35 / 61
おっさん、良太と酒を飲む2
しおりを挟む
「何お前、またノロケ話をするために俺を呼んだのか?」
「いや、だから別にノロケてないって」
「じゃあ、格好つけて罪を全部かぶって去ろうとしたが、最後は女の子の手助けのおかげで罪を免れたダサ坊ってことでいいか?」
「なんか、酷い言われようなんだけど……」
いつものBARで良太に先日の出来事を話していた。
何かを話す度に色々と皮肉めいた事を言われるが、お互い話していると酒も進むし、マスターも俺らの好物をさりげなく出してくれてる。
良太はウィスキーをもう一杯頼んだところでタバコをふかしながら言ってきた。
「それで、次のクリスマス礼拝とやらにどんな格好で行けばいいのかだっけか?」
「そうそう、この前の小林とかいう運転手に言われた体型の事ってさ、反論できない部分があってさ。このまま行っても、学内で綾華に恥をかかすんじゃないかと」
「四十路のおっさんがウジウジ情けねえなぁ。今日は洒落た服装しているから、ちったぁ変わったのかと思えば」
「あ、この服? 良太にアドバイス貰った通り、前に綾華と出かけた時に買った服だよ」
「んなことは分かってる。どう見てもお前のセンスじゃねえし、ブランド的にお前が買える服じゃねえからな」
良太は運ばれてきたウィスキーを一口飲んだ後、盛大に鼻から煙を吐き出し、俺の事を上から下まで眺めて煙草を盛大に吸った。
「とりあえず、痩せろ」
「は?」
「その見事な三段腹を昔みたいなシックスパックに戻せって言ってんの」
良太が俺の腹をつまみ、盛大よく揺らす。
昔の俺は喧嘩に負けまいと筋トレに励んでいた頃があり、腹にぜい肉はなく六つに割れていた。
戻せって言われてもな、クリスマス礼拝まで残り一カ月しかないのに……。
「残り一カ月しかないって言い訳するより、まずは明日から行動しろ。シックスパックに出来なくても三段腹くらいはなんとかしろ」
「いや、そう言われても流石にこの腹を筋トレだけじゃさ」
「流行りのカイザップダイエットでも腹筋ローラでも腹筋ベルトでも何でもして痩せろ。そもそも、事の発端はお前のだらしない体型が原因だろ」
「ハイ、反論できません」
「綾華という嬢ちゃんや雪奈って子がしなくてもいい苦労をしてお前をかばってくれたんだぞ。このままだと何かある度に女子高生に助けられる人生でいいのお前? 童貞のくせに」
「ど、童貞関係なくね???」
良太は豪快に笑いながらウィスキーを一気に流し込み、温かい目で俺を見てきた。
「まあ、正直言うとな、俺は最近のお前が嬉しいんだ。学生の頃みたいな明るさというか雰囲気が戻ってるからな。以前のお前は痴漢の冤罪以来、軽い女性不信だし、二次元ばかりだし、クタビれた社畜生活。実家にも何年も返ってなかっただろ?」
「まあ、それはそれで不満はなかったけどさ」
「俺が不満だったんだよ。おやっさんやお袋さんが愚痴ってたぞ。ちっとも実家に帰ってこない親不孝者ってな」
「親父たちに会ったのか?」
「あぁ、俺は長期休暇の度に家族連れて実家に帰ってるからな。お前の実家の温泉はウチの家族に好評だよ」
そうか、まだ潰れてなかったのかウチの旅館は。
男の子供は俺だけだったから、親父は俺に継がせたがってたけど。
痴漢の冤罪以来、恥ずかしくて帰れなかったんだよなぁ。
「そんなお前を変えてくれたいうか、昔のお前に戻してくれたのが綾華って子なのは間違いない。大切にしろよ。お前の中身を見てくれる奇特な子なんだから」
「悲しませないようにはしてるつもりだよ」
良太が差し出してきたグラスに俺もグラスを合わせて苦笑いを浮かべた。
その後も他愛のない話をしながら終電まで飲み続けるつもりだったが、良太にさっさと帰る様に促された。
前の飲みの時に綾華が深夜まで駅で待ってくれた事をチラッと話したせいだ。
そういう気遣いが出来ないから、お前は四十まで恋人ができないんだよと頭を叩かれながら店の前で別れた。
「いや、だから別にノロケてないって」
「じゃあ、格好つけて罪を全部かぶって去ろうとしたが、最後は女の子の手助けのおかげで罪を免れたダサ坊ってことでいいか?」
「なんか、酷い言われようなんだけど……」
いつものBARで良太に先日の出来事を話していた。
何かを話す度に色々と皮肉めいた事を言われるが、お互い話していると酒も進むし、マスターも俺らの好物をさりげなく出してくれてる。
良太はウィスキーをもう一杯頼んだところでタバコをふかしながら言ってきた。
「それで、次のクリスマス礼拝とやらにどんな格好で行けばいいのかだっけか?」
「そうそう、この前の小林とかいう運転手に言われた体型の事ってさ、反論できない部分があってさ。このまま行っても、学内で綾華に恥をかかすんじゃないかと」
「四十路のおっさんがウジウジ情けねえなぁ。今日は洒落た服装しているから、ちったぁ変わったのかと思えば」
「あ、この服? 良太にアドバイス貰った通り、前に綾華と出かけた時に買った服だよ」
「んなことは分かってる。どう見てもお前のセンスじゃねえし、ブランド的にお前が買える服じゃねえからな」
良太は運ばれてきたウィスキーを一口飲んだ後、盛大に鼻から煙を吐き出し、俺の事を上から下まで眺めて煙草を盛大に吸った。
「とりあえず、痩せろ」
「は?」
「その見事な三段腹を昔みたいなシックスパックに戻せって言ってんの」
良太が俺の腹をつまみ、盛大よく揺らす。
昔の俺は喧嘩に負けまいと筋トレに励んでいた頃があり、腹にぜい肉はなく六つに割れていた。
戻せって言われてもな、クリスマス礼拝まで残り一カ月しかないのに……。
「残り一カ月しかないって言い訳するより、まずは明日から行動しろ。シックスパックに出来なくても三段腹くらいはなんとかしろ」
「いや、そう言われても流石にこの腹を筋トレだけじゃさ」
「流行りのカイザップダイエットでも腹筋ローラでも腹筋ベルトでも何でもして痩せろ。そもそも、事の発端はお前のだらしない体型が原因だろ」
「ハイ、反論できません」
「綾華という嬢ちゃんや雪奈って子がしなくてもいい苦労をしてお前をかばってくれたんだぞ。このままだと何かある度に女子高生に助けられる人生でいいのお前? 童貞のくせに」
「ど、童貞関係なくね???」
良太は豪快に笑いながらウィスキーを一気に流し込み、温かい目で俺を見てきた。
「まあ、正直言うとな、俺は最近のお前が嬉しいんだ。学生の頃みたいな明るさというか雰囲気が戻ってるからな。以前のお前は痴漢の冤罪以来、軽い女性不信だし、二次元ばかりだし、クタビれた社畜生活。実家にも何年も返ってなかっただろ?」
「まあ、それはそれで不満はなかったけどさ」
「俺が不満だったんだよ。おやっさんやお袋さんが愚痴ってたぞ。ちっとも実家に帰ってこない親不孝者ってな」
「親父たちに会ったのか?」
「あぁ、俺は長期休暇の度に家族連れて実家に帰ってるからな。お前の実家の温泉はウチの家族に好評だよ」
そうか、まだ潰れてなかったのかウチの旅館は。
男の子供は俺だけだったから、親父は俺に継がせたがってたけど。
痴漢の冤罪以来、恥ずかしくて帰れなかったんだよなぁ。
「そんなお前を変えてくれたいうか、昔のお前に戻してくれたのが綾華って子なのは間違いない。大切にしろよ。お前の中身を見てくれる奇特な子なんだから」
「悲しませないようにはしてるつもりだよ」
良太が差し出してきたグラスに俺もグラスを合わせて苦笑いを浮かべた。
その後も他愛のない話をしながら終電まで飲み続けるつもりだったが、良太にさっさと帰る様に促された。
前の飲みの時に綾華が深夜まで駅で待ってくれた事をチラッと話したせいだ。
そういう気遣いが出来ないから、お前は四十まで恋人ができないんだよと頭を叩かれながら店の前で別れた。
0
お気に入りに追加
27
あなたにおすすめの小説
お嬢様、お仕置の時間です。
moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。
両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。
私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。
私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。
両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。
新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。
私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。
海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。
しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。
海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。
しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。
先生!放課後の隣の教室から女子の喘ぎ声が聴こえました…
ヘロディア
恋愛
居残りを余儀なくされた高校生の主人公。
しかし、隣の部屋からかすかに女子の喘ぎ声が聴こえてくるのであった。
気になって覗いてみた主人公は、衝撃的な光景を目の当たりにする…
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件
森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。
学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。
そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる