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第二部~群雄割拠~
『青春アタック』脚本㉖破鏡不照
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観客「海野だ!部長の海野が帰ってきた・・・!」
アライ「いまさら遅いぜ!このアライ様が勝負を決めてやる!」
観客「前衛にはアライだ!」
花原「海野さん・・・」
海野「なに?」
花原「わたしたち・・・ちょっと海野さんに頼りすぎてたみたい・・・
でも・・・海野さんがいない分、みんなちゃんと頑張ったから・・・」
海野「花原さん・・・んーん・・・私もごめんなさい・・・
一人で走り回って・・・みんなの成長をちゃんと見ていなかった・・・
バレーはチームでやるから楽しいんだよね・・・
私は自分の役割を頑張るね・・・勝とう!」
タッチし合う6人。
「白亜高ファイオー!!」
さくら「遅かったじゃん・・・」
隣でライダースジャケットを脱いで、腰で縛るつよめ
「無理言わないでよ・・・こんなオフロードに呼んでおいて・・・
どう?学校の仕事は慣れた・・・?」
さくら「まあ、悪くはないよ・・・あんたの姉さんがいろいろ教えてくれるからね・・・」
病田(わたしなんか教えたっけ・・・??)
床にどかっとあぐらをかいて、撮影機材を設営するつよめ
「・・・で?こんなインチキみたいな試合を取材しろって・・・?」
さくら「インチキだろうが、コートの選手は真剣勝負さ。
まあ見てな・・・あんたを呼んだのにはいろいろ理由があるんだ。」
つよめ「それは楽しみだこと。」
小声で山村「先生の妹君は男みたいなお方ですな・・・」
小声で病田「・・・中身もほぼ男です・・・」
海野が強力なサーブを打つ。
「ナイスサーブ!」
理央が必死に飛び込みレシーブをする。
観客「あっちも必死だ!」
理央「クマガイさん!!」
クマガイがアタックをしようとする。
花原がブロックに入る「させるか・・・!」
しかし、それはおとりでアライがアタックを打つ。
花原(しまった・・・!)
しかしそのアタックをレシーブで拾ってリカバーする海野。
トスを上げるちおり「ほい!」
ブロックに入るクマガイとアライ「打ってこい・・・!止めたらあ!」
アタックをする花原。
アタック返しをするアライ「甘いわあ!!」
それを再びレシーブする海野「ふっ!」
アライ「あのやろー!バテたんじゃなかったのかー!!」
つよめ「・・・あの部長やっぱりめちゃくちゃうまいね。」
さくら「昔の誰かさんみたいだよな。」
つよめ「あら、ありがとう・・・」
乙奈が華白崎にトスを上げる。「はい!」
華白崎がアタックを打つ「勝つ!」
それもカウンターで返すアライ「きかねーって言ってんだろ!」
それをブロックして跳ね返す花原「アタック返し返し!!」
アライ「なにいいいいいい!!!」
ライン内に落ちるボール。
主審の笛。
観客「うおおおお!すげえええ!!」
アライ「きさま・・・なんのまねだありゃあ・・・」
花原「ふふふ・・・君の技は全て見切ったよ・・・」※実はマグレ
大此木「あいつはすぐに人の技をパクるよな・・・」
シャッターを切るつよめ「あんたの学校にあんないいエースアタッカーがいたの?」
さくら「らしいね・・・」
つよめ「なんでもっと前から監督をやらなかったのよ・・・もったいないなあ・・・」
さくら「私はやるからには絶対に勝つからね・・・」
ちおり「適当に腕振り回してただけでしょ?」
花原「うるさい、バラすな。」
理央「オジカくんとクマガイさんにボールを回すわ!どんどん打って!
アライくんはダイレクトアタックを狙って!」
アライ「おう」
クマガイがアタックを打とうとする。
花原がブロックに入る。
オジカ「一人じゃ、あいつのアタックは止められない!」
すると、花原、乙奈、華白崎の3人が同時にブロックする。
クマガイ「さ・・・三枚・・・!!」
大此木「後衛に海野がいるからこそできるプレーだ!!」
観客「これで23対23・・・!同点だ!!」
クマガイを叱るオジカ「女の子たちに負けて捕食動物としておめーは悔しくねえのか!」
ちおり「シカに叱られくまってるくま。」
クマガイ「うまいね!」
オジカ「うまいねじゃねえ!!」
アライ「まあまあ、落ち着けよ・・・まだこっちはくまが前衛なんだ・・・
2点くらい簡単に取れるぜ。」
オジカ「いや・・・事態は深刻だぞ・・・次のサーバーを見てみるがいい・・・」
ボールを持つ乙奈。
アライ「あー!!変態サーブの乙奈だ!!」
オジカ「だから、サーブ権は死守しなければいけなかったのだ・・・!」
サーブを打つ乙奈「たあ。」
突然カーブがかかり、アライの方からクマガイの顔面にぶつかる無回転フローターサーブ。
アライ「むり!!」
観客「逆転!!白亜高マッチポイントだー!!」
理央「やばいよ・・・!」
シマダ「あ・・・あの・・・変化球の統計を取ってみたのですが・・・」
理央「本当??」
シマダ「ええ・・・あのサーブ、前衛レフトに最終的に落ちる確率が一番高いんです・・・
私に任せてくれませんか??」
大此木「いよっしゃー!決めちまえ!!」
病田「みんながんばって・・・!」
つよめ「なんつーサーバーがいるんだ・・・ん?このフォーメーションは??」
三畳高はイノセとシマダ以外のメンバーはほぼコートの隅に待機している。
大此木「完全にイノセ任せだぞ!!イノセの機動力で勝負に出るつもりか!!」
オジカ「賭けだが、イノセの持ち場を広くすればその分イノセの機動力は上がる・・・!
あとはシマダの計算次第だ・・・」
イノセ「いくぜ、相棒・・・」
シマダ「どきどき・・・」
サーブを打つ乙奈「え~い」
クネクネと蛇行しながら相手コートにむかっていくサーブボール。
ボールの方へイノセが発進する。「ファイヤ!」
突進した方向からボールの向きがそれる。
観客「かわされた・・・!」
しかし、すぐに方向転換をするイノセ。
観客「いや!読んでる・・・!!」
乙奈のサーブをぎりぎりレシーブするイノセ。
トスを上げるオジカ「でかした!!!いけクマガイ!!」
クマガイが渾身のアタックを打つ。
華白崎がブロックに入るが、クマガイは器用にインナーコースにスパイクを叩き込む。
華白崎(インナー・・・!!??)
それを海野がバックジャンプしながらレシーブする。
海野「ふっ!!!」
観客「うお!クマガイの全力のアタックをブロックなしで受けたぞ!!」
起き上がる海野「腕がへし折れると思った・・・!!生原さんお願い・・・つないで・・・!!」
トスを上げるちおり「花原さん!」
アタックモーションに入る花原。
慌ててブロックに入る三畳高の前衛。
オジカ「花原を止めろ・・・!!」
この時あげた生原血織のトスは最高に美しかったという・・・
回想
芝生の上で並んで座るちおりと花原の二人。
花原「私はね、スポーツが嫌いなの。
大の大人がボールで遊んでて・・・恥ずかしくないのかしら・・・」
生徒会室
華白崎「あなたには誰もが認める絶対的な才能が一つある・・・それはその身長です。」
とあるチラシを前に出す。
華白崎「あなたは、その身長を活かしてこの大会に出場するべきだ・・・」
花原「高校バレー春のバトルロイヤル大会・・・あなた、この私に球技をやれっていうの・・・??
