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第三部~関東逐鹿~
『青春アタック』脚本㉙桃園結義
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バスの車内
海野「・・・あんな大きいバレー部を廃部にさせちゃって・・・ちょっと心が痛むなあ・・・」
花原「いや・・・それくらいしないと、あのブラックな体質は変わらないと思うよ・・・
あいつら部員をリンチしてたんでしょう?
・・・海野さんは優しすぎよ・・・」
ちおり「だから私は海野さんが好き!!
あのお姉さんとも仲直りできてよかったね!」
後ろの席を振り返る海野「うん・・・みんな監督のおかげ・・・」
酔っぱらって寝ているさくら。
花原「遠征費の件・・・濡れ衣だってなんで言わなかったの?
そうすれば・・・あの学校でそのままバレーが・・・」
海野「だって・・・お金なくしちゃった人・・・きっと思いつめているだろうなって・・・」
感動して号泣する病田「・・・なんて徳の高い人なの・・・!!
わたしを家臣にしてください・・・!」
抱きつく病田をはなそうとする海野「ちょっ・・・よしてください先生・・・!」
海野「結果論だけど・・・私はこの選択に後悔はないよ。
みんなとバレーができたんだから。」
華白崎「これで、対戦チケットはあと1枚です・・・
しかし・・・監督の計画通り、これで決勝までいけるのでしょうか・・・?」
乙奈「あら・・・どういうことですか・・・?」
華白崎「数学でゲーム理論という考え方があって・・・」
花原「あるね・・・」
華白崎「つまり、私たちのような戦略をほかの部もとったとしたら・・・3戦目以降はこう着状態になる・・・このまま全チーム期限切れで失格にでもなったら・・・」
花原「今、どれくらい学校が残ってんの?」
華白崎「142校・・・なので・・・全チームがきれいに対戦したとして・・・(暗算をする)あと6戦はしないと2校にまでは減らない・・・」
花原「あの九頭が初戦のチームをだましまくってチーム数を減らしてくれていたんじゃ・・・」
山村「もう少し放置してもよかったかもな・・・」
ぶんぶんと首を横に振る病田
・
夜。
白亜高校に戻るバス。
出迎える校長と京冨野。
羽毛田校長「みなさん。お帰りなさい・・・試合の方は順調のようで・・・」
さくら「まあ、計画通りね。」
アタッシュケースを京冨野に渡すさくら。
さくら「そのまま返す。」
驚く京冨野「1円も使わずに、敵をだましたのか?」
さくら「賢いやつをだますのは簡単。」
バスを降りる花原「ほらついたわよ・・・」
花原におぶさって寝ているちおり「にゃ~・・・」
海野「みんな、初戦と第二試合、本当にお疲れ様・・・
今日は久しぶりにおうちに帰ってゆっくり休んでね・・・!」
表情が曇る花原「家か・・・あのボロボロで誰もいない・・・」
華白崎「・・・現実に引き戻されますね・・・でも、私は下の兄弟の面倒を見ないと。
みなさん、お先に失礼します。
それと・・・花原さん・・・崖で命を救ってくれてありがとう・・・ご恩は一生忘れません。」
深々とお辞儀をすると、自宅に帰る華白崎。
花原「できた子だなあ・・・」
乙奈「わたくしたちも失礼しますわ。
お父様が心配しすぎて泣いてしまいます・・・」
ブーちゃんと帰っていく乙奈。
花原「結局家族がいない私たちが残ったね・・・」
海野「花原さん・・・よかったら・・・生原さんと一緒に私が泊まっている学生寮に来ない・・・?」
花原「いいの・・・?」
海野「大丈夫ですよね・・・?」
微笑む羽毛田「もちろん。そっちの方がホームレスの生原さんも安全でしょうし・・・」
・
学生寮の海野の部屋
花原「おじゃましま~す・・・さすが、よく片付いているなあ・・・」
海野「物がないだけだよ。」
背中のちおりをベッドにおろす花原。
目を覚ますちおり「・・・あれ?草むらじゃない・・・?」
花原「・・・かなしいやつだな・・・ここは海野さんの部屋。」
ちおり「ほえ?・・・わーい!」
海野「目がさめちゃったみたいね。なにか、温かいものでも飲もうか・・・」
コンロでお湯を沸かす海野。
ちおりがこっそりと花原の腕をぎゅっとつかむ。
花原「・・・怖くないよ・・・」
ちおりをなでる花原。
花原「そういや、あんたが好きなお菓子まだあまっていたわよ・・・」
リュックサックを開ける花原。
喜ぶちおり「わ~い青1号だ!」
花原「それは成分であって商品名じゃないぞ・・・」
紅茶を入れる海野。
海野「ピーチティーでいいかな・・・」
花原「最高。」
ちおり「夜更かしパーティーだ~!!」
紅茶を飲む花原「・・・ぶっちゃけていい・・・?」
海野「え?ど・・・どうぞ・・・」
花原「私・・・今まで生きてて全然楽しくなかった・・・
みんな私を怖がって近づいてこなかったし・・・例外はこいつ。」
ちおり「ごっちゃんです。」
花原「わたし・・・海野さんが羨ましかったんだよ。
いつも明るくて、みんなに優しくて・・・こんな完璧な人間いてたまるかって思ってた・・・」
海野「・・・覚えてないのね・・・私・・・明るくなんてなかったよ・・・
このままバレーもできずに就職しちゃうのかって・・・ずっと落ち込んでた。」
花原「そうだっけ?」
海野「地震で両親を失って・・・高校では窃盗の疑いをかけられて転校だよ・・・?
とても明るくなんてふるまえないよ・・・」
花原「ご・・・ごめん・・・」
海野「・・・私以上の不幸な女の子はいない・・・ずうっとそう思ってたけど・・・
生原さんを見てたら・・・元気が出たんだ・・・」
ハイチュウを7粒すべて口に放り込むちおり「う・・・うめ~!」
花原「・・・こいつはいつでも幸せそうだもんな・・・」
海野「ねえ・・・私はもうすぐ卒業して、この高校からいなくなっちゃうけど・・・
これからもずっと・・・私の友だちでいてくれるかな・・・」
花原「何言ってるのよ先輩。当たり前じゃない・・・」
ちおり「今日から一緒に住むんだから、もう家族みたいなもんじゃんね。」
海野「・・・約束だよ・・・?わたし・・・こう見えて・・・けっこうさみしがりなんだ・・・」
ポットでお茶を注ぐちおり「よし!この紅茶で姉妹の契りをかわそう!」
花原「なんだそりゃ・・・」
ちおり「やくざの先生が教えてくれたの!」
花原「なんで極道の盃かわさなきゃいけないのよ・・・」
海野「・・・うん、やろうよ・・・」
ティーカップを掲げる3人。
ちおり「わたしたち姉妹は、同年、同月、同日に卒業することを得ずとも、願わくば同年、同月、同日に死せんことを願わん!」
笑う花原「・・・わたしたちはこれから戦場に出かけるんかい・・・」
海野「いや・・・これからの試合はきっと戦場のはげしさよ・・・」
ちおり「全国制覇だ~!」
3人「おー!!」
・
翌朝
学校のポストに送られてくる新しい対戦チケット。
生徒会室
華白崎「学校のポストにこれが・・・」
10枚つづりの対戦チケットを会長の机に置く。
花原「・・・なんか最初にもらったやつと違う?」
チケットを手に取る海野「このチケットを消費して試合に勝利した場合、1勝あたり10万円を獲得・・・」
身を乗り出す花原「え?うそ!?」
海野「ほら・・・しかも、敗退して廃部になっても、獲得した賞金は没収されないってよ・・・」
花原「マッスル!まだ生き残っている出場校で、すごい弱そうなチームを探すのよ!」
さくらに相談する華白崎「・・・監督・・・」
さくら「破門戸のやつ・・・よく考えるわ・・・」
海野「どうしましょう・・・?」
さくら「当初の計画通りにいく。マッスルくん、君が探すのは弱小校ではなく、とびきりの強豪校よ。
絶対王者、聖ペンシルヴァニアを消耗させられるね・・・」
出場校リストをめくる山村「了解した。」
