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第一部~危急存亡~

『青春アタック』脚本②尸位素餐

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5歳頃の花原。
可愛いワンピースを着て、お花畑で花を集める。
母親「なんて可愛い女の子なんでしょう・・・!首飾りでも作るのかな・・・?」
花をラミネートフィルムに挟んで、押し花にする。
母親「押し花ね、可愛い!」
それを標本台紙に貼り付け、TYPEというハンコを勢いよく押す花原。
母親「・・・・・・」

花原(子どもの頃の私は、ほかの子どもと興味を持つ対象がずれていたという・・・でも・・・私の母親は、私の行動を否定せず、私の興味をどこまでも応援してくれた・・・)



小学生頃の花原。すでに近眼でメガネをかけている。
「お母さん、小学校に入ったら、大好きな理科が教えてもらえるってワクワクしたけど・・・正直期待はずれだったわ・・・」
母親「あらあら・・・温度が高い磁石がどうしてくっつかないか・・・先生に教えてもらえなかったの?」
花原「理科の先生はその現象すら知らなかったわ・・・それに、どの授業も私には簡単すぎて・・・
教科書の内容を確認するための実験なんてナンセンス極まりないわよ。
もう大学に入学したいわ・・・」
母親「ま、まあ、勉強だけが学校じゃないから・・・お友達を作るのも大切なことだよ」
花原「お母さんだけでいいよ・・・」
母親「きっと、めぐなちゃんにも大切なお友達ができるわ・・・」
花原「IQが20離れると会話って成立しないらしいよ・・・」
母親「私は中卒なんだけどな・・・」



中学校に呼び出される母親
生徒指導室のドアを開ける母親「はあはあ・・・またうちの娘がご迷惑を・・・!」
先生「ああ、お母さん・・・」
花原「担任の教師よ・・・!いちいちお母さんを呼ぶんじゃない!」
母親「めぐなちゃん!先生になんて口の聞き方を!」
花原は髪を金髪に染めて、ギャルの格好をしている。
先生「お母さんに話してごらん・・・」
花原「私は悪くない・・・」
母親「で、この子の爆弾で吹き飛んだ子達は・・・」
先生「全治一ヶ月の重傷だそうです・・・」
花原「だいたい、あんたら教師があのバカどもを野放しにしたから、暴力で解決するという最悪の事態になったんでしょうが・・・」
母親「暴力で解決した人が言わない!」
先生「・・・もう我々には花原さんは手に負えません・・・」

小さい頃の花原を見てつぶやく友だち「可愛くない子・・・」
友だち「怖いよね・・・」
先生「本当に子どもらしさがない・・・」
花原(・・・中学卒業までに3回も逮捕歴がある私を受け入れてくれる高校などどこにもなかった・・・)



理科実験室
白衣を着る花原「どいつもこいつも・・・この天才の私を舐めやがって・・・
あのクソガキがついていけない内容の授業で精神的に追い込んでやる・・・!」

理科室に嫌々入る学生たち。
男子「は~花原の理科かよ~・・・終わったわ~・・・」
女子「ほんの50分間の地獄よ。耐えましょう・・・」
学生たちに近寄ってくるちおり「ここが理科室?」
女子「あら、可愛い女の子!もしかして新入生?」
ちおり「うん!ちおりだよ!」
女子「はじめまして!チョコレートあげるね」
ちおり「いたみいります」
男子「あのハゲ校長、生徒が足りないからって、とうとう小学生を入学させたか・・・」
机に鉛筆だけを置いて、椅子に座るちおり。わくわくしている。
ちおり「わたし、理科大好き!たのしみ~」
同じ班に座る男子「理科への興味が秒で蒸発するような、失望する授業内容だと思うぞ・・・」
女子「うちの理科の先生、専門書にも載っていないような難しい問題を解かせて、できないと私たちを馬鹿にするのよ・・・
私はこんな問題小学生に上がる前に解けた、とか知識をひけらかされるし・・・」
ちおり「すごいね!花原さんは自分でみんなに出題する問題を作っているんだ!」
男子「花原のやつは、人を見下すために教壇に立ってんだよ・・・オレなんか、みんなの前で期末試験の点数を大声で発表されて・・・ついたあだ名は永遠のゼロだぜ・・・殺してやりたいぜ・・・」
ちおり「みんなの成績を伝えることで、やる気を出そうとしているんだね!!
・・・総じて、いい先生だね!」
女子「絶対そんな人じゃないから・・・!」
男子「しっ・・・!やっこさんの登場だ・・・!」
扉が開いて、理科室に入ってくる白衣の花原。