くだらない・・・なんで私が・・・」
体育館での最初の練習
花原「・・・私バレーに向いてない。」
海野「練習すればできるって・・・!」
ちおり「できるよ!花原さん天才だもん。」
・
・
・
乾坤一擲のアタックを決める花原。
ブロックに入ったクマガイがパワーで負けて後ろに倒れる。
あまりの出来事に一瞬時が止まる会場。
騒然とする会場「すげええ!クマガイが吹っ飛んだ~~!!」
主審が笛を鳴らす。
花原が腕を上げる。
ちおり「やったー!」
白亜高部員「勝ったあああああ!!!」
主審「第二セットは白亜高校の勝利です!」
抱き合うちおりと花原。
華白崎「は・・・ははは・・・」
花原「さあ、帰ろう・・・!」
ちおり「うん!」
主審「い・・・いや・・・まだ第三セットがあるんですが・・・」
テンションが上がってポールによじ登っているちおり「え?おわりじゃないの?」
アライ「てめえら第一セットを落としたじゃねーか・・・!」
花原「キリがいいし、うちの勝ちでいいじゃん。」
アライ「よくねーよ・・・!」
その時、野外で爆発音が轟く。
アライ「!!なんだ!?」
合宿場全体が振動する。
メキメキという音。
さくら「よっしゃー!この混乱に乗じて第三セットスタート!主審!とっとと始めなさい!」
主審「ピ・・・ピー!」
華白崎「地震の最中で試合をするのは危険では・・・!」
怯える観客の野生動物たち。
花原「ちおり!サーブよ!」
ちおり「イエスサー!」
アライ「かかってこいやー!!」
地面に伏せる理央「いや・・・本当に始めるの!??」
サーブを打つちおり「えーい!!」
その瞬間、合宿場全体が大きく傾き、ちおりのオーバーハンドサーブが天井の梁に当たる。
ちおり「わーい!天井サーブだー!」
床が斜めに傾き、滑り落ちていく選手たち。
イノセの蹄では床にしがみつけず、ずるずる後退していく。
もはやレシーブどころじゃない。
オジカ「これは地震じゃない・・・!合宿場が動いている・・・!」
床に爪を立てて踏ん張り、サーブをレシーブするアライ「おらー!」
合宿場が横に移動しているので、慣性の法則で空中のボールが変な方向へ動いている。
アライ「クマガイ!アタックだ!!」
クマガイ「わ・・・わかりました!!」
クマガイがアタックを撃つと、合宿場の床が割れ、白亜高と三畳高のコートがネットを境に分断される。
クマガイ「やばい!体育館を壊しちゃった!!」
白亜高のコートの傾斜が一気について、ほとんど直角になる。
あわててネットにしがみつく白亜校の部員たち。
ちおり「くまちゃん、コートを壊すのは反則だよ。」
クマガイ「ごめん・・・!」
大此木「んなわけあるかい!!」
合宿場の半分がそのまま崖に落下していく。
ネットにしがみついてぶら下がる華白崎「ああ・・・」
ネットがぶちぶちとちぎれて、華白崎が落下してしまう。
「うわああああ!!」
その瞬間、華白崎の脚をつかんで落下を食い止める花原。
残りの片腕でポールをつかんでいる。
花原「がんばれカッシー!」
涙を流す華白崎「花原さん、私まだ死にたくない・・・!私にはまだ小さな兄弟が4人も・・・!!」
ちおりに怒鳴る花原「ちおり・・・サーブだ!」
ちおり「おっけー!」
両足でポールをつかんで、もう一度サーブを打つちおり。
さくら「ナイスサー!」
アライ「こいや~!」
理央「まだバレーをやっているわ・・・!」
角で海野と乙奈を必死に持ち上げているオジカ
「もういい分かった・・・!おれたちの降参だ・・・!!」
・
巨大なブルドーザーが合宿場を押し、基礎を壊しながら崖へ進んでいく。
建設省役人「ふははは!馬鹿どもめ!
ニャンバダム建設を阻む、こざかしい野生動物どもがすべて小屋に集まっておるわ!
一網打尽にしろ!!」
ブルドーザーを操縦する如月建設「・・・いいのか?このまま落として!
中には人間もいるんだぞ!」
建設省役人「アクセル全開だ!
今朝の集中豪雨で全員流されたことにしろ!
我が政権に逆らうと、こうなるということを思い知らせてやる・・・!」
・
窓から顔を出すシマダ「ああっ・・・!建設省の役人だ・・・!
圧力でらちがあかないから土地収用の強硬手段に出たんだ!!」
理央「このままじゃ、こっちのコートも落とされちゃう・・・!」
その時、合宿場の窓ガラスが割れて、銃弾のような剛速球がブルドーザーに飛んでいく。
バレーボールは正確に、コックピットの役人の顔面を打ち据える。
役人「ぎゃああああ!!」
気絶して操作盤に覆いかぶさる役人。
如月建設「馬鹿!前が見えないだろ!!」
暴走したブルドーザーは、進路を変えて合宿場をはなし、自らがけ下へ転落してしまう。
サーブフォームをしているさくら「・・・楽しいバレーボールに水を差すんじゃないよ。」
・
めちゃくちゃに破壊されている校舎。
地面に崩れ落ちる理央「・・・校舎が・・・みんな・・・壊れちゃった・・・
お母さんとの思い出が・・・」
昭和40年の写真を拾う。
海野「有葉部長・・・」
華白崎「信じられない・・・日本政府がこんなことをするなんて・・・」
涙を流す理央「もともと三畳村でダム建設に賛成する人なんて誰もいなかった・・・
でも・・・水没予定地には補助金は出ないし・・・インフラの整備だってしてくれない・・・
そうやって村のコミュニティは崩壊したんです・・・
残ったのは、動物たちだけ・・・
わたしは・・・お母さんの三畳中をもう一度強豪校にしたかった・・・」
海野「・・・有葉さん・・・」
つよめ「・・・もともと50年前の入札ありきの計画だからね・・・
2000億円が転がり込むプロジェクトなら、野生動物くらい簡単に殺すわよ・・・」
さくら「・・・んで、撮れたの?」
ボイスレコーダーを取り出すつよめ「・・・あいつらのクソみたいな会話もね。
私を呼んだ理由ってこういうことね・・・」
・
無人駅
白亜高を見送る三畳農業高校。
理央「私たちの負けよ。楽しい試合をありがとう・・・」
握手をする海野「・・・みなさんはこれからどうするんですか??」
理央「なにも考えてないけど・・・また、みんなで校舎を作ろうかな。」
アライ「理央・・・お前ももう山を下りろよ。」
理央「・・・え?」
クマガイ「みんなで相談したんです。
ぼくらのために一生に一度の青春時代を無駄にすることはないって・・・」
理央「クマガイさん・・・」
オジカ「・・・これ以上はやめておけ・・・次は猟銃で撃たれるぞ・・・」
理央「でも・・・ダムができたらみんなの自然は・・・!」
アライ「勘違いしてねえか?
俺たちは人間様に住処をあつらえてもらわないと生きてけないほどやわじゃねえ・・・」
イノセ「・・・どこでだって生きてけるさ・・・生命は道を探し出す・・・」
微笑むシマダ「心配しないでください。」
理央「みんなとまたバレーができるかな・・・」
クマガイ「いつでも遊びに来てよ。」
海野「いこう、理央ちゃん・・・汽車が出るよ・・・」
涙をぬぐう理央「・・・うん・・・」
手を振る動物たちを残して、山を下りる人間たち。
ホームに残るアライとオジカ。
アライ「なあ・・・あのまま第三セットを戦っていたら・・・勝てたと思うか?」
微笑むオジカ「・・・ふん、当たり前だ・・・」
春高バレーバトルロイヤル大会
白亜校 対 三畳農業高校
相手チームの降参により、白亜高校の勝利。
三畳農業高校バレー部――廃部
アライ「いまさら遅いぜ!このアライ様が勝負を決めてやる!」
観客「前衛にはアライだ!」
花原「海野さん・・・」
海野「なに?」
花原「わたしたち・・・ちょっと海野さんに頼りすぎてたみたい・・・
でも・・・海野さんがいない分、みんなちゃんと頑張ったから・・・」
海野「花原さん・・・んーん・・・私もごめんなさい・・・
一人で走り回って・・・みんなの成長をちゃんと見ていなかった・・・
バレーはチームでやるから楽しいんだよね・・・
私は自分の役割を頑張るね・・・勝とう!」
タッチし合う6人。
「白亜高ファイオー!!」
さくら「遅かったじゃん・・・」
隣でライダースジャケットを脱いで、腰で縛るつよめ
「無理言わないでよ・・・こんなオフロードに呼んでおいて・・・
どう?学校の仕事は慣れた・・・?」
さくら「まあ、悪くはないよ・・・あんたの姉さんがいろいろ教えてくれるからね・・・」
病田(わたしなんか教えたっけ・・・??)
床にどかっとあぐらをかいて、撮影機材を設営するつよめ
「・・・で?こんなインチキみたいな試合を取材しろって・・・?」
さくら「インチキだろうが、コートの選手は真剣勝負さ。
まあ見てな・・・あんたを呼んだのにはいろいろ理由があるんだ。」
つよめ「それは楽しみだこと。」
小声で山村「先生の妹君は男みたいなお方ですな・・・」
小声で病田「・・・中身もほぼ男です・・・」
海野が強力なサーブを打つ。
「ナイスサーブ!」
理央が必死に飛び込みレシーブをする。
観客「あっちも必死だ!」
理央「クマガイさん!!」
クマガイがアタックをしようとする。
花原がブロックに入る「させるか・・・!」
しかし、それはおとりでアライがアタックを打つ。
花原(しまった・・・!)
しかしそのアタックをレシーブで拾ってリカバーする海野。
トスを上げるちおり「ほい!」
ブロックに入るクマガイとアライ「打ってこい・・・!止めたらあ!」
アタックをする花原。
アタック返しをするアライ「甘いわあ!!」
それを再びレシーブする海野「ふっ!」
アライ「あのやろー!バテたんじゃなかったのかー!!」
つよめ「・・・あの部長やっぱりめちゃくちゃうまいね。」
さくら「昔の誰かさんみたいだよな。」
つよめ「あら、ありがとう・・・」
乙奈が華白崎にトスを上げる。「はい!」
華白崎がアタックを打つ「勝つ!」
それもカウンターで返すアライ「きかねーって言ってんだろ!」
それをブロックして跳ね返す花原「アタック返し返し!!」
アライ「なにいいいいいい!!!」
ライン内に落ちるボール。
主審の笛。
観客「うおおおお!すげえええ!!」
アライ「きさま・・・なんのまねだありゃあ・・・」
花原「ふふふ・・・君の技は全て見切ったよ・・・」※実はマグレ
大此木「あいつはすぐに人の技をパクるよな・・・」
シャッターを切るつよめ「あんたの学校にあんないいエースアタッカーがいたの?」
さくら「らしいね・・・」
つよめ「なんでもっと前から監督をやらなかったのよ・・・もったいないなあ・・・」
さくら「私はやるからには絶対に勝つからね・・・」
ちおり「適当に腕振り回してただけでしょ?」
花原「うるさい、バラすな。」
理央「オジカくんとクマガイさんにボールを回すわ!どんどん打って!
アライくんはダイレクトアタックを狙って!」
アライ「おう」
クマガイがアタックを打とうとする。
花原がブロックに入る。
オジカ「一人じゃ、あいつのアタックは止められない!」
すると、花原、乙奈、華白崎の3人が同時にブロックする。
クマガイ「さ・・・三枚・・・!!」
大此木「後衛に海野がいるからこそできるプレーだ!!」
観客「これで23対23・・・!同点だ!!」
クマガイを叱るオジカ「女の子たちに負けて捕食動物としておめーは悔しくねえのか!」
ちおり「シカに叱られくまってるくま。」
クマガイ「うまいね!」
オジカ「うまいねじゃねえ!!」
アライ「まあまあ、落ち着けよ・・・まだこっちはくまが前衛なんだ・・・
2点くらい簡単に取れるぜ。」
オジカ「いや・・・事態は深刻だぞ・・・次のサーバーを見てみるがいい・・・」
ボールを持つ乙奈。
アライ「あー!!変態サーブの乙奈だ!!」
オジカ「だから、サーブ権は死守しなければいけなかったのだ・・・!」
サーブを打つ乙奈「たあ。」
突然カーブがかかり、アライの方からクマガイの顔面にぶつかる無回転フローターサーブ。
アライ「むり!!」
観客「逆転!!白亜高マッチポイントだー!!」
理央「やばいよ・・・!」
シマダ「あ・・・あの・・・変化球の統計を取ってみたのですが・・・」
理央「本当??」
シマダ「ええ・・・あのサーブ、前衛レフトに最終的に落ちる確率が一番高いんです・・・
私に任せてくれませんか??」
大此木「いよっしゃー!決めちまえ!!」
病田「みんながんばって・・・!」
つよめ「なんつーサーバーがいるんだ・・・ん?このフォーメーションは??」
三畳高はイノセとシマダ以外のメンバーはほぼコートの隅に待機している。
大此木「完全にイノセ任せだぞ!!イノセの機動力で勝負に出るつもりか!!」
オジカ「賭けだが、イノセの持ち場を広くすればその分イノセの機動力は上がる・・・!