さくら「金に目がくらんだチームは勝手につぶしあってくれるわ。都合がいい・・・
それと・・・今回の遠征で大きな課題が見つかった。
うちは選手層が薄い。上武高にはそこを突かれた・・・」
華白崎「メンバーを増やすと?」
さくら「この学校に運動できる女子はいないの?2組フィジカルクラスの担任。」
海野「え?そうですね・・・バレーボールってことになるとちょっと・・・」
ちおり「いればバレー部の活動、はなからできたもんね!」
海野「うん・・・」
さくら「去年から正式導入された後衛特化型選手、リベロ制を相手校が要求してきた場合に備えて・・・少なくとも一人はリザーブがほしいのよね。」
花原「華白崎さんのクラスにはいないの?」
華白崎「私のクラスは3年生がほとんどで、大学の二次試験の後期日程の真っ只中ですからね・・・仮にいても頼めないですよ・・・4組はどうなんです?」
花原「・・・男子で威勢のいいのがいるくらい・・・3組は?」
乙奈「・・・芸能活動でほとんど学校に登校していません・・・」
腕を組む山村「・・・なかなか運動ができる女子生徒というのはいないものだな・・・」
さくら「海野部長、去年の春の校内スポーツテストの結果ってわかる?」
海野「職員室からとってくれば・・・」
山村「監督・・・それはお勧めしないぞ。」
さくら「あらなんで?参考になるかもしれないじゃない・・・」
山村「・・・あんな茶番で国民の体力や運動能力の現状は分からないと思うが。」
にやりと笑うさくら「・・・。海野さん。とってきて。」
海野「わかりました・・・」
山村「よすのだ・・・!」
花原「なんで、スポーツテストを目の敵にしてるのよ・・・わたしも嫌いだったけど、あれ。」
・
学食
学食に久しぶりにブーちゃんが入ると、それに気づいた付近の学生が集まり歓喜の声を上げる。
学生「うおおおおお!料理長降臨・・・!!」
感涙する学生たち。
ブーちゃん「・・・?」
学生「料理長が不在時のランチタイムは本当に地獄でした・・・」
学生「ホールの子が厨房に入ったんだけど、毎日ひどい料理ばかりで・・・
のべ14人もの学生が腹痛と下痢を訴えて入院を・・・」
キッチンでフライパンを振るスレンダー体型の少年のような女の子。
女の子「へい!A定食お待ち・・・!!」
そのA定食を奪って、箸を付けるブーちゃん。
食べ物をおもちゃにされた怒りで震えるブーちゃん「・・・!」
女の子「はれ・・・?料理長・・・??」
おたまで女の子をぶん殴るブーちゃん。
慌ててブーちゃんを止める学生たち「料理長・・・!料理長そのへんで・・・!!」
・
スポーツテストの結果をめくるさくら
「おい・・・5組にスポーツテスト全項目A判定の化け物がいるじゃない・・・」
とぼける山村「さて・・・我がクラスにそんなアスリートがいたかな。」
海野「私も知らなかった・・・一体何部の子なんだろう・・・?」
さくら「超高速帰宅部・・・1年小早川一咲・・・」
華白崎「なんですか、その部は・・・」
青ざめる山村「それだけは絶対にやめてくれ・・・!」
花原「あの山村くんがここまで怯えるって・・・どんだけ恐ろしいやつなのよ・・・」
さくら「担任。5組の小早川さんを呼んできて・・・」
山村「いや~・・・実はもう退学したらしいぞ。」
さくら「軍師の命令は絶対よ。呼んできなさい。」
山村「・・・御意・・・」
・
中庭
小早川「あ~あ、学食のバイトもクビになっちゃったなあ・・・てへ。
次のバイトを探さないと・・・
でもブーちゃん先輩が帰ってきたということは・・・」
気まずそうな山村「こ・・・ここにいたか・・・かずさよ・・・」
顔を赤くする小早川「・・・!先輩!!??
ついに私を迎えに来てくれたんですね・・・!嬉しい・・・!」
山村「いや・・・ちが・・・」
山村に抱きつく小早川「わたし・・・
学校が終わったら速行で帰って、死ぬほどバイトして結婚費用集めたんですよ・・・!
