54 / 116
十一章 ランスロット
三
しおりを挟む
そうしてノーイたちが教会の動向を調べ始めて数日後。事態は急転した。終わりの始まりは、怪我を負ったシェムハザがエロトラップダンジョンに逃げ込んできたことだった。
「流石に戦士長……いえ、今は騎士団長でしたか、彼を騎士団の目の前で殺す訳にもいきませんし」
「その他の騎士は?」
「棒立ちの人間っていい的になると思いません?」
「その発想は魔王とかそういう類のモンスターのものなんだよなぁ!!」
とはいえ、時間さえあれば神魔法や聖魔法の専門家たる大神官である。割と深めの傷を負っていたはずだったのだが今や無傷である。強いていえば、神官服にぽっかりと開いた穴であったりざっくりと開いた裂け目であったりが怪我の存在の証明となるだろうか。
あるいは、ダンジョンの床に点々と散り、最上階の客間的な空間に広がった血の痕だとか。何でコイツあの怪我でここまでこれた上に全然へこたれてないのかな……とノーイは半眼でシェムハザを見やった。とてもいい笑顔が返ってきたので目を逸らす。
そんなシェムハザ曰く、彼は彼なりに鉛入りの葡萄酒について調べていたのだが、その途中で教皇から異端として槍玉に挙げられたらしい。その話を聞いたノーイはさもありなんと深く納得したが、これまたシェムハザ曰くその訴えの内容は荒唐無稽かつ事実無根、全くのでたらめだったとのこと。
故に、シェムハザは無実を示すために動こうとしたのだが、教皇は王国の貴族と手を結んでシェムハザに騎士団を差し向けた。抵抗しようがしまいが、抵抗したとして殺すつもりだったようだ、とは途中から話に混ざった星詠みの巫女、アリーシャの言である。何でそんなことがわかるのかがわからなくて、ノーイはそっと目を閉じた。
「とはいえ数には勝てず……心臓と頭を死守しつつ、追手を撒いてここに逃げ込んだ次第です」
「本当にちゃんと撒いてきた?」
「多分」
「撒けてないっぽいですよ」
更に話に混ざってきたのは、元冒険者のジューダス。窓から望遠鏡を突き出して、ダンジョンの入口を見ているようだ。
「武装した集団が……白い鎧は騎士団ですね、黒い法衣は教会の神官兵。それから冒険者かな、装備にばらつきがありますが、おおよそ初級から中級かと」
「全然撒けてない!!」
「面目次第もございません」
「でも、ダンジョンへの突入はためらっているみたいですね。まぁ、このダンジョンは人数でどうにかなるものではありませんし、通路がそう広くないので数の利も活かせませんからしばらくは入ってこないと思いますよ」
そうジューダスが結論づけて、少しばかり首を傾げる。何だろう、とノーイが疑問を抱いた直後、彼は再び口を開く。
「取り敢えず、低層の触手と中層のサキュバス、インキュバスの皆さんには避難してもらっているので」
「いつの間に?」
「低層の罠は触手の補助的な意味で拘束系が多いので、そこでも時間稼ぎはできると思います。中層もミミックもどきや電撃の罠があるので、数日は持ち堪えられるかと」
「今日のお前は何?」
「エロトラップダンジョンの主に仕える参謀です」
「そっかー急に賢くなるの止めてね、賢くなる前に一言でいいから言ってくれないとすごく怖いから」
「わかりました」
「本当かなぁ……」
参謀じゃなくなったら忘れてしまうような気がする。ともあれ、ノーイは未だ帰らぬダンジョンの主人がなるべく早く戻ってくるよう祈るしかなかった。
「流石に戦士長……いえ、今は騎士団長でしたか、彼を騎士団の目の前で殺す訳にもいきませんし」
「その他の騎士は?」
「棒立ちの人間っていい的になると思いません?」
「その発想は魔王とかそういう類のモンスターのものなんだよなぁ!!」
とはいえ、時間さえあれば神魔法や聖魔法の専門家たる大神官である。割と深めの傷を負っていたはずだったのだが今や無傷である。強いていえば、神官服にぽっかりと開いた穴であったりざっくりと開いた裂け目であったりが怪我の存在の証明となるだろうか。
あるいは、ダンジョンの床に点々と散り、最上階の客間的な空間に広がった血の痕だとか。何でコイツあの怪我でここまでこれた上に全然へこたれてないのかな……とノーイは半眼でシェムハザを見やった。とてもいい笑顔が返ってきたので目を逸らす。
そんなシェムハザ曰く、彼は彼なりに鉛入りの葡萄酒について調べていたのだが、その途中で教皇から異端として槍玉に挙げられたらしい。その話を聞いたノーイはさもありなんと深く納得したが、これまたシェムハザ曰くその訴えの内容は荒唐無稽かつ事実無根、全くのでたらめだったとのこと。
故に、シェムハザは無実を示すために動こうとしたのだが、教皇は王国の貴族と手を結んでシェムハザに騎士団を差し向けた。抵抗しようがしまいが、抵抗したとして殺すつもりだったようだ、とは途中から話に混ざった星詠みの巫女、アリーシャの言である。何でそんなことがわかるのかがわからなくて、ノーイはそっと目を閉じた。
「とはいえ数には勝てず……心臓と頭を死守しつつ、追手を撒いてここに逃げ込んだ次第です」
「本当にちゃんと撒いてきた?」
「多分」
「撒けてないっぽいですよ」
更に話に混ざってきたのは、元冒険者のジューダス。窓から望遠鏡を突き出して、ダンジョンの入口を見ているようだ。
「武装した集団が……白い鎧は騎士団ですね、黒い法衣は教会の神官兵。それから冒険者かな、装備にばらつきがありますが、おおよそ初級から中級かと」
「全然撒けてない!!」
「面目次第もございません」
「でも、ダンジョンへの突入はためらっているみたいですね。まぁ、このダンジョンは人数でどうにかなるものではありませんし、通路がそう広くないので数の利も活かせませんからしばらくは入ってこないと思いますよ」
そうジューダスが結論づけて、少しばかり首を傾げる。何だろう、とノーイが疑問を抱いた直後、彼は再び口を開く。
「取り敢えず、低層の触手と中層のサキュバス、インキュバスの皆さんには避難してもらっているので」
「いつの間に?」
「低層の罠は触手の補助的な意味で拘束系が多いので、そこでも時間稼ぎはできると思います。中層もミミックもどきや電撃の罠があるので、数日は持ち堪えられるかと」
「今日のお前は何?」
「エロトラップダンジョンの主に仕える参謀です」
「そっかー急に賢くなるの止めてね、賢くなる前に一言でいいから言ってくれないとすごく怖いから」
「わかりました」
「本当かなぁ……」
参謀じゃなくなったら忘れてしまうような気がする。ともあれ、ノーイは未だ帰らぬダンジョンの主人がなるべく早く戻ってくるよう祈るしかなかった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる