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第二部~群雄割拠~
『青春アタック』脚本㉕銅頭鉄額
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イチゴ谷に降っていた雨はいつの間にか弱まっている。
保健室のカーテンを開ける大此木。
「嵐はおさまったみてえだな・・・具合はどうだ大将・・・」
ベッドから起き上がる海野「・・・うん・・・ずいぶんよくなったよ。ありがとう・・・
そういえば・・・試合の方はどうなったんだろう・・・」
大此木「合宿場がまだ賑やかだから、試合が続いているんじゃねーか?
・・・よし、様子を見に行ってやろう・・・」
海野「ありがとう・・・」
傘をさして合宿場に足を運ぶ大此木。
「そうは言ったが・・・もう終わってたりしねえだろうな・・・」
大此木に興奮した様子で駆け寄る病田「た・・・大変です!」
ちおりがサーブを打つ。
ちおり「にゃん!!」
アライがレシーブできない。
観客「うお!いいサーブだ!」
大此木がスコアボードを見る。
「16対13・・・?白亜高校が押してるのか・・・!たった5人で・・・!」
突進でレシーブをするイノセ。
オジカ「リオ打て!!」
理央のアタックをブロックする花原。
観客「ブロックが高い・・・!」
理央「たまげたわね・・・!!」
ちおり「ナイスブロック~!」
花原「見たか!大此木・・・!勝っててバビったか!?」
大此木「・・・バビった・・・」
花原「ブロックは任せなさい!!」
アライがバックアタックを決める。
それをちおりがレシーブする。
ブーちゃんが乙奈にトスを上げる。
大此木「乙奈がアタックだと!?」
理央「オジカくん!アタックはできないんじゃないの?」
オジカ「あいつはできない・・・!」
乙奈が卓球のような横打ちでスパイクを打つ。
オジカ「馬鹿な・・・!」
変なカーブがかかっており、クマガイが怯えて避ける。
クマガイ「怖い・・・!」
観客「サーブ同様、どこに跳ねるかわからない・・・!これは怖い!!」
さくら「元トップアイドルが運動ができないわけがないじゃない・・・
歌って踊ってんのよ・・・?」
山村「むう、名采配だ・・・!花原と乙奈を隣り合わせて前衛においたのは、必ずどちらかが攻撃を繰り出せるからか・・・」
サーブを打つちおり「おりゃー!」
綺麗な打線で相手コートに飛んでいくサーブ。
相手もパスを繋ぎ、理央がアタックをする。
しかし、やはり花原のブロックに阻まれる。
理央「なんですってー!」
観客「またブロックしたぞ!」
ネット越しのボールをひろうオジカ「甘いわ!」
観客「オジカのリバウンドプレイだ!!」
続いてアライがアタックを打つ「次は俺様だー!」
アライのアタックも跳ね返す花原。
オジカが突進する「どけい!俺が決める・・・!」
オジカの角アタックもブロックしてしまう花原。
オジカ「・・・馬鹿な・・・!!」
主審「ピー!」
騒然とする会場。
「うおおおお!角アタックもはねかえしたー!とんでもないブロッカーだ!!」
花原にとびつくちおり「かっこいー!!」
息を切らす花原「はあはあ・・・かっこいいでしょ・・・」
華白崎「花原さん!よくやった!」
花原「は・・・はい!ありがとうございます・・・!!」
華白崎(レシーブで太刀打ちできないあの角アタックを・・・ブロックしたのは大きい・・・!)
