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十一章 ランスロット
五
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事態が進んだのは、翌日の朝。モンスター故に夜目の利くノーイ、魔法で遠方を探れるジューダス、星詠みの巫女アリーシャの三人交代で寝ずの番をこなし、アリーシャが朝日の昇るとともに眠りについてしばらくしてから。
わぁっ、とダンジョンの入口前から上がった声。それは雄叫びにも、悲鳴にも聞こえるものだった。何が起きたのかと窓から入口前を見たノーイは、事態を把握した瞬間もう何もかもがわからなくて笑ってしまった。
「おはよーございますかみしゃま……どーしたんですうるさいですよー……?」
「いやもう何で勇者がさぁ!! 騎士団に襲いかかってんのか訳わかんなくて笑うしかねぇんだよ!!」
ノーイの説明が全てであった。アークと同じように寝起きでぽやぽやしているジューダスが、それでも何とか望遠鏡を取ってきて窓の下へ向ける。
「勇者様が優勢ですね」
「そりゃそう!! ここらでアイツに勝てるの、ここの主人しかいなくない?」
「かてましゅ!!」
「無理すんなってもう一回寝てくる? 多分しばらくはどうにもなんないから寝てきていいよ」
「あぃ……おやしゅみなしゃい……」
素直に寝室へと戻っていくアークには危機感がないのか、神様ことノーイがいるから安心しきっているのか、どちらにせよ不安になったノーイである。少なくともアークは神官兵にさえ勝てないだろうから本当に無理をしないでほしい。
「騎士団長と何か話してますね……勇者様が怒ってて、騎士団長は困っているようですが」
「聞こえない?」
「流石に無理です、魔法はどれも初級しか使えなくて……」
「嘘つくな!!」
遠方を覗き見る魔法は少なくとも中級光魔法からしか……いや、初級時魔法があるか、と思ったが時魔法使いは希少なものだ。元々戦士系の職業だったジューダスが使えるとは思えない。が、よくよく考えればジューダスは自己認識の変化により何でもありな人間だった。いや何だ何でもありな人間ってそれはもうモンスターの一種だろうがとノーイは頭を抱える。
「あ、勇者様が騎士団長を斬った」
「何してんの!? 何が起きてんの!?」
「勇者様がダンジョンに入りました」
「はぁ!?」
「あ、神官兵の神魔法で傷は塞がったみたいですね。そもそもそんなに深い傷ではなかったようです」
「遠くの騎士団長よりも近くの勇者ぁ!!」
「はい!! おはようございます!!」
「おはようございます!!」
ツッコミを入れまくった勢いそのままに挨拶を返したノーイの目の前には、ついさっきダンジョンに入ったばかりだったはずの勇者ヴェルシエル。手に携えた剣からは、まだ匂い立つ鮮血が滴っている。美味そうだなという思いと、不味いだろうなという考えが、ノーイの中で交錯した。
「シェムハザ兄が殺されそうになって、ここに逃げ込んだって聞いて……最期はお師匠様の下でって考えたのかなって……」
「おはようございます」
「シェムハザ兄!!」
泣きそうなヴェルシエルが語る中、普通に現れたシェムハザにヴェルシエルが抱きついた。ぎゅうっと抱き締めて、ぴったりとくっついて、それからヴェルシエルは首を傾げる。
「リッチになってない……」
「何を想定してたの?」
「お師匠様の下で自分をリッチにする魔法を使うためにここに来たのかなって。シェムハザ兄、旅の間も塔に帰りたそうにしてたし。ここなら失敗してゾンビになったらお師匠様に始末してもらえるし、成功したらしたでお師匠様から褒めてもらえるって思ったのかなって」
「おいお前に対する信頼感が地に落ちてるぞ」
「逆に私のことをよく理解しているからでは?」
なおリッチとは魂魔法か死魔法によって蘇生した人間がなるモンスターの一種だ。生前、魔法が得意であればあるほど、ゾンビではなくリッチになる確率が上がる。
