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一章 ヴォジャノーイ
一
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そもそもノーイとは何なのかと言えば、少なくとも人間ではない。今は冴えない中年冒険者の姿を取っているが、生まれた時は影に潜み影を操る類いのモンスターだった。
それが、本能的な生き汚さで何とか生き残り続け、不定形だった体が獣そして人の形を取れるようになり、いくつかの魔法が使えるようになり、いつの間にか魔王軍の一角として祭り上げられていた。
やがて彼は魔王によって「ヴォジャノーイ」と名付けられ、沼地や暗闇に蔓延る存在を支配する権利を与えられた。本人は全く意図していないことであったが、他の四天王と異なり無暗に配下を虐げなかった、もとい配下に対して何もしなかったことから熱狂的な人気を誇るようになり、結果として更に魔王軍へ貢献することとなり。
気づけば魔王軍の第二位、魔王の右腕とまで呼ばれる存在へと成り果てていた。
ノーイは、そうなってしまってとても困っていた。ノーイはただ、楽をして生きていたいだけだった。なのに、魔王の右腕なんて呼ばれていたら、あの恐ろしい超越者、人間の中に在って人間から外れた者、そう、勇者に狙われてしまう。
そうして案の定、魔王を倒すために勇者がやって来た。ノーイの配下たちは魔王を、そしてノーイを守るために散っていった。勇者たちはその猛攻に傷つきはしたものの、そこらのモンスターが与えられる傷など掠り傷に等しい。
だから、ノーイはあっさりと決意した。逃げよう。魔王はノーイが勇者たちを始末すると期待していたようだが、そもそもノーイは魔王に立てる義理も何もない。名前をつけられたのだって、ノーイが望んだことではなかったのだ。
ノーイはそもそもが不定形であったため、見た目を変えるのは朝飯前だった。ノーイは、勇者の目を欺くために冒険者の男の姿に化けた。この冒険者というやつらは、利が得られるとあらばどこにだって涌いてくる、蛆虫のようなものなのだ。
ノーイは、モンスターに喉笛を食い千切られて死んだ冒険者を装って、魔王が根城としているラストダンジョンの片隅に倒れ伏した。実際、ここの低層にもこの手の冒険者が山といる。だからだろう、勇者たちはノーイが魔王の右腕たるヴォジャノーイとは気づかず、何なら勇者と共にやって来ていた大神官は、ノーイへ向かって死者への祈りまで捧げて行った。
こうなれば後は見つからないよう逃げるだけである。勇者たちが充分に離れてから、ノーイは元の姿に戻り、そのまま馬の姿に化けて駆け出した。人間の姿は紛れることこそ得意だが、走ることはそんなに得意ではない。そしてノーイは、見事に逃げ仰せた。
それが、本能的な生き汚さで何とか生き残り続け、不定形だった体が獣そして人の形を取れるようになり、いくつかの魔法が使えるようになり、いつの間にか魔王軍の一角として祭り上げられていた。
やがて彼は魔王によって「ヴォジャノーイ」と名付けられ、沼地や暗闇に蔓延る存在を支配する権利を与えられた。本人は全く意図していないことであったが、他の四天王と異なり無暗に配下を虐げなかった、もとい配下に対して何もしなかったことから熱狂的な人気を誇るようになり、結果として更に魔王軍へ貢献することとなり。
気づけば魔王軍の第二位、魔王の右腕とまで呼ばれる存在へと成り果てていた。
ノーイは、そうなってしまってとても困っていた。ノーイはただ、楽をして生きていたいだけだった。なのに、魔王の右腕なんて呼ばれていたら、あの恐ろしい超越者、人間の中に在って人間から外れた者、そう、勇者に狙われてしまう。
そうして案の定、魔王を倒すために勇者がやって来た。ノーイの配下たちは魔王を、そしてノーイを守るために散っていった。勇者たちはその猛攻に傷つきはしたものの、そこらのモンスターが与えられる傷など掠り傷に等しい。
だから、ノーイはあっさりと決意した。逃げよう。魔王はノーイが勇者たちを始末すると期待していたようだが、そもそもノーイは魔王に立てる義理も何もない。名前をつけられたのだって、ノーイが望んだことではなかったのだ。
ノーイはそもそもが不定形であったため、見た目を変えるのは朝飯前だった。ノーイは、勇者の目を欺くために冒険者の男の姿に化けた。この冒険者というやつらは、利が得られるとあらばどこにだって涌いてくる、蛆虫のようなものなのだ。
ノーイは、モンスターに喉笛を食い千切られて死んだ冒険者を装って、魔王が根城としているラストダンジョンの片隅に倒れ伏した。実際、ここの低層にもこの手の冒険者が山といる。だからだろう、勇者たちはノーイが魔王の右腕たるヴォジャノーイとは気づかず、何なら勇者と共にやって来ていた大神官は、ノーイへ向かって死者への祈りまで捧げて行った。
こうなれば後は見つからないよう逃げるだけである。勇者たちが充分に離れてから、ノーイは元の姿に戻り、そのまま馬の姿に化けて駆け出した。人間の姿は紛れることこそ得意だが、走ることはそんなに得意ではない。そしてノーイは、見事に逃げ仰せた。
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