理央「あたしもアライくんもオジカくんも・・・みんな止められちゃったよ・・・!」
クマガイ「うわあああもう20点だ・・・!」
理央「オジカくん・・・なにか策はないの・・・?セットを奪われちゃうよ・・・!」
オジカ「くくく・・・安心しろ・・・策はある・・・
審判。タイムアウトだ!」
試合が中断される。
花原「なに?休めるの・・・?」
華白崎「30秒だけですが・・・」
選手たちにスポーツドリンクを配布する山村と病田。
さくら「よーしよくやったおめえら!あの世の海野も喜んでいるぜ!」
山村「そんな悲しい展開ではないぞ・・・」
扇子をあおぐ理央「・・・で、策って?」
オジカ「相手の弱点は花原だ・・・」
理央「いやいや・・・!その花原さんがノリに乗ってるから、追い込まれてるんじゃない!」
アライ「狂ったか、シカ!」
オジカ「・・・馬鹿どもが・・・冷静になれ・・・
あいつのブロックは隙だらけだ・・・我々は高さに騙されているんだ・・・
相手チームでブロックができるのは花原だけだ。
あとは身長が高くない。
つまり、やつがひとりでリードブロックをしているわけだ・・・驚異的な瞬発力でな。
・・・こちらにはアタックが打てるものがたくさんいる・・・なにも順番に戦いに挑まなくてもよいのだ」
アライ「・・・そうか・・・!昔の特撮の敵幹部みたいになってんのか・・・!」
――リードブロックとは、相手アタッカーの攻撃を予測してブロックを行うことである。
基本的には相手のトスコースを見るのだが、それだけにクイック攻撃の反応は難しくなる。
日ソ双璧時代のオリンピックでは、日本代表が「ひかり攻撃」というクイック攻撃でソ連代表を翻弄したことは、日本バレー界の伝説となっている・・・!
オジカ「クマガイ・・・花原のブロックを破れるか?」
クマガイ「・・・やってみます・・・」
アライ「とうとう秘密兵器の登場か。」
万石「くまはもともと夕方から活発になる動物・・・午前中の立ち上がりが遅いのも仕方がないな。」
タイムが終了する。
主審が啼く「ピー!」
オジカ「さあ行くぞ・・・!」
三畳高「おー!!」
さくら「勝負なんて勢い任せよ!このままねじふせろ!」
白亜高「おー!!!」
前衛ポジションにつく花原「さー!かかってきなさい!
ゴマフアザラシでもスマトラサイでもブロックしてやるから!」
オジカ「ローテーションでクマガイを前衛にするぞ・・・!
いくぞ、理央、アライ・・・!」
アライ「おうよ!」
理央「まかせて!」
アライがレシーブする「くそがー!」
オジカ「クマガイトスだ!」
クマガイがトスを上げる「プー!!」
ブロックに入る花原「さーかかってきなさい動物たち・・・!」
すると、理央とアライとオジカの3人全てがアタックモーションに入る。
肝を潰す花原「!!!げ~~~誰が打つの・・・!!??」
アライ「この俺だ~!」
アライにブロックの照準を合わせる花原「なんのー!」
アライ「・・・見事に引っかかったぜ・・・」
花原「・・・え?」
時間差攻撃でオジカが角アタックを決める。
スパイクが顔面に当たり吹っ飛んでいく花原「ぎゃあああああ!!」
華白崎「・・・時間差攻撃・・・!!」
オジカ「本当の戦いはここからだよ姫・・・」
花原が審判のトビに訴える。
花原「審判!あんな卑怯な攻撃ファウルだよ・・・!」
トビ「・・・い・・・いや・・・れっきとした戦術です・・・」
トビに掴みかかる花原「この野郎・・・お前とタカの違いは一体なんなんだよ・・・」
トビ「ぴぴぴぴ!!」
華白崎「花原さん、落ち着いて・・・!!」
乙奈「主審の怒りを買うのは得策じゃありませんわ・・・!」
クマガイが前衛に現れる。
花原「とうとう来たわね・・・くま。」
山村「前衛に有葉、オジカ、クマガイ・・・!三畳高が最も強いパターンだぞ・・・!」
サーブをするため、自分よりも大きいボールを運ぶシマダ「よいしょよいしょ・・・」
花原「あ~はっは!かわいいぞリスー!打ってこー♫」
シマダがサーブを打つ「えい!」
理央「油断してるわね・・・シマダさんは天井サーブの名手よ・・・!」
花原「なんだ、あのサーブ・・・!無駄に高い・・・!!」
華白崎「花原さん!オーバーでレシーブです・・・!」
花原「・・・え?」
オーバーハンドパスができず、顔面で天井サーブを受ける花原。
主審「ピー!」
理央「ナイスサーブ!シマダさん!」
シマダ「へへ・・・」
オジカ「忘れちゃならねえのは、花原は素人だってことだ・・・
シマダよ、どんどん花原を狙っていけ。やつはオーバーができないんだ・・・」