がんばったねってほめてください・・・!!」
山村「離れてくれ・・・!ゼクシィを2冊も買うんじゃない・・・!!」
・
生徒会室
小早川を連れてくる山村。
大爆笑の花原「ぎゃははははははははは!!!」
海野「花原さん笑いすぎだって・・・!」
花原「だ・・・だって・・・こいつのどこがいいのよ・・・お腹痛い・・・」
山村と腕を絡ませてうっとりする小早川「・・・結納はどうしますか?」
恥ずかしくてたまらない山村「・・・殺してくれ。」
乙奈「なぜ山村さんのことが好きなんですか?」
回想する小早川
小早川(先輩とは小学校の時から一緒で・・・兄弟のいない私のお兄さんがわりでした・・・
先輩は、昔から運動神経がよくて・・・その美しいフォームに、私はずっと憧れていました・・・
それに比べて私はドジばかりで運動会ではいつもビリ。)
クラスメイト「あ~あ・・・またあいつのせいで負けたよ・・・」
運動会で転んで涙を拭う小早川「もう、走るのなんてきらい・・・」
小早川に手を差し伸べる小学生時代の山村
「人生は勝つことよりも負けることのほうが多い。気にするな。
共に走ろう、青春という名のトラックを。」
手をつないで二人で走ってゴールする。
小早川(先輩が教えてくれた・・・走ることの楽しさを・・・それ以来わたしは・・・)
回想終わり。
微妙な表情をする花原「・・・う~ん・・・ちょっとありきたりね・・・」
乙奈「次はもう少し頑張って作ってきてくださいね!」
ショックを受ける小早川「・・・ええっ!!??ちょっこういうのって作るんですか!??」
花原「でも山村にも責任あるわよ・・・なんなのよ、青春という名のトラックを一緒に走ろうって・・・
この子、勘違いしちゃうじゃない。」
ちおり「絶妙にダサいしね!」
山村「・・・その運動会がまったく記憶にないのだ・・・」
さくら「ほいで、かずさちゃん。バレーボールって知ってるかい?」
小早川「・・・へ?」
さくら「勝てば、今よりもいいところで挙式できるわよん。」
海野「・・・あんな大きいバレー部を廃部にさせちゃって・・・ちょっと心が痛むなあ・・・」
花原「いや・・・それくらいしないと、あのブラックな体質は変わらないと思うよ・・・
あいつら部員をリンチしてたんでしょう?
・・・海野さんは優しすぎよ・・・」
ちおり「だから私は海野さんが好き!!
あのお姉さんとも仲直りできてよかったね!」
後ろの席を振り返る海野「うん・・・みんな監督のおかげ・・・」
酔っぱらって寝ているさくら。
花原「遠征費の件・・・濡れ衣だってなんで言わなかったの?
そうすれば・・・あの学校でそのままバレーが・・・」
海野「だって・・・お金なくしちゃった人・・・きっと思いつめているだろうなって・・・」
感動して号泣する病田「・・・なんて徳の高い人なの・・・!!