あとはシマダの計算次第だ・・・」
イノセ「いくぜ、相棒・・・」
シマダ「どきどき・・・」
サーブを打つ乙奈「え~い」
クネクネと蛇行しながら相手コートにむかっていくサーブボール。
ボールの方へイノセが発進する。「ファイヤ!」
突進した方向からボールの向きがそれる。
観客「かわされた・・・!」
しかし、すぐに方向転換をするイノセ。
観客「いや!読んでる・・・!!」
乙奈のサーブをぎりぎりレシーブするイノセ。
トスを上げるオジカ「でかした!!!いけクマガイ!!」
クマガイが渾身のアタックを打つ。
華白崎がブロックに入るが、クマガイは器用にインナーコースにスパイクを叩き込む。
華白崎(インナー・・・!!??)
それを海野がバックジャンプしながらレシーブする。
海野「ふっ!!!」
観客「うお!クマガイの全力のアタックをブロックなしで受けたぞ!!」
起き上がる海野「腕がへし折れると思った・・・!!生原さんお願い・・・つないで・・・!!」
トスを上げるちおり「花原さん!」
アタックモーションに入る花原。
慌ててブロックに入る三畳高の前衛。
オジカ「花原を止めろ・・・!!」
この時あげた生原血織のトスは最高に美しかったという・・・
回想
芝生の上で並んで座るちおりと花原の二人。
花原「私はね、スポーツが嫌いなの。
大の大人がボールで遊んでて・・・恥ずかしくないのかしら・・・」
生徒会室
華白崎「あなたには誰もが認める絶対的な才能が一つある・・・それはその身長です。」
とあるチラシを前に出す。
華白崎「あなたは、その身長を活かしてこの大会に出場するべきだ・・・」
花原「高校バレー春のバトルロイヤル大会・・・あなた、この私に球技をやれっていうの・・・??
くだらない・・・なんで私が・・・」
体育館での最初の練習
花原「・・・私バレーに向いてない。」
海野「練習すればできるって・・・!」
ちおり「できるよ!花原さん天才だもん。」
・
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乾坤一擲のアタックを決める花原。
ブロックに入ったクマガイがパワーで負けて後ろに倒れる。
あまりの出来事に一瞬時が止まる会場。
騒然とする会場「すげええ!クマガイが吹っ飛んだ~~!!」
主審が笛を鳴らす。
花原が腕を上げる。
ちおり「やったー!」
白亜高部員「勝ったあああああ!!!」
主審「第二セットは白亜高校の勝利です!」
抱き合うちおりと花原。
華白崎「は・・・ははは・・・」
花原「さあ、帰ろう・・・!」
ちおり「うん!」
主審「い・・・いや・・・まだ第三セットがあるんですが・・・」
テンションが上がってポールによじ登っているちおり「え?おわりじゃないの?」
アライ「てめえら第一セットを落としたじゃねーか・・・!」
花原「キリがいいし、うちの勝ちでいいじゃん。」
アライ「よくねーよ・・・!」
その時、野外で爆発音が轟く。
アライ「!!なんだ!?」
合宿場全体が振動する。
メキメキという音。
さくら「よっしゃー!この混乱に乗じて第三セットスタート!主審!とっとと始めなさい!」
主審「ピ・・・ピー!」
華白崎「地震の最中で試合をするのは危険では・・・!」
怯える観客の野生動物たち。
花原「ちおり!サーブよ!」
ちおり「イエスサー!」
アライ「かかってこいやー!!」
地面に伏せる理央「いや・・・本当に始めるの!??」
サーブを打つちおり「えーい!!」
その瞬間、合宿場全体が大きく傾き、ちおりのオーバーハンドサーブが天井の梁に当たる。
ちおり「わーい!天井サーブだー!」
床が斜めに傾き、滑り落ちていく選手たち。
イノセの蹄では床にしがみつけず、ずるずる後退していく。
もはやレシーブどころじゃない。
オジカ「これは地震じゃない・・・!合宿場が動いている・・・!」
床に爪を立てて踏ん張り、サーブをレシーブするアライ「おらー!」
合宿場が横に移動しているので、慣性の法則で空中のボールが変な方向へ動いている。
アライ「クマガイ!アタックだ!!」
クマガイ「わ・・・わかりました!!」
クマガイがアタックを撃つと、合宿場の床が割れ、白亜高と三畳高のコートがネットを境に分断される。
クマガイ「やばい!体育館を壊しちゃった!!」
白亜高のコートの傾斜が一気について、ほとんど直角になる。
あわててネットにしがみつく白亜校の部員たち。
ちおり「くまちゃん、コートを壊すのは反則だよ。」
クマガイ「ごめん・・・!」
大此木「んなわけあるかい!!」
合宿場の半分がそのまま崖に落下していく。
ネットにしがみついてぶら下がる華白崎「ああ・・・」
ネットがぶちぶちとちぎれて、華白崎が落下してしまう。
「うわああああ!!」
その瞬間、華白崎の脚をつかんで落下を食い止める花原。
残りの片腕でポールをつかんでいる。
花原「がんばれカッシー!」
涙を流す華白崎「花原さん、私まだ死にたくない・・・!私にはまだ小さな兄弟が4人も・・・!!」
ちおりに怒鳴る花原「ちおり・・・サーブだ!」
ちおり「おっけー!」
両足でポールをつかんで、もう一度サーブを打つちおり。
さくら「ナイスサー!」
アライ「こいや~!」
理央「まだバレーをやっているわ・・・!」
角で海野と乙奈を必死に持ち上げているオジカ
「もういい分かった・・・!おれたちの降参だ・・・!!」
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巨大なブルドーザーが合宿場を押し、基礎を壊しながら崖へ進んでいく。
建設省役人「ふははは!馬鹿どもめ!
ニャンバダム建設を阻む、こざかしい野生動物どもがすべて小屋に集まっておるわ!
一網打尽にしろ!!」
ブルドーザーを操縦する如月建設「・・・いいのか?このまま落として!
中には人間もいるんだぞ!」
建設省役人「アクセル全開だ!
今朝の集中豪雨で全員流されたことにしろ!
我が政権に逆らうと、こうなるということを思い知らせてやる・・・!」
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窓から顔を出すシマダ「ああっ・・・!建設省の役人だ・・・!
圧力でらちがあかないから土地収用の強硬手段に出たんだ!!」
理央「このままじゃ、こっちのコートも落とされちゃう・・・!」
その時、合宿場の窓ガラスが割れて、銃弾のような剛速球がブルドーザーに飛んでいく。
バレーボールは正確に、コックピットの役人の顔面を打ち据える。
役人「ぎゃああああ!!」
気絶して操作盤に覆いかぶさる役人。
如月建設「馬鹿!前が見えないだろ!!」
暴走したブルドーザーは、進路を変えて合宿場をはなし、自らがけ下へ転落してしまう。
サーブフォームをしているさくら「・・・楽しいバレーボールに水を差すんじゃないよ。」
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めちゃくちゃに破壊されている校舎。
地面に崩れ落ちる理央「・・・校舎が・・・みんな・・・壊れちゃった・・・
お母さんとの思い出が・・・」
昭和40年の写真を拾う。
海野「有葉部長・・・」
華白崎「信じられない・・・日本政府がこんなことをするなんて・・・」
涙を流す理央「もともと三畳村でダム建設に賛成する人なんて誰もいなかった・・・
でも・・・水没予定地には補助金は出ないし・・・インフラの整備だってしてくれない・・・
そうやって村のコミュニティは崩壊したんです・・・
残ったのは、動物たちだけ・・・
わたしは・・・お母さんの三畳中をもう一度強豪校にしたかった・・・」
海野「・・・有葉さん・・・」
つよめ「・・・もともと50年前の入札ありきの計画だからね・・・
2000億円が転がり込むプロジェクトなら、野生動物くらい簡単に殺すわよ・・・」
さくら「・・・んで、撮れたの?」
ボイスレコーダーを取り出すつよめ「・・・あいつらのクソみたいな会話もね。
私を呼んだ理由ってこういうことね・・・」
・
無人駅
白亜高を見送る三畳農業高校。
理央「私たちの負けよ。楽しい試合をありがとう・・・」
握手をする海野「・・・みなさんはこれからどうするんですか??」
理央「なにも考えてないけど・・・また、みんなで校舎を作ろうかな。」
アライ「理央・・・お前ももう山を下りろよ。」
理央「・・・え?」
クマガイ「みんなで相談したんです。
ぼくらのために一生に一度の青春時代を無駄にすることはないって・・・」
理央「クマガイさん・・・」
オジカ「・・・これ以上はやめておけ・・・次は猟銃で撃たれるぞ・・・」
理央「でも・・・ダムができたらみんなの自然は・・・!」
アライ「勘違いしてねえか?