もう一度花原の方へ天井サーブが飛んでくる。
花原「くそーへなちょこサーブめ・・・!調子狂うなあ!」
また、オーバーで失敗し、顔でサーブを受ける。
花原「うぎゃあ」
オジカ「よくやったこれで一点差だ!」
アライ「見たか!」
花原「・・・はい。」
乙奈が花原に耳打ちする。
オジカ「同点に持ちこめ!」
天井サーブを打つシマダ。
花原「あわわわ!・・・ってちょっと待ってアンダー!」
オーバーではなくアンダーでレシーブする花原。
観客「賢い!」
乙奈が花原にトスを上げる。「花原さん・・・!」
アタックする花原「くらっとけ!」
ブロックで跳ね返すクマガイ「えーい!」
花原「・・・!くま・・・!」
リカバーする華白崎「乙奈さん・・・!」
今度は乙奈がアタックする。
乙奈のアタックも巨体を活かしてブロックしてしまうクマガイ。
乙奈「跳ね返されましたわ・・・!」
観客「うおおおお!まるでさっきの花原だ!!」
クマガイ「どうだ!」
花原「う・・・くそ~勝負よ!くま!!」
クマガイ「うけましょう!」
アタックフォームに入る花原「うらー!」
助走コースでかなりアウトをとっている。
乙奈が天井に届くようなトスを上げる。
華白崎「オープン攻撃・・・?!」
とんでもない打点の高さでアタックを打つ花原「この高さならどうだ!!」
ぎりぎりクマガイの爪が届く。
観客「とどいたぞ!!」
理央「こっちコートよ!リバウンドお願い!!」
リバウンドするオジカ。
オジカ「クマガイ撃て!!」
ブロックに入る花原「止めてやる!!」
叫ぶクマガイ「くまー!!」
叫ぶ花原「ひとー!!」
クマガイのアタックをブロックするが、驚異的な力でボールごと後方へ吹き飛ばされる花原。
地面にぶち当たり、回転しながらバウンドしていく花原の巨体。
花原「うわああああああ!!!」
観客「うおおおおお!ついにクマガイがアタックを打った!!なんつー威力だ!!」
コートの外で痙攣している花原。
大此木「・・・あいつだいじょぶか・・・?死んでねえか・・・??」
ちおり「体重72kgの花原さんをふきとばすとは・・・」
花原「そんなにないわよ!!
・・・て、いつつ・・・まだまだ・・・負けないわよ!」
さくら「けっこう根性あるじゃない・・・」
山村「うむ・・・まるで別人だ・・・」
花原「パワーなら私・・・わたしだってくまに大きさは負けてないんだ・・・!」
オジカ「そうかな?クマガイは体重が120kgもあるんだぜ?」
花原「なんですって・・・!?わたし10人分じゃない・・・!」
アライ「なんて見え透いた嘘なんだ・・・!!」
オジカのアタックを止めようとジャンプする花原。
オジカ「また引っかかったな!やはりこいつはクイック攻撃には対応できない・・・!」
クマガイがアタックを決める。
スコアが逆転している。
「白亜高20-三畳高21」
理央「あと4点!これで決まりよ!!」
山村「三畳高はとんでもないものを温存していたな・・・」
さくら「オリンピックでもくまは出てこないからね・・・さ~てどうすっかな・・・」
大此木「クマガイ、オジカ、有葉のフロントラインは最強だ・・・どうするね」
クマガイの前に花原が、オジカの前に華白崎が、理央の前に乙奈がつく。
大此木「マンツーマンブロックだと!!」
理央「時間差攻撃はこれで止められちゃうわね・・・」
オジカ「ふん、この俺の角アタックを広末涼子ごときが止められるかな・・・?」
角を振り回すオジカ。
華白崎「うわ・・・!けっこう角が怖い・・・!!」
華白崎がオジカのアタックをブロックしようとするが、腰が引けてしまい決められてしまう。
華白崎(はあはあ・・・角が怖くて積極的にブロックに行けなかった・・・!
花原さん・・・相当の勇気の持ち主だわ・・・)
花原「どんまい、カッシー・・・!」
大此木「やはり、花原以外に連中のブロックは不可能か・・・?」
・
雨上がりのイチゴ谷。
獣道をバイクを押しながら歩いている女性ライダー。
「もう試合決まっちゃったかなあ・・・
こんなとこバイクでくるんじゃなかった・・・雨には降られるし・・・」
バイクを三畳高の駐輪場に止める女性。
ヘルメットを脱ぐと、赤く染めたボブカットが風に揺れる。
スポーツ雑誌『月刊スポコン』の記者、病田通代女――
「まったく、さくらは一体どこでバレーをやらせてんのよ・・・」
カメラを構えて、合宿場の扉を開けるつよめ。
するとコートでは人間と野生動物がバレーで激戦を繰り広げている。
つよめ「つーか、さくらは何にバレーをやらせているのよ!!
しかも、せってるし・・・!」
つよめのとなりに現れる海野「本当だ、せってる・・・!」
つよめ「あなたは・・・?」
海野「白亜高校バレー部部長の海野です・・・」
つよめ「・・・部長さんですか・・・わたくし、こういうものです・・・」
名刺をわたすつよめ。
海野「病田って・・・」
つよめ「双子の姉がお世話になってます・・・」
海野「え~!!ぜんぜん似てないんですね・・・」
つよめ「姉は根暗でしょう?
いや~山桜が綺麗だって言うからツーリングがてら取材に来たんですが・・・いきなり嵐にあってびしょびしょですよ・・・で雨宿りしてたら、こんな時間に・・・」
海野「よく、バイクで来れましたね・・・」
つよめ「・・・で海野部長は補欠なんですか・・・?」
海野「・・・え?」
主審「ピー!サブ・スティチュエーション!」
白亜高部員「・・・あ!!」
コートに海野が入る。
華白崎「海野さん!」
花原「もう体は大丈夫なの・・・?」
海野「ええ・・・ごめんね・・・抜けちゃって・・・」
ちおり「わーい!海野さんだ!」
スコアボードを見る海野。
「21対23・・・勝負は決まってない・・・!勝てるよ!!」
一気に士気が上がる白亜高校。
保健室のカーテンを開ける大此木。
「嵐はおさまったみてえだな・・・具合はどうだ大将・・・」
ベッドから起き上がる海野「・・・うん・・・ずいぶんよくなったよ。ありがとう・・・
そういえば・・・試合の方はどうなったんだろう・・・」
大此木「合宿場がまだ賑やかだから、試合が続いているんじゃねーか?
・・・よし、様子を見に行ってやろう・・・」
海野「ありがとう・・・」
傘をさして合宿場に足を運ぶ大此木。
「そうは言ったが・・・もう終わってたりしねえだろうな・・・」
大此木に興奮した様子で駆け寄る病田「た・・・大変です!」
ちおりがサーブを打つ。
ちおり「にゃん!!」
アライがレシーブできない。
観客「うお!いいサーブだ!」
大此木がスコアボードを見る。
「16対13・・・?白亜高校が押してるのか・・・!たった5人で・・・!」
突進でレシーブをするイノセ。
オジカ「リオ打て!!」
理央のアタックをブロックする花原。
観客「ブロックが高い・・・!」
理央「たまげたわね・・・!!」
ちおり「ナイスブロック~!」
花原「見たか!大此木・・・!勝っててバビったか!?」
大此木「・・・バビった・・・」
花原「ブロックは任せなさい!!」
アライがバックアタックを決める。
それをちおりがレシーブする。
ブーちゃんが乙奈にトスを上げる。
大此木「乙奈がアタックだと!?」
理央「オジカくん!アタックはできないんじゃないの?」
オジカ「あいつはできない・・・!」
乙奈が卓球のような横打ちでスパイクを打つ。
オジカ「馬鹿な・・・!」
変なカーブがかかっており、クマガイが怯えて避ける。
クマガイ「怖い・・・!」
観客「サーブ同様、どこに跳ねるかわからない・・・!これは怖い!!」
さくら「元トップアイドルが運動ができないわけがないじゃない・・・
歌って踊ってんのよ・・・?」
山村「むう、名采配だ・・・!花原と乙奈を隣り合わせて前衛においたのは、必ずどちらかが攻撃を繰り出せるからか・・・」
サーブを打つちおり「おりゃー!」
綺麗な打線で相手コートに飛んでいくサーブ。
相手もパスを繋ぎ、理央がアタックをする。
しかし、やはり花原のブロックに阻まれる。
理央「なんですってー!」
観客「またブロックしたぞ!」
ネット越しのボールをひろうオジカ「甘いわ!」
観客「オジカのリバウンドプレイだ!!」
続いてアライがアタックを打つ「次は俺様だー!」
アライのアタックも跳ね返す花原。
オジカが突進する「どけい!俺が決める・・・!」
オジカの角アタックもブロックしてしまう花原。
オジカ「・・・馬鹿な・・・!!」
主審「ピー!」
騒然とする会場。
「うおおおお!角アタックもはねかえしたー!とんでもないブロッカーだ!!」
花原にとびつくちおり「かっこいー!!」
息を切らす花原「はあはあ・・・かっこいいでしょ・・・」
華白崎「花原さん!よくやった!」
花原「は・・・はい!ありがとうございます・・・!!」
華白崎(レシーブで太刀打ちできないあの角アタックを・・・ブロックしたのは大きい・・・!)
理央「あたしもアライくんもオジカくんも・・・みんな止められちゃったよ・・・!」
クマガイ「うわあああもう20点だ・・・!」
理央「オジカくん・・・なにか策はないの・・・?セットを奪われちゃうよ・・・!」
オジカ「くくく・・・安心しろ・・・策はある・・・
審判。タイムアウトだ!」
試合が中断される。
花原「なに?休めるの・・・?」
華白崎「30秒だけですが・・・」
選手たちにスポーツドリンクを配布する山村と病田。
さくら「よーしよくやったおめえら!あの世の海野も喜んでいるぜ!」
山村「そんな悲しい展開ではないぞ・・・」
扇子をあおぐ理央「・・・で、策って?」
オジカ「相手の弱点は花原だ・・・」
理央「いやいや・・・!その花原さんがノリに乗ってるから、追い込まれてるんじゃない!」
アライ「狂ったか、シカ!」
オジカ「・・・馬鹿どもが・・・冷静になれ・・・
あいつのブロックは隙だらけだ・・・我々は高さに騙されているんだ・・・
相手チームでブロックができるのは花原だけだ。
あとは身長が高くない。
つまり、やつがひとりでリードブロックをしているわけだ・・・驚異的な瞬発力でな。
・・・こちらにはアタックが打てるものがたくさんいる・・・なにも順番に戦いに挑まなくてもよいのだ」
アライ「・・・そうか・・・!昔の特撮の敵幹部みたいになってんのか・・・!」
――リードブロックとは、相手アタッカーの攻撃を予測してブロックを行うことである。
基本的には相手のトスコースを見るのだが、それだけにクイック攻撃の反応は難しくなる。
日ソ双璧時代のオリンピックでは、日本代表が「ひかり攻撃」というクイック攻撃でソ連代表を翻弄したことは、日本バレー界の伝説となっている・・・!
オジカ「クマガイ・・・花原のブロックを破れるか?」
クマガイ「・・・やってみます・・・」
アライ「とうとう秘密兵器の登場か。」
万石「くまはもともと夕方から活発になる動物・・・午前中の立ち上がりが遅いのも仕方がないな。」
タイムが終了する。
主審が啼く「ピー!」
オジカ「さあ行くぞ・・・!」
三畳高「おー!!」
さくら「勝負なんて勢い任せよ!このままねじふせろ!」
白亜高「おー!!!」
前衛ポジションにつく花原「さー!かかってきなさい!
ゴマフアザラシでもスマトラサイでもブロックしてやるから!」
オジカ「ローテーションでクマガイを前衛にするぞ・・・!
