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第3幕 恐竜大陸へようこそ
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大陸横断鉄道を降りるフィリップ一同。
セントラルサウラシア駅は高台に建てられており、その周囲をぐるりと高いフェンスが囲んでいる。
フェンスに書かれたパネルを読むリズリー。
リズリー「恐竜の檻・・・?」
アニー「ここからワイオミングへは乗り換えです。駅馬車を呼びましょう。」
フィリップ「呼んできます!おまかせあれ~!」
・
駅で二人になるリズリ―とアニー。
リズリ―「ミス・ブラウン…」
アニー「あの・・・さっきからずっと言おうと思ってたんだけど・・・ミスじゃないんです。ミセスよ。
それにアニーでいいわ。」
リズリ―「え?結婚なさってたんですか!?」
アニー「ええ・・・」
笑うリズリー。
アニー「?・・・リズリ―ちゃん?」
リズリ―「いや、あいつ馬鹿だな~って思って。・・・アニーさんの旦那さんってどんな人なんですか?」
アニー「名家の当主だったけど、わたしのような貧しい人にも優しい人だった・・・主人はワイオミングに金鉱を持っていたんです。」
リズリ―「へ~カリフォルニア以外にもあるんですね。」
アニー「私はそれを継いだの。羽振りがいいのはそのため…」
リズリ―「それって・・・」
アニー「主人は恐竜に殺されたの。」
・
駅前のバザーをうろつくフィリップ「ええと駅馬車乗り場は・・・」
「安いよ安いよ」
「檻の中は危険だよ!装備をそろえていかないかい?」
フィリップに声をかける武器屋「ミスター!」
フィリップ「なあ駅馬車乗り場はどこだい?」
武器屋「それなら反対側だぜミスター!それより檻の中は凶暴な恐竜でいっぱいだぜ?なにか買ってかないかい?」
フィリップ「いやいい、俺にはこれ(ムチ)があるんでな・・・」
武器屋「え・・・それだけ・・・あ、ああ・・・そう・・・な、なんかいろいろごめんな・・・」
ほかの通行人に話しかける武器屋「ようミスター!このスラッグ防竜ガン(でかくてごついショットガンを持ち上げる)はすごいぜ!」
ハンターの怒鳴り声「てめえ騙しやがったな!」
バッカー「騙すなんてそんな・・・このライフル弾はブラキオサウルスも一撃で殺せる代物で」
ハンター「嘘つけばかやろう!ヒプシロフォドンにも効かなかったぞ!」
バッカー「そりゃあ旦那の腕が・・・」
ハンター「なんだとてめえ!!」
ドン・マーシュ「なんの騒ぎだ?」
ハンター「はっボ、ボス。こいつがまがい物ばかり売りつけていて・・・」
バッカー「まがい物だなんてそんな・・・」
マーシュ「ほう・・・」
バッカー「あんた名うての恐竜ハンターと見たぜ!これ買ってかないかい?
(メガホンを取り出す)あの恐竜の王様ティラノサウルスの鳴き声が出る画期的道具だ。これさえあればどんな恐竜も逃げ出すぜ?」
マーシュ「面白いな、じゃあお前はレックスの鳴き声を聞いたってわけか」
バッカー「そりゃあもちろん・・・」
仲間を引き連れその場を後にするマーシュ「うそだな。」
バッカー「買ってくれよ旦那~」
マーシュ「やつに出会った人間は必ず殺される。てめえで試すんだな。」
バッカー「・・・・・・くそ。」
フィリップ「おい、それ本当にどんな恐竜も逃げ出すのか?」
バッカー「え・・・?」
フィリップ「いくら?」
バッカー「ミスターわかってるねえ!ほ、他にもいろいろあるんだ見てってよ!って・・・兄貴!」
フィリップ「お前バッカーか?!生きてたかバカ野郎何やってんだよここで!」
バッカー「そっちこそ!いやね、オレ舞台の小道具とか特効やってたじゃない、でも最近ショウビズの世界も先が見えなくてさ、ジョン・カーネギーっているじゃん?」
フィリップ「あああの実業家か。」
バッカー「なんだか知らないけどあいつがブロードウェイの劇場をバシバシ買収してさ、ボクらみんなクビにされちゃったんだよ。
だから今は恐竜ハンター相手に特殊効果で培った技術を使って商売しているってわけ。」
フィリップ「なんだよ舞台の小道具かよ・・・」
バッカー「いやいやいや!恐竜にだってハッタリは通用するよ」
透明な銃弾をつまむフィリップ「なんだこのひときわ胡散臭い弾丸は・・・?」
バッカー「いくらオレッチでもそんなちゃちなもんは売らないな。さっきのやつらが落として行ったんだな」
「ふ~ん・・・」
「で、兄貴の方は?」
「あ、そうだ駅馬車みつけねえと!」
「ああ、待った待った!」
「?」
「安くしとくよ」
・
リズリー「あいつなにやってるんだろう・・・」
アニー「駅馬車が全て出払っているのかもしれませんわ」
二人に駆け寄ってくるフィリップ「駅馬車来ました!」
馬車を引く巨大な角竜(傷だらけのトリケラトプス)がのろのろ歩いてくる。
リズリー「なんか・・・ずいぶんくたびれた馬車ね・・・」
バッカー「わかってないねえお嬢ちゃん!こいつは最強の角竜リッチフィールドだ!」
リズリー「リッチ・・・」
フィリップ「お乗りくださいアニーさん!」
アニー「・・・・・・。」
フィリップ「アニーさん?」
何事もなかったように微笑むアニー「ありがとう。さあいきましょう。」
バッカー「ね、ね、これ(恋人)?」
「ま、まあな・・・!」
「相変わらずモテモテだね~」
リズリー「フィリップ!」
バッカー「あの子は?ファン?」
フィリップ「ん知らない子」
トリケラトプスにムチを入れる御者。荒野を進む馬車。
・
馬車の車内。
フィリップ「・・・どうした?暗い顔して。」
リズリ―「・・・ねえ。用心棒やめたら・・・?」
フィリップ「ここまで来て何言ってるんだ。俺はやるよ?やっちゃうよ??」
リズリ―「いい?その小さな脳味噌でもう一度考えてみて。街を壊滅させるような恐竜と本当にあなたが戦えるの?」
フィリップ「任せろ。俺は愛の力で戦うから。アニーさん。」
アニー「まあ頼もしい。」
リズリ―「ほんとステゴサウルスよりバカだ、こいつ・・・」
・
夜。
ぼんやりと外の景色を眺めているリズリ―。暗闇の中で光る目に気付く。
フクロウのような目と鉤爪を持った夜行性の小型の恐竜(トロオドン)が叩き潰されたゴーストタウンをあさっている。
恐竜は餌を指で器用につかみ、何かを食べている。
違和感を感じ暗闇に目をこらすリズリ―。
恐竜が咥えていたのは人間の手だった。
身震いするリズリー。
男が木の枝に突き刺さっている。
「タスケテ・・・タスケテ・・・」
小声のアニー「助けようと思ってはいけません。彼はもう死んでいます。」
リズリー「でも声が・・・」
アニー「あれは声帯模写が得意なエラフロサウルスのはやにえです。ああやって助けようと近づいた人を襲うんです。」
茂みの中で恐竜が「タスケテ」と声を出している。
リズリ―「とんでもないところにきてしまった・・・」
・
夜明け
ステゴサウルスと戦うアロサウルスの群れ。
それを双眼鏡で眺めるコープ「アロサウルスが強敵のステゴサウルスを狙うとは・・・エサ不足は深刻か・・・」
馬の足音に気づき逃げ出すアロサウルス。
馬にまたがった男たちが銃を撃ちながら恐竜を追いかける。
「イーハー!あのステノプス、俺がいただく!」
「うるせえ!俺の獲物に手を出すんじゃねえ!」
「たわけが!早い者勝ちじゃ~!!」
コープ「あいつら、こんなとこまで・・・」
ハンター「しっぽに気をつけろ!」
しっぽで殴られるハンター達「ぎゃあああ!」
「くそ、生け捕りは諦めろ!撃ち殺せ!」
マーシュ「待て・・・」
「お頭・・・」
「新兵器を試してみようじゃないか・・・」
バレットに透明の弾丸を詰めるマーシュ。
不思議な弾丸を撃つマーシュ。消えるステゴサウルス。
コープ「あれは・・・」
・
アニー「だいぶ来ましたね。」
リズリ―「あの~・・・ま、まだアニーさんの街にはつかないんですか?」
フィリップ「これはモービルじゃないんだ、無茶言うなよ。」
アニー「あと二、三時間だと思いますよ。もうしばらく辛抱してください。」
リズリ―「で、でもここって無法地帯ですよね。昨日のこともあるし、もう少し急いだ方がいいんじゃ・・・」
フィリップ「びびってんじゃねえよ、まったく・・・」
その直後地響きと轟音が轟く。馬(=角竜)が驚き馬車のスピードが上がる。
フィリップ「おいおい、はええよ、こいつのリクエストはいいから!」
窓の外を見つめ続けるアニー「いや・・・違うと思いますよ・・・周りを団体さんに囲まれてますから。」
暴走する馬車の周りには獰猛な大型肉食恐竜の群れが猛スピードで並走している。
フィリップ「なんじゃありゃああああ!!」
アニー「地獄谷一帯を支配する肉食竜アロサウルスです。」
リズリー「御者がいないよ・・・!」
アニー「フィリップ彼らを追い払いましょう!私は馬車を制御します!」
リズリ―「外に出るのは危険ですよ!」
アニー「しかしこのままここにいる方がもっと危険です!」
アロサウルスが馬車の側面に頭をぶつける。大きく揺れる車内。
アニー「時間がありません!フィリップは援護射撃をお願いします!!」
フィリップ「よっしゃあ!俺の出番だぜ~!」
ライフルを構えるが弾が出ない
「あれ?なんだこれ不良品じゃねえ?」
リズリ―「ええええ!この前ライフル撃ったんでしょフィリップ!あいつらの耳元でズドンとやれば逃げてくわよ!」
フィリップ「このRX3型はオレ使ったことがねえんだよ」
リズリー「なに言い訳してんだ!このバカ横のレバーを押すんだよ!」
その瞬間馬車の側面がぶち壊されアロサウルスの顔が突っ込んでくる。
びびるフィリップ「ぎょえええええ!」
リズリ―「ああ、もう!見てられない!!」
リズリ―はフィリップのライフルを奪おうとする。
フィリップ「やめろ危ないから!銃は危ないから!!」
ライフルをとり合う二人。ライフルは暴発しアロサウルスの肝をつぶす。銃声に驚いた一頭のアロサウルスは速度を落とし、後方へ消える。
リズリ―「ほら!撃てば逃げてくから!」
フィリップ「ようしここは俺に任せい!ヒ~ハ~!!」
ライフルを撃ちまくるフィリップ。
「ばきゅ~んばきゅ~ん!」
「ダメだ全然当たってないよ!」
「うるさいなお前は!当たってるよ!当たってるけど効かないんだよ!」
「じゃあ変わらないじゃない!」
