青春アタック~女子バレー三國志~

田代剛大

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第一部~危急存亡~

『青春アタック』脚本⑦秘中之秘

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体育館
花原「ちおり何やってんのよ・・・あいつがいないとトスが上がらないじゃない・・・」
海野「生原さんと乙奈さんはクラスの方が忙しいんだって」
山村「これではスパイクは打てないな・・・またの機会としよう・・・」
海野「いいよ、トスなら私があげるから。」
花原「山村くん、レシーブ。」
肩をすくめる山村「・・・いやはや、そうきたか。」



ライブハウス
練習生「・・・え?年内はすべて埋まっている・・・??」
ライブハウスから出てくる練習生
「こっちもダメ。何か月も前から予約するみたいよ・・・」
「どうしよう、先生に啖呵切ったのに、会場すら借りれないなんて私たちっていったい・・・」
練習生たちに駆けてくるちおり「幕張メッセ取れたよ!」
「ほんとう!?」
「ちおりちゃん、すごい!」
ちおり「同人誌と恐竜とスポーツカーすべてどかしたよ。」
「なんで、この子にそんな力が・・・」
ちおり「というわけで270万円払っといて!」
「・・・270円じゃなくて・・・?」
ちおり「270円でメッセが借りられるわけないじゃん、カラオケボックスじゃねえんだし」
練習生「ムリだって!そもそも100万円かき集めるためにライブやろうとしてるんだよ・・・」
ちおり「メッセはダメか~じゃあ日本武道館に電話してみよう!」
「もっと高いって!!」
ちおり「パンチラーズは予算はいくらあるの・・・?」
「4300円・・・」
ちおり「・・・草むらで踊ってれば・・・?」
「一度、駅前でやったことがあるんですけど、警察官の人に補導されちゃったんですよ・・・」
「スカート丈が卑猥だってね・・・」
ちおり「長ズボンはけば?」
「それは、ちょっと勘弁してください・・・」
ちおり「会場の他にも、機材とスタッフはどうするの?スポンサーは?」
「・・・・・・。」
ちおり「チケットノルマはあるの?」
「・・・・・・。」
ちおり「アイドルは歌って踊ってるだけだと思ってたの?
そういうのは習わなかったの・・・?」
心が折れる練習生「先生に頭下げて蕎麦を打つ・・・?」
「うん・・・」
ちおり「わたしは諦めないよ。しろったま子さんに会いたいし!」
「でも、まったく無名でお金もない私たちに一体なにが・・・」
ちおり「歌とダンスはうまいんだよね?」
「はい・・・!それだけは自信があります・・・!先生にもお墨付きをもらえたし・・・!」
ちおり「じゃあやっぱり攻めの姿勢でメッセに・・・」
「カラオケボックスでいいです・・・」
そこで何かをひらめくちおり「・・・あ、そうか。」
練習生「あの・・・なにかいいアイディアが・・・?」
ちおり「カラオケボックスに行こう。」

カラオケボックス
練習生「なんで私たちバイトの履歴書を書いているんだろう・・・」
ちおり「お金を払って会場を借りるんじゃなくて、お金をもらって会場を借りればいいんだよ!」
練習生「どういうこと・・・?」

カラオケボックスの部屋にコスチュームを着たパンチラーズがお客を接客する。
「生ビールピッチャーで~す」
客「うお、アイドルみたいな店員が来た!!」
練習生「実は、私たちアイドルなんです・・・!」
客「本当に!?テレビで見たことないけど・・・」
ちおり「彼女たちはローカルアイドルでして。」
酒が回っていて騙される客「確かにチバテレビで見たかもしれない・・・」
客「うん、確かに見たことある!じゃあ一曲歌ってくれる!?」
練習生「よろこんで!」
盛り上がる会場

部屋から出てくるパンチラーズ
ちおり「好評だったね!」
練習生「おひねりもらっちゃいました!」
ちおり「この調子で、すべての部屋を回ろう!」
「おー!」

部屋を荒らしていくパンチラーズとちおり
客「演歌行ける?」
「よろこんで!」
客「軍歌は?」
「一回音程を聞かせていただければ・・・!」



カラオケボックスに足を踏み入れる芸能関係者
部屋に案内する乙奈「さあ、こちらです・・・」
ムジカ・ムンダーナ(作曲家)「翼チャン、カラオケボックスで接待なんて面白いじゃないか」
スパル・タックス社長(芸能プロダクション社長)「まさか、こんな田舎のカラオケボックスで平成の歌姫の歌声が聞けるとは・・・」
イ・スンシン会長(キャスティング業界のフィクサー)「韓国来ねえか?向こうの芸能界はブルーオーシャンだぞ・・・日本の人気アイドルは韓国ではレジェンドだ」
受話器を持つ乙奈「ここの料理が結構美味しいんですよ・・・注文しますね・・・」