いくぞ、理央、アライ・・・!」
アライ「おうよ!」
理央「まかせて!」
アライがレシーブする「くそがー!」
オジカ「クマガイトスだ!」
クマガイがトスを上げる「プー!!」
ブロックに入る花原「さーかかってきなさい動物たち・・・!」
すると、理央とアライとオジカの3人全てがアタックモーションに入る。
肝を潰す花原「!!!げ~~~誰が打つの・・・!!??」
アライ「この俺だ~!」
アライにブロックの照準を合わせる花原「なんのー!」
アライ「・・・見事に引っかかったぜ・・・」
花原「・・・え?」
時間差攻撃でオジカが角アタックを決める。
スパイクが顔面に当たり吹っ飛んでいく花原「ぎゃあああああ!!」
華白崎「・・・時間差攻撃・・・!!」
オジカ「本当の戦いはここからだよ姫・・・」
花原が審判のトビに訴える。
花原「審判!あんな卑怯な攻撃ファウルだよ・・・!」
トビ「・・・い・・・いや・・・れっきとした戦術です・・・」
トビに掴みかかる花原「この野郎・・・お前とタカの違いは一体なんなんだよ・・・」
トビ「ぴぴぴぴ!!」
華白崎「花原さん、落ち着いて・・・!!」
乙奈「主審の怒りを買うのは得策じゃありませんわ・・・!」
クマガイが前衛に現れる。
花原「とうとう来たわね・・・くま。」
山村「前衛に有葉、オジカ、クマガイ・・・!三畳高が最も強いパターンだぞ・・・!」
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花原「あ~はっは!かわいいぞリスー!打ってこー♫」
シマダがサーブを打つ「えい!」
理央「油断してるわね・・・シマダさんは天井サーブの名手よ・・・!」
花原「なんだ、あのサーブ・・・!無駄に高い・・・!!」
華白崎「花原さん!オーバーでレシーブです・・・!」
花原「・・・え?」
オーバーハンドパスができず、顔面で天井サーブを受ける花原。
主審「ピー!」
理央「ナイスサーブ!シマダさん!」
シマダ「へへ・・・」
オジカ「忘れちゃならねえのは、花原は素人だってことだ・・・
シマダよ、どんどん花原を狙っていけ。やつはオーバーができないんだ・・・」
もう一度花原の方へ天井サーブが飛んでくる。
花原「くそーへなちょこサーブめ・・・!調子狂うなあ!」
また、オーバーで失敗し、顔でサーブを受ける。
花原「うぎゃあ」
オジカ「よくやったこれで一点差だ!」
アライ「見たか!」
花原「・・・はい。」
乙奈が花原に耳打ちする。
オジカ「同点に持ちこめ!」
天井サーブを打つシマダ。
花原「あわわわ!・・・ってちょっと待ってアンダー!」
オーバーではなくアンダーでレシーブする花原。
観客「賢い!」
乙奈が花原にトスを上げる。「花原さん・・・!」
アタックする花原「くらっとけ!」
ブロックで跳ね返すクマガイ「えーい!」
花原「・・・!くま・・・!」
リカバーする華白崎「乙奈さん・・・!」
今度は乙奈がアタックする。
乙奈のアタックも巨体を活かしてブロックしてしまうクマガイ。
乙奈「跳ね返されましたわ・・・!」
観客「うおおおお!まるでさっきの花原だ!!」
クマガイ「どうだ!」
花原「う・・・くそ~勝負よ!くま!!」
クマガイ「うけましょう!」
アタックフォームに入る花原「うらー!」
助走コースでかなりアウトをとっている。
乙奈が天井に届くようなトスを上げる。
華白崎「オープン攻撃・・・?!」
とんでもない打点の高さでアタックを打つ花原「この高さならどうだ!!」
ぎりぎりクマガイの爪が届く。
観客「とどいたぞ!!」
理央「こっちコートよ!リバウンドお願い!!」
リバウンドするオジカ。
オジカ「クマガイ撃て!!」
ブロックに入る花原「止めてやる!!」
叫ぶクマガイ「くまー!!」
叫ぶ花原「ひとー!!」
クマガイのアタックをブロックするが、驚異的な力でボールごと後方へ吹き飛ばされる花原。
地面にぶち当たり、回転しながらバウンドしていく花原の巨体。
花原「うわああああああ!!!」
観客「うおおおおお!ついにクマガイがアタックを打った!!なんつー威力だ!!」
コートの外で痙攣している花原。
大此木「・・・あいつだいじょぶか・・・?死んでねえか・・・??」
ちおり「体重72kgの花原さんをふきとばすとは・・・」
花原「そんなにないわよ!!
・・・て、いつつ・・・まだまだ・・・負けないわよ!」
さくら「けっこう根性あるじゃない・・・」
山村「うむ・・・まるで別人だ・・・」
花原「パワーなら私・・・わたしだってくまに大きさは負けてないんだ・・・!」
オジカ「そうかな?クマガイは体重が120kgもあるんだぜ?」
花原「なんですって・・・!?わたし10人分じゃない・・・!」
アライ「なんて見え透いた嘘なんだ・・・!!」
オジカのアタックを止めようとジャンプする花原。
オジカ「また引っかかったな!やはりこいつはクイック攻撃には対応できない・・・!」
クマガイがアタックを決める。
スコアが逆転している。
「白亜高20-三畳高21」
理央「あと4点!これで決まりよ!!」
山村「三畳高はとんでもないものを温存していたな・・・」
さくら「オリンピックでもくまは出てこないからね・・・さ~てどうすっかな・・・」
大此木「クマガイ、オジカ、有葉のフロントラインは最強だ・・・どうするね」
クマガイの前に花原が、オジカの前に華白崎が、理央の前に乙奈がつく。
大此木「マンツーマンブロックだと!!」
理央「時間差攻撃はこれで止められちゃうわね・・・」
オジカ「ふん、この俺の角アタックを広末涼子ごときが止められるかな・・・?」
角を振り回すオジカ。
華白崎「うわ・・・!けっこう角が怖い・・・!!」
華白崎がオジカのアタックをブロックしようとするが、腰が引けてしまい決められてしまう。
華白崎(はあはあ・・・角が怖くて積極的にブロックに行けなかった・・・!