「お前はいつも・・・・」
アニーは外に出て御者の乗るステップに向かう。暴走する馬車の先は崖だった。
アニー「崖・・・!」
手綱を握りなんとか暴走を止めようと試みる。
馬車から人間が出てきたのに気づいたアロサウルスがアニーに牙をむく。
リズリ―「アニーさん!後ろ!」
アニー「・・・・・・!」
パンという銃声。アニーに襲い掛かったアロサウルスの鼻づらから血が出てぶっ倒れる。後方のアロサウルスは急に倒れた仲間にけつまづいて転んでいく。
リズリ―「・・・?フィリップ!?」
ライフルを適当に撃つフィリップ「ヒ~ハ~!!」
リズリ―「すごい・・・めちゃくちゃビギナーズラックだけど!!」
アニー「それより馬を止めないと・・・!」
リズリ―「アニーさんもっと手綱を引いて!」
アニー「駄目です!ちっとも言う事を聞いてくれない・・・!」
フィリップ「恐竜ハンターフィリップに任せとけ~い!!」
アロサウルスを追い払ったことで調子に乗ったフィリップが馬車から軽やかに飛び出てトリケラトプスにまたがり脇腹を思い切り蹴りつけて手綱を引く。
フィリップ「ヒ~ハ~!!!」
馬車の方向が変わり崖っぷちに沿って疾走する。
勢いあまって崖から落ちるアロサウルス。
アニー「すごい・・・!」
リズリ―「さすがサーカス団!」
崖ギリギリを走るトリケラトプスの馬車と猛追するアロサウルスたち。
高台にユタラプトルに乗ったコープが援護射撃をしている。
リズリー「あ、味方ですよ!」
コープ「進路をまっすぐ取れ!連中とまともに戦っても勝ち目はないぞ!」
アニー「ラム!」
リズリー「知り合い?」
再接近するアロサウルス。
フィリップ「こいつらなんで馬車ばっか狙うんだよ!」
アニー「人間を襲う方が手っ取り早いからです。」
地面が振動する。
前方にアパトサウルスの群れが見える。アパトサウルスはムチのような長い尻尾をこちらに向けてくる。
「なんかデカイのがいる~~!!」
アパトサウルスの群れのなかに突っ込む馬車とアロサウルス。
足を持ち上げ踏みつぶそうとする。
ムチのようなしっぽが飛んでくる
アニー「ふせて!」
しっぽが馬車をかすめ後ろのアロサウルスに当たり吹っ飛ぶ。
馬車の前方にオーテリーブのゲートが見えてくる。
リズリー「あれは!?」
「街だ・・・!」
鐘が鳴るオーテリーブ
村人「ゲートを開けろ!」
アニー「もう少しです!」
リズリー「なんかばてて失速してない!?」
フィリップ「頑張れトリケラザウルス!」
ゲート内に滑り込む馬車。
「ゲート閉鎖!」
すぐに閉まるゲート。
ゲートにぶつかるアロサウルス。ゲートの向こうで唸り声を上げ引きかえしていく。
「はあはあ・・・」
「助かった・・・?」
アニー「さすがですわ・・・」
フィリップ「いやあ大したことはないっすよ」
アニー「ええ、あれはまだ中型の方です。もっと恐ろしいものがいる」
フィリップ「え・・・?マジかい」
ユタラプトルから降りるコープ「恐竜大陸サウラシアへようこそ」
セントラルサウラシア駅は高台に建てられており、その周囲をぐるりと高いフェンスが囲んでいる。
フェンスに書かれたパネルを読むリズリー。
リズリー「恐竜の檻・・・?」
アニー「ここからワイオミングへは乗り換えです。駅馬車を呼びましょう。」
フィリップ「呼んできます!おまかせあれ~!」
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駅で二人になるリズリ―とアニー。
リズリ―「ミス・ブラウン…」
アニー「あの・・・さっきからずっと言おうと思ってたんだけど・・・ミスじゃないんです。ミセスよ。
それにアニーでいいわ。」
リズリ―「え?結婚なさってたんですか!?」
アニー「ええ・・・」
笑うリズリー。
アニー「?・・・リズリ―ちゃん?」
リズリ―「いや、あいつ馬鹿だな~って思って。・・・アニーさんの旦那さんってどんな人なんですか?」
アニー「名家の当主だったけど、わたしのような貧しい人にも優しい人だった・・・主人はワイオミングに金鉱を持っていたんです。」
リズリ―「へ~カリフォルニア以外にもあるんですね。」
アニー「私はそれを継いだの。羽振りがいいのはそのため…」
リズリ―「それって・・・」
アニー「主人は恐竜に殺されたの。」
・
駅前のバザーをうろつくフィリップ「ええと駅馬車乗り場は・・・」
「安いよ安いよ」
「檻の中は危険だよ!装備をそろえていかないかい?」
フィリップに声をかける武器屋「ミスター!」
フィリップ「なあ駅馬車乗り場はどこだい?」
武器屋「それなら反対側だぜミスター!それより檻の中は凶暴な恐竜でいっぱいだぜ?なにか買ってかないかい?」
フィリップ「いやいい、俺にはこれ(ムチ)があるんでな・・・」
武器屋「え・・・それだけ・・・あ、ああ・・・そう・・・な、なんかいろいろごめんな・・・」
ほかの通行人に話しかける武器屋「ようミスター!このスラッグ防竜ガン(でかくてごついショットガンを持ち上げる)はすごいぜ!」
ハンターの怒鳴り声「てめえ騙しやがったな!」
バッカー「騙すなんてそんな・・・このライフル弾はブラキオサウルスも一撃で殺せる代物で」
ハンター「嘘つけばかやろう!ヒプシロフォドンにも効かなかったぞ!」
バッカー「そりゃあ旦那の腕が・・・」
ハンター「なんだとてめえ!!」
ドン・マーシュ「なんの騒ぎだ?」
ハンター「はっボ、ボス。こいつがまがい物ばかり売りつけていて・・・」
バッカー「まがい物だなんてそんな・・・」
マーシュ「ほう・・・」
バッカー「あんた名うての恐竜ハンターと見たぜ!これ買ってかないかい?
(メガホンを取り出す)あの恐竜の王様ティラノサウルスの鳴き声が出る画期的道具だ。これさえあればどんな恐竜も逃げ出すぜ?」
マーシュ「面白いな、じゃあお前はレックスの鳴き声を聞いたってわけか」
バッカー「そりゃあもちろん・・・」
仲間を引き連れその場を後にするマーシュ「うそだな。」
バッカー「買ってくれよ旦那~」
マーシュ「やつに出会った人間は必ず殺される。てめえで試すんだな。」
バッカー「・・・・・・くそ。」
フィリップ「おい、それ本当にどんな恐竜も逃げ出すのか?」
バッカー「え・・・?」
フィリップ「いくら?」
バッカー「ミスターわかってるねえ!ほ、他にもいろいろあるんだ見てってよ!って・・・兄貴!」
フィリップ「お前バッカーか?!生きてたかバカ野郎何やってんだよここで!」
バッカー「そっちこそ!いやね、オレ舞台の小道具とか特効やってたじゃない、でも最近ショウビズの世界も先が見えなくてさ、ジョン・カーネギーっているじゃん?」
フィリップ「あああの実業家か。」
バッカー「なんだか知らないけどあいつがブロードウェイの劇場をバシバシ買収してさ、ボクらみんなクビにされちゃったんだよ。
だから今は恐竜ハンター相手に特殊効果で培った技術を使って商売しているってわけ。」
フィリップ「なんだよ舞台の小道具かよ・・・」
バッカー「いやいやいや!恐竜にだってハッタリは通用するよ」
透明な銃弾をつまむフィリップ「なんだこのひときわ胡散臭い弾丸は・・・?」
バッカー「いくらオレッチでもそんなちゃちなもんは売らないな。さっきのやつらが落として行ったんだな」
「ふ~ん・・・」
「で、兄貴の方は?」
「あ、そうだ駅馬車みつけねえと!」
「ああ、待った待った!」
「?」
「安くしとくよ」
・
リズリー「あいつなにやってるんだろう・・・」
