39 / 116
七章 ヴェルシエル
三
しおりを挟む
「やっと帰ってくれた」
と、ノーイは深々と溜め息をついた。何やかんやあったが、何とかなって、なったのか? いやもうよくわからないが、ヴェルシエルという最大の脅威がいなくなったのでようやく一息つけたのだ。
なおジューダスは平然と片付けを終え、ヴェルシエルからもらった茶葉でお茶を淹れ直してのほほんとしている。ノーイは取り敢えずそんなジューダスの頭を叩いた。
「あいたっ」
「ここで痛くないなんて言ったら本気ではっ倒すが!? 何で普通に茶ぁ飲んでんだよ!?」
「美味しいですよ?」
「知らんわ!!」
何が悪かったのか全く理解していないジューダスの様子に、もう何かどうでもいいや……と諦めて肩を落とすノーイ。そんなノーイの肩を、ぽんと叩いた人物がいる。
「疲れているようですけどマッサージ要ります?」
「要らんわ!! つーかお前がほぼ全ての元凶じゃねぇか!!」
その手を払い除けたノーイは、にこにこと感情の読めない笑みを浮かべているシェムハザに食ってかかる。シェムハザはその笑みを崩しもせずに、否、むしろその笑みを深めて口を開いた。
「何も嘘はついていません」
「お前の視点では嘘じゃなくてもオレとか大多数の人間から見たら嘘なんだよなぁ!! 勇者を引き込むのは完全になしだろ!! 実はオレのこと嫌いまであるだろうがよこんなんさぁ!!」
「私が貴方のことを嫌うなんて……そんな……有り得ません!! 認識の修正を願います!!」
「願える立場か!!」
が、一転ぶるぶると身を震わせ、とんでもなく恐ろしい言葉を聞いたと言わんばかりに青褪める。シェムハザにとって自分の好意が疑われることは耐えられないことだったのだ。その割には行為が全部裏切っている気がするが、今ここにそれを正しく指摘できる人間……人間ではないものもいるが、それはいなかった。
「勇者なんてなぁ!! オレの天敵じゃねぇか!! いや何か最近絆されててあれだけどお前もオレの天敵なんだよ!! わかれ!! このモンスター排斥主義者過激派団体!! 魔王に対してやったみたいにオレをボッコボコにするつもりなんでしょ!! 魔王に対してやったみたいに!!」
びーびー泣き喚いて抗議するノーイに、息を呑んで、卒倒しそうになるシェムハザ。しかし、それも数瞬。はっ、と何かに気づいたような顔をしたシェムハザは、あの感情が読めない笑みを取り戻した。
「わかりました」
「えっ」
何がわかったというのか。シェムハザが笑顔のまま放った一言が、あまりにも恐ろしかった。ノーイはぱちぱちとまばたきして、先刻のシェムハザよりも顔色を悪くした。
「何がわかったの?」
「私が貴方を想う気持ちが伝わっていないようなので、わからせればいいと思いました」
「絶対によくないし思わないで、思い直してお願い」
「わからせます」
「断言しても駄目だが!? え!? もしかして押し切れると思った!? どうして!?」
じり、じり……と自分に近づいてくるシェムハザから距離を取りながらノーイは狼狽える。瞬間、神官らしからぬ素早さで身を低くして突進してきたシェムハザに捕獲され、ノーイは心の底からの悲鳴を上げた。一方、ジューダスは飲み干した紅茶のカップを洗いに行った。
と、ノーイは深々と溜め息をついた。何やかんやあったが、何とかなって、なったのか? いやもうよくわからないが、ヴェルシエルという最大の脅威がいなくなったのでようやく一息つけたのだ。
なおジューダスは平然と片付けを終え、ヴェルシエルからもらった茶葉でお茶を淹れ直してのほほんとしている。ノーイは取り敢えずそんなジューダスの頭を叩いた。
「あいたっ」
「ここで痛くないなんて言ったら本気ではっ倒すが!? 何で普通に茶ぁ飲んでんだよ!?」
「美味しいですよ?」
「知らんわ!!」
何が悪かったのか全く理解していないジューダスの様子に、もう何かどうでもいいや……と諦めて肩を落とすノーイ。そんなノーイの肩を、ぽんと叩いた人物がいる。
「疲れているようですけどマッサージ要ります?」
「要らんわ!! つーかお前がほぼ全ての元凶じゃねぇか!!」
その手を払い除けたノーイは、にこにこと感情の読めない笑みを浮かべているシェムハザに食ってかかる。シェムハザはその笑みを崩しもせずに、否、むしろその笑みを深めて口を開いた。
「何も嘘はついていません」
「お前の視点では嘘じゃなくてもオレとか大多数の人間から見たら嘘なんだよなぁ!! 勇者を引き込むのは完全になしだろ!! 実はオレのこと嫌いまであるだろうがよこんなんさぁ!!」
「私が貴方のことを嫌うなんて……そんな……有り得ません!! 認識の修正を願います!!」
「願える立場か!!」
が、一転ぶるぶると身を震わせ、とんでもなく恐ろしい言葉を聞いたと言わんばかりに青褪める。シェムハザにとって自分の好意が疑われることは耐えられないことだったのだ。その割には行為が全部裏切っている気がするが、今ここにそれを正しく指摘できる人間……人間ではないものもいるが、それはいなかった。
「勇者なんてなぁ!! オレの天敵じゃねぇか!! いや何か最近絆されててあれだけどお前もオレの天敵なんだよ!! わかれ!! このモンスター排斥主義者過激派団体!! 魔王に対してやったみたいにオレをボッコボコにするつもりなんでしょ!! 魔王に対してやったみたいに!!」
びーびー泣き喚いて抗議するノーイに、息を呑んで、卒倒しそうになるシェムハザ。しかし、それも数瞬。はっ、と何かに気づいたような顔をしたシェムハザは、あの感情が読めない笑みを取り戻した。
「わかりました」
「えっ」
何がわかったというのか。シェムハザが笑顔のまま放った一言が、あまりにも恐ろしかった。ノーイはぱちぱちとまばたきして、先刻のシェムハザよりも顔色を悪くした。
「何がわかったの?」
「私が貴方を想う気持ちが伝わっていないようなので、わからせればいいと思いました」
「絶対によくないし思わないで、思い直してお願い」
「わからせます」
「断言しても駄目だが!? え!? もしかして押し切れると思った!? どうして!?」
じり、じり……と自分に近づいてくるシェムハザから距離を取りながらノーイは狼狽える。瞬間、神官らしからぬ素早さで身を低くして突進してきたシェムハザに捕獲され、ノーイは心の底からの悲鳴を上げた。一方、ジューダスは飲み干した紅茶のカップを洗いに行った。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる