう?
ゲームは始まってしまった・・・今さらオプション画面には戻れない。
私たちだけでやるの。・・・私たち二人で。」
咲「幹姉・・・」
幹「ねえ、咲ちゃん・・・
誰が私たちのことを“ランスとシールド”って言ったんだろうね・・・」
咲「分からないけど・・・言い得て妙だよね。
私は乾坤一擲のオフェンシブなプレーをするし、幹姉は堅実なディフェンシブなプレーを好んだ・・・」
幹「・・・本当にそうかしら?私たちは、そんなに対極的な姉妹だった?
周囲のイメージに私たちが合わせてしまったってことはない・・・?」
咲「でも、趣味も違うじゃん。私は外で遊ぶのが好きで、幹姉は家の中で遊ぶのが好きだし・・・」
微笑む幹「覚えてないのね・・・咲ちゃんもお人形遊びやおままごとが好きだったし、私だって外でよくどろんこになって帰ってきてお母さんに怒られてたんだから。」
咲「・・・それ、いつの話?」
幹「3才くらいかな。お母さんが生きてた頃だから。」
咲「じゃあ覚えてないよ・・・」
幹「思い出して。私たち姉妹は・・・本当は全部おんなじなの。
咲ちゃんは自分が思っている以上に冷静で守備もうまいし・・・
わたしは咲ちゃんが思っている以上に情熱的で・・・攻撃的なのよ。」
咲「何が言いたいの?」
幹「・・・私たちはどんなに頑張っても、あの二人のような互いの欠点を補い合う凸凹コンビはなれない・・・でも、自分の思い込みを捨てさえすれば・・・矛も盾も・・・2倍になる・・・」
・
芝「・・・ねえさくら・・・どうやってあの子をあそこまでの選手にしたの・・・?」
さくら「・・・さあてね・・・」
芝「はぐらかさないでよ・・・あの子は体を動かすことに全く興味を示さなかった・・・」
さくら「・・・それ、いつの話・・・?
この仕事の一番のやりがいってさ・・・子どもの成長を感じられることだと思わない?
大人の思い込みを超え・・・些細なきっかけで子どもは変わる・・・
だから・・・私は生徒を自由にした。
あの子達にどんな可能性があるかは、誰にも分からないから・・・
まあ・・・端的に言うとね・・・バレーなんてなんも教えてないのよ。」
芝「・・・うそでしょ?」
さくら「言ってやりなさい部長。」
海野「た・・・確かに監督にバレーを教えてもらった記憶が・・・ない・・・?
か・・・華白崎さんはあった?」
華白崎「・・・いえ・・・練習メニューは全て私が決めていたので。」
首を振る小早川。
乙奈「ただ・・・私は一つだけ吹雪先生に大切なことを教わりましたわ・・・
バレーボールで最も大切なことは・・・どんなことがあってもコートに立ち続けることだと。」
芝「さくら・・・」
さくら「さあ、見届けようじゃない。
あなたと私・・・どちらの教え子が最後までコートに立ち続けられるかを・・・」
・
コート内
花原「ちおり・・・私にはわかるわよ・・・」
ちおり「にゃ?」
花原「私が緊張しないように、わざとふざけてるんでしょう・・・?」
ちおり「え?」
花原「・・・だいじょうぶ。
決勝の大舞台・・・怖くて怖くて仕方がなかったけど・・・
もう震えはすっかり収まったわ・・・
思えば、いつもあんたはそうやって周囲を勇気づけてくれたよね・・・
ここだけの話だけど・・・海野さん・・・あんたとあの時出会ってなかったら・・・
首吊って死んでたんだってさ・・・当然よね・・・
震災で家族を失って・・・バレー部の仲間には犯罪者扱いされたんだ・・・
でも、あなたの笑顔を見て・・・もう少し生きてみようと思ったんだって。
そのもう少しの結果が・・・今なの。
いいえ・・・海野さんだけじゃない。
過去のトラウマに一人で苦しんでいた乙奈さん・・・
みんなのためにあえて嫌われ役をしていた華白崎さん・・・
そして・・・このあたしも・・・
みんな、あなたに勇気をもらったんだ。
あなたには大きな借りがある・・・その借りを返す時がとうとう来たのよ。」
ちおり「花原さん・・・」
花原「あなたに山菜をもらった時に言ったでしょう?
私は恩を忘れない人間なの。」
目を潤ませるちおり「・・・・・・。」
花原「さあ、前を向いて・・・鮎原姉妹は手強いわよ。
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