わたしを家臣にしてください・・・!」
抱きつく病田をはなそうとする海野「ちょっ・・・よしてください先生・・・!」
海野「結果論だけど・・・私はこの選択に後悔はないよ。
みんなとバレーができたんだから。」
華白崎「これで、対戦チケットはあと1枚です・・・
しかし・・・監督の計画通り、これで決勝までいけるのでしょうか・・・?」
乙奈「あら・・・どういうことですか・・・?」
華白崎「数学でゲーム理論という考え方があって・・・」
花原「あるね・・・」
華白崎「つまり、私たちのような戦略をほかの部もとったとしたら・・・3戦目以降はこう着状態になる・・・このまま全チーム期限切れで失格にでもなったら・・・」
花原「今、どれくらい学校が残ってんの?」
華白崎「142校・・・なので・・・全チームがきれいに対戦したとして・・・(暗算をする)あと6戦はしないと2校にまでは減らない・・・」
花原「あの九頭が初戦のチームをだましまくってチーム数を減らしてくれていたんじゃ・・・」
山村「もう少し放置してもよかったかもな・・・」
ぶんぶんと首を横に振る病田
・
夜。
白亜高校に戻るバス。
出迎える校長と京冨野。
羽毛田校長「みなさん。お帰りなさい・・・試合の方は順調のようで・・・」
さくら「まあ、計画通りね。」
アタッシュケースを京冨野に渡すさくら。
さくら「そのまま返す。」
驚く京冨野「1円も使わずに、敵をだましたのか?」
さくら「賢いやつをだますのは簡単。」
バスを降りる花原「ほらついたわよ・・・」
花原におぶさって寝ているちおり「にゃ~・・・」
海野「みんな、初戦と第二試合、本当にお疲れ様・・・
今日は久しぶりにおうちに帰ってゆっくり休んでね・・・!」
表情が曇る花原「家か・・・あのボロボロで誰もいない・・・」
華白崎「・・・現実に引き戻されますね・・・でも、私は下の兄弟の面倒を見ないと。
みなさん、お先に失礼します。
それと・・・花原さん・・・崖で命を救ってくれてありがとう・・・ご恩は一生忘れません。」
深々とお辞儀をすると、自宅に帰る華白崎。
花原「できた子だなあ・・・」
乙奈「わたくしたちも失礼しますわ。
お父様が心配しすぎて泣いてしまいます・・・」
ブーちゃんと帰っていく乙奈。
花原「結局家族がいない私たちが残ったね・・・」
海野「花原さん・・・よかったら・・・生原さんと一緒に私が泊まっている学生寮に来ない・・・?」
花原「いいの・・・?」
海野「大丈夫ですよね・・・?」
微笑む羽毛田「もちろん。そっちの方がホームレスの生原さんも安全でしょうし・・・」
・
学生寮の海野の部屋
花原「おじゃましま~す・・・さすが、よく片付いているなあ・・・」
海野「物がないだけだよ。」
背中のちおりをベッドにおろす花原。
目を覚ますちおり「・・・あれ?草むらじゃない・・・?」
花原「・・・かなしいやつだな・・・ここは海野さんの部屋。」
ちおり「ほえ?・・・わーい!」
海野「目がさめちゃったみたいね。なにか、温かいものでも飲もうか・・・」
コンロでお湯を沸かす海野。
ちおりがこっそりと花原の腕をぎゅっとつかむ。
花原「・・・怖くないよ・・・」
ちおりをなでる花原。
花原「そういや、あんたが好きなお菓子まだあまっていたわよ・・・」
リュックサックを開ける花原。
喜ぶちおり「わ~い青1号だ!」
花原「それは成分であって商品名じゃないぞ・・・」
紅茶を入れる海野。
海野「ピーチティーでいいかな・・・」
花原「最高。」
ちおり「夜更かしパーティーだ~!!」
紅茶を飲む花原「・・・ぶっちゃけていい・・・?」
海野「え?ど・・・どうぞ・・・」
花原「私・・・今まで生きてて全然楽しくなかった・・・
みんな私を怖がって近づいてこなかったし・・・例外はこいつ。」
ちおり「ごっちゃんです。」
花原「わたし・・・海野さんが羨ましかったんだよ。
いつも明るくて、みんなに優しくて・・・こんな完璧な人間いてたまるかって思ってた・・・」
海野「・・・覚えてないのね・・・私・・・明るくなんてなかったよ・・・
このままバレーもできずに就職しちゃうのかって・・・ずっと落ち込んでた。」
花原「そうだっけ?」
海野「地震で両親を失って・・・高校では窃盗の疑いをかけられて転校だよ・・・?