部屋に入ってくるパンチラーズ「烏龍茶、メキシカンコークとバドワイザー、軟骨揚げといちご豆腐お待たせしました~!」
乙奈「お待ちしておりましたわ、みなさん。」
パンチラーズ「・・・!先生!?」
メガネをなおすタックス「変わったコスチュームの店ですね・・・」
乙奈「ここの店員はお客のリクエストの曲を歌ってくれるんですよ。そうよね?」
パンチラーズ「は・・・はい!」
ちおり「このおっさんたちは?」
乙奈「私の親戚です。」
ムジカ「ははは!まあ、付き合いは長いな!!
この翼チャンの歌でも歌ってくれや!あれ、俺が作曲したんだ!」
パンチラーズ「・・・え?翼・・・??」
テーブルの下でムジカを蹴る乙奈「あらやだ、おじさん、酔っ払って・・・
このアフロは、ただの無職のサーファーですわ」
ムジカ「NOO!!!」
乙奈「でも、百地翼の“エアリエル”はあなたたちの十八番じゃない?」
パンチラーズ「はい!歌わさせていただきま~す!」



カラオケボックスを去る重鎮たち
ムジカ「翼チャン、とんだ食わせもんだぜ・・・オレたちにオーディションをさせやがった・・・」
タックス「どうですイ会長?私は悪くはないと思いましたが・・・お金がないなりに、ああいう企画をひねり出す発想力、実行力は、売り出す際のストーリーとしては面白いかと。」
リムジンに乗り込むイ会長「俺はどんな田舎娘でもスターにする・・・お前さんが売り出したいっていうなら、広告業界とは話を付けるさ・・・」



深夜
乙奈「みなさん、閉店までお疲れ様・・・!よくがんばりましたわ・・・」
パンチラーズ「はあはあ・・・クラスみんなで120曲くらいは歌ったかな・・・?」
おひねりを数えるちおり「しめて82万円になります。」
練習生「そんなに稼げたの!?」
ちおり「金回りの良さそうなお客さんの伝票に、冷静に考えると意味不明なサービス料とかチャージ料とか勝手に書き込んだら、払ってくれた。」
練習生「ぼったくりバーの手口では・・・」
「酔っ払っているから、払っちゃったのね・・・」
茶封筒を差し出す乙奈「これは、わたくしの親戚からのちょっと早いお年玉だそうですわ・・・」
ちおり「・・・すげ~!30万円入ってる!」
飛び上がって喜ぶ練習生たち「ノルマクリアだ~~!!」
飛び込んでくる店長「君たち!バイトの分際で随分勝手なことしてくれるじゃないか!
アイドルに会えるカラオケボックスとして大盛況だ!
・・・サイン書いてくれ!!」



生徒会室
華白崎の机の上に100万円の封筒を置く乙奈
「・・・これで年は越せそうかしら?」
華白崎「・・・けっこう・・・」



誰もいない音楽室
音楽室に入ってくる乙奈
一人だけ残っているちおり「学校は来年も通えそう?」
乙奈「ええ・・・すべてちおりちゃんのおかげですわ・・・ありがとう・・・
あの子達もプロのアイドルになることができそうです・・・」
ちおり「先生の教え方がうまかったんだよ!」
乙奈「・・・あの子達を見ていたら・・・小さい頃・・・
歌が上手だねって褒められた時のことを思い出しちゃいました・・・
あの頃が一番幸せだったかも・・・」
ちおり「へ~」
乙奈「いや・・・今かもしれませんわ・・・
先生なんてやりたくなかったけれど・・・
若い子が夢を叶える瞬間に立ち会えるのは、こんなに嬉しいことなのね。」
ちおり「・・・芸能界って本当にドロドロしてるの?」
幸せそうに微笑む乙奈「・・・うふふ・・・ないしょです。」
ちおり「・・・じゃあ、乙奈さんの歌を聞かせて!」
乙奈「そうですね・・・ささやかなお礼として・・・」
ちおり「わ~い!せっかくだからアイドル時代の格好して歌ってよ!」
音楽準備室に引っ込む乙奈「あらあら・・・参りましたわ・・・ちょっと待っててくださいね・・・」