俺たちは人間様に住処をあつらえてもらわないと生きてけないほどやわじゃねえ・・・」
イノセ「・・・どこでだって生きてけるさ・・・生命は道を探し出す・・・」
微笑むシマダ「心配しないでください。」
理央「みんなとまたバレーができるかな・・・」
クマガイ「いつでも遊びに来てよ。」
海野「いこう、理央ちゃん・・・汽車が出るよ・・・」
涙をぬぐう理央「・・・うん・・・」
手を振る動物たちを残して、山を下りる人間たち。
ホームに残るアライとオジカ。
アライ「なあ・・・あのまま第三セットを戦っていたら・・・勝てたと思うか?」
微笑むオジカ「・・・ふん、当たり前だ・・・」
春高バレーバトルロイヤル大会
白亜校 対 三畳農業高校
相手チームの降参により、白亜高校の勝利。
三畳農業高校バレー部――廃部
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kitamitio
青春
合格するはずのなかった札幌の超難関高に入学してしまった野球少年の野田賢治は、野球部員たちの執拗な勧誘を逃れ陸上部に入部する。北海道の海沿いの田舎町で育った彼は仲間たちの優秀さに引け目を感じる生活を送っていたが、長年続けて来た野球との違いに戸惑いながらも陸上競技にのめりこんでいく。「自主自律」を校訓とする私服の学校に敢えて詰襟の学生服を着ていくことで自分自身の存在を主張しようとしていた野田賢治。それでも新しい仲間が広がっていく中で少しずつ変わっていくものがあった。そして、隠していた野田賢治自身の過去について少しずつ知らされていく……。

猿の内政官 ~天下統一のお助けのお助け~
橋本洋一
歴史・時代
この世が乱れ、国同士が戦う、戦国乱世。
記憶を失くした優しいだけの少年、雲之介(くものすけ)と元今川家の陪々臣(ばいばいしん)で浪人の木下藤吉郎が出会い、二人は尾張の大うつけ、織田信長の元へと足を運ぶ。織田家に仕官した雲之介はやがて内政の才を発揮し、二人の主君にとって無くてはならぬ存在へとなる。
これは、優しさを武器に二人の主君を天下人へと導いた少年の物語
※架空戦記です。史実で死ぬはずの人物が生存したり、歴史が早く進む可能性があります
フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件
遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。
一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた!
宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!?
※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。
M性に目覚めた若かりしころの思い出
kazu106
青春
わたし自身が生涯の性癖として持ち合わせるM性について、それをはじめて自覚した中学時代の体験になります。歳を重ねた者の、人生の回顧録のひとつとして、読んでいただけましたら幸いです。
一部、フィクションも交えながら、述べさせていただいてます。フィクション/ノンフィクションの境界は、読んでくださった方の想像におまかせいたします。


天使の隣
鉄紺忍者
大衆娯楽
人間の意思に反応する『フットギア』という特殊なシューズで走る新世代・駅伝SFストーリー!レース前、主人公・栗原楓は憧れの神宮寺エリカから突然声をかけられた。慌てふためく楓だったが、実は2人にはとある共通点があって……?
みなとみらいと八景島を結ぶ絶景のコースを、7人の女子大生ランナーが駆け抜ける!
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