花原「え~ご存知かと思いますが、このクラスに新しい検体・・・じゃなかった、お友達が増えました・・・」
立ち上がって、前へ出てくるちおり「生原ちおりです!16さい、住所不定無職、特技はゴミあさり、好きなイベントは炊き出しです!普段は雑草を・・・」
花原「はい、茶番はこの辺にして、今日の講義を始めましょう」
女子(そんな言い方しなくていいのに・・・)
男子(今日もムカつく野郎だぜ)
花原「前回の授業では家庭用掃除機から簡易的なドラフトチャンバーが作れることを学びましたが、今回はそのドラフトを使って、世界の医療に革命を起こそうと思います。」
男子(またはじまった・・・)
花原「そこのモブ男子A。世界で最も患者数の多い病気はなんですか?」
男子「え?ええと・・・ザイール型エボラ出血熱・・・?」
花原「お前は幼稚園からやり直しなさい。脳なしクラゲ野郎」
男子「くっ・・・」
女子(クラゲって脳がないんだ・・・)
手をあげるちおり「はいはいはい!」
ちおりを無視する花原「え~では、そこのモブ女子C。」
女子「え?なんだろう・・・恋患い?なんて・・・あはは、花原先生の好きな男子は誰ですか?」
花原「お前はセックスのことしか考えてないのか。本当にゴミみたいな学生しかいねえな・・・」
男子(今日こそ全員であいつをボコボコにしようぜ・・・)
女子(で・・・でも・・・あの人、不良を半殺しにして逮捕されてるらしいし・・・危険だよ・・・)
花原のスカートを引っ張るちおり「せんせー!せんせー!!」
花原「・・・え~・・・世界保健機関によれば・・・」
花原のスカートの中に入るちおり「せんせー!!!」
花原「さっきからうるさいな!はい、生原さん・・・」
ちおり「先生が一番美味しいと思う雑草はなんですか?あたしはヒメジョオンです!」
花原「てめえ、話聞いてたのかよ!」
ちおりを抱えて席に戻す女子「生原さん、こっち戻っておいで・・・殺されるから・・・」
花原「全世界で25億人も患者がいるのは虫歯です。この虫歯を世界から根絶できれば、ノーベル医学賞まちがいなし・・・」
男子(そんなことできたら歯医者はいらねえよ)
花原「虫歯の原因は、糖をエネルギー源にして酸を作る、ミュータンス菌などの細菌ですが、この度ドラフトを使い、虫歯菌を好んで捕食する新種のバクテリオファージを遺伝子操作で生み出しました。」
白衣から怪しいアンプルを取り出す花原
「このオーラルクリーナーアルファを口内に入れれば、口内のすべての虫歯菌はこのバクテリオファージに感染し、死滅。
世界中から歯医者を駆逐し、その利益をすべてぶんどることができます。
みなさんには、手順に沿ってこのバクテリオファージを量産もしくは、治験を行っていただきたい。
もちろん、この研究資金を寄付してくださっても結構です。」
プリントを配布する花原。
男子「毎回思うけど、これは授業なのか・・・?」
女子「あの~・・・そのバクテリオなんたらは、安全性は保証されているんでしょうか・・・?」
花原「・・・え?そ、その、ラットの実験では10匹中8匹が口内の常在菌がすべて死滅したことで原因不明の体調不良になりましたが、それがバクテリオファージによるものだという因果関係は見られなかったので、安心して治験を行ってください。」
アンプルに手を伸ばすちおり「すげ~!じゃあ私が飲んでみるね!」
女子「ぜったいにダメ!」
男子「安全なら、まず先生が最初に実験台になってくださいよ。」
花原「なんですって?私に万が一のことがあったら人類の損失でしょうが。
お前らモブ学生はいくらでも代わりがいるんだから、あんたたちが実験台になるべきよ!」
男子「とうとう本音が出たな!もう許さねえ!おい!みんなで、このクソ教師を取り押さえろ!」
花原「ちょっと何するのよ!!」
男子「お前の作ったウイルスを食わせてやるぜ!キチガイ野郎!」

すると、理科室に環境運動家が押し入ってくる。
運動家「カハラはいる?!」
花原「同志よ・・・!ちょっと助けて・・・」
運動家「あなたが開発した超光合成植物ハイパーC4プラントを世界各地に植えたわ!」
花原「これで地球温暖化はなくなるわね・・・2億円の報酬は小切手でいいわ・・・」
運動家「一時的には二酸化炭素が激減したけど、あなたあの植物が一年生だって隠してたわね・・?!全て枯れちゃったし、木材として利用ができないから、全て燃やされて地球の平均気温が大幅に上がったわよ!!この地球を滅ぼす魔女、神に代わってこのグリーンピースが火刑にしてくれるわ・・・!」
花原「ちょっと待ちなさいよ!遺伝子操作で光合成の能力を極限まで上げろって言ったのはそっちよ!
早く2億円払ってよ!こちとら借金して開発したんだから・・・!」
運動家「地獄に借金は持ち越されないから、安心して土に帰りなさい。」
花原「こうなったら、みんな道連れよ・・・!私の奥歯には自爆スイッチがある・・・!この理科室ごと全員木っ端微塵よ・・・!
男子「なんだと!!」
女子「みんな離れて・・・!」
ちおり「ごはんとかどうしているの・・・??」
男子「・・・・。てめえハッタリだな!」
逃げ出す花原
ちおり「毎週こんな授業なの?」
女子「う・・・うん・・・」
ちおり「たのしいね!!」
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