現役時代のコスチュームとメイクで現れる乙奈
普段の清楚な格好と打って変わって、ツインテールで、萌え萌えのフリフリの格好。
乙奈「お待たせ!今日はそこの小さなお友達のために私の天使の歌声をプレゼントするね!」
乙奈だと気づかないちおり「・・・誰?」
乙奈「お、乙奈さんの大親友のスーパーアイドル、百地翼だよっ!」
ちおり「思い出した!タモリさんの横にいた人だ!!すげ~!!」
乙奈「それでは、一曲目は恋する乙女の切ないバラードロック、意地悪なアナタです、カウントダウン!」
ちおり「・・・・・・。」
乙奈「・・・・・・。」
ちおり「・・・?」
乙奈(小声で)「ラジカセの再生ボタンをお願いします・・・」
ちおり「おっけい!」
爆音でイントロが流れる。
乙奈「いっくよ~~!!」
全力で踊りながら歌唱する乙奈。普段の緩慢な動きとのギャップがすごい。
ちおり「かっこい~!!」

生徒会室
音楽室のほうから音が漏れている
残務作業をしている華白崎「・・・誰だ、こんな夜中に・・・」

学食の調理室
大量の年越しそばを打っているブーちゃんも音楽に気づく「・・・・・・。」

科学研究室
試験官だらけの机で寝ている花原「むにゃむにゃ・・・」



音楽室
乙奈「百地翼スペシャルライブ楽しんでくれたかな!」
サイン色紙を抱えて感涙しているちおり
「・・・か・・・感動しました・・・!乙奈さんによろしく伝えてください・・・!」
屈んでちおりに顔を近づける乙奈「・・・ちおりちゃん、お願いがあるの。
今夜私に会ったことはわたしたち3人だけの秘密にしてくれるかな?お姉さんと約束できる?」
ちおり「いいよ!」
乙奈「じゃあファンのみんな!まったね~!
引き続きザ・ベストテンをお楽しみください!
黒柳さん、久米さん、スタジオにお返ししま~す!」
伝説のアイドルを拍手で送りだすちおり「センキュー!」

ちおり「・・・そういや、乙奈さんどこ行ったんだろう・・・?」
制服の姿で戻ってくる乙奈「スペシャルライブはどうでしたか?ちおりちゃん。」
興奮するちおり「ねえねえ!なぜかさっきスーパーアイドルの百地翼ちゃんが来たんだよ!
乙奈さん、あんなバケモンの後に歌うのはなかなか切ないと思うよ!」
乙奈「あらまあそんなすごい方が・・・じゃあ私は勘弁してもらえるかしら・・・?」
ちおり「え~!」
息を切らしている乙奈「ちょ・・・ちょっと、もう声帯と筋肉痛が・・・」
ちおり「乙奈さんもいたらよかったのに!
プロのアイドルってすっごいキラキラしているんだよ!
こればっかりは実際に直接対峙したファンじゃないと判らないだろうな~」
腕を組んで得意げなちおりを見て、微笑む乙奈。
乙奈「そう言ってくださるなら・・・
あの子も最後のライブでちおりちゃんのために歌えてよかったと思います・・・」
ちおり「きっとまた帰ってくるよ!」
乙奈「そうですね・・・」



翌朝
白亜高校の校門が芸能記者でごった返す。
校門でおしくらまんじゅう状態の羽毛田校長。
校長「すいません・・・!学生の登校の妨げになるので控えてください・・・」
記者「伝説のアイドル百地翼ちゃんが登校しているっていう事実は本当ですか!?」
病田「そ・・・そんな名前の学生は名簿にはいません・・・あうう」
記者に突き飛ばされる病田。
京冨野「だいじょうぶか病田!!」
さくら「やめて!彼女の傷病休暇はもう0よ!」
追い返そうとする京冨野「てめえらの事務所覚えたぞ・・・!」
記者「ヤクザがカタギを恫喝していいんですか?学生にもやってるんじゃないんですか??」
そう言いながらマイクやカメラで教師を殴りつける記者たち。
京冨野「こいつら・・・半端な極道よりもたちが悪いぞ!
先生方!校門を閉鎖して籠城しましょう!」
校門にはさまれる羽毛田「あたたた!」
さくら「校長が犠牲に・・・!」



音楽準備室の窓から校門の様子を見下ろす乙奈
「いったい誰が・・・」
乙奈が手にしている週刊誌の原稿には、音楽室でちおりと翼が指切りをしている写真が載っている。
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