ETDの雑用係

とりい とうか

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十一章 ランスロット

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 勇者パーティーの四分の三が揃ってしまった。何なんだこの状況、とノーイは最早笑うしかない。しかも、勇者ヴェルシエル、大神官シェムハザ、大魔女パリカーの三人だ。元魔王軍四天王のペインとパリカーが小競り合いという名の殺し合いを起こしたが、そんなもの些事である。最終的に星詠みの巫女アリーシャが双方を拳で黙らせていた……拳で? ノーイは考えることを止めた。

「じゃあ面白い男改めノーイはアタシと結婚して幸せな家庭を築くとして」
「待ってください師匠は私と添い遂げることになっているんです」
「シェムハザ兄のお師匠様がパリカー姉の運命の人……困ったなぁ、ボク、どっちを応援したらいいんだろう?」
「どっちにもいいよって言ってないし応援しないでね、オレは誰にも縛られない自由の身で……いたいのに……どうして……」
「泣いちゃった!! 神様のこといじめないで!!」

 続いて、アークがパリカーとシェムハザに一発ずつ頭突きをかまして悶絶させ、ヴェルシエルに止められていた。ノーイが泣いたのは主にダンジョンの主人に縛られている件についてだったのだが、まぁ自分の心中を代弁してくれたと思って撫でておいた。アークが満面の笑顔になる。
 とはいえ、アークの大暴れが話の流れを戻すきっかけになったので本当によかった。ここにいる全員で方針を再確認し、入口前の神官兵たちの動向も確認する。どうやら、覚悟を決めて突入してくるようだ。窓の下を覗いていたノーイは顔をしかめて、しかし避けようのない戦いに向けて切り替えようとして。

「じゃあさっき確認した方針通りに」
「神官兵たちに呪いを」
「かけずに極力殺さないで追い出す!!」

 アルカディアの一言に力強くツッコミを入れた。何でこの巫女は同族を殺したがるのだろうか。いや、それはここにいる人間たち皆、は過言か、まぁ大体の人間たちに共通しているのだが。

 そうして、ダンジョンの入口前。

 騎士団長であるランスロットは深く、しかし周りには気づかれないように溜め息をついた。かつての仲間、ヴェルシエルにシェムハザ、パリカーの実力はとてもよく知っている。ここに揃えられた人間たちが束になっても勝てないだろうことも。
 そもそも、シェムハザが異端認定されたことがおかしいのだ。罪状は魔王崇拝、その他にもいくつか挙げられていたが、もうこの時点で言いがかりにも程がある。この茶番劇を画策した者たちは、魔王を殺したのを誰だと思っているのだろうか。
 しかし、王国騎士団長である自分は、王に命じられればそれに従うしかない。シェムハザには神魔法を撃ち込まれ、ヴェルシエルからは本気の斬撃を食らわされたが、それも仕方がないことだ。いや、若干心が傷ついたが。あんなに躊躇いなくやるとは思っていなかった。

「団長、一班準備整いました!!」
「そうか、ならば突撃!!」

 部下の報告に短く応え、ダンジョンへの突撃を指示する。このダンジョンはエロトラップダンジョンと呼ばれていて、死にはしないが人間としての尊厳は粉々に破壊されるダンジョンとして有名だ。何でまたこんな場所に逃げ込んだのか、と今は決裂している元パーティーメンバー、大神官シェムハザの思考をなぞろうとして首を振った。
 あの男のことは、ついぞ理解できなかった。勇者ヴェルシエルは子どもであり、よくも悪くも純粋無垢で、その行動も正義感によってのものだから理解しやすい。大魔女パリカーは魔女と聞いて想像できる女そのもので、頼りにはしていたが邪悪な存在だとも思っていた。しかし、シェムハザだけは、どうにも掴みづらく、理解しがたい。

「抜剣!! 突撃ぃ!!」

 部下たちの雄叫びがランスロットの思考を断つ。剣を抜いた部下たちは、ダンジョンの扉を蹴破り、突入しようとした。

「『黙せよ』」

 瞬間、足を上げていた部下が硬直し、真後ろへ倒れる。石化か、いや、肌の色も装備の質感も変わっていない、ならば麻痺か。かひゅ、かひゅ、と掠れた吐息を必死で押し出そうとしている部下に、後方に控えていた神官兵から状態異常解除の神魔法が飛ぶ。が、それは弾かれた。
 神官兵たちがどよめく。神魔法に抵抗できる魔法は少なく、また発動した魔法を弾くには絶大な位階差が必要だ。たった一言、恐らく短縮詠唱で発動した魔法が、神官兵の上級神魔法を弾いたのだ。それは、その使い手である黒いローブの何者かが、途轍もない魔法の使い手であることを示していた。
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