アニー「駅馬車が全て出払っているのかもしれませんわ」
二人に駆け寄ってくるフィリップ「駅馬車来ました!」
馬車を引く巨大な角竜(傷だらけのトリケラトプス)がのろのろ歩いてくる。
リズリー「なんか・・・ずいぶんくたびれた馬車ね・・・」
バッカー「わかってないねえお嬢ちゃん!こいつは最強の角竜リッチフィールドだ!」
リズリー「リッチ・・・」
フィリップ「お乗りくださいアニーさん!」
アニー「・・・・・・。」
フィリップ「アニーさん?」
何事もなかったように微笑むアニー「ありがとう。さあいきましょう。」
バッカー「ね、ね、これ(恋人)?」
「ま、まあな・・・!」
「相変わらずモテモテだね~」
リズリー「フィリップ!」
バッカー「あの子は?ファン?」
フィリップ「ん知らない子」
トリケラトプスにムチを入れる御者。荒野を進む馬車。
・
馬車の車内。
フィリップ「・・・どうした?暗い顔して。」
リズリ―「・・・ねえ。用心棒やめたら・・・?」
フィリップ「ここまで来て何言ってるんだ。俺はやるよ?やっちゃうよ??」
リズリ―「いい?その小さな脳味噌でもう一度考えてみて。街を壊滅させるような恐竜と本当にあなたが戦えるの?」
フィリップ「任せろ。俺は愛の力で戦うから。アニーさん。」
アニー「まあ頼もしい。」
リズリ―「ほんとステゴサウルスよりバカだ、こいつ・・・」
・
夜。
ぼんやりと外の景色を眺めているリズリ―。暗闇の中で光る目に気付く。
フクロウのような目と鉤爪を持った夜行性の小型の恐竜(トロオドン)が叩き潰されたゴーストタウンをあさっている。
恐竜は餌を指で器用につかみ、何かを食べている。
違和感を感じ暗闇に目をこらすリズリ―。
恐竜が咥えていたのは人間の手だった。
身震いするリズリー。
男が木の枝に突き刺さっている。
「タスケテ・・・タスケテ・・・」
小声のアニー「助けようと思ってはいけません。彼はもう死んでいます。」
リズリー「でも声が・・・」
アニー「あれは声帯模写が得意なエラフロサウルスのはやにえです。ああやって助けようと近づいた人を襲うんです。」
茂みの中で恐竜が「タスケテ」と声を出している。
リズリ―「とんでもないところにきてしまった・・・」
・
夜明け
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それを双眼鏡で眺めるコープ「アロサウルスが強敵のステゴサウルスを狙うとは・・・エサ不足は深刻か・・・」
馬の足音に気づき逃げ出すアロサウルス。
馬にまたがった男たちが銃を撃ちながら恐竜を追いかける。
「イーハー!あのステノプス、俺がいただく!」
「うるせえ!俺の獲物に手を出すんじゃねえ!」
「たわけが!早い者勝ちじゃ~!!」
コープ「あいつら、こんなとこまで・・・」
ハンター「しっぽに気をつけろ!」
しっぽで殴られるハンター達「ぎゃあああ!」
「くそ、生け捕りは諦めろ!撃ち殺せ!」
マーシュ「待て・・・」
「お頭・・・」
「新兵器を試してみようじゃないか・・・」
バレットに透明の弾丸を詰めるマーシュ。
不思議な弾丸を撃つマーシュ。消えるステゴサウルス。
コープ「あれは・・・」
・
アニー「だいぶ来ましたね。」
リズリ―「あの~・・・ま、まだアニーさんの街にはつかないんですか?」
フィリップ「これはモービルじゃないんだ、無茶言うなよ。」
アニー「あと二、三時間だと思いますよ。もうしばらく辛抱してください。」
リズリ―「で、でもここって無法地帯ですよね。昨日のこともあるし、もう少し急いだ方がいいんじゃ・・・」
フィリップ「びびってんじゃねえよ、まったく・・・」
その直後地響きと轟音が轟く。馬(=角竜)が驚き馬車のスピードが上がる。
フィリップ「おいおい、はええよ、こいつのリクエストはいいから!」
窓の外を見つめ続けるアニー「いや・・・違うと思いますよ・・・周りを団体さんに囲まれてますから。」
暴走する馬車の周りには獰猛な大型肉食恐竜の群れが猛スピードで並走している。
フィリップ「なんじゃありゃああああ!!」
アニー「地獄谷一帯を支配する肉食竜アロサウルスです。」
リズリー「御者がいないよ・・・!」
アニー「フィリップ彼らを追い払いましょう!私は馬車を制御します!」
リズリ―「外に出るのは危険ですよ!」
アニー「しかしこのままここにいる方がもっと危険です!」
アロサウルスが馬車の側面に頭をぶつける。大きく揺れる車内。
アニー「時間がありません!フィリップは援護射撃をお願いします!!」
フィリップ「よっしゃあ!俺の出番だぜ~!」
ライフルを構えるが弾が出ない
「あれ?なんだこれ不良品じゃねえ?」
リズリ―「ええええ!この前ライフル撃ったんでしょフィリップ!あいつらの耳元でズドンとやれば逃げてくわよ!」
フィリップ「このRX3型はオレ使ったことがねえんだよ」
リズリー「なに言い訳してんだ!このバカ横のレバーを押すんだよ!」
その瞬間馬車の側面がぶち壊されアロサウルスの顔が突っ込んでくる。
びびるフィリップ「ぎょえええええ!」
リズリ―「ああ、もう!見てられない!!」
リズリ―はフィリップのライフルを奪おうとする。
フィリップ「やめろ危ないから!銃は危ないから!!」
ライフルをとり合う二人。ライフルは暴発しアロサウルスの肝をつぶす。銃声に驚いた一頭のアロサウルスは速度を落とし、後方へ消える。
リズリ―「ほら!撃てば逃げてくから!」
フィリップ「ようしここは俺に任せい!ヒ~ハ~!!」
ライフルを撃ちまくるフィリップ。
「ばきゅ~んばきゅ~ん!」
「ダメだ全然当たってないよ!」
「うるさいなお前は!当たってるよ!当たってるけど効かないんだよ!」
「じゃあ変わらないじゃない!」
「お前はいつも・・・・」
アニーは外に出て御者の乗るステップに向かう。暴走する馬車の先は崖だった。
アニー「崖・・・!」
手綱を握りなんとか暴走を止めようと試みる。
馬車から人間が出てきたのに気づいたアロサウルスがアニーに牙をむく。
リズリ―「アニーさん!後ろ!」
アニー「・・・・・・!」
パンという銃声。アニーに襲い掛かったアロサウルスの鼻づらから血が出てぶっ倒れる。後方のアロサウルスは急に倒れた仲間にけつまづいて転んでいく。
リズリ―「・・・?フィリップ!?」
ライフルを適当に撃つフィリップ「ヒ~ハ~!!」
リズリ―「すごい・・・めちゃくちゃビギナーズラックだけど!!」
アニー「それより馬を止めないと・・・!」
リズリ―「アニーさんもっと手綱を引いて!」
アニー「駄目です!ちっとも言う事を聞いてくれない・・・!」
フィリップ「恐竜ハンターフィリップに任せとけ~い!!」
アロサウルスを追い払ったことで調子に乗ったフィリップが馬車から軽やかに飛び出てトリケラトプスにまたがり脇腹を思い切り蹴りつけて手綱を引く。
フィリップ「ヒ~ハ~!!!」
馬車の方向が変わり崖っぷちに沿って疾走する。
勢いあまって崖から落ちるアロサウルス。
アニー「すごい・・・!」
リズリ―「さすがサーカス団!」
崖ギリギリを走るトリケラトプスの馬車と猛追するアロサウルスたち。
高台にユタラプトルに乗ったコープが援護射撃をしている。
リズリー「あ、味方ですよ!」
コープ「進路をまっすぐ取れ!連中とまともに戦っても勝ち目はないぞ!」
アニー「ラム!」
リズリー「知り合い?」
再接近するアロサウルス。
フィリップ「こいつらなんで馬車ばっか狙うんだよ!」
アニー「人間を襲う方が手っ取り早いからです。」
地面が振動する。
前方にアパトサウルスの群れが見える。アパトサウルスはムチのような長い尻尾をこちらに向けてくる。
「なんかデカイのがいる~~!!」
アパトサウルスの群れのなかに突っ込む馬車とアロサウルス。
足を持ち上げ踏みつぶそうとする。
ムチのようなしっぽが飛んでくる
アニー「ふせて!」
しっぽが馬車をかすめ後ろのアロサウルスに当たり吹っ飛ぶ。
馬車の前方にオーテリーブのゲートが見えてくる。
リズリー「あれは!?」
「街だ・・・!」
鐘が鳴るオーテリーブ
村人「ゲートを開けろ!」
アニー「もう少しです!」
リズリー「なんかばてて失速してない!?」
フィリップ「頑張れトリケラザウルス!」
ゲート内に滑り込む馬車。
「ゲート閉鎖!」
すぐに閉まるゲート。
ゲートにぶつかるアロサウルス。ゲートの向こうで唸り声を上げ引きかえしていく。
「はあはあ・・・」
「助かった・・・?」
アニー「さすがですわ・・・」
フィリップ「いやあ大したことはないっすよ」
アニー「ええ、あれはまだ中型の方です。もっと恐ろしいものがいる」
フィリップ「え・・・?マジかい」
ユタラプトルから降りるコープ「恐竜大陸サウラシアへようこそ」
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2023.01.13
修正加筆のため一括非公開
2023.04.20
修正加筆 完成
2023.04.23
推敲完成 再公開
2023.08.09
「小説家になろう」にも投稿開始。
蘭癖高家
八島唯
歴史・時代
一八世紀末、日本では浅間山が大噴火をおこし天明の大飢饉が発生する。当時の権力者田沼意次は一〇代将軍家治の急死とともに失脚し、その後松平定信が老中首座に就任する。
遠く離れたフランスでは革命の意気が揚がる。ロシアは積極的に蝦夷地への進出を進めており、遠くない未来ヨーロッパの船が日本にやってくることが予想された。
時ここに至り、老中松平定信は消極的であるとはいえ、外国への備えを画策する。
大権現家康公の秘中の秘、後に『蘭癖高家』と呼ばれる旗本を登用することを――
※挿絵はAI作成です。
独裁者・武田信玄
いずもカリーシ
歴史・時代
国を、民を守るために、武田信玄は独裁者を目指す。
独裁国家が民主国家を数で上回っている現代だからこそ、この歴史物語はどこかに通じるものがあるかもしれません。
【第壱章 独裁者への階段】 純粋に国を、民を憂う思いが、粛清の嵐を巻き起こす
【第弐章 川中島合戦】 甲斐の虎と越後の龍、激突す
【第参章 戦争の黒幕】 京の都が、二人の英雄を不倶戴天の敵と成す
【第四章 織田信長の愛娘】 清廉潔白な人々が、武器商人への憎悪を燃やす
【最終章 西上作戦】 武田家を滅ぼす策略に抗うべく、信長と家康打倒を決断す
この小説は『大罪人の娘』を補完するものでもあります。
(前編が執筆終了していますが、後編の執筆に向けて修正中です))
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永き夜の遠の睡りの皆目醒め
七瀬京
歴史・時代
近藤勇の『首』が消えた……。
新撰組の局長として名を馳せた近藤勇は板橋で罪人として処刑されてから、その首を晒された。
しかし、その首が、ある日忽然と消えたのだった……。
近藤の『首』を巡り、過去と栄光と男たちの愛憎が交錯する。
首はどこにあるのか。
そして激動の時代、男たちはどこへ向かうのか……。
※男性同士の恋愛表現がありますので苦手な方はご注意下さい
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