とても明るくなんてふるまえないよ・・・」
花原「ご・・・ごめん・・・」
海野「・・・私以上の不幸な女の子はいない・・・ずうっとそう思ってたけど・・・
生原さんを見てたら・・・元気が出たんだ・・・」
ハイチュウを7粒すべて口に放り込むちおり「う・・・うめ~!」
花原「・・・こいつはいつでも幸せそうだもんな・・・」
海野「ねえ・・・私はもうすぐ卒業して、この高校からいなくなっちゃうけど・・・
これからもずっと・・・私の友だちでいてくれるかな・・・」
花原「何言ってるのよ先輩。当たり前じゃない・・・」
ちおり「今日から一緒に住むんだから、もう家族みたいなもんじゃんね。」
海野「・・・約束だよ・・・?わたし・・・こう見えて・・・けっこうさみしがりなんだ・・・」
ポットでお茶を注ぐちおり「よし!この紅茶で姉妹の契りをかわそう!」
花原「なんだそりゃ・・・」
ちおり「やくざの先生が教えてくれたの!」
花原「なんで極道の盃かわさなきゃいけないのよ・・・」
海野「・・・うん、やろうよ・・・」
ティーカップを掲げる3人。
ちおり「わたしたち姉妹は、同年、同月、同日に卒業することを得ずとも、願わくば同年、同月、同日に死せんことを願わん!」
笑う花原「・・・わたしたちはこれから戦場に出かけるんかい・・・」
海野「いや・・・これからの試合はきっと戦場のはげしさよ・・・」
ちおり「全国制覇だ~!」
3人「おー!!」
・
翌朝
学校のポストに送られてくる新しい対戦チケット。
生徒会室
華白崎「学校のポストにこれが・・・」
10枚つづりの対戦チケットを会長の机に置く。
花原「・・・なんか最初にもらったやつと違う?」
チケットを手に取る海野「このチケットを消費して試合に勝利した場合、1勝あたり10万円を獲得・・・」
身を乗り出す花原「え?うそ!?」
海野「ほら・・・しかも、敗退して廃部になっても、獲得した賞金は没収されないってよ・・・」
花原「マッスル!まだ生き残っている出場校で、すごい弱そうなチームを探すのよ!」
さくらに相談する華白崎「・・・監督・・・」
さくら「破門戸のやつ・・・よく考えるわ・・・」
海野「どうしましょう・・・?」
さくら「当初の計画通りにいく。マッスルくん、君が探すのは弱小校ではなく、とびきりの強豪校よ。
絶対王者、聖ペンシルヴァニアを消耗させられるね・・・」
出場校リストをめくる山村「了解した。」
さくら「金に目がくらんだチームは勝手につぶしあってくれるわ。都合がいい・・・
それと・・・今回の遠征で大きな課題が見つかった。
うちは選手層が薄い。上武高にはそこを突かれた・・・」
華白崎「メンバーを増やすと?」
さくら「この学校に運動できる女子はいないの?2組フィジカルクラスの担任。」
海野「え?そうですね・・・バレーボールってことになるとちょっと・・・」
ちおり「いればバレー部の活動、はなからできたもんね!」
海野「うん・・・」
さくら「去年から正式導入された後衛特化型選手、リベロ制を相手校が要求してきた場合に備えて・・・少なくとも一人はリザーブがほしいのよね。」
花原「華白崎さんのクラスにはいないの?」
華白崎「私のクラスは3年生がほとんどで、大学の二次試験の後期日程の真っ只中ですからね・・・仮にいても頼めないですよ・・・4組はどうなんです?」
花原「・・・男子で威勢のいいのがいるくらい・・・3組は?」
乙奈「・・・芸能活動でほとんど学校に登校していません・・・」
腕を組む山村「・・・なかなか運動ができる女子生徒というのはいないものだな・・・」
さくら「海野部長、去年の春の校内スポーツテストの結果ってわかる?」
海野「職員室からとってくれば・・・」
山村「監督・・・それはお勧めしないぞ。」
さくら「あらなんで?参考になるかもしれないじゃない・・・」
山村「・・・あんな茶番で国民の体力や運動能力の現状は分からないと思うが。」
にやりと笑うさくら「・・・。海野さん。とってきて。」
海野「わかりました・・・」
山村「よすのだ・・・!」
花原「なんで、スポーツテストを目の敵にしてるのよ・・・わたしも嫌いだったけど、あれ。」
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学食
学食に久しぶりにブーちゃんが入ると、それに気づいた付近の学生が集まり歓喜の声を上げる。
学生「うおおおおお!料理長降臨・・・!!」
感涙する学生たち。
ブーちゃん「・・・?」
学生「料理長が不在時のランチタイムは本当に地獄でした・・・」
学生「ホールの子が厨房に入ったんだけど、毎日ひどい料理ばかりで・・・
のべ14人もの学生が腹痛と下痢を訴えて入院を・・・」
キッチンでフライパンを振るスレンダー体型の少年のような女の子。
女の子「へい!A定食お待ち・・・!!」
そのA定食を奪って、箸を付けるブーちゃん。
食べ物をおもちゃにされた怒りで震えるブーちゃん「・・・!」
女の子「はれ・・・?料理長・・・??」
おたまで女の子をぶん殴るブーちゃん。
慌ててブーちゃんを止める学生たち「料理長・・・!料理長そのへんで・・・!!」
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スポーツテストの結果をめくるさくら
「おい・・・5組にスポーツテスト全項目A判定の化け物がいるじゃない・・・」
とぼける山村「さて・・・我がクラスにそんなアスリートがいたかな。」
海野「私も知らなかった・・・一体何部の子なんだろう・・・?」
さくら「超高速帰宅部・・・1年小早川一咲・・・」
華白崎「なんですか、その部は・・・」
青ざめる山村「それだけは絶対にやめてくれ・・・!」
花原「あの山村くんがここまで怯えるって・・・どんだけ恐ろしいやつなのよ・・・」
さくら「担任。5組の小早川さんを呼んできて・・・」
山村「いや~・・・実はもう退学したらしいぞ。」
さくら「軍師の命令は絶対よ。呼んできなさい。」
山村「・・・御意・・・」
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中庭
小早川「あ~あ、学食のバイトもクビになっちゃったなあ・・・てへ。
次のバイトを探さないと・・・
でもブーちゃん先輩が帰ってきたということは・・・」
気まずそうな山村「こ・・・ここにいたか・・・かずさよ・・・」
顔を赤くする小早川「・・・!先輩!!??
ついに私を迎えに来てくれたんですね・・・!嬉しい・・・!」
山村「いや・・・ちが・・・」
山村に抱きつく小早川「わたし・・・
学校が終わったら速行で帰って、死ぬほどバイトして結婚費用集めたんですよ・・・!
がんばったねってほめてください・・・!!」
山村「離れてくれ・・・!ゼクシィを2冊も買うんじゃない・・・!!」
・
生徒会室
小早川を連れてくる山村。
大爆笑の花原「ぎゃははははははははは!!!」
海野「花原さん笑いすぎだって・・・!」
花原「だ・・・だって・・・こいつのどこがいいのよ・・・お腹痛い・・・」
山村と腕を絡ませてうっとりする小早川「・・・結納はどうしますか?」
恥ずかしくてたまらない山村「・・・殺してくれ。」
乙奈「なぜ山村さんのことが好きなんですか?」
回想する小早川
小早川(先輩とは小学校の時から一緒で・・・兄弟のいない私のお兄さんがわりでした・・・
先輩は、昔から運動神経がよくて・・・その美しいフォームに、私はずっと憧れていました・・・
それに比べて私はドジばかりで運動会ではいつもビリ。)
クラスメイト「あ~あ・・・またあいつのせいで負けたよ・・・」
運動会で転んで涙を拭う小早川「もう、走るのなんてきらい・・・」
小早川に手を差し伸べる小学生時代の山村
「人生は勝つことよりも負けることのほうが多い。気にするな。
共に走ろう、青春という名のトラックを。」
手をつないで二人で走ってゴールする。
小早川(先輩が教えてくれた・・・走ることの楽しさを・・・それ以来わたしは・・・)
回想終わり。
微妙な表情をする花原「・・・う~ん・・・ちょっとありきたりね・・・」
乙奈「次はもう少し頑張って作ってきてくださいね!」
ショックを受ける小早川「・・・ええっ!!??ちょっこういうのって作るんですか!??」
花原「でも山村にも責任あるわよ・・・なんなのよ、青春という名のトラックを一緒に走ろうって・・・
この子、勘違いしちゃうじゃない。」
ちおり「絶妙にダサいしね!」
山村「・・・その運動会がまったく記憶にないのだ・・・」
さくら「ほいで、かずさちゃん。バレーボールって知ってるかい?」
小早川「・・・へ?」
さくら「勝てば、今よりもいいところで挙式できるわよん。」
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