花原さん・・・相当の勇気の持ち主だわ・・・)
花原「どんまい、カッシー・・・!」
大此木「やはり、花原以外に連中のブロックは不可能か・・・?」
・
雨上がりのイチゴ谷。
獣道をバイクを押しながら歩いている女性ライダー。
「もう試合決まっちゃったかなあ・・・
こんなとこバイクでくるんじゃなかった・・・雨には降られるし・・・」
バイクを三畳高の駐輪場に止める女性。
ヘルメットを脱ぐと、赤く染めたボブカットが風に揺れる。
スポーツ雑誌『月刊スポコン』の記者、病田通代女――
「まったく、さくらは一体どこでバレーをやらせてんのよ・・・」
カメラを構えて、合宿場の扉を開けるつよめ。
するとコートでは人間と野生動物がバレーで激戦を繰り広げている。
つよめ「つーか、さくらは何にバレーをやらせているのよ!!
しかも、せってるし・・・!」
つよめのとなりに現れる海野「本当だ、せってる・・・!」
つよめ「あなたは・・・?」
海野「白亜高校バレー部部長の海野です・・・」
つよめ「・・・部長さんですか・・・わたくし、こういうものです・・・」
名刺をわたすつよめ。
海野「病田って・・・」
つよめ「双子の姉がお世話になってます・・・」
海野「え~!!ぜんぜん似てないんですね・・・」
つよめ「姉は根暗でしょう?
いや~山桜が綺麗だって言うからツーリングがてら取材に来たんですが・・・いきなり嵐にあってびしょびしょですよ・・・で雨宿りしてたら、こんな時間に・・・」
海野「よく、バイクで来れましたね・・・」
つよめ「・・・で海野部長は補欠なんですか・・・?」
海野「・・・え?」
主審「ピー!サブ・スティチュエーション!」
白亜高部員「・・・あ!!」
コートに海野が入る。
華白崎「海野さん!」
花原「もう体は大丈夫なの・・・?」
海野「ええ・・・ごめんね・・・抜けちゃって・・・」
ちおり「わーい!海野さんだ!」
スコアボードを見る海野。
「21対23・・・勝負は決まってない・・・!勝てるよ!!」
一気に士気が上がる白亜高校。
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女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。
無敵のイエスマン
春海
青春
主人公の赤崎智也は、イエスマンを貫いて人間関係を完璧に築き上げ、他生徒の誰からも敵視されることなく高校生活を送っていた。敵がいない、敵無し、つまり無敵のイエスマンだ。赤崎は小学生の頃に、いじめられていた初恋の女の子をかばったことで、代わりに自分がいじめられ、二度とあんな目に遭いたくないと思い、無敵のイエスマンという人格を作り上げた。しかし、赤崎は自分がかばった女の子と再会し、彼女は赤崎の人格を変えようとする。そして、赤崎と彼女の勝負が始まる。赤崎が無敵のイエスマンを続けられるか、彼女が無敵のイエスマンである赤崎を変えられるか。これは、無敵のイエスマンの悲哀と恋と救いの物語。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/youth.png?id=ad9871afe441980cc37c)
サンスポット【完結】
中畑 道
青春
校内一静で暗い場所に部室を構える竹ヶ鼻商店街歴史文化研究部。入学以来詳しい理由を聞かされることなく下校時刻まで部室で過ごすことを義務付けられた唯一の部員入間川息吹は、日課の筋トレ後ただ静かに時間が過ぎるのを待つ生活を一年以上続けていた。
そんな誰も寄り付かない部室を訪れた女生徒北条志摩子。彼女との出会いが切っ掛けで入間川は気付かされる。
この部の意義、自分が居る理由、そして、何をすべきかを。
※この物語は、全四章で構成されています。
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