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おっさん、良太と酒を飲む2

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「何お前、またノロケ話をするために俺を呼んだのか?」
「いや、だから別にノロケてないって」
「じゃあ、格好つけて罪を全部かぶって去ろうとしたが、最後は女の子の手助けのおかげで罪を免れたダサ坊ってことでいいか?」
「なんか、酷い言われようなんだけど……」

 いつものBARで良太に先日の出来事を話していた。
 何かを話す度に色々と皮肉めいた事を言われるが、お互い話していると酒も進むし、マスターも俺らの好物をさりげなく出してくれてる。
 良太はウィスキーをもう一杯頼んだところでタバコをふかしながら言ってきた。

「それで、次のクリスマス礼拝とやらにどんな格好で行けばいいのかだっけか?」
「そうそう、この前の小林とかいう運転手に言われた体型の事ってさ、反論できない部分があってさ。このまま行っても、学内で綾華に恥をかかすんじゃないかと」
「四十路のおっさんがウジウジ情けねえなぁ。今日は洒落た服装しているから、ちったぁ変わったのかと思えば」
「あ、この服? 良太にアドバイス貰った通り、前に綾華と出かけた時に買った服だよ」
「んなことは分かってる。どう見てもお前のセンスじゃねえし、ブランド的にお前が買える服じゃねえからな」

 良太は運ばれてきたウィスキーを一口飲んだ後、盛大に鼻から煙を吐き出し、俺の事を上から下まで眺めて煙草を盛大に吸った。

「とりあえず、痩せろ」
「は?」
「その見事な三段腹を昔みたいなシックスパックに戻せって言ってんの」

 良太が俺の腹をつまみ、盛大よく揺らす。
 昔の俺は喧嘩に負けまいと筋トレに励んでいた頃があり、腹にぜい肉はなく六つに割れていた。
 戻せって言われてもな、クリスマス礼拝まで残り一カ月しかないのに……。

「残り一カ月しかないって言い訳するより、まずは明日から行動しろ。シックスパックに出来なくても三段腹くらいはなんとかしろ」
「いや、そう言われても流石にこの腹を筋トレだけじゃさ」
「流行りのカイザップダイエットでも腹筋ローラでも腹筋ベルトでも何でもして痩せろ。そもそも、事の発端はお前のだらしない体型が原因だろ」
「ハイ、反論できません」
「綾華という嬢ちゃんや雪奈って子がしなくてもいい苦労をしてお前をかばってくれたんだぞ。このままだと何かある度に女子高生に助けられる人生でいいのお前? 童貞のくせに」
「ど、童貞関係なくね???」

 良太は豪快に笑いながらウィスキーを一気に流し込み、温かい目で俺を見てきた。

「まあ、正直言うとな、俺は最近のお前が嬉しいんだ。学生の頃みたいな明るさというか雰囲気が戻ってるからな。以前のお前は痴漢の冤罪以来、軽い女性不信だし、二次元ばかりだし、クタビれた社畜生活。実家にも何年も返ってなかっただろ?」
「まあ、それはそれで不満はなかったけどさ」
「俺が不満だったんだよ。おやっさんやお袋さんが愚痴ってたぞ。ちっとも実家に帰ってこない親不孝者ってな」
「親父たちに会ったのか?」
「あぁ、俺は長期休暇の度に家族連れて実家に帰ってるからな。お前の実家の温泉はウチの家族に好評だよ」

 そうか、まだ潰れてなかったのかウチの旅館は。
 男の子供は俺だけだったから、親父は俺に継がせたがってたけど。
 痴漢の冤罪以来、恥ずかしくて帰れなかったんだよなぁ。

「そんなお前を変えてくれたいうか、昔のお前に戻してくれたのが綾華って子なのは間違いない。大切にしろよ。お前の中身を見てくれる奇特な子なんだから」
「悲しませないようにはしてるつもりだよ」

 良太が差し出してきたグラスに俺もグラスを合わせて苦笑いを浮かべた。
 その後も他愛のない話をしながら終電まで飲み続けるつもりだったが、良太にさっさと帰る様に促された。
 前の飲みの時に綾華が深夜まで駅で待ってくれた事をチラッと話したせいだ。
 そういう気遣いが出来ないから、お前は四十まで恋人ができないんだよと頭を叩かれながら店の前で別れた。
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