閑話休題、悪びれもしないシェムハザに胡乱な視線を向けたノーイであった。どうやらヴェルシエルはシェムハザの鼓動や体温を確かめるために抱きついたらしい。勇者パーティー間の信頼感について頭を悩ませるノーイであった。
わぁっ、とダンジョンの入口前から上がった声。それは雄叫びにも、悲鳴にも聞こえるものだった。何が起きたのかと窓から入口前を見たノーイは、事態を把握した瞬間もう何もかもがわからなくて笑ってしまった。
「おはよーございますかみしゃま……どーしたんですうるさいですよー……?」
「いやもう何で勇者がさぁ!! 騎士団に襲いかかってんのか訳わかんなくて笑うしかねぇんだよ!!」
ノーイの説明が全てであった。アークと同じように寝起きでぽやぽやしているジューダスが、それでも何とか望遠鏡を取ってきて窓の下へ向ける。
「勇者様が優勢ですね」
「そりゃそう!! ここらでアイツに勝てるの、ここの主人しかいなくない?」
「かてましゅ!!」
「無理すんなってもう一回寝てくる? 多分しばらくはどうにもなんないから寝てきていいよ」
「あぃ……おやしゅみなしゃい……」
素直に寝室へと戻っていくアークには危機感がないのか、神様ことノーイがいるから安心しきっているのか、どちらにせよ不安になったノーイである。少なくともアークは神官兵にさえ勝てないだろうから本当に無理をしないでほしい。
「騎士団長と何か話してますね……勇者様が怒ってて、騎士団長は困っているようですが」
「聞こえない?」
「流石に無理です、魔法はどれも初級しか使えなくて……」
「嘘つくな!!」
遠方を覗き見る魔法は少なくとも中級光魔法からしか……いや、初級時魔法があるか、と思ったが時魔法使いは希少なものだ。元々戦士系の職業だったジューダスが使えるとは思えない。が、よくよく考えればジューダスは自己認識の変化により何でもありな人間だった。いや何だ何でもありな人間ってそれはもうモンスターの一種だろうがとノーイは頭を抱える。
「あ、勇者様が騎士団長を斬った」
「何してんの!? 何が起きてんの!?」
「勇者様がダンジョンに入りました」
「はぁ!?」
「あ、神官兵の神魔法で傷は塞がったみたいですね。そもそもそんなに深い傷ではなかったようです」
「遠くの騎士団長よりも近くの勇者ぁ!!」
「はい!! おはようございます!!」
「おはようございます!!」
ツッコミを入れまくった勢いそのままに挨拶を返したノーイの目の前には、ついさっきダンジョンに入ったばかりだったはずの勇者ヴェルシエル。手に携えた剣からは、まだ匂い立つ鮮血が滴っている。美味そうだなという思いと、不味いだろうなという考えが、ノーイの中で交錯した。
「シェムハザ兄が殺されそうになって、ここに逃げ込んだって聞いて……最期はお師匠様の下でって考えたのかなって……」
「おはようございます」
「シェムハザ兄!!」
泣きそうなヴェルシエルが語る中、普通に現れたシェムハザにヴェルシエルが抱きついた。ぎゅうっと抱き締めて、ぴったりとくっついて、それからヴェルシエルは首を傾げる。
「リッチになってない……」
「何を想定してたの?」
「お師匠様の下で自分をリッチにする魔法を使うためにここに来たのかなって。シェムハザ兄、旅の間も塔に帰りたそうにしてたし。ここなら失敗してゾンビになったらお師匠様に始末してもらえるし、成功したらしたでお師匠様から褒めてもらえるって思ったのかなって」
「おいお前に対する信頼感が地に落ちてるぞ」
「逆に私のことをよく理解しているからでは?」
なおリッチとは魂魔法か死魔法によって蘇生した人間がなるモンスターの一種だ。生前、魔法が得意であればあるほど、ゾンビではなくリッチになる確率が上がる。
閑話休題、悪びれもしないシェムハザに胡乱な視線を向けたノーイであった。どうやらヴェルシエルはシェムハザの鼓動や体温を確かめるために抱きついたらしい。勇者パーティー間の信頼感について頭を悩ませるノーイであった。
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